422 / 1,906
友を想う大魔王編
412.レアにとっての居心地のいい場所
しおりを挟む
エイネとの模擬戦で気を失っていたレアは、長老の家で目を覚ました。レアの横でずっと目を覚ますのを待っていたリーシャは、直ぐにレアが目を覚ましたことに気づいて嬉しそうな顔を浮かべた。
「レア! もう大丈夫?」
「んぅ……?」
寝かされていた布団の上でレアは身体を起こして、何があったかを思い出そうとする。
「ああ……。そういえば私はエイネと戦って、そこで気絶したのねぇ」
そこで長老の家には『リーシャ』しかいないことに気づいたレアは、ずっと一人でレアが起きるまで看病してくれていたリーシャの頭を撫でる。
リーシャは猫のように目を細めながら、レアに撫でられてご満悦といった表情で嬉しそうに笑う。
「私が起きるまで看ててくれたのねぇ? ありがとうリーシャ」
「全然いいよ! レアの顔だったら何時間見てても飽きないもん!」
レアにもっと頭を撫でてとせがむように、リーシャはレアに寄り添ってくる。
それからは会話は無かったが、互いに居心地よくのんびりとした時間が流れる。ここに来た当初は森でリーシャと口喧嘩をして、この子とは絶対に仲良くなれないとレアは思っていた。
しかし一緒にご飯を食べたり、修行をしたりしていく内に、いつの間にかレアはリーシャに懐かれていたのだった。
そして徐々にレアはこの世界から離れる事が、名残惜しいなと感じるようになっていた。
「ただいま、リーシャ! レアさんはもう起きてる?」
そこへどうやらどこかへ行っていた『エイネ』が帰ってきたようだった。
「あ! エイネさんおかえりー! レアもう起きてるよ?」
返事をしながら立ち上がったリーシャは、慌ててエイネを迎えに行く。離れて行くリーシャに少しの寂しさを感じたレアだったが、そんな自分にふと気づいて苦笑いを浮かべたあとにレアもエイネを出迎えるのだった。
部屋に入ってきたエイネは、リーシャの頭を撫でながらレアに声を掛ける。
「もう大丈夫ですか? レアさん」
「ええ、大丈夫だとは思うんだけどねぇ。単に気付いていないだけで、貴方に思いきり殴られた箇所の内臓とか、取り返しのつかない損傷とかしてなかったらいいのだけどぉ?」
少しだけイジワルのつもりで言ったレアに、エイネは複雑そうな顔を浮かべる。
「ふふっ。冗談よ。それにしても今までどこへ行っていたの?」
窓から外の様子を見るが、レア達が戦っていた頃はまだ昼過ぎだったと言うのに、今はもう日が暮れ始めていた。
「そう。それなんですがね? 長老が朝から姿が見えないので、近くを探しに行っていたんですよ」
そう言えばレアが朝に起きた時から、すでにバルドの姿はなかった事を思い出す。
「魔力感知でも反応がないのねぇ『漏出』でもしてみようかしらぁ?」
レアがそう言うと、慌ててエイネが止める。
「だ、ダメですレアさん! ま、万が一ですが。組織の残党と戦っている可能性を考えると『漏出』を使うのは危険です」
「あ、ええ。これも冗談よ、冗談。貴方やバルドに『漏出』何て使ったらその場で死んじゃうかもしれないからねぇ」
――危ないところだった。
口では冗談と告げたレアだったが、実際はそのことを忘れて『漏出』を使おうとする寸前であった。
『レパート』や『リラリオ』の世界では、レア程の力があれば、たとえどんな相手に『漏出』を使っても、危険などは一切考えられなかったが、このアレルバレルの世界はまともではなかったとレアは思い直すのであった。
『漏出』は魔力探知や魔力感知より、優れた探知系統の魔法ではあるが、その緻密性から魔力が低い者が魔力が高すぎる者に使った場合は、相手の魔力を数値化しようと脳が『魔法』で強引に記憶させようとするが、それ故に脳が焼き切れてしまって下手をすれば絶命してしまうのである。
魔力差がそこまで大差なくとも激痛が伴う程であり、もし万が一通常状態のレアが『魔王軍』の序列部隊の『一桁・三位』であるバルドが戦闘状態であったならば、その瞬間に死んでいたかもしれなかったのである。
「まぁ今も長老には、多くの軍時代の仲間がいますし。万が一『組織』と戦っていたとしてもすぐに戻ってくる事でしょう」
どうやらエイネはそう結論付けて、ここに戻ってきたようであった。
「エイネさん。私お腹すいたよぉ」
エイネの足にしがみつきながら、そう不満を漏らすリーシャにエイネは笑いかける。
「はいはい、すぐに用意しましょうか」
レアはここで過ごすようになって、当たり前となった光景を見て嬉しそうに笑う。
――しかし彼女はこの世界の存在ではない。
フルーフの情報を得られない以上は、残してきた『レパート』の『魔王軍』の舵を取るために戻らなければならない。
それこそがレアのもう一つのやるべき事であり、フルーフの居場所を守るために為すべき事なのである。
『魔王軍』の軍団長として、フルーフの魔王軍を一時的に自在に動かせる権限を与えている『レインドリヒ』を残してきてはいるが、あのヴァルテンといった信用ならない『大魔王』が紛れている以上は、レアもいつまでも留守にするわけにはいかないのであった。
…………
