最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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伝説の大賢者編

475.死闘、再び

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 シスとミラの両者が『神聖魔法』で生み出した『聖者の軍勢』同士で戦わせていた頃、ディアトロス達もまた戦闘態勢に入っていた。

 既にディアトロスは自身の魔力を回復させるために、前線には出ずに一歩下がった位置から『イリーガル』と『リーシャ』に指示を出して彼らの戦っている相手の様子を見ている。

 ディアトロスの視線の先は『ルビリス』や『ハワード』であった。もう一体の『リベイル』は先程『ミラ』のサポートに入ろうと、何やら『スタック』の準備をしていたようだが、その瞬間にシスによって無効化させられたようで、もう戦闘の出来る様子ではなさそうであった。

 今こちらに向かって殺気を放っているのは『ハワード』という男だけのようである。

 ディアトロスは静かにハワードという魔族の分析を始める。どうやらリーシャによって、先程切り刻まれて敗れた『セルバス』という魔族と似たタイプの戦闘スタイルのようだ。

『魔』で戦うというよりかは、自身の体体や武器を強化して攻めてくるタイプだろうと『オーラ』の『コントロール』の仕方である程度の予想がつく。

 物理タイプであるならば、こちらの『イリーガル』や『リーシャ』とは相性がいいといえるため、十分に相手と渡り合える事だろう。

 問題はそちらよりディアトロスに近いといえる戦略性タイプの『ルビリス』だろう。流石は『組織の司令官』という立ち場にいるだけあって戦闘だけではなく、物事をきっちりと理解して、こちらの攻撃されて嫌がる箇所を模索しているようにも見える。

 ハワードが動いた時にサポートに回るのかどうかで、こちらも動き方を柔軟に変えて行かないといけないだろう。 奴ら組織の連中は個々で各々のプライドを持ち合わせてはいるのだろうが、その自尊心よりも優先するのが『ミラ』なのだという事は、ディアトロスにも分かっていた。

 こちらに攻撃を仕掛けてくると見せかけて、下に居る精霊女王ミューテリアやレアとか言った魔族の隙を狙い人質にすることもあり得る。

 こちらから取る選択肢はあまり多くはなかった。相手がどう出るかによって、全ては左右されると言っていいだろう。

 下手に行動を決めるとその逆を狙われて予期せぬ失敗を招きかねない。ディアトロスはそこまでを考えながら、じっくりと戦形を組み立てていくのだった。

「さて、司令官殿? 俺もそろそろ動こうと思うのだが」

 頭を抱えて未だにフラフラしながら立っているリベイルを尻目にハワードは、その隣に居るルビリスに話し掛ける。

「確かにあの魔族をミラ様が止めておられる間に動く方が良さそうですね。ハワードさんの好きに動いてもらって構いませんよ。宜しければ私がサポートさせていただきますが?」

「そうだな。俺もそろそろ『処刑』の奴と決着をつけようと思っていたところだ。司令官殿は横に居るあのガキの相手を頼めるか?」

「承りましたよハワード。では『神速』の相手はこの私が務めさせて頂きましょう」

 ハワードと同じようにルビリスは『金色のオーラ』を纏い始める。

 …………

「ディアトロス殿。どうやら奴は俺を指名しているようだが、アイツをもらっていいか?」

 上空に居るイリーガル達の視線の先。同じ目線の高さからハワードはイリーガルを見ていた。

「うむ。ワシもアイツの相手をお主に頼もうと思っていたところじゃ。イリーガルよ、奴にソフィの『九大魔王』の恐ろしさを教えてやるがよい」

「承知した!」

 その言葉を最後にイリーガルは、大刀を両手でしっかりと握り『オーラ』を込め始めた。

 『処刑』の異名を持つ大男。古参の九大魔王『イリーガル』は、ハワードの相手をするべく戦闘態勢に入るのだった。

「それではイリーガル様。あたしも加勢します!」

「いや、お前にはお前の相手が居るようだぞ?」

 イリーガルは加勢をすると申し出たリーシャに、ハワードの隣で腕を組んでリーシャを見て嗤っているルビリスの存在を告げる。

「あらら、仕方ありませんねぇ! じゃあ先にあのを片付けますかっ!」

 リーシャは両手に持つ短剣を器用に手の中でくるくると回した後、前傾姿勢をとり始めながら、ゆっくりと『金色のオーラ』を纏い始めた。

 ――こうして小休止を挟んだ後に、再び組織達との戦いが始まるのであった。
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