431 / 1,915
幼き魔王の償い編
420.感謝の言葉
しおりを挟む
「ところでレルバノンさん? 私も冒険者になれるかしらぁ?」
お腹を擦りながらようやく『ユファ』に殴られた痛みが和らいできたところで、レアがレルバノンに尋ねるのだった。
「冒険者に? ええ、もちろん直ぐにでも書類等々はご用意させていただきますが、冒険者になって何かなさりたい事が?」
「私はソフィ様にこのヴェルマー大陸の発展に尽力するようにと命令されているのだけど、まずは自分が仕掛けた戦争によってこの町にも多大な迷惑をかけてしまったようだから、せめて建物の修繕くらいはさせて欲しいのよぉ」
先程ユファと話をしていた事をレアは再び口にする。
「成程。この町への復興支援及び、大陸の繁栄の為ですね。分かりました、すぐに冒険者への手続きを行わせていただきましょう」
「ええ、お願いねぇ」
「詳しい事は書類事項の記載の際にお話しさせていただきますが『トウジン』魔国には『闘技場』という施設がありましてね。冒険者ギルドに所属している冒険者のランクが一定以上あれば参加できますので、もしレアさんもご興味がございましたらですが、一度『闘技場』へのご参加もご検討下さい」
レルバノンの『闘技場』の説明に興味を惹かれたレアは、行ってみたいなと思うのだった。
しかしそこで横に居るユファが、レアの肩に手を置く。
「さて、闘技場はまた今度ね? 今から貴方はシスの元へ行くんだからね」
「わ、分かってるわよぉ、でも一度行ってみたいなぁ」
「はいはい。どうせ今は復興作業で開いていないからさ。また今度ね?」
ユファは余計な事を言うなとばかりにレルバノンを睨む。レルバノンはその視線に両手をあげて首を振った。
どうやらユファが闘技場のボスをやっている事をレアに知られたくはなかったのだろう。
闘技場には報酬があるために『レア』がそれに気が付けば、また何か悪巧みでも考えそうだと『ユファ』は考えたのだった。
「それじゃ私達は『レイズ城』の方へ行くわね? 忙しいところに悪かったわね」
「いえいえ。私達はもう『仲間』なのですから、いつでも気兼ねなくお越しください」
レルバノンがそう言うとユファは数秒ほどレルバノンの顔を見ていたが、やがて薄く笑って頷くのだった。
「ええそうね。また来るわね。ありがとう『レルバノン・フィクス』」
ユファがそう言うと『レルバノン』はニヒルな笑みをユファに向けた後に出口まで歩いていき、ドアの取っ手を持ちながら頭を下げるのだった。
「それではまたのお越しを。ユファ様、レア様」
どうやらそう挨拶する今は、ギルド長としてのレルバノンという事なのだろう。
二人はそれを理解した上で、何も言わずにギルドルームを出ていった。
誰も居なくなったギルドルームで、ぽつりとレルバノンは呟く。
「この世界の伝説の魔王が、生きる伝説であるソフィさんの配下ですか。また何か起こりそうな気がするのは、私だけでしょうか?」
レルバノンはその言葉を最後に、再びギルドの業務へと戻るのだった。
……
……
……
「さて、それじゃあレイズ城へ向かうわよ」
「セレスちゃんの娘のシス。だったわよね?」
「ええそうよ。そういえば貴方にとっては『シス』より『セレス』女王の方が親しかったのよね?」
「うん、そうね」
「?」
唐突にレアが落ち込むような素振りを見せたが、何も言わずレアを見つめるユファであった。
(セレスちゃんを頼むように告げたラクスちゃんはどうやらもう、この世界には居ないようねぇ)
魔人の寿命は人間とは比較にならない程長いために、当然この時代でもまだ生きていても可笑しくはない。しかし、その魔人ラクスの姿がないと言う事は、すでに寿命ではない他の理由で、この世界から去ってしまっていると言う事である。
レアは最後にラクスにキスをして、別れた時の言葉を思い出す。
――セレスちゃんをお願いね?
レアがラクスに言い残した言葉を『ラクス』はしっかりと守ってくれたのだろう。何が原因でラクスが居なくなってしまったかそこまでは分からないが、あの子は私と同じ目をして、そして健気で必ず約束を守ってくれるいい男だった。
この時代にセレスの子が生きていて、そしてユファがこの時代に訪れていた時には、セレスはしっかりとこの国の女王となって生きていたと言っていた。
――あの子は私の約束を果たしてくれたに違いないのだろう。
(※356話『魔王レアのファーストキス』)。
「レア、行きましょう?」
「うん……」
(ラクスちゃん……。ありがとねぇ?)
