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煌聖教団誕生編
382.恐ろしいエイネの教育
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短い期間ではあるが『レパート』の世界の魔族である『ユファ』と『レア』は、奇しくもこの『アレルバレル』の世界で過ごしていた。
しかしその事に両者が気づく事も無いまま、ユファは『レパート』の世界へと先に帰還する事となったのだった。
そんなことを知らないレアは、今日もバルドの集落で自身の魔力を抑え込む研鑽を積むのだった。
「レアさん! 貴方の魔力に魔力量が追い付いていないから苦しいのです! 『二色の併用』に使う『青』の練度を少し下げながら、一定に魔力をさせて調節してください!」
「ぐ……っ! か、簡単に言ってくれるわねぇ!」
単純に魔力を押さえつけるだけであれば『金色の目』を使う事で、一時的にはおさえられる。しかし自然におさえるようにならなければ、これ以上戦力値や魔力値を上げる為に『青』の練度を高めたところで、いずれは魔力量が足りずにパンクをしてしまう。
それを看破したエイネはまず、完全にレアに『力のコントロール』を覚えさせようとするのだった。
「練度を下げすぎです!それでは修行になりません! 最低でも『青』を3.0をキープしてください! それでも苦しければ『紅』の練度を1.0までなら下げても構いません。しかし『青』だけは絶対に下げないでください!」
練度というのは0.1でもあげることが難しいとされるが、会得した後に調節することもまた難しいのである。
それも『青』と『紅』の同時に『オーラ』を操る『二色の併用』を展開しながらともなれば、その難易度は比較にならない程に跳ね上がる。
それも膨大な魔力が消費されるために維持するのも大変であり、今レアは嘔吐しそうになっているのを必死に堪えていた。
「レアさん! 貴方遊んでいるのですか!? そんな調子では戦闘になればあっさり負けますよ! 貴方はそんな程度ではないでしょうがぁ!」
殺し合いの最中に今のレアのように、オーラの調整ですら吐き気を催していれば、まともな戦闘になどならないだろう。だからこそ心を鬼にしてエイネはレアは叱咤するのだった。
「だ、だめよぉ! もう……、持たない!」
魔力の圧に圧し潰されそうになるレアを見て、頃合いかと判断した『エイネ』は魔力を高める。
次の瞬間。レアの体に紅い鎖が纏わりつく。
――絶技、『武魔殺鎖』。
レアの暴発しようとする魔力は鎖によって断ち切られる。そしてエイネの鎖は紅色が黒色に変わったのであった。それはつまりレアの魔力を強引に消し去った証だった。
「はぁっ……、はぁっ……!」
レアは精根尽きたかの如くその場に倒れて必死に息を整える。
「大丈夫ですか、レアさん?」
そんなレアを気遣うように声をかけるエイネであった。
「はぁっ……! はぁっ……! な、なんとか……」
レアはエイネに言葉を返しはするが、目を開けるのも億劫な程の疲れを見せていた。
「本当であればここまで『青』の練度が高くなる前に、ある程度コントロールが出来るようになる筈なんですが、どうやらレアさんは『金色の目』で強引に魔力を支配しながら練度を無理に上げ続けてきたようですね?」
普通の練度を上げる手順など、誰にも教わってこなかったレアは、そんなことを言われても分からない。
『二色の併用』にしても全て自分ひとりで身につけて、誰にも頼らずに『リラリオ』の世界でたった十年の間に身につけたのだ。
手順がどうとか言われても困るというのが、彼女の主張である。
「まぁそれでも戦闘で使ってこられたという事実は認めますよレアさん。本当に大したものです」
そういってニコリと笑いながら倒れているレアに手を差し出す。その手をレアは掴んで自分の身体を起こす。
「フルーフ様の期待を裏切れないからねぇ」
大きくため息をついて、ようやく息を整えられたレアであった。その言葉を聞いてふふっと笑うエイネ。
「それにしてもあの子。どこまで才能に溢れているのよぉ」
レアは横でエイネの言いつけ通りに『紅』を纏い続けているリーシャを見る。
今日の研鑽が始まった最初からレアが練度の調節が終わるまでずっと『紅』を纏い続けている。
これだけの長い時間。ずっと『紅』を纏うにはどれほどの魔力量が消費されるだろうか。五歳の魔族が保有する魔力量など等に超えている。
(1500万? いや、もしかしたらあの子、もう魔力値が2000万近いわねぇ)
すでにその数値は『覚醒した魔王』に達した『エリス』階級であり、リラリオの世界では『魔』を管理していた一般精霊よりも大幅に上回る魔力値であった。