「エイネ。リーシャ。夕ご飯の前にね? 私から大切な話があるの」
……
……
……
「レア! もう大丈夫?」
「んぅ……?」
寝かされていた布団の上でレアは身体を起こして、何があったかを思い出そうとする。
「ああ……。そういえば私はエイネと戦って、そこで気絶したのねぇ」
そこで長老の家には『リーシャ』しかいないことに気づいたレアは、ずっと一人でレアが起きるまで看病してくれていたリーシャの頭を撫でる。
リーシャは猫のように目を細めながら、レアに撫でられてご満悦といった表情で嬉しそうに笑う。
「私が起きるまで看ててくれたのねぇ? ありがとうリーシャ」
「全然いいよ! レアの顔だったら何時間見てても飽きないもん!」
レアにもっと頭を撫でてとせがむように、リーシャはレアに寄り添ってくる。
それからは会話は無かったが、互いに居心地よくのんびりとした時間が流れる。ここに来た当初は森でリーシャと口喧嘩をして、この子とは絶対に仲良くなれないとレアは思っていた。
しかし一緒にご飯を食べたり、修行をしたりしていく内に、いつの間にかレアはリーシャに懐かれていたのだった。
そして徐々にレアはこの世界から離れる事が、名残惜しいなと感じるようになっていた。
「ただいま、リーシャ! レアさんはもう起きてる?」
そこへどうやらどこかへ行っていた『エイネ』が帰ってきたようだった。
「あ! エイネさんおかえりー! レアもう起きてるよ?」
返事をしながら立ち上がったリーシャは、慌ててエイネを迎えに行く。離れて行くリーシャに少しの寂しさを感じたレアだったが、そんな自分にふと気づいて苦笑いを浮かべたあとにレアもエイネを出迎えるのだった。
部屋に入ってきたエイネは、リーシャの頭を撫でながらレアに声を掛ける。
「もう大丈夫ですか? レアさん」
「ええ、大丈夫だとは思うんだけどねぇ。単に気付いていないだけで、貴方に思いきり殴られた箇所の内臓とか、取り返しのつかない損傷とかしてなかったらいいのだけどぉ?」
少しだけイジワルのつもりで言ったレアに、エイネは複雑そうな顔を浮かべる。
「ふふっ。冗談よ。それにしても今までどこへ行っていたの?」
窓から外の様子を見るが、レア達が戦っていた頃はまだ昼過ぎだったと言うのに、今はもう日が暮れ始めていた。
「そう。それなんですがね? 長老が朝から姿が見えないので、近くを探しに行っていたんですよ」
そう言えばレアが朝に起きた時から、すでにバルドの姿はなかった事を思い出す。
「魔力感知でも反応がないのねぇ『漏出』でもしてみようかしらぁ?」
レアがそう言うと、慌ててエイネが止める。
「だ、ダメですレアさん! ま、万が一ですが。組織の残党と戦っている可能性を考えると『漏出』を使うのは危険です」
「あ、ええ。これも冗談よ、冗談。貴方やバルドに『漏出』何て使ったらその場で死んじゃうかもしれないからねぇ」
――危ないところだった。
口では冗談と告げたレアだったが、実際はそのことを忘れて『漏出』を使おうとする寸前であった。
『レパート』や『リラリオ』の世界では、レア程の力があれば、たとえどんな相手に『漏出』を使っても、危険などは一切考えられなかったが、このアレルバレルの世界はまともではなかったとレアは思い直すのであった。
『漏出』は魔力探知や魔力感知より、優れた探知系統の魔法ではあるが、その緻密性から魔力が低い者が魔力が高すぎる者に使った場合は、相手の魔力を数値化しようと脳が『魔法』で強引に記憶させようとするが、それ故に脳が焼き切れてしまって下手をすれば絶命してしまうのである。
魔力差がそこまで大差なくとも激痛が伴う程であり、もし万が一通常状態のレアが『魔王軍』の序列部隊の『一桁・三位』であるバルドが戦闘状態であったならば、その瞬間に死んでいたかもしれなかったのである。
「まぁ今も長老には、多くの軍時代の仲間がいますし。万が一『組織』と戦っていたとしてもすぐに戻ってくる事でしょう」
どうやらエイネはそう結論付けて、ここに戻ってきたようであった。
「エイネさん。私お腹すいたよぉ」
エイネの足にしがみつきながら、そう不満を漏らすリーシャにエイネは笑いかける。
「はいはい、すぐに用意しましょうか」
レアはここで過ごすようになって、当たり前となった光景を見て嬉しそうに笑う。
――しかし彼女はこの世界の存在ではない。
フルーフの情報を得られない以上は、残してきた『レパート』の『魔王軍』の舵を取るために戻らなければならない。
それこそがレアのもう一つのやるべき事であり、フルーフの居場所を守るために為すべき事なのである。
『魔王軍』の軍団長として、フルーフの魔王軍を一時的に自在に動かせる権限を与えている『レインドリヒ』を残してきてはいるが、あのヴァルテンといった信用ならない『大魔王』が紛れている以上は、レアもいつまでも留守にするわけにはいかないのであった。
…………
「エイネ。リーシャ。夕ご飯の前にね? 私から大切な話があるの」
……
……
……
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる