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リラリオの魔王編
352.ヴェルマー大陸を守る為に本気になる魔王
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その頃ベイド達はレアの命令によりディアミール大陸へ向かっていた。
彼らは龍族の襲撃の寸前にレアの命令によって、ヴェルマー大陸から飛びだっており、無事に難を逃れる事に成功していたのである。
「ベイド様、もうすぐ魔人達の大陸に到着します」
ベイドにそう話すのは『ラルグ』魔国の重鎮の一体で、現在は国のNo.4の座に居る魔族だった。
「そうか……。分かった」
ベイドは配下にそう相槌を返すと、自分たちがあの上位種である魔人達の大陸に降り立つ事に強い違和感を感じていた。
もしレア女王がいなければ、魔人の大陸になど誰が降り立つことが出来ただろうか。魔族よりも強く圧倒的な力を持つ魔人族。
この世界で他種族を支配しようとしていた恐ろしい種族の本拠地だが、現在はレアの力によって、魔族達の支配下に置かれた大陸である。
配下が言っていた通りすぐ傍まで来ていたらしく、ベイドの視界の先に大陸が見えてきた。
「よし、お前達大陸へ降りる準備をしろ。間違っても生き残りの魔人と揉めるではないぞ」
ラルグ魔国の宰相『ベイド』の言葉にラルグ魔国の同胞達は一斉に頷いた。
万が一ではあるが『レア』も『エリス』もいないこの状況で彼らが魔人達と揉めた場合、ベイド達はあっさりと魔人達に屠られるだろう。あくまでレアという魔王がいるからこそ、生き残りの魔人達は従うのである。
ベイド達がディアミール大陸へ到着すると、すぐに魔人達が集まってきた。どうやらベイド達が大陸に近づいてくるのを感知していたようだ。
「ようこそおいで下さいました」
表面上は嫌な顔をせず、魔族達を歓待する為に出迎えに来た魔人達だった。
「ああ、突然失礼する。少しの間、我らをこの大陸に逗留させて欲しいのだが、良いだろうか?」
ベイドが恐る恐るそう言うと、魔人達はすぐに頷いてくれた。
「もちろん構いませんよ。現在我ら魔人は魔族に従う事を誓っています。もう少し砕けた態度をなさってください」
そういって目の前の魔人は笑顔を見せてきた。
「あ、ああ……。すまないな、では頼むぞ」
ベイドがほっとした表情を浮かべると、魔人達は街へと案内してくれた。
その街はどうやら『幹部級』達の移住区であったらしく、なかなかに綺麗な街並であった。
先導する魔人は残された者たちの魔人の中では、相当に顔役らしくすれ違う魔人達は頭を下げて挨拶をしていく。
そして最初はベイド達を無視して通り過ぎようとしたが、先導する魔人が睨むと後ろに居るベイド達にも慌てて頭を下げて行くのだった。
やがてそういうやり取りを何度かしていく内に、大きな屋敷に辿り着いた。
「さぁ、中へどうぞ」
魔人がそう言うとベイド達はゆっくりと中へ足を踏み入れていく。
広い廊下の先、大きな扉を魔人達が開けると、その部屋に通されるベイド達であった。
「これは凄い……!」
中は広く煌びやかな調度品等がそこらかしこに置かれてたその部屋は、元々ラルグ魔国の王であったベイドが感嘆の声を漏らす程に豪勢な物であった。
「滞在中はこの屋敷を自由にお使い下さい。それと何か必要なものがあれば可能な限り用意させますので、お気軽にお呼び下さいね」
ここまで案内してくれた魔人は笑顔でそう言ってくれた。
「すまないな……。この礼は必ず」
ベイドがそういって頭を下げると、魔人は気にしないでくださいと首を横に振っていた。
「それでは何かあれば……、こいつにお申し付け下さい、オイ」
「はい」
案内してくれた魔人に声をかけられて、この屋敷にいた魔人がこちらに寄ってきた。
「皆様がここにいる間、私がお世話をさせていただきます。名を『リューガ』と申します。以後宜しくお願いします」
そう言ってリューガは丁寧な口調と共に頭を下げてきた。
「私はベイドだ。当面の間、ここに世話になるがよろしく頼む」
こうして互いに挨拶を済ませて、ベイド達は魔人の屋敷に逗留することになるのだった。
…………
魔族達を屋敷まで案内した魔人は、リューガに後を任せて部屋を出る。
「ふぅ」
