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闘技場編
505.シスの決意と、エルシスの決意
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ソフィに挨拶を終えたラルフに、リーシャが近寄ってきていた。どうやらリーシャはラルフを気に入ったのだろう。ひたすらに気を引こうと、熱心に話しかけていた。
そんな様子を見ていたソフィだったが、この場に現れた一体の魔族に視線を移した。その現れた魔族とは、ユファの元に向かう『シス』であった。
「ヴェル。待たせたわね……」
自分の中に居るもう一つの存在に気づいて恐怖を抱えていたシスは、ユファにソフィと一度会う事を勧められていた。話の内容は深くは聞いてはいないが、どうやら会う事でアドバイスをもらえると、聞かされていたのだった。
「シス。よく来てくれたね」
そう言ってユファはシスを迎える。
この場に姿を見せたシスは、普段の堂々とした女王の姿ではなく、顔には悲壮感を漂わせてどこか頼りなかった。ユファはそんなシスの背中を優しく押してソフィの元へと彼女を届けた。
「ソフィ様。宜しくお願いします」
「うむ。何があろうと我がついておる、安心するがよいぞ」
ソフィの声とその言葉は、聞いていたシス達に安心感を与えるのだった。
「では頼むぞ。サイヨウ」
「委細承知した」
ソフィがサイヨウという名を呼んだ瞬間。山伏が突如現れてソフィに言葉を返すのだった。シャンシャンと錫杖を鳴らしながら、金剛杖をシスに向ける。
ぎょっとした表情をしてシスは身構えながら、ちらりとソフィを一瞥したが、ソフィが頷くとシスは決意を込めた表情をしながら身体の力を抜くのだった。
「今からお主に宿る者を表に出させるが、お主自身にもそれを認識出来る上に記憶にも残るだろう。少しでも不快感を感じたならば、小生がいつでも元に戻す事が出来る。安心なされよ」
山伏のサイヨウの言葉にコクリと頷くシスと、それを確認したサイヨウが右手でシスの顔の前で『九字五印』と呼ばれる印を結び、手で太刀をきりながら言葉を呟きそして祈祷を始めるのだった。
次の瞬間にシスは、生気が抜けた表情を浮かべて虚ろになる。サイヨウは次に『五印』を結ぶと手をシスの前で広げ始めた。淡い光がゆっくりゆっくりとボヤけるように具現化されていき、その光はやがて虚ろな表情のシスを包む。そこからサイヨウは、更に錫杖を鳴らして魔力を注ぎ込んでいく。
「むっ……?」
ディアトロスはそのサイヨウの魔力に何かを感じ取ったようで、微かに声を漏らした。
「お主も気付いたか、ディアトロス」
そんなディアトロスの様子を見て、ソフィは声を掛けるのだった。
「ああ。これは奴らの神聖魔法に似た嫌な魔力じゃな」
主幹部分は神聖魔法と同じ『聖』の属性であり、サイヨウの術もまた、それに準じるのだろう。似た魔力をミラから感じた事のある『ソフィ』と『ディアトロス』は、サイヨウの『聖』の属性に反応したようだった。
「術は上手く作用した。お主の中に宿る魂は一時的にお主の身体を媒体として、その姿を表に出す事に成った」
シャンシャンと錫杖を鳴らしながら、サイヨウは金剛杖を振る。すると虚ろな目をしていたシスの両の目に青い光が宿る。
『エルシス』は、目の前に居るサイヨウを見た後に辺りをゆっくりと見回す。そしてある魔族に目が留まると、そのシスの目から涙が溢れ始めるのだった。
「ソフィ……。すまない。本当にすまなかった!」
やがて溢れた涙はぽたりぽたりと地面を濡らし始めた。
「お主は……。エルシス、なのか?」
ソフィの問いかけにコクリと頷き、泣きながらも笑みを浮かべる『エルシス』だった。
数千年前『アレルバレル』の世界で激闘を繰り広げた者同士にして、生涯の親友となった二人が、こうして『リラリオ』の世界で再会するのだった。
「よくぞ再び我の前に姿を見せてくれた。エルシスよ。友よ! 我は嬉しいぞ!」
そう言ってソフィは手をシスの頬にあてると、エルシスはその手を両手掴んで何度も頷く。
