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煌聖教団誕生編
377.レアは圧倒的な実力差を思い知る
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「ほう。貴方でも世界を支配出来たというのですか。それが本当なのであれば大したものです。しかしまぁその程度で支配が出来たというのであれば、それは余程、レベルの低い世界だったのでしょうな?」
レアの脳内にバルドの言葉がゆっくりと入り込んでくる。
「な、な……! 何ですって!?」
レアを通して『リラリオ』の世界を見下すような発言がバルドの口から飛び出した事によって、レアはばくばくと心臓に動悸が起き始めたのを自覚して左手でそっと胸を抑えるのだった。
――バルドの言葉はレアの感情を激しく揺り動かした。
レアを馬鹿にされただけではなく、あれだけ強かったキーリまで、馬鹿にされたように感じたからだ。
「屋敷の中で貴方の力を感知させてもらいましたがね。あの程度の実力で『組織』を追うのは無理だと申したのですよ。下手に動かれて折角の手掛かりを失えば、我々は目も当てられないのでね」
レアを怒らせようとしての発言や煽りというわけでもなく、純粋に本音で喋っていると言う事を察したレアは、更にに怒りのボルテージが上がっていき、気が付けばオーラがレアを纏い始めていた。
「今すぐ発言を取り消しなさい。さもなくば許しはしないわよ」
レアはすぐにでも攻撃に出そうな自分を自制して、あくまで一宿一飯をしてくれた相手に敬意を持った上で警告を送る。
――しかしそんなレアの我慢もむなしく、バルドはさらに言葉を連ねる。
「カッカッカ! ワシが言葉を取り消す? 力もない未熟な魔族が無駄死にするのはどうでもいいが、ソフィ様の苦労まで水の泡にされては目も当てられないと言っているのですよ。本当に貴方は理解力が乏しいですな? ここまで言われてもまだ分からないかね?」
次の瞬間、レアはバルドに殺意を以て飛び掛かっていった。
「もう殺す!! お前はいったい何様のつもりよぉ!」
『青』3.3のオーラを纏いながら、バルドに襲い掛かるレアだが、そのレアの右拳をバルドはあっさりと躱してみせた。
「な……っ!」
そしてレアが驚いて目を丸くしながら姿が消えたようにみえたバルドを探すが、次の瞬間レアの目に星が走った。
「レアさん。少し冷静になって聞いてほしいのだ」
「はっ……! うぐっ……」
レアは腹部を押さえながらその場で蹲り倒れた。信じられないことに『青』を纏った戦闘態勢のレアを相手にカウンターで横面に一撃入れた後、手加減をした膝蹴りをレアの腹にいれて動きを止めたのであった。
「我々が今行うべきことはこの世界の転覆を図っている、組織の連中の狙いを見定める事。そしてようやく敵の尻尾を掴みかけたこのタイミングで、貴方が要らない事をすれば元の木阿弥になってしまうのだ」
蹲り倒れているレアの前で片膝をつきながら、そう伝えると優しくレアを担ぎ上げる。
「手荒な真似をして申し訳ない。夜にまたじっくりと話をしましょう」
「……」
レアはバルドを睨むが、その目に『金色』の目をしたバルドが視線を合わせると、レアは気を失い、深い闇に落ちていくのであった。
……
……
……
「ん……」
レアは昨日の夜と同じ長老の家で目を覚ます。意識が朧気なレアは、ぼーっとしていたが、すぐに我に返って身体を起こし始める。
「あ、あいつは!?」
掛けられていた布団をのけながら立ち上がり、襖を開けて長老の部屋に入ると昨日と同じように酒を呷るバルドがこちらを見ていた。
「目覚められたようですが、どうです? 少しは落ち着かれましたかな。レアさん」
「あ、あなたねぇ! いきなりあんな事をしておいて、いけしゃあしゃあと……!」
「カッカッカ! いきなり殴りかかってきた貴方が悪いのではないかね?」
レアが喋っている最中にかぶせる様にバルドがそう告げると、彼女は悔しそうにバルドを睨む。
「まぁ、そこに座りなさい」
レアに怒りが再びわいてくるが、今は話を聞くのが先だとレアは言う通りにバルドの前に座った。
座る直前に周りを見渡したが、今日はこの家にリーシャもエイネの姿が無い。窓から外の明かりを見る限り、どうやらレアは長い時間意識を失っていたようだった。
「貴方何者なの? 私をあっさり倒して見せた以上はただの森の集落の長老なわけがないわよね?」
