最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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ルードリヒ国王の指名依頼編

439.金色の甲冑に身を包む騎士2

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 ラルフをソフィ達の元へと向かわせたレアは、ゆっくりと騎士の男を観察する。

(こいつの目的は多分『概念跳躍アルム・ノーティア』を使える者ってことよねぇ。そうでなければ私とユファだけを狙うなんて言わないでしょうし。でも私はもう他者を違うへ跳ばす『魔力』はないし、ユファは自分しか跳ばせない筈。それでも襲ってくる理由は何かしらぁ?)

 レアは金色の甲冑に身を包んだ騎士を眺めながら、狙いの可能性を見定めて行く。

「本来はヌーがしくじらなければ、私が来る必要はなかったのだがな。全く面倒を増やしてくれたよ」

 レアの相手をしながら溜息をついてそう告げる騎士の男。そしてヌーという名前を聞いたレアは、体中が沸騰する程怒りが湧いていく。

「お、お前……! フルーフ様をおかしくした奴の仲間かぁっ!!」

 先程までとは違い殺意がこもった目で睨んでくるレアに、騎士の男は甲冑の内側でくっくと笑う。

「何を言う。ヌーとは仲間でも何でもないぞ? あやつは自身が俺達を利用していると思い込んでいるようだが、実際のところは俺達にていよく使われているだけだからなぁ」

 どうやらレアが思ったより複雑な関係性のようだったが、そんな事はレアにはどうでもよかった。こいつらが仲間であろうが利用しあっているだけだろうが、フルーフという彼女の親を攫った相手と手を組んでいる以上は、レアにとっては憎むべき敵には変わりがないからである。

 そしてこの騎士のような恰好をした男が、憎むべき敵だと改めて認識した事で、ここでコイツをなんとか倒す事が出来れば、もしかすればフルーフ様を取り返せるかもしれないと、レアは一筋の光を見つけたような気がするのだった。

「私やユファを狙う目的は何?」

 この男が組織と手を組んでいるのか。この男自体が組織に入っているのかは知らないが、何かを知っている事は間違いない。レアはそう判断して、少しでもこいつから情報を聞き出そうと話しかける。

「時間稼ぎに付き合うつもりはないが、あえて言うとしたらお前達が『概念跳躍アルム・ノーティア』を使えるからだな」

 やはりそうかとレアは内心で頷く。

「へぇ? そんなに私たちを生かしておくのが怖かったのかしらぁ?」

 煽るようにそう言うと何かの琴線に触れたのか、男は饒舌に話し始める。

「お前たちだからという訳ではない。全ては、という化け物が居るせいだ! アイツが居る限り『アレルバレル』の時代は何時までも変わらぬ! を見るためには、あの化け物である『ソフィ』をこの世界から、出てこれなくするしかあるまい!」

 他の世界よりも力を持つ者が多い『アレルバレル』の世界だからこそ、他の世界の魔族達以上に、自身が世界を支配したいという願望を持っている。

 しかし他の世界では支配者となれる器を持つ魔族達が多く居て尚。数千年もの間『』という絶対的支配者がいるせいでその野望は叶えられなかった。

 平和を望むものも居れば、逆に戦争を望むものも多く居る。群雄割拠の時代を経験した者達であれば、今の中途半端な微温湯のアレルバレルに我慢ならないと、そう思う者達も居るのはおかしくはない。

 全ての生き物が、同じモノをと、感じる事は無いのだから、無理はなかった。どこかで妥協はしなければならないが、思い通りに出来る力を他者よりも持っている者は、その妥協を許せないと考える者もいる。

 ――この甲冑に身を包んだ騎士もまた、そんな妥協を許せない実力者の一人という訳であった。

「貴様には運がなかったと思ってここで死んでもらう『概念跳躍アルム・ノーティア』を使える物を生かしておく事で、あの化け物が『アレルバレル』の世界へ戻ってくるような可能性を残しておくことはできぬのでな」

 そう言うと甲冑に身を包んだ騎士は、今まで以上に力を示し始めた。

 じんわりと『青』と『紅』の『二色のオーラ』が、騎士の周りに具現化され始めて行く。

 ――それは『青』5.0 『紅』1.2からなる『二色の併用』であった。

「まっずいわよぉ! 今までの『』でも不利だったのに、完全にどうしようもなくなったわねぇ……!」

 レアは額に脂汗を浮かべながら目の前の騎士が、更に強くなるところをみせつけられるのであった。

 ……
 ……
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