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プロポーズ編
489.束の間の平穏
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サイヨウとの『札』を使っての話し合いを終えた翌日。ソフィはユファと再び会うと、サイヨウの事を伝えた上で日程に空きが出来る日を聞くのだった。
…………
ソフィの『ラルグ』魔国の方は『レルバノン』や『エルザ』といった優秀な者達が『ラルグ』魔国を支えてくれている為、国の政にはあまりソフィは口出しをしてはいない。
ほとんど任せきりになっている現状を申し訳無いとは思っているソフィだったが、レルバノン曰く『こういうのは適材適所というモノがあります』との事。慣れた者が作業の進捗を測るべきだと言ってソフィを気遣ってくれていた。
それに『ラルグ』魔国に居る者達で、ソフィに仕事をしていないと苦言を呈する者は居ない。むしろこれまでこの国だけではなく『ヴェルマー』大陸の数多の国々の危機を救ってきたソフィは、何かあったときにそこに居てくれるだけで、皆不安になることなく王を信頼して普段通りに振る舞う事が出来ると、ソフィが王である事を喜んでいるくらいなのであった。
ソフィにとっては自国を守る事は当たり前だと思っているために、有難い事だと思いつつも今日も何か出来る事はないかと、城の中をウロウロと見回るのだった。
「む、あれはレアとリーシャ達か」
現在『アレルバレル』の世界からこっちへ移動してきた九大魔王達は、ソフィが治めるこの世界の『ラルグ』魔国の地理を覚えたり、城に務める者達に挨拶をして回ったりしているようだった。
先に来ていたブラストの方は、すでにラルグ魔国の者であれば誰でも知っており、顔は怖いがソフィを支える頼れる偉い人。という認識で城の者達や民達に親しまれていた。
そして新しく配下になった事を民達に知らせたばかりのレアだが、彼女がこの世界で一番初めに、魔族達の王となった事を知る者は思った以上に少なかった。
大きな戦争をこの大陸で起こしたことで、紹介した当時は恐れられていたが、龍族の王であるキーリが皆の前でレアと言い争いをしたり、よく遊んでいる姿を見せた事で、少しずつレアもこの国で受け入れられていった。
そして最近ではレアはよくお菓子をメイド達に渡されては可愛がられている。庭でレアとリーシャはメイドにもらった果実を手に、仲良く二人で食べているようだった。
「ふむ。リーシャとレアが旧知の仲だったというのは驚いたものだが、余程あの二人は仲がいいのだな」
ソフィは城の上層階の窓から二人の様子を見ていたが、楽しげに何やら談笑しているリーシャとレアを見てソフィは笑顔で頷く。
本当にこの世界は平和であり、違う世界の者同士でさえあれ程仲良くしている。ソフィは本当に嬉しそうに彼女たちを見ていたが、やがて廊下の反対側から歩いてくる者達の存在に気づきレア達から視線を移すのだった。
こちらに気づいた『レヴトン』が、横に居る『ディアトロス』と『イリーガル』に何かを話した後に慌ててこちらへ向かってくる。
元々レヴトンは『トールス』という国のNo.5の座に居る者であったが、No.2の『レルバノン・フィクス』や、No.3の『エルザ・ビデス』が『レイズ』魔国のギルドで連日働いている為に、ラルグ魔国の宰相の仕事を彼が受け持つことになっているのだった。
魔族としては『最上位魔族』としての力しかない『レヴトン』は戦闘では前線に出る事はないが、内政に関していえばソフィにとっては『レヴトン』の存在は、すでになくてはならない貴重な配下といえた。
「ソフィ様! こちらにいらしていたのですね」
「うむ。ディアトロス達に城の案内をしていたのか?」
