最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
392 / 1,985
煌聖教団誕生編

382.恐ろしいエイネの教育

しおりを挟む
 短い期間ではあるが『レパート』の世界の魔族である『ユファ』と『レア』は、奇しくもこの『アレルバレル』の世界で過ごしていた。

 しかしその事に両者が気づく事も無いまま、ユファは『レパート』の世界へと先に帰還する事となったのだった。

 そんなことを知らないレアは、今日もバルドの集落で自身の魔力を抑え込む研鑽を積むのだった。

「レアさん! 貴方の魔力に魔力量が追い付いていないから苦しいのです! 『二色の併用』に使う『青』の練度を少し下げながら、一定に魔力をさせて調節してください!」

「ぐ……っ! か、簡単に言ってくれるわねぇ!」

 単純に魔力を押さえつけるだけであれば『金色の目ゴールド・アイ』を使う事で、一時的にはおさえられる。しかし自然におさえるようにならなければ、これ以上戦力値や魔力値を上げる為に『青』の練度を高めたところで、いずれは魔力量が足りずにパンクをしてしまう。

 それを看破したエイネはまず、完全にレアに『力のコントロール』を覚えさせようとするのだった。

「練度を下げすぎです!それでは修行になりません! 最低でも『青』を3.0をキープしてください! それでも苦しければ『紅』の練度を1.0までなら下げても構いません。しかし『青』だけは絶対に下げないでください!」

 練度というのは0.1でもあげることが難しいとされるが、会得した後に調節することもまた難しいのである。

 それも『青』と『紅』の同時に『オーラ』を操る『二色の併用』を展開しながらともなれば、その

 それも膨大な魔力が消費されるために維持するのも大変であり、今レアは嘔吐しそうになっているのを必死に堪えていた。

「レアさん! 貴方遊んでいるのですか!? そんな調子では戦闘になればあっさり負けますよ! 貴方はそんな程度ではないでしょうがぁ!」

 殺し合いの最中に今のレアのように、オーラの調整ですら吐き気を催していれば、まともな戦闘になどならないだろう。だからこそ心を鬼にしてエイネはレアは叱咤するのだった。

「だ、だめよぉ! もう……、持たない!」

 魔力の圧に圧し潰されそうになるレアを見て、頃合いかと判断した『エイネ』は魔力を高める。

 次の瞬間。レアの体に紅い鎖が纏わりつく。

 ――絶技、『武魔殺鎖マジック・キルチェーン』。

 レアの暴発しようとする魔力は鎖によって断ち切られる。そしてエイネの鎖は紅色が黒色に変わったのであった。それはつまりレアの魔力を強引に消し去った証だった。

「はぁっ……、はぁっ……!」

 レアは精根尽きたかの如くその場に倒れて必死に息を整える。

「大丈夫ですか、レアさん?」

 そんなレアを気遣うように声をかけるエイネであった。

「はぁっ……! はぁっ……! な、なんとか……」

 レアはエイネに言葉を返しはするが、目を開けるのも億劫な程の疲れを見せていた。

「本当であればここまで『青』のに、ある程度筈なんですが、どうやらレアさんは『金色の目ゴールド・アイ』で強引に魔力を支配しながら練度を無理に上げ続けてきたようですね?」

 普通の練度を上げる手順など、誰にも教わってこなかったレアは、そんなことを言われても分からない。

『二色の併用』にしても全て自分ひとりで身につけて、誰にも頼らずに『リラリオ』の世界でたった十年の間に身につけたのだ。

 手順がどうとか言われても困るというのが、彼女の主張である。

「まぁそれでも戦闘で使ってこられたという事実は認めますよレアさん。本当に大したものです」

 そういってニコリと笑いながら倒れているレアに手を差し出す。その手をレアは掴んで自分の身体を起こす。

「フルーフ様の期待を裏切れないからねぇ」

 大きくため息をついて、ようやく息を整えられたレアであった。その言葉を聞いてふふっと笑うエイネ。

「それにしてもあの子。どこまで才能センスに溢れているのよぉ」

 レアは横でエイネの言いつけ通りに『』を纏い続けているリーシャを見る。
 今日の研鑽が始まった最初からレアが練度の調節が終わるまでずっと『紅』を纏い続けている。

 これだけの長い時間。ずっと『紅』を纏うにはどれほどの魔力量が消費されるだろうか。五歳の魔族が保有する魔力量など等に超えている。

(1500万? いや、もしかしたらあの子、もう魔力値が2000万近いわねぇ)

 すでにその数値は『覚醒した魔王』に達した『エリス』階級クラスであり、リラリオの世界では『魔』を管理していた一般精霊よりも大幅に上回る魔力値であった。

「いえいえ。まだまだこれからですよ。には、こんなモノでは

 そう言って薄く笑うエイネに、信じられないものを見るような目で驚くレアであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...