405 / 1,985
煌聖教団誕生編
395.煌聖教団の誕生
しおりを挟む
「やれやれ……。私が主軸となるのはまだ先のつもりだったのだがな……。まぁいい」
厄介な大魔王『ディアトロス』を撒いた事を確認した大賢者『ミラ』は『魔界』の北方付近にある大陸の山奥から人間の大陸がある方角を見据えてそう呟く。
「あの魔族の爺は、中央大陸に姿を見せた化け物の名前を『ソフィ』と呼んでいたか? 確かにあれはやばい。俺の目的を果たすためには、一番の障害となるだろうな」
ミラは同盟の立場にあった『ロンダギルア』の強さをよく理解しているつもりだった。
死の概念がない自分にとっては、ロンダギルアと戦ったところで負ける要素はないが、それでも彼の知る魔族の中では、一番の強さを持っていると判断していた。
しかしあの戦争を通してミラは少なからず『ロンダギルア』より強き魔族の存在を多く知った。
彼の思い描いていた構想は完膚なきまでに潰されたが、それでもその事を知れただけでも差し引きでプラスだったと言えた。
彼の目的を成し遂げる為に、障害となる者達の存在を知れた事はとても大きいと言えるからである。
「今のままでは正面からぶつかったところで勝ち目は無さそうだ。まずは『魔界』とやらの情勢を知り、協力者を募る事から始めるべきだな」
大賢者ミラは人間の大陸が見える『魔界』の場所から『人間界』をその視界に入れながら呟く。
大賢者ミラはこの時の戦争で後にこの世界の支配者となるであろう存在を把握して、それを念頭に入れた緻密で長い期間を必要とする作戦を考え始めるのだった。
――そしてそれは、数千年後に叶えられる事となる。
――この物語の始まるきっかけとして。
……
……
……
――そして再びレアの居るアレルバレルの時代。ロンダギルアが支配していた『魔界』に存在する最南端の大陸。
『第一次魔界全土戦争』の始まりの場所。
そこに大賢者ミラの組織の『生贄部隊』は、再び潜伏しているという。
『イリーガル』や『ブラスト』といった大賢者『ミラ』と、直接の関係性を持たなかった者は、この大陸には特に思う事はないが、大賢者ミラと戦いソフィの配下となるに至ったきっかけとなった『ディアトロス』はこの大陸に足を踏み入れた時に懐古の念に駆られた。
(やはりあの時に始末出来なかった若造は、我らの障害になったか)
大魔王フルーフを連れ去った者は、ヌーと思われている。何故なら直接戦ったと思わしき魔力の残滓が、あのフルーフが消える瞬間に辺りに残されていたからである。
そして『ヌー』は『ソフィ』に戦争を仕掛けた経緯があるため、何らかの理由でソフィと懇意の関係があった『フルーフ』を連れ去ったのだろうと判断している。
しかしどうやら調べを進めていく内に、ヌーとミラは協力関係にあったと思われる事が分かった。
ヌーの従えていた魔族達と、最近活発的に動いていた『組織』の魔族と親交が確認されたのである。
確実な証拠はない為に推測の域を出ないが、この大陸に来たことで『ミラ』の存在を思い出したディアトロスは、その推測は間違いがないだろうと思い始めていた。
新魔法を生み出す事や、既存の魔法の改造等。
『魔』に関して大魔王フルーフは、天才の域に至っている事は疑いようがなく、過去に戦った事のある大賢者ミラもまた、共通点と言える新魔法を使っていた。
つまり『フルーフ』に有用性を見出した大賢者『ミラ』が、ヌーとなんらかの契約をして同盟関係を結び、フルーフを連れ去ったのだろう。
すでにあの若造の魔力はこの『アレルバレル』では感じる事が出来ないために、この世界にはいないのかもしれないが、ディアトロスはこの大陸から感じる『組織』の残存勢力の魔力からどこか懐かしいものを感じている。
つまりこの大陸にあの若造と強い関連性のある魔族が、潜んでいる事が容易に想像できるのであった。
(ワシを侮るなよ若造。上手く立ち回ったつもりだろうが、お前を確実に見つけて仕留めてやる)
大賢者ミラは大魔王『ソフィ』を化け物と呼んで自分の計画の妨げになる者と認めていたが、実はここに居る大魔王『ディアトロス』もまた、決して侮ってはいけない存在だという事を認識しておくべきであった――。
そしてディアトロス達は、この最南端の大陸で潜んでいるとみられる『組織』の『生贄部隊』を探し始めるのだった。
