最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
468 / 1,985
残された九大魔王編

457.精霊の大陸へ

しおりを挟む
 リーシャは組織の者達を倒した後に部屋に二人を連れて戻った。そして直ぐに次に取るべき行動をとり始める。

「ここも奴らに見つかったから場所を移動しないと行けないんだ。私の信頼する仲間達の所へ案内するからさ、そちらへ移動しようか」

 自分一人であったならば『組織』の奴らをばらけさせるために、囮行動をとるのも悪くはないと思っていたが、今のレア達を連れて各地を潜伏する事は、非常に危険性が高いとリーシャは判断したのであった。

 一度はディアトロス達と合流して今後について相談した方がいいだろう。そう考えたリーシャだったのだが、そこでレアが口を開いた。

「リーシャ。その前にいいかしら? 私達がここに来たのには理由があってねぇ?」

 実際は組織の者達に拉致をされたレアだったが、現在の事情を語った方がいいと判断して『ソフィ』の仲間であり『ブラスト』と同格と呼ばれていた者達の事をレアは救出したいと語り出す。

 そしてその話を聞いたリーシャは最初こそ驚いていたが、唐突に笑い始めるのだった。リーシャは何を笑っているのかとレアは、きょとんとした表情を浮かべていたが、そこでリーシャは口を開いた。

「それなら安心していいよ? レア達が言っている奴と私が案内しようとした方は『』だからさ」

 ……
 ……
 ……

 リーシャ達は襲撃があった後に仲間の元へと避難をする為に移動を開始した。どうやらあの場所にあのまま居続けていると、先程と同等くらいの組織の者達が次々と送り込まれてくるらしい。その言葉を聴いたレアは、改めて組織の者達のヤバさを再確認するのだった。

 三千年前の時でさえソフィの持つ『魔王軍』と『組織』の戦争は、レアが手出しが出来ない程だったが、更にこうして『代替身体だいたいしんたい』となった今では、レアは自衛をすることすら不可能だと感じられた。

 先程リーシャがあっさりと片付けた組織の奴らでさえ、もしレア達だけであったならばどうすることも出来ずに倒されていたかもしれないのだ。

 そう考えてレアは移動をする間中、自分の力の無さに悔しい思いを募らせるのだった。そしてそのレアの背後でシスもまた悩みを抱えていた。

(最近わたしの意識が飛ぶことが増えた。自分が自分でなくなるのを肌で感じる。ユファに会いたい)

 どうやらリラリオの世界とは違い、この世界の魔族の強さを知るたびに、シスの中に眠る大魔王のが顔を見せようとしているようだった。

 シスはいつか自分が自分の中のに呑み込まれてしまうのではないかと、恐怖を感じ始めていた。

「さあ着いた! ここが『精霊』達が現在住む大陸よぉ」

 リーシャの言葉にレア達は顔を上げると、リーシャの見据える視線の先に大きな陸が見えた。しかしその大陸全土を包み込んでいる、何やら禍々しい『魔力』をレアは察知するのだった。

「結界? それも恐ろしく研ぎ澄まされた魔力」

『レア』はこれ程の結界を見たことがなかった。

 普段『ユファ』が使っている結界や、あのソフィの屋敷にやってきた『ブラスト』という、大魔王が屋敷で見せた『結界』でさえ、ここまでの練度のモノではなかった。

「二人共離れていてね? 今から私が来た事を『』様に伝えるために魔力を放つから」

 そう言うと『リーシャ』は『レア』と『シス』を後ろに下がらせた。そして安全だと確認した後に『リーシャ』は瞑想を始める。

 レアとシスはぞわぞわした感覚を肌で感じ始める。リーシャの目が金色に変わり、自身の身体の周囲を『金色のオーラ』が纏われ始める。そして『リーシャ』は、その状態でゆっくりと手を前に出す。

 レアの目に映っていた『禍々しい結界』に、リーシャの手が触れた瞬間――。

 結界は左右に分断されていき、一筋の光が一直線に伸びて行くのを見た。

「これでよし! もう入っても大丈夫よぉ!」

 リーシャの目が普通の色に戻ると同時、彼女は後ろを振り返ってレア達に安全を伝える。レアとシスは互いに顔を見合わせた後、リーシャに頷きを返すのだった。

 そしてレア達一行は『アレルバレル』の『精霊』が住む大陸へと入っていくのだった。

 ……
 ……
 ……

 精霊女王『ミューテリア』は、この大陸に入ってくる大きな魔力を感知して顔を上げる。

「どうやら『リーシャ』がこの大陸に入ってきたようだの?」

「しかし一人ではないようです。感じた事のない『魔力』が二つ程ありますが、一体何者なのでしょうか?」

「……」

 ディアトロスは特に警戒をせず、無言でリーシャの来る方角を見据えるが、ミューテリアとイリーガルは少しだけ警戒をするように小さく魔力を開放し始めるのだった。

 そしてイリーガルの側近『バルク』が、配下達に力を開放するように指示する。

 やがて上空からリーシャが姿を見せて、笑顔でディアトロス達に向けて大きく両手を振っていた。

 それを見た『イリーガル』と精霊女王ミューテリアは出していた魔力を閉じて、ほっとした笑みを浮かべた。

「カッカッカ! 相変わらずあの子リーシャは愛嬌のある娘よな」

 ディアトロスはそう言うと、孫を可愛がるような表情になり、嬉しそうに静かにリーシャに手を振り返すのだった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。 元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。 登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。 追記 小説家になろう  ツギクル  でも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...