上 下
406 / 1,906
煌聖教団誕生編

396.二つ目の拠点に居た真なる大魔王

しおりを挟む
「それではレアさん。行きましょうか」

 どこかに連絡を取っていたバルドだったが『念話テレパシー』を終えた後にレアに向き直りそう口にした。

「ええ。から爆発音は聞こえなくなったようだけど、どうすればいいのかしらぁ?」

 集落へ来る前に聞こえていた北側の大陸での爆発音が止み、不安になるレアだったが、バルドはそんなレアにも理解出来るように告げる。

「次に魔王軍が狙うとすればここより南の大陸でしょうから、今の内に向かえば問題はないでしょう」

「次?」

「儂について来れば分かりますよレアさん。それとも、やはり止めておきますか?」

「フルーフ様の事が何か分かるかもしれないのに、ここで私がやめる選択肢をとる事はあり得ないわぁ」

 レアの返事を聞き神妙に頷くバルドだった。

「分かりました。しかし先程も言ったように、何があっても絶対に手を出すような真似だけはやめてくだされ」

 再度念を押してくる『バルド』に『レア』もまた再び頷く。

「……」

 レアとバルドの会話を聞いていたリーシャは、何かを言いたそうにしていた。その様子を見たエイネがリーシャに告げる。

「リーシャ。これから行く所はとても危険だから私とお留守番ね?」

「う、うん」

 流石にリーシャもここまで鳴り響く爆音を聞いていたため、事の重大さは理解している。

 レアと一緒に行きたいと言いたいところを我慢しながら、リーシャの言葉に素直に従うのだった。

「帰ってきたらまた私と一緒に組手しようねぇ?」

 レアがリーシャの頭を撫でながらそう言うと、リーシャは俯いていた顔を上げて

「じゃあ、行きましょうか」

 バルドの言葉にレアは頷く。

 バルドが先頭に立ち先導するように空を飛ぶ。その後ろをレアがついていった。

 向かう場所は『』が起こされた南方の大陸であった。

 ……
 ……
 ……

 その南方大陸ではすでに一つ目の拠点と同様に『魔王軍』が潜む『反乱分子』と呼ぶべき、反魔王軍を掲げる『レジスタンス』が、ソフィの魔王軍と激しい争いが行われていた。

 この南方は流石に一つ目の拠点とは違って『組織』の現行の構成員が多く『レジスタンス』と手を組んでいるために、そこそこ魔王軍に反抗出来る程の人数の魔族が居た。

 そんな『組織』の『生贄部隊』の中に、一体のを持つ魔族が目立っていた。

 ――その魔族の名は『リガイダー』。

 の領域に立ち『二色の併用』を纏うその魔族は、魔王軍の二桁の序列持ちの大魔王複数と互角に渡り合い一歩も引かずに戦っていた。

「ほう、なかなか見事じゃの」

 そんな『リガイダー』を離れた場所から見る『智謀』の異名を持つ魔王が、呟きながらもレジスタンスの魔王達を次々と屠りながら進んでいくのだった。

「あれは二桁の奴らじゃかもしれませんね。全く相手になっていない」

 大きな刀を両手で持って敵が間合いに入れば、一振りで数体の魔王の首を吹き飛ばしながら、敵の出方を伺い続ける『イリーガル』は『ディアトロス』の呟きに反応してそう言った。

「もしかするとあの若造達と連絡をとるために残った幹部階級クラスの者かもしれんな」

 ディアトロスは周りの反乱分子達を一斉に、老化させて動けなくさせた後に極大魔法で一斉に吹き飛ばしながら、リガイダーの戦う様子をその目で追い続ける。

「しかし一体一体は、大した事がない者達ですが。全く、面倒な程に数が多いですな!」

 イリーガルはすでに何十体モノ魔族の首を刎ね飛ばしている。

 しかし一向に数は衰えず、むしろ続々とその数が増えて行っているような錯覚を覚えていた。

「どうやら数ある拠点の中でここが本丸だったようじゃの」

 ディアトロスとイリーガル以外にも、序列を持つ魔族達がこの場に多く集まっており、レジスタンスや組織の生贄部隊を一方的に屠り続けている。

 しかしそれでも一つ目の拠点の時とは違い、すぐに終わる気がしなかった。

「分かりませんよディアトロス殿。今頃はもう一つの拠点に向かった『ブラスト』達も、同じことを言っているかもしれません」

 三つある拠点の内。最後の拠点に『ブラスト』と、序列一桁を持つ魔王軍が向かっていた。

 一つ目の拠点を襲った時は『組織』の『生贄部隊』の主要な者が少なく、更には魔王軍のほぼ全ての軍勢が集って『反乱分子』達を滅ぼしたため、かなりの速度で壊滅させられたが、今回は二手に分かれているために一つ目の拠点を襲った時より速度で劣る事となった。

 だがそれでもがあったのである。

 ――『組織』の残存勢力や、反乱分子達もただの馬鹿ではない。

 一つ目の拠点が壊滅させられたという情報は、この世界から離れている者達にも伝わってしまっているかもしれない。そうなれば『組織』の連中は、再び何か行動に出る事だろう。

 奴らの目的を完全に知っているわけではないソフィ達『魔王軍』は、をさせるために拠点全てを葬り去り、奴らの狙いを探ろうとしたのである。

 そしてどうやらディアトロス達の前で『魔王軍』と戦っている『リガイダー』が、大当たりだったようである。

 ディアトロス達は、何としてもリガイダーを無力化させた後に、組織の事を吐かせなければならないと考えるのであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...