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煌聖教団誕生編

385.ソフィの魔王軍による組織の殲滅作戦

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「30分! そこまで!」

 エイネの声が場に響き渡る。

 初めてリーシャと模擬戦を開始してから数日が過ぎた日。今日もまた魔力を制御しながらの戦いが行われていた。

「ほい、終わりよぉリーシャちゃん?」

 今日もまた一度もレアに触れられずに勝敗が決した。

「くそー! レアに全然当たらないよ!」

 最初の数日は魔力の制御に四苦八苦しながら、リーシャ相手でも冷や冷やするような戦いをしていたレアだが、今では『』3.3と『』1.2の練度を保ったまま、リーシャに魔力の余波を向かわせる事もなく余裕をもったまま、リーシャの攻撃を30分間躱し続けるまでに成長していた。

 延々と攻撃を続けるリーシャは息を切らしながらフラフラになっているにも拘らず、レアの方はまだまだ余裕を持っているようだった。

 その様子に納得がいったのか、エイネはレアに近づいていく。

「レアさん、完全にご自身の魔力を制御できるようになりましたね」

「ええそうね。貴方にコツを教えてもらいながら、これだけ毎日やれば流石に慣れてくるわねぇ」

 エイネは頷きながらも内心では、レアをやはり天才だと認め始めていた。レアは習いたての頃は一般人と同様に苦労はするようだが、それからは他者と一線を画す程に自分の物にする速度が早い。

 フルーフという大魔王が師匠だと言っていたが、その魔王は余程このレアさんの成長ぶりに期待しただろう。何せ教えれば教える程に強くなり、それは際限がないのだから。

 ――だが、それでも問題はここからである。

「レアさん『金色の目ゴールド・アイ』を使わずに魔力の制御はほぼ安定して、出来るようになったと思います」

 レアはエイネの言葉にこくりと頷いた。

「では今度はその『金色の目ゴールド・アイ』を相手の攻撃を止める為に使ってみてください」

「え……? 『金色の目ゴールド・アイ』を? 相手が私より強ければ同じ『魔瞳』で対抗されて意味はない筈だけど」

「いえいえ。結構『金色の目ゴールド・アイ』というのは厄介なんですよ? たとえ相手が『魔王』になったばかりの者でもこちらの対応が遅れた場合、アドバンテージを取られて対応が遅れます」

金色の目ゴールド・アイ』が『魔王』だけではなく『大魔王』の領域に居る者たちが使う理由はそれである。

 相手が自分より強かろうが関係なく、殺し合いになれば使わない手はないのである。例えば相手が極大魔法を詠唱ありで唱えていた場合『金色の目ゴールド・アイ』はその詠唱を封じる事も不可能ではなく、コンマ数秒でも隙が出来れば『大魔王』の領域に住む者達には、圧倒的な利を得られるのだった。

 まだレアは『真なる大魔王』の一歩手前程度の領域になったばかりであり『金色の目ゴールド・アイ』は形勢を一気につける以外の使い方を知らない。

 だが、この『真なる大魔王』の領域へ入るというのであれば、あらゆる戦術を身につけておかねばならない。

 『アレルバレル』の世界では、大魔王だからといって天狗になったり、戦力値や魔力値が高いという、たったそれだけの理由で勝てる程、に甘い世界ではないのである。

 力のコントロールを利用して相手に自分を侮らせるために、わざと戦力値をぎりぎりまで落として相手を油断させる者も少なからず居るくらいなのである。

 このタイミングでレアがアレルバレルへ来たことは自殺行為だったとも言えるが、それでもこうしてエイネやバルド達の集落へ辿り着いた事は、彼女にとっては僥倖だった。

 ――もしこの世界に来た最初に温厚な『ソフィ』や『イリーガル』が居らず『智謀』や『破壊』達だけであったなら、とっくの昔にレアは葬られていただろう。

 同じ『大魔王』の領域であっても『金色の目ゴールド・アイ』の流用性を知っているのと、知らないのとでは天と地程の差が生まれてしまうのである。

「実際に戦いながら教えましょうか。魔力を制御出来るようになった貴方なら、そろそろ私と実戦を交えても問題はないでしょう」

 そういうと前回レアと戦った時は『紅』さえ使わなかったエイネが、目を『金色』にしながら『青』を纏い始めたのであった。

 その様子を驚いた眼で見ながらもレアは、自分がようやくエイネに認められたのだという高揚感に包まれるのだった。

「わ、分かったわぁ!」

 早速レアも『二色の併用』を使って、エイネから教えを享受するのだった。

 ……
 ……
 ……

 そしてレアがエイネと戦い始める頃。この『アレルバレル』の世界の中央大陸にあるソフィの魔王城から複数の魔族が出てくるのだった。

「主ら、よいか? 奴らが居ると思われる拠点は三つだ。そこに今から向かうが、大賢者が居なくても構わん。これ以上混乱を起こさせぬよう、周囲に知らしめるために徹底的に潰すのだ」

「まだヌーと奴らが繋がっているとは限らないと思うのですが、それでもいいのですか? ディアトロス殿」

「ソフィの手を煩わせないように動くことが我らの仕事だ。人間の方の大陸はワシがなんとかするから、徹底的に反乱分子は壊せよ『破壊』の

 ソフィの右腕であり人間の国のNo.2の大臣の座に居る『智謀』ディアトロスがそう言うと、破壊の衝動に常に襲われていた『大魔王』ブラストは、歓喜に身体を震わせるのだった。

「やれやれ。ユファが居なくなった瞬間にこれかよ、やっぱあんたは恐ろしい奴だよ」

『処刑』の異名を持つイリーガルは溜息を吐きながら、ディアトロスに向けてそう告げるのだった。

「カッカッカ! この場に居る者は全員が一度は、アレルバレルを支配しようとした大魔王なのだから、恐ろしい考えを持つのは当然じゃろう?」

 それはワシも例外ではないぞと恐ろしく顔を歪めながら『破壊』と『処刑』の二人に向けて笑う。

「やれやれ……。だが、確かにソフィの親分のためだったら仕方ねぇよな。俺はソフィの親分のためだったら何でもやるぜ?」

「当たり前だ。そんな輩がいればどんな理由であろうと全て破壊し尽くしてやる」

「それでは諸君。派手に行こうではないか」

 『処刑』『智謀』『破壊』の三大魔王以外にもあらゆる二つ名を持っていた『支配者領域』に居る大魔王達が、一斉に声を揃えて反乱分子が潜むと思われる場所へ散っていく。

 ――『大魔王』ソフィの従える魔族達。

 その恐ろしい配下達が多く居る魔王軍の中で、序列が十番以内に入る強者達は『大魔王』のみで編成された各々の部隊を率いてソフィに刃向かった愚か者である『ヌー』とつながっていると思われる『組織』の潜伏する拠点を潰すために、この日を境に遂に行動を開始するのだった。

 ――そしてこの時の出来事が、後の『アレルバレル』の世界で、が生まれるのであった。

 ――それは奇しくも『魔王』が居るこのタイミングで行われたのである。

 ……
 ……
 ……
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