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煌聖教団誕生編

384.魔王レアは魔力コントロールを覚えさせられる

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 休憩を挟んだ事でだいぶ魔力量が回復したレアは、自身の魔力を確かめ始める。

「いいですか? 危ないと思ったら私が即座に間に入ってレアさんの魔力を封じますので、リーシャを気にしすぎて縮こまらないでくださいね? まずは『紅』を使い次に『青』。そして魔力の制御をコントロールしてください。私に対しての『金色の目ゴールド・アイ』は最後に使うと覚えて下さい」

 感覚を覚えさせるために、レアにそうコツを伝えるエイネ。レアは頷くとエイネの言葉を復唱するように、声に出して準備を始めるのだった。

 『紅」1.2『青』3.3からなる。

 ――『二色の併用』。

 レアの全能力が飛躍的に向上して、辺り一帯に魔力の圧が支配し始める。

「くっ……!」

 リーシャは自身の持つを構えながら、レアの膨大な魔力圧を感じて顔を歪める。

「今です! 『金色の目ゴールド・アイ』を使って私に魔力の余波を押し付けて下さい!」

「ぐ……っ!」

 必死に魔力をコントロールしながらオーラを使った後、レアの目が『金色』に変わっていく。

金色の目ゴールド・アイ』が完全に発動して辺り一帯が吹き荒れる程の魔力圧は、リーシャのいる場所だけを完全に遮断してその余波の魔力は別の角度に向かっていく。

「そうです! 出来るだけ私に向けるだけではなく、余波を自身の体を纏うオーラの更に、周りに包ませるという意識を持ってください!」

 言うのは簡単だが魔力を制御しながら『金色の目ゴールド・アイ』を使うというのは、想像を絶する程の集中力がいる。

 ただでさえ『青』と『紅』の『二色の併用』は、それぞれのオーラを別々で使うのだから、かなり維持が難しいのである。

 それをさらに違う事に集中しろというのだから、並大抵の実力者ではなし得る事は不可能である。

「いいですね、その状態を維持してください! よし、リーシャ? レアさんに攻撃しなさい!」

「えっ……!?」

 驚いた顔を浮かべながらリーシャは、レアとエイネの顔を交互に見る。

「この状態で戦うと言ったでしょう? 隙だらけのレアさんを攻撃してどこでもいいから一太刀浴びせなさい! そうすれば貴方の勝ちという事にします!」

 淡々と説明するエイネに、内心驚いているのはレアもであった。

(こ、この状態で戦うの? わ、私は一体どこに集中すればいいのよぉ!)

 二色の併用を展開することに魔力を使い、さらにその余波をリーシャに向けないようにしながら、魔力の制御に意識を割いているレアは更にこの状態でリーシャに一発でも与えられたら、負けだと言われているのである。

 ――ハッキリ言ってレアでも不可能だと思える程であった。

 あうあうとリーシャは戸惑いながら、レアに攻撃しようか悩んでいる。

「早くしなさい! リーシャ!!」

 そのエイネの怒号にビクンと体を震わせながら、半ば発作的に体を動かしてレアに向かっていくリーシャ。

「くっ……! ぐぐ……!」

 集中しすぎて頭がずきずきと痛み出すのを堪えながら、自分に向かってくるリーシャの攻撃を躱す。

『二色の併用』によって戦力値が大幅に上昇しているレアから見れば『最上位魔族』程度のリーシャの攻撃などは止まってみえるのだが、問題なのはそこではない。

 少しでも気を抜けば魔瞳の『金色の目ゴールド・アイ』で、リーシャに魔力圧がいかないようにしている集中力が切れてしまう。そうなればそれだけでリーシャを殺してしまいかねない。それ程までに今のレアは、恐ろしい力で実戦状態に入っているのである。

 この状態よりさらに力が弱かった時でさえ、過去の『リラリオ』の世界でが、レアに『漏出サーチ』を放って魔力を推し量ろうとした瞬間に、絶命しかけたのである。

 そのラクスの戦力値より遥かに劣るリーシャが、その魔力の余波をこの近距離でまともに食らった場合。間違いなく待つのは『死』である。

「うわあああ!!」

 何とかレアは魔力の余波を向けないようにしながら、必死に突っ込んでくるリーシャの攻撃を躱し続ける。

「リーシャ! もっとまじめにやりなさい! 一太刀も入れられなければ、今晩のおかずを一品減らしますよ!」

「ええええ!?」

 五歳の女の子のリーシャは、エイネの言葉に半べそをかきながら必死にレアに攻撃をあてようと、短剣を振り回す。

 …………

「よし、そこまで!」

 十分程が経った頃にエイネの言葉が響き渡る。

「「はぁっ……! はぁっ……」」

 結局リーシャは一度もレアに当てることは出来ず、レアもまた何とか魔力の余波を制御しきるのだった。

 レアはその場で膝をつきながら、大量の汗を流してズキズキと痛む頭を押さえて蹲る。エイネはそんなレアの前まで歩いていき、そしてエイネを見上げるレアに微笑む。

「よく頑張りましたね、レアさん!」

 その言葉を聞いたレアは、ミニのフレアスカートの中が丸見えになっているのも気にせずに、大の字になって地面に倒れる。

「はぁっ、はぁ……! あ、あなたはスパルタとか通り越してもう鬼にしか見えないわぁ」

 冗談でも何でもなくレアの心の底からわき出た本心の言葉であった。

「も、もう! 乙女に向かって何てことを言うんですか、レアさん!」

 レアは床に倒れ伏して肩で息をしつつも、言いながら笑いを堪えきれない様子であった。

 そして一撃も当てられなかったリーシャは、暗雲立ちこめる表情を浮かべながらエイネにそっと声をかけた。

「え、エイネさん……。私のおかず無くなっちゃうの?」

 この世の終わりのような声を出しながらそう告げると、エイネはにこりと笑った。

「ええ、今日は美味しい野菜だけね!」

「お……、終わった……」

 エイネの言葉に絶望して虚ろな目を浮かべて、そう言うリーシャであった。

 …………

 長老の家に帰る途中。虚ろな目を浮かべ続けるリーシャに、そっとレアが耳打ちする。

「私のおかずをこっそりあげるから、そんな悲しそうな目をするのをやめなさい?」

 リーシャはその言葉に恐ろしい程の反射神経でばっとレアの顔を見て、目をキラキラさせるのだった。

「ほ、本当!? うわぁ……!! レア大好き!」

 前を歩くエイネに聞こえない程度の小声でそう言うと、リーシャはレアの首に手をまわして抱き着くのだった。

 リーシャに慌てながらも嬉しそうに笑うレアに、前を歩くエイネはちらりと振り返りながら優しそうな視線を送り、一人頷くエイネであった。

 ……
 ……
 ……
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