厄介な大魔王『ディアトロス』を撒いた事を確認した大賢者『ミラ』は『魔界』の北方付近にある大陸の山奥から人間の大陸がある方角を見据えてそう呟く。
「あの魔族の爺は、中央大陸に姿を見せた化け物の名前を『ソフィ』と呼んでいたか? 確かにあれはやばい。俺の目的を果たすためには、一番の障害となるだろうな」
ミラは同盟の立場にあった『ロンダギルア』の強さをよく理解しているつもりだった。
死の概念がない自分にとっては、ロンダギルアと戦ったところで負ける要素はないが、それでも彼の知る魔族の中では、一番の強さを持っていると判断していた。
しかしあの戦争を通してミラは少なからず『ロンダギルア』より強き魔族の存在を多く知った。
彼の思い描いていた構想は完膚なきまでに潰されたが、それでもその事を知れただけでも差し引きでプラスだったと言えた。
彼の目的を成し遂げる為に、障害となる者達の存在を知れた事はとても大きいと言えるからである。
「今のままでは正面からぶつかったところで勝ち目は無さそうだ。まずは『魔界』とやらの情勢を知り、協力者を募る事から始めるべきだな」
大賢者ミラは人間の大陸が見える『魔界』の場所から『人間界』をその視界に入れながら呟く。
大賢者ミラはこの時の戦争で後にこの世界の支配者となるであろう存在を把握して、それを念頭に入れた緻密で長い期間を必要とする作戦を考え始めるのだった。
――そしてそれは、数千年後に叶えられる事となる。
――この物語の始まるきっかけとして。
……
……
……
――そして再びレアの居るアレルバレルの時代。ロンダギルアが支配していた『魔界』に存在する最南端の大陸。
『第一次魔界全土戦争』の始まりの場所。
そこに大賢者ミラの組織の『生贄部隊』は、再び潜伏しているという。
『イリーガル』や『ブラスト』といった大賢者『ミラ』と、直接の関係性を持たなかった者は、この大陸には特に思う事はないが、大賢者ミラと戦いソフィの配下となるに至ったきっかけとなった『ディアトロス』はこの大陸に足を踏み入れた時に懐古の念に駆られた。
(やはりあの時に始末出来なかった若造は、我らの障害になったか)
大魔王フルーフを連れ去った者は、ヌーと思われている。何故なら直接戦ったと思わしき魔力の残滓が、あのフルーフが消える瞬間に辺りに残されていたからである。
そして『ヌー』は『ソフィ』に戦争を仕掛けた経緯があるため、何らかの理由でソフィと懇意の関係があった『フルーフ』を連れ去ったのだろうと判断している。
しかしどうやら調べを進めていく内に、ヌーとミラは協力関係にあったと思われる事が分かった。
ヌーの従えていた魔族達と、最近活発的に動いていた『組織』の魔族と親交が確認されたのである。
確実な証拠はない為に推測の域を出ないが、この大陸に来たことで『ミラ』の存在を思い出したディアトロスは、その推測は間違いがないだろうと思い始めていた。
新魔法を生み出す事や、既存の魔法の改造等。
『魔』に関して大魔王フルーフは、天才の域に至っている事は疑いようがなく、過去に戦った事のある大賢者ミラもまた、共通点と言える新魔法を使っていた。
つまり『フルーフ』に有用性を見出した大賢者『ミラ』が、ヌーとなんらかの契約をして同盟関係を結び、フルーフを連れ去ったのだろう。
すでにあの若造の魔力はこの『アレルバレル』では感じる事が出来ないために、この世界にはいないのかもしれないが、ディアトロスはこの大陸から感じる『組織』の残存勢力の魔力からどこか懐かしいものを感じている。
つまりこの大陸にあの若造と強い関連性のある魔族が、潜んでいる事が容易に想像できるのであった。
(ワシを侮るなよ若造。上手く立ち回ったつもりだろうが、お前を確実に見つけて仕留めてやる)
大賢者ミラは大魔王『ソフィ』を化け物と呼んで自分の計画の妨げになる者と認めていたが、実はここに居る大魔王『ディアトロス』もまた、決して侮ってはいけない存在だという事を認識しておくべきであった――。
そしてディアトロス達は、この最南端の大陸で潜んでいるとみられる『組織』の『生贄部隊』を探し始めるのだった。
0
お気に入りに追加
440
あなたにおすすめの小説

異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる