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残された九大魔王編

455.感動の再会

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 その頃『アレルバレル』の世界では、地面に倒れている『シス』と『レア』の元に影が迫ってきていた。

「なんだぁ、レアの魔力を感じたと思って慌てて来たのに別人かよぉ」

 意識を失っている黒髪の『代替身体だいたいしんたい』であるレアの顔をじっと見つめた後、近づいてきた影の正体である一人の魔族が、溜息を吐いてがっかりしたとばかりの表情を浮かべてそのまま去っていこうとするのだった。

 しかしそこで後ろ髪を引かれる思いがあったのか、舌打ちをしながら再び倒れている二人の元に戻ると傷だらけで死にかけている『レア』に回復魔法をかける。

「放っておいてもいいけどぉ、せっかくこのあたしが魔力を費やして助けてやったのに、直ぐ殺されでもしたらムカつくわねぇ? それに昔感じたレアの魔力に近いし、仕方なく貴方を助けてあげるわぁ、感謝しなさいよぉ? 『』」

 昔のレアと同じ髪型である『金髪』のショートヘアーに特徴的な口調で喋り、お気に入りの大事な『』をした女性は、レアとシスの服の襟首を掴み上げて『高等移動呪文アポイント』を唱え始めるのだった。

 ……
 ……
 ……

「ん……?」

 レアは夕飯のいい匂いに目を覚ます。

 身体を起こして隣を見ると『レア』と同じベッドの上でシスが寝かされていた。

「良かった。どうやら私達は助かったのねぇ?」

「馬鹿ねぇ、あたしが助けてやったんだよ。感謝しろよぉ?」

 部屋のドアが開けられて、いい匂いのする正体である『ベアの丸焼き』と『サラダ』をオボンに乗せてレアの昔の姿にソックリの女性が入ってきた。

 レアは入ってきた女性の姿を見て目を丸くした後、身体を震わせて驚いた。

「ん……? どうしたのぉ? 何かあたしの顔についてる?」

 オボンを机にいったんおいて自分の顔を触る、昔の『』。

「あ、貴方もしかして『リーシャ』!?」

「はぇっ?」

 いきなり自分の名前を言い当てられた『レア』にそっくりの女性は、黒髪のレアを訝しげにみながら『出会った事は無い筈だけど』と呟いた。

「私よぉ! レアよぉ、リーシャ! も、もしかして、覚えてないのかしらぁ?」

 懐かしいリーシャの顔を見て、泣き顔を浮かべながらレアは自らの名を告げる。

「え!? えぇっ! れ、レア!? う、嘘でしょ!? だ、だって全然昔と顔も違うし、髪の色も、似てるけど『魔力』の方も全然違うわよぉ!?」

 口では否定をするリーシャだったが、自分を見て泣いている少女を見てとても嘘をついているとは思えなかった。

「これは『代替身体だいたいしんたい』よ、リーシャぁ……!」

「!?」

 顔をクシャクシャにして泣くレアの姿に、リーシャはオロオロしていたが、その言葉を聴いてやがて感極まったのかリーシャも泣きながら、いつかのようにリーシャは、レアの元に向かっていき抱き着く。

「うわああん!! それを早く言ってよぉ!」

 キリッとした目に整った顔をした、大人の女性といった感じだったリーシャだが、目の前の少女がレアだと知った瞬間。数千年前にタイムスリップしたかの如く大声をあげて、レアに抱き着くリーシャだった。