ユファがディアトロスの方へ視線を向けると、直ぐに察したディアトロスが頷き、この場に二人を残すようにリーシャ達を連れて離れて行った。
そんな様子を見ていたソフィだったが、この場に現れた一体の魔族に視線を移した。その現れた魔族とは、ユファの元に向かう『シス』であった。
「ヴェル。待たせたわね……」
自分の中に居るもう一つの存在に気づいて恐怖を抱えていたシスは、ユファにソフィと一度会う事を勧められていた。話の内容は深くは聞いてはいないが、どうやら会う事でアドバイスをもらえると、聞かされていたのだった。
「シス。よく来てくれたね」
そう言ってユファはシスを迎える。
この場に姿を見せたシスは、普段の堂々とした女王の姿ではなく、顔には悲壮感を漂わせてどこか頼りなかった。ユファはそんなシスの背中を優しく押してソフィの元へと彼女を届けた。
「ソフィ様。宜しくお願いします」
「うむ。何があろうと我がついておる、安心するがよいぞ」
ソフィの声とその言葉は、聞いていたシス達に安心感を与えるのだった。
「では頼むぞ。サイヨウ」
「委細承知した」
ソフィがサイヨウという名を呼んだ瞬間。山伏が突如現れてソフィに言葉を返すのだった。シャンシャンと錫杖を鳴らしながら、金剛杖をシスに向ける。
ぎょっとした表情をしてシスは身構えながら、ちらりとソフィを一瞥したが、ソフィが頷くとシスは決意を込めた表情をしながら身体の力を抜くのだった。
「今からお主に宿る者を表に出させるが、お主自身にもそれを認識出来る上に記憶にも残るだろう。少しでも不快感を感じたならば、小生がいつでも元に戻す事が出来る。安心なされよ」
山伏のサイヨウの言葉にコクリと頷くシスと、それを確認したサイヨウが右手でシスの顔の前で『九字五印』と呼ばれる印を結び、手で太刀をきりながら言葉を呟きそして祈祷を始めるのだった。
次の瞬間にシスは、生気が抜けた表情を浮かべて虚ろになる。サイヨウは次に『五印』を結ぶと手をシスの前で広げ始めた。淡い光がゆっくりゆっくりとボヤけるように具現化されていき、その光はやがて虚ろな表情のシスを包む。そこからサイヨウは、更に錫杖を鳴らして魔力を注ぎ込んでいく。
「むっ……?」
ディアトロスはそのサイヨウの魔力に何かを感じ取ったようで、微かに声を漏らした。
「お主も気付いたか、ディアトロス」
そんなディアトロスの様子を見て、ソフィは声を掛けるのだった。
「ああ。これは奴らの神聖魔法に似た嫌な魔力じゃな」
主幹部分は神聖魔法と同じ『聖』の属性であり、サイヨウの術もまた、それに準じるのだろう。似た魔力をミラから感じた事のある『ソフィ』と『ディアトロス』は、サイヨウの『聖』の属性に反応したようだった。
「術は上手く作用した。お主の中に宿る魂は一時的にお主の身体を媒体として、その姿を表に出す事に成った」
シャンシャンと錫杖を鳴らしながら、サイヨウは金剛杖を振る。すると虚ろな目をしていたシスの両の目に青い光が宿る。
『エルシス』は、目の前に居るサイヨウを見た後に辺りをゆっくりと見回す。そしてある魔族に目が留まると、そのシスの目から涙が溢れ始めるのだった。
「ソフィ……。すまない。本当にすまなかった!」
やがて溢れた涙はぽたりぽたりと地面を濡らし始めた。
「お主は……。エルシス、なのか?」
ソフィの問いかけにコクリと頷き、泣きながらも笑みを浮かべる『エルシス』だった。
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「よくぞ再び我の前に姿を見せてくれた。エルシスよ。友よ! 我は嬉しいぞ!」
そう言ってソフィは手をシスの頬にあてると、エルシスはその手を両手掴んで何度も頷く。
ユファがディアトロスの方へ視線を向けると、直ぐに察したディアトロスが頷き、この場に二人を残すようにリーシャ達を連れて離れて行った。
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