ソフィの言葉に頷きを返すレヴトンだったが、その顔には少し疲れが表れていた。ディアトロスはソフィの視線一つで主が何を考えているかをすぐに理解して口を開いた。
「その通りじゃ。レヴトン殿にはこちらの世界の事を質問させてもらいながら、この城の案内をしてもらっていたのじゃ。レヴトン殿感謝するぞい」
「レヴトン殿! 大変助かりました。忙しいところに案内させて申し訳ない」
ディアトロスとイリーガルに礼を言われて、慌ててレヴトンは首を振る。
「い、いえいえとんでもない! ソフィ様の元の世界の重鎮の方々をご案内出来て、とても光栄な事でした! また何かあればすぐに仰ってくださいね!」
レヴトンはそう言うと頭を下げて、自室へと戻っていった。
「クックック、一体あやつから何を聞いていたのだ?」
ソフィが笑いながらそう言うと、ディアトロスは庭に居るリーシャ達を見ながら口を開く。
「お前がこの世界でなしてきた事を少しばかりな。やはりというか、お主は変わってはおらぬようじゃな」
これは藪蛇だったかとソフィもまた、ディアトロスから視線を外して庭を見る。
「我は我のやりたい事を好きにやっているだけに過ぎぬ。それになディアトロスよ。この世界はようやく平和を取り戻しつつあるのだ。後はこの世界の安寧の型作りをしておかねばならぬ」
ソフィは目を細めながら、遠くを見据える。
「お主『アレルバレル』の世界へ戻るつもりか?」
ディアトロスの言葉にすぐには返事をせず、目下で笑い合うリーシャとレアを見ながら、やがてぽつりと口にする。
「まだやり残したことがあるが、いずれは戻るつもりだ。我はまだ国の統治に対して答えを見つけ出してはおらぬがな。アレルバレルの世界もいずれは、この世界のように人々達が笑い合える平和な世界にしてみたいと思うておるよ」
勇者マリスが大賢者ミラ達に唆されていた事を知ってはいるが、あの場面でマリスが言った言葉は、今もまだソフィの脳裏を過るのだった。
「そうか……」
ディアトロスとイリーガルは常にお主と共に在るという決意を胸に、主君であるソフィと、同じ視線の先を見据えるのだった。
……
……
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ソフィの『ラルグ』魔国の方は『レルバノン』や『エルザ』といった優秀な者達が『ラルグ』魔国を支えてくれている為、国の政にはあまりソフィは口出しをしてはいない。
ほとんど任せきりになっている現状を申し訳無いとは思っているソフィだったが、レルバノン曰く『こういうのは適材適所というモノがあります』との事。慣れた者が作業の進捗を測るべきだと言ってソフィを気遣ってくれていた。
それに『ラルグ』魔国に居る者達で、ソフィに仕事をしていないと苦言を呈する者は居ない。むしろこれまでこの国だけではなく『ヴェルマー』大陸の数多の国々の危機を救ってきたソフィは、何かあったときにそこに居てくれるだけで、皆不安になることなく王を信頼して普段通りに振る舞う事が出来ると、ソフィが王である事を喜んでいるくらいなのであった。
ソフィにとっては自国を守る事は当たり前だと思っているために、有難い事だと思いつつも今日も何か出来る事はないかと、城の中をウロウロと見回るのだった。
「む、あれはレアとリーシャ達か」
現在『アレルバレル』の世界からこっちへ移動してきた九大魔王達は、ソフィが治めるこの世界の『ラルグ』魔国の地理を覚えたり、城に務める者達に挨拶をして回ったりしているようだった。
先に来ていたブラストの方は、すでにラルグ魔国の者であれば誰でも知っており、顔は怖いがソフィを支える頼れる偉い人。という認識で城の者達や民達に親しまれていた。
そして新しく配下になった事を民達に知らせたばかりのレアだが、彼女がこの世界で一番初めに、魔族達の王となった事を知る者は思った以上に少なかった。
