最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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闘技場編

508.出会ってしまった二人

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 出ていた露店で『リーシャ』に贈り物をした後、ソフィ達は闘技場がある場所へ到着するのだった。すでに『闘技場』の修復作業は完全に終わったようで、後はシチョウが再開を認めればいつでも開かれるような状況であった。

「しかし本当に素晴らしいな。これが『国王』と『民』が互いに同じ方向を向いておる結果か」

 ソフィがそう呟いたのを聞いて、ディアトロスは成程となかりに頷いた。

(そう言う事か、確かに我らの世界では、難しいじゃわい)

『智謀』ディアトロスは一を聞いて十を知るような人物である。

 自分の主の先程の呟きを聞いて、その主がどういう事を考えているかを察するのだった。やがてソフィは闘技場を後にしようと背を向けた。

 ――その時だった。

「おい、そこの坊主。止まりやがれ」

 ソフィはその声に足を止めて声の方を振り返った。

「?」

「坊主。何やら熱心に『闘技場』を見ていたが、お前も出場するつもりなのか?」

 金髪の男がディアトロスやリーシャを無視して、明確にソフィだけを見つめながら口を開く。怪しい奴だなとソフィは思ったが、あえて素直に答える事にする。

「いや、我は出ぬよ。知り合いが出場するのでな、いつ頃開かれるかと様子を見ていたのだ」

 配下とは言わずに知り合いという言葉を使いながら、怪しい男にそう返答すると、その言葉に納得したとばかりに頷く、金色の髪がボサボサの男だった。

「次の大会ではとある人間が勝ち上がり、闘技場を仕切ってやがる龍族を打ち倒す事になる。とやらは、残念ながら無様に負けるだろうな」

 髪がボサボサなのを除けば顔立ちの整っている男は、似合わぬ下卑た笑いをソフィ達に見せながらそう告げた。

「ほう? 龍族はこの世界を支配していたと聞いたが、そんな龍族を相手に人間が勝つとお主は言うのか?」

 ソフィは男に素性を知られぬよう、深くローブを被りながら演技をするように弁を返す。

「そりゃ勝てるんじゃないか? 『

 キーリがもしここに居れば、大憤慨をしている事だろうなとソフィは、男を見ながらそう思うのだった。

「闘技場に出ているランクボスの龍族は始祖龍らしいが、それでも勝てるとお主は言うのか?」

 ソフィが少し踏み込んで事細やかに話すと、金髪の男はソフィを見て再び嗤う。

「やけに詳しいじゃねぇか。どうやら

 金髪の男はそう言うと、ゆっくりとソフィに近づいてきた。

「どれ、少し試してやろう」

 ソフィの近くまで来た後金髪の男は、鮮やかなエメラルドブルーの目を『金色』に変えた。

 その瞬間――。

 キィイインという音が辺りに響き渡ったかと思うと、ソフィを対象に男の『金色の目ゴールド・アイ』は発動された。

 しかし『金色の目ゴールド・アイ』の効力がソフィに向かう直前、左右から男と同じ魔瞳『金色の目ゴールド・アイ』が同時に発動されて、男の『金色の目ゴールド・アイ』は相殺されるのだった。

「アンタ、いい加減にしなよ? 誰に向かって舐めた真似してるか、分かってんのぉ?」

「調子に乗るのはその辺にしておくがよいぞ? 若造」

 金髪の男の『金色の目ゴールド・アイ』を相殺したのは、ソフィではなく喧嘩を売ってきた男に対して苛立ちを見せる『リーシャ』と『ディアトロス』であった。

 男はあっさりと目論みを妨害された事で、少し驚いた表情を浮かべていたが、やがてまた笑い始めた。

「そうか。やはりお前達がアイツの言っていた奴らか。これで確信できた」

 金髪の男はそう言うと、もう用は済んだとばかりに背を向け始めた。

「ちょっとアンタ。この方に手を出そうとしておいて、このまま無事に逃げられると思ってんのぉ?」

 リーシャは『』で両手に短剣を具現化を行うと、クルクルと器用に手の中で回し始める。金髪の男は足を止めてリーシャの方を振り向くと、邪悪な笑みをみせた。

 次の瞬間、金髪の男の周りを『』のオーラが同時に出現して、即座に交ざり合っていく。

「何?」

 ソフィが反応するが膨れ上がった男の戦力値に、闘争本能が呼び起こされたリーシャは、咄嗟に身体を突き動かされてしまう。

「うわあああ!」

 リーシャの身体も『金色』が纏われたかと思うと、一瞬で金髪の男へ向かっていく。

 金髪の男は『』で具現化した刀に金色を纏わせながら真っすぐに向かってきた、リーシャの短剣を受け止めると、両手を突き出して弾き返す。

「クカカカッ! まぁそう焦るなよ。今はまだその時じゃねぇよ」

 金髪の男はそうリーシャに告げながら、視線をディアトロスに向け始める。

『ディアトロス』はリーシャが金髪の男に向かった瞬間に、直ぐに『極大魔法』を放つ為の『発動羅列』を刻み始めていた。そして既にいつでも準備させている『魔力』を使えば発動できる状態であったその『魔法』ではなく『魔力』を留める『スタック』に対して、彼の『魔力』が向けられた。

「むっ!?」

(魔法を発動させる準備が整った魔法陣を無視して、ワシの『スタック』を直接狙うとは!)

 ディアトロスは暴発を防ぐ為に、使おうとしていた魔法を慌ててキャンセルする。

 もしあと少し魔法をキャンセルするのが遅ければ、ここら一帯は吹き飛び『闘技場』の開催は更に遅れる事となっただろう。

「もうよい。主の名は何という?」

 再び飛び掛かろうとしていたリーシャを止めたソフィは、金髪の男に名を尋ねる。

「俺の名は『レキ・ヴェイルゴーザ』だ。覚えておけ」

 レキと名乗った金髪の男は、そのまま音も無く消えていった。

「『レキ』……か」

 ソフィは先程まで立っていた『レキ』の場所を見つめながらそう呟くのだった。

 ……
 ……
 ……
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