「いえいえ。まだまだこれからですよ。私に合格点を出させるには、こんなモノでは全然足りませんからね」
そう言って薄く笑うエイネに、信じられないものを見るような目で驚くレアであった。
しかしその事に両者が気づく事も無いまま、ユファは『レパート』の世界へと先に帰還する事となったのだった。
そんなことを知らないレアは、今日もバルドの集落で自身の魔力を抑え込む研鑽を積むのだった。
「レアさん! 貴方の魔力に魔力量が追い付いていないから苦しいのです! 『二色の併用』に使う『青』の練度を少し下げながら、一定に魔力をさせて調節してください!」
「ぐ……っ! か、簡単に言ってくれるわねぇ!」
単純に魔力を押さえつけるだけであれば『金色の目』を使う事で、一時的にはおさえられる。しかし自然におさえるようにならなければ、これ以上戦力値や魔力値を上げる為に『青』の練度を高めたところで、いずれは魔力量が足りずにパンクをしてしまう。
それを看破したエイネはまず、完全にレアに『力のコントロール』を覚えさせようとするのだった。
「練度を下げすぎです!それでは修行になりません! 最低でも『青』を3.0をキープしてください! それでも苦しければ『紅』の練度を1.0までなら下げても構いません。しかし『青』だけは絶対に下げないでください!」
練度というのは0.1でもあげることが難しいとされるが、会得した後に調節することもまた難しいのである。
それも『青』と『紅』の同時に『オーラ』を操る『二色の併用』を展開しながらともなれば、その難易度は比較にならない程に跳ね上がる。
それも膨大な魔力が消費されるために維持するのも大変であり、今レアは嘔吐しそうになっているのを必死に堪えていた。
「レアさん! 貴方遊んでいるのですか!? そんな調子では戦闘になればあっさり負けますよ! 貴方はそんな程度ではないでしょうがぁ!」
殺し合いの最中に今のレアのように、オーラの調整ですら吐き気を催していれば、まともな戦闘になどならないだろう。だからこそ心を鬼にしてエイネはレアは叱咤するのだった。
「だ、だめよぉ! もう……、持たない!」
魔力の圧に圧し潰されそうになるレアを見て、頃合いかと判断した『エイネ』は魔力を高める。
次の瞬間。レアの体に紅い鎖が纏わりつく。
――絶技、『武魔殺鎖』。
レアの暴発しようとする魔力は鎖によって断ち切られる。そしてエイネの鎖は紅色が黒色に変わったのであった。それはつまりレアの魔力を強引に消し去った証だった。
「はぁっ……、はぁっ……!」
レアは精根尽きたかの如くその場に倒れて必死に息を整える。
「大丈夫ですか、レアさん?」
そんなレアを気遣うように声をかけるエイネであった。
「はぁっ……! はぁっ……! な、なんとか……」
レアはエイネに言葉を返しはするが、目を開けるのも億劫な程の疲れを見せていた。
「本当であればここまで『青』の練度が高くなる前に、ある程度コントロールが出来るようになる筈なんですが、どうやらレアさんは『金色の目』で強引に魔力を支配しながら練度を無理に上げ続けてきたようですね?」
普通の練度を上げる手順など、誰にも教わってこなかったレアは、そんなことを言われても分からない。
『二色の併用』にしても全て自分ひとりで身につけて、誰にも頼らずに『リラリオ』の世界でたった十年の間に身につけたのだ。
手順がどうとか言われても困るというのが、彼女の主張である。
「まぁそれでも戦闘で使ってこられたという事実は認めますよレアさん。本当に大したものです」
そういってニコリと笑いながら倒れているレアに手を差し出す。その手をレアは掴んで自分の身体を起こす。
「フルーフ様の期待を裏切れないからねぇ」
大きくため息をついて、ようやく息を整えられたレアであった。その言葉を聞いてふふっと笑うエイネ。
「それにしてもあの子。どこまで才能に溢れているのよぉ」
レアは横でエイネの言いつけ通りに『紅』を纏い続けているリーシャを見る。
今日の研鑽が始まった最初からレアが練度の調節が終わるまでずっと『紅』を纏い続けている。
これだけの長い時間。ずっと『紅』を纏うにはどれほどの魔力量が消費されるだろうか。五歳の魔族が保有する魔力量など等に超えている。
(1500万? いや、もしかしたらあの子、もう魔力値が2000万近いわねぇ)
すでにその数値は『覚醒した魔王』に達した『エリス』階級であり、リラリオの世界では『魔』を管理していた一般精霊よりも大幅に上回る魔力値であった。
「いえいえ。まだまだこれからですよ。私に合格点を出させるには、こんなモノでは全然足りませんからね」
そう言って薄く笑うエイネに、信じられないものを見るような目で驚くレアであった。
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