心の中でそう告げて、魔人ラクスに感謝をする魔王レアであった。
お腹を擦りながらようやく『ユファ』に殴られた痛みが和らいできたところで、レアがレルバノンに尋ねるのだった。
「冒険者に? ええ、もちろん直ぐにでも書類等々はご用意させていただきますが、冒険者になって何かなさりたい事が?」
「私はソフィ様にこのヴェルマー大陸の発展に尽力するようにと命令されているのだけど、まずは自分が仕掛けた戦争によってこの町にも多大な迷惑をかけてしまったようだから、せめて建物の修繕くらいはさせて欲しいのよぉ」
先程ユファと話をしていた事をレアは再び口にする。
「成程。この町への復興支援及び、大陸の繁栄の為ですね。分かりました、すぐに冒険者への手続きを行わせていただきましょう」
「ええ、お願いねぇ」
「詳しい事は書類事項の記載の際にお話しさせていただきますが『トウジン』魔国には『闘技場』という施設がありましてね。冒険者ギルドに所属している冒険者のランクが一定以上あれば参加できますので、もしレアさんもご興味がございましたらですが、一度『闘技場』へのご参加もご検討下さい」
レルバノンの『闘技場』の説明に興味を惹かれたレアは、行ってみたいなと思うのだった。
しかしそこで横に居るユファが、レアの肩に手を置く。
「さて、闘技場はまた今度ね? 今から貴方はシスの元へ行くんだからね」
「わ、分かってるわよぉ、でも一度行ってみたいなぁ」
「はいはい。どうせ今は復興作業で開いていないからさ。また今度ね?」
ユファは余計な事を言うなとばかりにレルバノンを睨む。レルバノンはその視線に両手をあげて首を振った。
どうやらユファが闘技場のボスをやっている事をレアに知られたくはなかったのだろう。
闘技場には報酬があるために『レア』がそれに気が付けば、また何か悪巧みでも考えそうだと『ユファ』は考えたのだった。
「それじゃ私達は『レイズ城』の方へ行くわね? 忙しいところに悪かったわね」
「いえいえ。私達はもう『仲間』なのですから、いつでも気兼ねなくお越しください」
レルバノンがそう言うとユファは数秒ほどレルバノンの顔を見ていたが、やがて薄く笑って頷くのだった。
「ええそうね。また来るわね。ありがとう『レルバノン・フィクス』」
ユファがそう言うと『レルバノン』はニヒルな笑みをユファに向けた後に出口まで歩いていき、ドアの取っ手を持ちながら頭を下げるのだった。
「それではまたのお越しを。ユファ様、レア様」
どうやらそう挨拶する今は、ギルド長としてのレルバノンという事なのだろう。
二人はそれを理解した上で、何も言わずにギルドルームを出ていった。
誰も居なくなったギルドルームで、ぽつりとレルバノンは呟く。
「この世界の伝説の魔王が、生きる伝説であるソフィさんの配下ですか。また何か起こりそうな気がするのは、私だけでしょうか?」
レルバノンはその言葉を最後に、再びギルドの業務へと戻るのだった。
……
……
……
「さて、それじゃあレイズ城へ向かうわよ」
「セレスちゃんの娘のシス。だったわよね?」
「ええそうよ。そういえば貴方にとっては『シス』より『セレス』女王の方が親しかったのよね?」
「うん、そうね」
「?」
唐突にレアが落ち込むような素振りを見せたが、何も言わずレアを見つめるユファであった。
(セレスちゃんを頼むように告げたラクスちゃんはどうやらもう、この世界には居ないようねぇ)
魔人の寿命は人間とは比較にならない程長いために、当然この時代でもまだ生きていても可笑しくはない。しかし、その魔人ラクスの姿がないと言う事は、すでに寿命ではない他の理由で、この世界から去ってしまっていると言う事である。
レアは最後にラクスにキスをして、別れた時の言葉を思い出す。
――セレスちゃんをお願いね?
レアがラクスに言い残した言葉を『ラクス』はしっかりと守ってくれたのだろう。何が原因でラクスが居なくなってしまったかそこまでは分からないが、あの子は私と同じ目をして、そして健気で必ず約束を守ってくれるいい男だった。
この時代にセレスの子が生きていて、そしてユファがこの時代に訪れていた時には、セレスはしっかりとこの国の女王となって生きていたと言っていた。
――あの子は私の約束を果たしてくれたに違いないのだろう。
(※356話『魔王レアのファーストキス』)。
「レア、行きましょう?」
「うん……」
(ラクスちゃん……。ありがとねぇ?)
心の中でそう告げて、魔人ラクスに感謝をする魔王レアであった。
1
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる