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リラリオの原初の魔族編
521.闘技場の勝負の後で
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「う、嘘だろう!?』
ソフィの横でシチョウは驚愕に目を丸くする。
「キーリが勝負運びを安全に持っていくならば『二色の併用』のままで戦うか、もしくは最初から『龍化』を選ぶべきだったな」
三色のオーラを使った『三色混合』というところに、目を付けた着眼点は大したものだったが、ソフィから見てもキーリの魔力値で『三色混合』を使うには、少々無理があるだろうと試合の中で察していたようだった。
三色混合を使って戦う事に普段から慣れている状態であれば、ここぞという時に発動させて戦うのは、十分キーリの魔力値でも戦えるだろうが、あれだけ長い期間使用した上で、膠着状態になるのであれば、直ぐに戦術を切り替えるか消費魔力を考えて使用を控えるべきであった。
しかしキーリは使用をやめるどころか『三色混合』を用いた状態で、更に多くの『魔力』を使う彼女の必殺技『龍滅』を使ってしまった。魔力枯渇が引き起こされるのは当然であるといえた。
「ハッキリ言ってキーリ王もリディアという人間も次元が違いすぎて、俺じゃあ口出しする事も出来ねぇな」
完全にお手上げだとばかりに溜息を吐きながら、今の一戦の感想を述べる『シチョウ』だった。
「我から見ればキーリが負けた要因は多く思いつくが、やはり一番の理由としては途中からキーリの魔力枯渇が早めに来るだろうと判断した『リディア』が攻撃をせずに、耐え続ける事を選び試合自体を長引かせた事が一番の要因だろうな」
試合の途中でソフィがキーリが無理をしている事に気づいたように、あの戦闘中である筈のリディアもまた、キーリの『魔力』の消費量に気づいていた節があった。それがあの試合途中で自身の速度を上昇させるような技を用いて、リング上を駆け抜けるように移動を繰り返していた時の事であった。まさしくあれは試合を長引かせて、キーリに攻撃をさせ続けながら、更に耐え忍んで焦らさせて大きな魔力を使わせて、一気に勝負を決めようとする大技に合わせて反撃の機会を狙っていたのだろう。
あのリディアの光り輝く刀の技法の事をよく知らない者であれば『魔法』すらも何事も無く斬ってみせるリディアに対して、大技で決めようと考えてしまうのも無理はない。
膨大な魔力を消費して、一気に勝負を決めようと考えている者からすれば、リディアの『魔法』を斬る能力は本当に反則的であろう。
(だが、やはりそう言う勝負に持って行ってしまったキーリに問題があるだろうな。我は本気で戦えとは言ったが、キーリは意味を取り違えてしまったようだ)
戦力値を重視して戦うのであれば『三色混合』という選択肢は悪くはなかった。しかしあれだけリディアに耐えられた以上、やはり直ぐに解除して『龍化』を選ぶべきだっただろう。
キーリ自身もリディアを侮るつもりは無かったのだろうが、やはりどこかで驕りが生じていたと見える。
自身が挑戦者なのだという覚悟で臨んでいれば、もっと違う結果になったのではないだろうか。しかしそこまで考えたソフィは首を横に振った。
終わってしまった以上は他者の戦い方にあれこれケチをつけても仕方がない。それにキーリに戦うように頼んだのは他でもないソフィ自身なのだ。
短期間で調整もろくに出来なかったキーリに、無理を言ったソフィがたらればを説くのは余りにも酷というものだろう。
「クックック。しかし自滅が原因だとはいってもキーリを倒すまでになったか。リディアよ」
ソフィは試合会場のリングで審判から勝者コールを受けている『リディア』を見ながら嬉しそうにするのだった。
……
……
……
「『緑』などという珍しい力を纏っていたが、あまりにもあの龍族の戦い方はお粗末すぎだ」
観客席でレキは今の勝負を見てそう吐き捨てる。
(結局あの野郎。俺が教えた力を温存したまま勝ちやがったか。まぁそれならそれで構わねぇがよ。ちと興覚めだよなぁ。つまらねぇ試合見せつけやがって! こっちはフラストレーションが溜まりまくりだぜ)
「ちっと揶揄ってやるか?」
レキはそう言って椅子から立ち上がると、そのまま上を見上げる。
――レキの視線の先には外からは見えないように『魔力』で施された『結界』が張られている特別室があった。
レキの目が金色に変わり、じっと特別室を凝らしてみると中に居るソフィの姿が見えた。
…………
特別室に居るシチョウやその隣に護衛としていたアイゲンは、レキの視線には気づかない。
――だが、ソフィはレキの視線に気づきそちらを見た。
互いに数秒間は視線を交換し合っていたが、次の瞬間――。
――特別室に張られていた『結界』が音を立てて消滅した。
そして今度はパキンという小さい音がなったかと思うと、更に小さい音が次々伝播していき、それは部屋中に響き渡った後に特別室の窓は全て割れてしまった。
『レルバノン』は『ソフィ』に近づき『アイゲン』もまた『シチョウ』を守るように前に出る。
ソフィの視線の先に居たレキは、ソフィを見て軽く手を上げて笑みを浮かべた。そしてもう用は済んだとばかりに、踵を返してゆっくりと歩いていくのだった。
「い、一体何が……!?」
シチョウが慌てた様子で割れた窓を見つめながら口を開く。
「案ずるな。どうやらもう大丈夫のようだ」
(クックック……! 我に挨拶のつもりかレキよ……!)