(※第415話『最後の別れと涙』)。

 横でワンワン大声をあげる二人の声に、寝ていたシスも目を覚ます。

「え……?」

 ここはどこだろうと思うより先に、隣で抱き合いながら大声で泣いている二人を見て、ベッドの上でお尻を少しずつズラしながら、二人から距離をとるシスだった。

 ……
 ……
 ……

 ようやく落ち着いたのか、リーシャは少し恥ずかしそうにしながらも、改めてシスの顔を見ながら口を開いた。

「恥ずかしいところを見せちゃったわねぇ。久々にレアにあったもんだからさ」

 そう言ってレアの名を出すと、リーシャは嬉しそうにはにかんだ。

「その気持ちは私も分かりますよ。もう会えないかもって諦めた後に、再会できた喜びは……ね?」

 シスはヴェルともう一度会えたあの時の事を思い出して『リーシャ』に同調するのだった。

「そっか。あんたも私と同じ気持ちを抱いたことがあるんだねぇ?」

 リーシャはうんうんと頷きながらそう言った。そこへレアがずっと思っていた疑問を口にする。

「ところでリーシャ、エイネは何処いったの?」

「それは……」

 そこでレアと再会出来て嬉しそうな顔を浮かべていたリーシャだったが、陰りを帯びた表情に変わっていくのだった。

「エイネさんとビル爺は、あたしを庇ってレアみたいに『

 余程思い出したくのない過去だったのだろう。リーシャはその時の事を思い出し顔を険しくしていった。

「それってまさか、ソフィ様の『魔王軍』と戦っていた一味にってことぉ?」

 レアの言葉にリーシャはコクリと頷く。

「レア! あたしはアイツらを許せないわよぉ! 組織だかなんだか分からないけどぉ。ソフィ様を悪者に仕立て上げた挙句に、組織の奴らは『人間界』のってやつと手を組んで、この大陸に攻め込んできたんだよ!?」

「……」

 険しい表情を浮かべていたリーシャだったが、当時を思い出したのか目に涙を浮かべ始めた。

「あいつらはねぇ、どうやったか知らないけど。ソフィ様まで別の世界へ跳ばした後に、この『魔界全土』を我が物顔で支配し始めて、それで、それで……!」

 リーシャはそこで冷静さを取り戻すために、一呼吸置いた後再び口を開いた。

「でも一番許せないのは『バルド』だよ……!」

 そこでリーシャの恨みのこもった声が部屋に響いた。

「バルドって! た、確か貴方達の居た集落の長老だったかしら?」

「そう。レアが帰った後に『バルド』長老は行方をくらませていたんだけど、最近になって突然私達の集落に現れたんだよ! アイツら『組織』の連中と一緒にね!!」

「そ、そんな……! あれだけリーシャやエイネと親しげに集落で暮らしていた『バルド』が、組織の奴らと!? し、信じられないわぁ……!」

「本当の事だよ! それもバルドはね? 元々仲間だったエイネさん達を何とも思っていないみたいに攻撃しやがって、そこで『バルド』によって隙をつかれたエイネさんと、ビル爺を『』が、別世界に跳ばしやがったんだ!」

 リーシャは再び怒鳴りながら怒りを声に滲ませる。

「あたしはエイネさん達とは、別の奴らに襲われててねぇ? あたしの方に襲ってきた組織の連中を片付けた後、エイネさん達の元へ向かった時、バルドはエイネさん達を跳ばした後だったの!」

「リーシャ、そんな状態でよく無事に逃げられたわね」

 レアはそんなリーシャを宥めようと、少し違う角度から話を振る。

 ――しかし返ってきた言葉は予想外の言葉だった。


「逃げる? 馬鹿言わないでよレア! じゃない!」

「えっ?」

 驚くレアに気づいていないのか、続けてリーシャは言葉を続ける。

「集落に攻めてきた奴らをほとんど片付けて、残るは『になったんだけど、そのバルドは私に嫌味ったらしい笑みを浮かべながら!」

 どうやらバルドはエイネ達を別世界へ跳ばした後、戻ってきたリーシャとは戦わずに、自分の役目はそこまでと判断して、自らは組織の者達を盾にしてその場から離れたようだ。

 しかし『レア』は『リーシャ』の言葉に腑に落ちない部分があった。直接本気で戦った事は無いとはいえ、過去のアレルバレルで『レア』をあっさりと完封する程の強さを持ち、当時そのレアと互角の戦いを繰り広げた『エイネ』が、バルド長老の方が強いと言っていたのだ。

 そんなバルドがこの『リーシャ』を目の前にして戦闘を避けたらしい。それはつまりリーシャとは戦っても勝てないと、判断したと言う事だろうか? それに加えて先程リーシャは『バルド』なんかにと明確に口にした。

 五歳の頃のリーシャしか知らないレアには、とても信じられない言葉の数々だった。

 レアはリーシャにその事を聞こうと口を開きかけたが、そこでここに近づいてくる者達を感知し、レアはそちらの方を見る。

「どうやらまた馬鹿共が来たようだね」

 リーシャはため息を吐くと、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

「レアとそこのお姉さんはまだ本調子じゃなさそうだし。ここに居てねぇ? ちょっと行って、あたしが片付けてくるわぁ」

 そういってリーシャは部屋を出て行き、残された二人はどうするかと顔を見合わせるのだった。
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