レアは『二色の併用』を使ってはいなかったが『青』の練度はキーリと相対したときよりも上がっていた。
そんなレアをあっさりと倒せる力を持つバルドは、ただの老人ではないとレアは痛い程に理解したのだった。
「ワシはソフィ様の直属の配下にして、過去にソフィ様の魔王軍に属していた者ですじゃ」
「あ、あのローブの男の? 貴方あれほどの強さを持っているのに、誰かの下についているのぉ?」
『レパート』の世界を支配しようとしていた、大魔王ヴァルテンより強いレアをあっさりと倒して見せた目の前の男は、あの大して戦力値の高くなかった『ローブの男』の配下だという。
とても信じられなかったが、どうやらバルドの態度を見ていれば本当の事なのだと思わせられた。
「ソフィ様の魔王軍の中ではワシ程度など偉ぶれる程ではないが、今のあなたよりは強いと断言できますな」
煽りではなく心の底からそう信じているバルドの言葉に、悔しいが今のレアはそれを否定できない。
「話を戻しますがね。ワシらも今フルーフ殿を攫ったと思わしき者達を追っているところなのです」
「どうやら本当らしいわねぇ」
集落の前で聞かされた時より、実際に直接戦った事でバルドの言葉に信憑性が出てきていた。
「貴方が別の世界からフルーフ殿を探しに来ていた事は理解していますが、どうか今は静観してワシらに任せておいて欲しいのですよ。何か分かれば貴方にも必ず伝えます」
本当であればバルド達の情報は、完全に機密事項として扱われるためにレアにも話す事は許されない。
しかしバルドはレアがフルーフに対して並々ならぬ覚悟を以て、この世界に来ていると判断したためにかなりの危険を承知の上で『レア』には伝えようと考えているのであった。
「わ、分かった。もうそれでいいわぁ。もし私が逆らって勝手に探し始めても、貴方が動けばどう足掻いても何にもできなさそうだものねぇ……」
レアはここまで自分を強くするために、本当に、本当に長い間努力を重ねて研鑽を続けてきた。それをあっさりと否定されるかの如く、弱いと言われてひどく落ち込んでいた。
(こ、こんな……! こんな無様で体たらくな身で『エリス』ちゃんや『ラクス』ちゃんに戦い方を教えていたなんて、私はいったい、一体、何様だったのかしらねぇ)
レアは上には上がいることも自分がまだまだだと言う事も理解はしていた。
しかしそれでもキーリを倒して、一つの世界の頂点に立ったという彼女の矜持は、少なからずレアを慢心させていたのかもしれない。
今レアは更なる研鑽を誓って、せめて目の前のバルドよりは強くなろうという気持ちが芽生えていた。
――そしてこれこそがレアの怖いところであり、すごいところであった。
本来ここまで力の差を見せつけられた場合、ほとんどの魔族は諦めて配下に下ろうと考えるのが常である。
しかしレアは幼き頃から他人とは違う生活を続けてきた。ほとんど自分ひとりで行動し、考えて何とか乗り越えてきたのである。そんなレアは他人とは少しばかりズレた考えをしており、他人に頼ろうとか諦めるという考えは頭になかった。
自分より強い者が現れたのであれば、その存在を越えてやるという気概をレアは持つ事が出来る。それはつまり魔族にしては、とても稀有な存在であったのだろう。
「まぁそこまで卑屈にならぬでもよいでしょう。ところでレアさん。今より少しばかり強くなって見る気はあるかね?」
突然のバルドの言葉に俯いていた顔をあげてバルドを見る。
「ワシらにフルーフ殿の探索を任せてくれると約束して大人しくしてくれるのならば、その間にエイネに貴方を鍛える様に伝えておくがどうかね?」
「え、エイネに? ま、まさか私はあの子にも負けると言いたいのかしらぁ!」
リーシャの試験でボアに『名付け』をつけられていた事を考えると彼女も『魔王』以上の領域へは立っているだろうが、それでも今の『真なる大魔王』の領域に立っている自分よりは強いとは到底思えないレアであった。
「残念だがこの大陸では、貴方の強さなど下から数えた方が早いのですよ。あと数十年もすれば『リーシャ』にも抜かれるかもしれませんな」
その言葉にレアは目を丸くして口をあけて驚く。
「ば、ば、馬鹿にしているの!? あ! そ、そうよ! 私の本当の力はまだあなたは見ていなかったわね!」
そう言うとレアは立ち上がり『二色の併用』を行うための力を開放しようとする。
「落ち着きなされ」
家の中で『二色の併用』を使おうとするレアをやんわりと窘めるバルドだった。
「貴方が屋敷で戦った時に出した力が本気ではない事を知っています。しかしそれを加味した上でも、まだまだだと申しているのです」
