最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
392 / 1,989
煌聖教団誕生編

382.恐ろしいエイネの教育

しおりを挟む
 短い期間ではあるが『レパート』の世界の魔族である『ユファ』と『レア』は、奇しくもこの『アレルバレル』の世界で過ごしていた。

 しかしその事に両者が気づく事も無いまま、ユファは『レパート』の世界へと先に帰還する事となったのだった。

 そんなことを知らないレアは、今日もバルドの集落で自身の魔力を抑え込む研鑽を積むのだった。

「レアさん! 貴方の魔力に魔力量が追い付いていないから苦しいのです! 『二色の併用』に使う『青』の練度を少し下げながら、一定に魔力をさせて調節してください!」

「ぐ……っ! か、簡単に言ってくれるわねぇ!」

 単純に魔力を押さえつけるだけであれば『金色の目ゴールド・アイ』を使う事で、一時的にはおさえられる。しかし自然におさえるようにならなければ、これ以上戦力値や魔力値を上げる為に『青』の練度を高めたところで、いずれは魔力量が足りずにパンクをしてしまう。

 それを看破したエイネはまず、完全にレアに『力のコントロール』を覚えさせようとするのだった。

「練度を下げすぎです!それでは修行になりません! 最低でも『青』を3.0をキープしてください! それでも苦しければ『紅』の練度を1.0までなら下げても構いません。しかし『青』だけは絶対に下げないでください!」

 練度というのは0.1でもあげることが難しいとされるが、会得した後に調節することもまた難しいのである。

 それも『青』と『紅』の同時に『オーラ』を操る『二色の併用』を展開しながらともなれば、その

 それも膨大な魔力が消費されるために維持するのも大変であり、今レアは嘔吐しそうになっているのを必死に堪えていた。

「レアさん! 貴方遊んでいるのですか!? そんな調子では戦闘になればあっさり負けますよ! 貴方はそんな程度ではないでしょうがぁ!」

 殺し合いの最中に今のレアのように、オーラの調整ですら吐き気を催していれば、まともな戦闘になどならないだろう。だからこそ心を鬼にしてエイネはレアは叱咤するのだった。

「だ、だめよぉ! もう……、持たない!」

 魔力の圧に圧し潰されそうになるレアを見て、頃合いかと判断した『エイネ』は魔力を高める。

 次の瞬間。レアの体に紅い鎖が纏わりつく。

 ――絶技、『武魔殺鎖マジック・キルチェーン』。

 レアの暴発しようとする魔力は鎖によって断ち切られる。そしてエイネの鎖は紅色が黒色に変わったのであった。それはつまりレアの魔力を強引に消し去った証だった。

「はぁっ……、はぁっ……!」

 レアは精根尽きたかの如くその場に倒れて必死に息を整える。

「大丈夫ですか、レアさん?」

 そんなレアを気遣うように声をかけるエイネであった。

「はぁっ……! はぁっ……! な、なんとか……」

 レアはエイネに言葉を返しはするが、目を開けるのも億劫な程の疲れを見せていた。

「本当であればここまで『青』のに、ある程度筈なんですが、どうやらレアさんは『金色の目ゴールド・アイ』で強引に魔力を支配しながら練度を無理に上げ続けてきたようですね?」

 普通の練度を上げる手順など、誰にも教わってこなかったレアは、そんなことを言われても分からない。

『二色の併用』にしても全て自分ひとりで身につけて、誰にも頼らずに『リラリオ』の世界でたった十年の間に身につけたのだ。

 手順がどうとか言われても困るというのが、彼女の主張である。

「まぁそれでも戦闘で使ってこられたという事実は認めますよレアさん。本当に大したものです」

 そういってニコリと笑いながら倒れているレアに手を差し出す。その手をレアは掴んで自分の身体を起こす。

「フルーフ様の期待を裏切れないからねぇ」

 大きくため息をついて、ようやく息を整えられたレアであった。その言葉を聞いてふふっと笑うエイネ。

「それにしてもあの子。どこまで才能センスに溢れているのよぉ」

 レアは横でエイネの言いつけ通りに『』を纏い続けているリーシャを見る。
 今日の研鑽が始まった最初からレアが練度の調節が終わるまでずっと『紅』を纏い続けている。

 これだけの長い時間。ずっと『紅』を纏うにはどれほどの魔力量が消費されるだろうか。五歳の魔族が保有する魔力量など等に超えている。

(1500万? いや、もしかしたらあの子、もう魔力値が2000万近いわねぇ)

 すでにその数値は『覚醒した魔王』に達した『エリス』階級クラスであり、リラリオの世界では『魔』を管理していた一般精霊よりも大幅に上回る魔力値であった。

「いえいえ。まだまだこれからですよ。には、こんなモノでは

 そう言って薄く笑うエイネに、信じられないものを見るような目で驚くレアであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...