大きな戦争をこの大陸で起こしたことで、紹介した当時は恐れられていたが、龍族の王であるキーリが皆の前でレアと言い争いをしたり、よく遊んでいる姿を見せた事で、少しずつレアもこの国で受け入れられていった。
そして最近ではレアはよくお菓子をメイド達に渡されては可愛がられている。庭でレアとリーシャはメイドにもらった果実を手に、仲良く二人で食べているようだった。
「ふむ。リーシャとレアが旧知の仲だったというのは驚いたものだが、余程あの二人は仲がいいのだな」
ソフィは城の上層階の窓から二人の様子を見ていたが、楽しげに何やら談笑しているリーシャとレアを見てソフィは笑顔で頷く。
本当にこの世界は平和であり、違う世界の者同士でさえあれ程仲良くしている。ソフィは本当に嬉しそうに彼女たちを見ていたが、やがて廊下の反対側から歩いてくる者達の存在に気づきレア達から視線を移すのだった。
こちらに気づいた『レヴトン』が、横に居る『ディアトロス』と『イリーガル』に何かを話した後に慌ててこちらへ向かってくる。
元々レヴトンは『トールス』という国のNo.5の座に居る者であったが、No.2の『レルバノン・フィクス』や、No.3の『エルザ・ビデス』が『レイズ』魔国のギルドで連日働いている為に、ラルグ魔国の宰相の仕事を彼が受け持つことになっているのだった。
魔族としては『最上位魔族』としての力しかない『レヴトン』は戦闘では前線に出る事はないが、内政に関していえばソフィにとっては『レヴトン』の存在は、すでになくてはならない貴重な配下といえた。
「ソフィ様! こちらにいらしていたのですね」
「うむ。ディアトロス達に城の案内をしていたのか?」
ソフィの言葉に頷きを返すレヴトンだったが、その顔には少し疲れが表れていた。ディアトロスはソフィの視線一つで主が何を考えているかをすぐに理解して口を開いた。
「その通りじゃ。レヴトン殿にはこちらの世界の事を質問させてもらいながら、この城の案内をしてもらっていたのじゃ。レヴトン殿感謝するぞい」
「レヴトン殿! 大変助かりました。忙しいところに案内させて申し訳ない」
ディアトロスとイリーガルに礼を言われて、慌ててレヴトンは首を振る。
「い、いえいえとんでもない! ソフィ様の元の世界の重鎮の方々をご案内出来て、とても光栄な事でした! また何かあればすぐに仰ってくださいね!」
レヴトンはそう言うと頭を下げて、自室へと戻っていった。
「クックック、一体あやつから何を聞いていたのだ?」
ソフィが笑いながらそう言うと、ディアトロスは庭に居るリーシャ達を見ながら口を開く。
「お前がこの世界でなしてきた事を少しばかりな。やはりというか、お主は変わってはおらぬようじゃな」
これは藪蛇だったかとソフィもまた、ディアトロスから視線を外して庭を見る。
「我は我のやりたい事を好きにやっているだけに過ぎぬ。それになディアトロスよ。この世界はようやく平和を取り戻しつつあるのだ。後はこの世界の安寧の型作りをしておかねばならぬ」
ソフィは目を細めながら、遠くを見据える。
「お主『アレルバレル』の世界へ戻るつもりか?」
ディアトロスの言葉にすぐには返事をせず、目下で笑い合うリーシャとレアを見ながら、やがてぽつりと口にする。
「まだやり残したことがあるが、いずれは戻るつもりだ。我はまだ国の統治に対して答えを見つけ出してはおらぬがな。アレルバレルの世界もいずれは、この世界のように人々達が笑い合える平和な世界にしてみたいと思うておるよ」
勇者マリスが大賢者ミラ達に唆されていた事を知ってはいるが、あの場面でマリスが言った言葉は、今もまだソフィの脳裏を過るのだった。
「そうか……」
ディアトロスとイリーガルは常にお主と共に在るという決意を胸に、主君であるソフィと、同じ視線の先を見据えるのだった。
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