「な……! 何ですって……っ!」
バルドの言葉はどんどんと『レア』の精神を削っていくのであった。
……
……
……
レアの脳内にバルドの言葉がゆっくりと入り込んでくる。
「な、な……! 何ですって!?」
レアを通して『リラリオ』の世界を見下すような発言がバルドの口から飛び出した事によって、レアはばくばくと心臓に動悸が起き始めたのを自覚して左手でそっと胸を抑えるのだった。
――バルドの言葉はレアの感情を激しく揺り動かした。
レアを馬鹿にされただけではなく、あれだけ強かったキーリまで、馬鹿にされたように感じたからだ。
「屋敷の中で貴方の力を感知させてもらいましたがね。あの程度の実力で『組織』を追うのは無理だと申したのですよ。下手に動かれて折角の手掛かりを失えば、我々は目も当てられないのでね」
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「今すぐ発言を取り消しなさい。さもなくば許しはしないわよ」
レアはすぐにでも攻撃に出そうな自分を自制して、あくまで一宿一飯をしてくれた相手に敬意を持った上で警告を送る。
――しかしそんなレアの我慢もむなしく、バルドはさらに言葉を連ねる。
「カッカッカ! ワシが言葉を取り消す? 力もない未熟な魔族が無駄死にするのはどうでもいいが、ソフィ様の苦労まで水の泡にされては目も当てられないと言っているのですよ。本当に貴方は理解力が乏しいですな? ここまで言われてもまだ分からないかね?」
次の瞬間、レアはバルドに殺意を以て飛び掛かっていった。
「もう殺す!! お前はいったい何様のつもりよぉ!」
『青』3.3のオーラを纏いながら、バルドに襲い掛かるレアだが、そのレアの右拳をバルドはあっさりと躱してみせた。
「な……っ!」
そしてレアが驚いて目を丸くしながら姿が消えたようにみえたバルドを探すが、次の瞬間レアの目に星が走った。
「レアさん。少し冷静になって聞いてほしいのだ」
「はっ……! うぐっ……」
レアは腹部を押さえながらその場で蹲り倒れた。信じられないことに『青』を纏った戦闘態勢のレアを相手にカウンターで横面に一撃入れた後、手加減をした膝蹴りをレアの腹にいれて動きを止めたのであった。
「我々が今行うべきことはこの世界の転覆を図っている、組織の連中の狙いを見定める事。そしてようやく敵の尻尾を掴みかけたこのタイミングで、貴方が要らない事をすれば元の木阿弥になってしまうのだ」
蹲り倒れているレアの前で片膝をつきながら、そう伝えると優しくレアを担ぎ上げる。
「手荒な真似をして申し訳ない。夜にまたじっくりと話をしましょう」
「……」
レアはバルドを睨むが、その目に『金色』の目をしたバルドが視線を合わせると、レアは気を失い、深い闇に落ちていくのであった。
……
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「ん……」
レアは昨日の夜と同じ長老の家で目を覚ます。意識が朧気なレアは、ぼーっとしていたが、すぐに我に返って身体を起こし始める。
「あ、あいつは!?」
掛けられていた布団をのけながら立ち上がり、襖を開けて長老の部屋に入ると昨日と同じように酒を呷るバルドがこちらを見ていた。
「目覚められたようですが、どうです? 少しは落ち着かれましたかな。レアさん」
「あ、あなたねぇ! いきなりあんな事をしておいて、いけしゃあしゃあと……!」
「カッカッカ! いきなり殴りかかってきた貴方が悪いのではないかね?」
レアが喋っている最中にかぶせる様にバルドがそう告げると、彼女は悔しそうにバルドを睨む。
「まぁ、そこに座りなさい」
レアに怒りが再びわいてくるが、今は話を聞くのが先だとレアは言う通りにバルドの前に座った。
座る直前に周りを見渡したが、今日はこの家にリーシャもエイネの姿が無い。窓から外の明かりを見る限り、どうやらレアは長い時間意識を失っていたようだった。
「貴方何者なの? 私をあっさり倒して見せた以上はただの森の集落の長老なわけがないわよね?」
レアは『二色の併用』を使ってはいなかったが『青』の練度はキーリと相対したときよりも上がっていた。
そんなレアをあっさりと倒せる力を持つバルドは、ただの老人ではないとレアは痛い程に理解したのだった。
「ワシはソフィ様の直属の配下にして、過去にソフィ様の魔王軍に属していた者ですじゃ」