ソフィの言葉にその場にいた誰もがソフィを見るが、当の本人は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
嬉しそうに笑うソフィを見て、再びその場に居る者達は互いの顔を見合わせるのだった。
……
……
……
ソフィの横でシチョウは驚愕に目を丸くする。
「キーリが勝負運びを安全に持っていくならば『二色の併用』のままで戦うか、もしくは最初から『龍化』を選ぶべきだったな」
三色のオーラを使った『三色混合』というところに、目を付けた着眼点は大したものだったが、ソフィから見てもキーリの魔力値で『三色混合』を使うには、少々無理があるだろうと試合の中で察していたようだった。
三色混合を使って戦う事に普段から慣れている状態であれば、ここぞという時に発動させて戦うのは、十分キーリの魔力値でも戦えるだろうが、あれだけ長い期間使用した上で、膠着状態になるのであれば、直ぐに戦術を切り替えるか消費魔力を考えて使用を控えるべきであった。
しかしキーリは使用をやめるどころか『三色混合』を用いた状態で、更に多くの『魔力』を使う彼女の必殺技『龍滅』を使ってしまった。魔力枯渇が引き起こされるのは当然であるといえた。
「ハッキリ言ってキーリ王もリディアという人間も次元が違いすぎて、俺じゃあ口出しする事も出来ねぇな」
完全にお手上げだとばかりに溜息を吐きながら、今の一戦の感想を述べる『シチョウ』だった。
「我から見ればキーリが負けた要因は多く思いつくが、やはり一番の理由としては途中からキーリの魔力枯渇が早めに来るだろうと判断した『リディア』が攻撃をせずに、耐え続ける事を選び試合自体を長引かせた事が一番の要因だろうな」
試合の途中でソフィがキーリが無理をしている事に気づいたように、あの戦闘中である筈のリディアもまた、キーリの『魔力』の消費量に気づいていた節があった。それがあの試合途中で自身の速度を上昇させるような技を用いて、リング上を駆け抜けるように移動を繰り返していた時の事であった。まさしくあれは試合を長引かせて、キーリに攻撃をさせ続けながら、更に耐え忍んで焦らさせて大きな魔力を使わせて、一気に勝負を決めようとする大技に合わせて反撃の機会を狙っていたのだろう。
あのリディアの光り輝く刀の技法の事をよく知らない者であれば『魔法』すらも何事も無く斬ってみせるリディアに対して、大技で決めようと考えてしまうのも無理はない。
膨大な魔力を消費して、一気に勝負を決めようと考えている者からすれば、リディアの『魔法』を斬る能力は本当に反則的であろう。
(だが、やはりそう言う勝負に持って行ってしまったキーリに問題があるだろうな。我は本気で戦えとは言ったが、キーリは意味を取り違えてしまったようだ)
戦力値を重視して戦うのであれば『三色混合』という選択肢は悪くはなかった。しかしあれだけリディアに耐えられた以上、やはり直ぐに解除して『龍化』を選ぶべきだっただろう。
キーリ自身もリディアを侮るつもりは無かったのだろうが、やはりどこかで驕りが生じていたと見える。
自身が挑戦者なのだという覚悟で臨んでいれば、もっと違う結果になったのではないだろうか。しかしそこまで考えたソフィは首を横に振った。
終わってしまった以上は他者の戦い方にあれこれケチをつけても仕方がない。それにキーリに戦うように頼んだのは他でもないソフィ自身なのだ。
短期間で調整もろくに出来なかったキーリに、無理を言ったソフィがたらればを説くのは余りにも酷というものだろう。
「クックック。しかし自滅が原因だとはいってもキーリを倒すまでになったか。リディアよ」
ソフィは試合会場のリングで審判から勝者コールを受けている『リディア』を見ながら嬉しそうにするのだった。
……
……
……
「『緑』などという珍しい力を纏っていたが、あまりにもあの龍族の戦い方はお粗末すぎだ」
観客席でレキは今の勝負を見てそう吐き捨てる。
(結局あの野郎。俺が教えた力を温存したまま勝ちやがったか。まぁそれならそれで構わねぇがよ。ちと興覚めだよなぁ。つまらねぇ試合見せつけやがって! こっちはフラストレーションが溜まりまくりだぜ)
「ちっと揶揄ってやるか?」
レキはそう言って椅子から立ち上がると、そのまま上を見上げる。
――レキの視線の先には外からは見えないように『魔力』で施された『結界』が張られている特別室があった。
レキの目が金色に変わり、じっと特別室を凝らしてみると中に居るソフィの姿が見えた。
…………
特別室に居るシチョウやその隣に護衛としていたアイゲンは、レキの視線には気づかない。
――だが、ソフィはレキの視線に気づきそちらを見た。
互いに数秒間は視線を交換し合っていたが、次の瞬間――。
――特別室に張られていた『結界』が音を立てて消滅した。
そして今度はパキンという小さい音がなったかと思うと、更に小さい音が次々伝播していき、それは部屋中に響き渡った後に特別室の窓は全て割れてしまった。
『レルバノン』は『ソフィ』に近づき『アイゲン』もまた『シチョウ』を守るように前に出る。
ソフィの視線の先に居たレキは、ソフィを見て軽く手を上げて笑みを浮かべた。そしてもう用は済んだとばかりに、踵を返してゆっくりと歩いていくのだった。
「い、一体何が……!?」
シチョウが慌てた様子で割れた窓を見つめながら口を開く。
「案ずるな。どうやらもう大丈夫のようだ」
(クックック……! 我に挨拶のつもりかレキよ……!)
ソフィの言葉にその場にいた誰もがソフィを見るが、当の本人は嬉しそうな笑みを浮かべていた。
嬉しそうに笑うソフィを見て、再びその場に居る者達は互いの顔を見合わせるのだった。
……
……
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