「あ、あのローブの男の? 貴方あれほどの強さを持っているのに、誰かの下についているのぉ?」
『レパート』の世界を支配しようとしていた、大魔王ヴァルテンより強いレアをあっさりと倒して見せた目の前の男は、あの大して戦力値の高くなかった『ローブの男』の配下だという。
とても信じられなかったが、どうやらバルドの態度を見ていれば本当の事なのだと思わせられた。
「ソフィ様の魔王軍の中ではワシ程度など偉ぶれる程ではないが、今のあなたよりは強いと断言できますな」
煽りではなく心の底からそう信じているバルドの言葉に、悔しいが今のレアはそれを否定できない。
「話を戻しますがね。ワシらも今フルーフ殿を攫ったと思わしき者達を追っているところなのです」
「どうやら本当らしいわねぇ」
集落の前で聞かされた時より、実際に直接戦った事でバルドの言葉に信憑性が出てきていた。
「貴方が別の世界からフルーフ殿を探しに来ていた事は理解していますが、どうか今は静観してワシらに任せておいて欲しいのですよ。何か分かれば貴方にも必ず伝えます」
本当であればバルド達の情報は、完全に機密事項として扱われるためにレアにも話す事は許されない。
しかしバルドはレアがフルーフに対して並々ならぬ覚悟を以て、この世界に来ていると判断したためにかなりの危険を承知の上で『レア』には伝えようと考えているのであった。
「わ、分かった。もうそれでいいわぁ。もし私が逆らって勝手に探し始めても、貴方が動けばどう足掻いても何にもできなさそうだものねぇ……」
レアはここまで自分を強くするために、本当に、本当に長い間努力を重ねて研鑽を続けてきた。それをあっさりと否定されるかの如く、弱いと言われてひどく落ち込んでいた。
(こ、こんな……! こんな無様で体たらくな身で『エリス』ちゃんや『ラクス』ちゃんに戦い方を教えていたなんて、私はいったい、一体、何様だったのかしらねぇ)
レアは上には上がいることも自分がまだまだだと言う事も理解はしていた。
しかしそれでもキーリを倒して、一つの世界の頂点に立ったという彼女の矜持は、少なからずレアを慢心させていたのかもしれない。
今レアは更なる研鑽を誓って、せめて目の前のバルドよりは強くなろうという気持ちが芽生えていた。
――そしてこれこそがレアの怖いところであり、すごいところであった。
本来ここまで力の差を見せつけられた場合、ほとんどの魔族は諦めて配下に下ろうと考えるのが常である。
しかしレアは幼き頃から他人とは違う生活を続けてきた。ほとんど自分ひとりで行動し、考えて何とか乗り越えてきたのである。そんなレアは他人とは少しばかりズレた考えをしており、他人に頼ろうとか諦めるという考えは頭になかった。
自分より強い者が現れたのであれば、その存在を越えてやるという気概をレアは持つ事が出来る。それはつまり魔族にしては、とても稀有な存在であったのだろう。
「まぁそこまで卑屈にならぬでもよいでしょう。ところでレアさん。今より少しばかり強くなって見る気はあるかね?」
突然のバルドの言葉に俯いていた顔をあげてバルドを見る。
「ワシらにフルーフ殿の探索を任せてくれると約束して大人しくしてくれるのならば、その間にエイネに貴方を鍛える様に伝えておくがどうかね?」
「え、エイネに? ま、まさか私はあの子にも負けると言いたいのかしらぁ!」
リーシャの試験でボアに『名付け』をつけられていた事を考えると彼女も『魔王』以上の領域へは立っているだろうが、それでも今の『真なる大魔王』の領域に立っている自分よりは強いとは到底思えないレアであった。
「残念だがこの大陸では、貴方の強さなど下から数えた方が早いのですよ。あと数十年もすれば『リーシャ』にも抜かれるかもしれませんな」
その言葉にレアは目を丸くして口をあけて驚く。
「ば、ば、馬鹿にしているの!? あ! そ、そうよ! 私の本当の力はまだあなたは見ていなかったわね!」
そう言うとレアは立ち上がり『二色の併用』を行うための力を開放しようとする。
「落ち着きなされ」
家の中で『二色の併用』を使おうとするレアをやんわりと窘めるバルドだった。
「貴方が屋敷で戦った時に出した力が本気ではない事を知っています。しかしそれを加味した上でも、まだまだだと申しているのです」
「な……! 何ですって……っ!」
バルドの言葉はどんどんと『レア』の精神を削っていくのであった。
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