溜息をついて魔人は屋敷を出ると、そこにさっき通りがかった若い魔人が声をかけてきた。
「イーガ様。本当にこの大陸に魔族の滞在を許されるのですか?」
イーガと呼ばれた魔人は不機嫌そうに部下の声に顔を上げた。
「仕方がないだろう? 奴らはシュケイン様でさえ適わなかった魔族の王の側近達だ。言う事を聞くしかあるまい?」
イーガがそう言うと、若い魔人は下を向いて俯く。
「我らは魔族に負けたのだ。お前たちも悔しいのは分かるが現実を受け入れろ」
イーガ自身不満気な顔をしながら、若い魔人にそう言ってそこから離れていった。
「私達はイーガ様のように物分かりが良くないですよ……」
去っていく現在の魔人達を取り仕切るボス。イーガの後ろ姿を見ながら、その若い魔人は拳を握りしめるのだった。
……
……
……
「ハァッ、ハァッ……」
魔力を一気に放出し終えたレアは、ヴェルマーの上空で息を吐きながら顔を歪ませる。
「エリスちゃん、待ってなさいねぇ。必ず仇は取るわよぉ」
レアはその日を境に決意を新たにし、修羅の如く研鑽に身を置くのだった。
こうしてレアはレパートの地を離れて、初めて大事な人を失うという気持ちを知るのだった。
今まで自分とフルーフ以外に興味を持ったこと事がないレアにとって、他人の為に敵を滅ぼそうというその感情を理解できなかった。
あくまで今までのレアは、フルーフから与えられた言葉が全てでありそのために動いていた。しかし、今のレアはそんなフルーフの命令以外に目的を持つに至ったのである。
――エリスという魔族の存在の死は、レアに少なからず影響を与えた。
それは龍族達にとってはとても不運な出来事だったといえる。
リラリオという世界で最強の種族。龍族はこのヴェルマー襲撃の一件で『魔王』レアの成長を促し、最強の種族の座から下る原因となったのだから――。
彼らは龍族の襲撃の寸前にレアの命令によって、ヴェルマー大陸から飛びだっており、無事に難を逃れる事に成功していたのである。
「ベイド様、もうすぐ魔人達の大陸に到着します」
ベイドにそう話すのは『ラルグ』魔国の重鎮の一体で、現在は国のNo.4の座に居る魔族だった。
「そうか……。分かった」
ベイドは配下にそう相槌を返すと、自分たちがあの上位種である魔人達の大陸に降り立つ事に強い違和感を感じていた。
もしレア女王がいなければ、魔人の大陸になど誰が降り立つことが出来ただろうか。魔族よりも強く圧倒的な力を持つ魔人族。
この世界で他種族を支配しようとしていた恐ろしい種族の本拠地だが、現在はレアの力によって、魔族達の支配下に置かれた大陸である。
配下が言っていた通りすぐ傍まで来ていたらしく、ベイドの視界の先に大陸が見えてきた。
「よし、お前達大陸へ降りる準備をしろ。間違っても生き残りの魔人と揉めるではないぞ」
ラルグ魔国の宰相『ベイド』の言葉にラルグ魔国の同胞達は一斉に頷いた。
万が一ではあるが『レア』も『エリス』もいないこの状況で彼らが魔人達と揉めた場合、ベイド達はあっさりと魔人達に屠られるだろう。あくまでレアという魔王がいるからこそ、生き残りの魔人達は従うのである。
ベイド達がディアミール大陸へ到着すると、すぐに魔人達が集まってきた。どうやらベイド達が大陸に近づいてくるのを感知していたようだ。
「ようこそおいで下さいました」
表面上は嫌な顔をせず、魔族達を歓待する為に出迎えに来た魔人達だった。
「ああ、突然失礼する。少しの間、我らをこの大陸に逗留させて欲しいのだが、良いだろうか?」
ベイドが恐る恐るそう言うと、魔人達はすぐに頷いてくれた。
「もちろん構いませんよ。現在我ら魔人は魔族に従う事を誓っています。もう少し砕けた態度をなさってください」
そういって目の前の魔人は笑顔を見せてきた。
「あ、ああ……。すまないな、では頼むぞ」
ベイドがほっとした表情を浮かべると、魔人達は街へと案内してくれた。
その街はどうやら『幹部級』達の移住区であったらしく、なかなかに綺麗な街並であった。
先導する魔人は残された者たちの魔人の中では、相当に顔役らしくすれ違う魔人達は頭を下げて挨拶をしていく。
そして最初はベイド達を無視して通り過ぎようとしたが、先導する魔人が睨むと後ろに居るベイド達にも慌てて頭を下げて行くのだった。
やがてそういうやり取りを何度かしていく内に、大きな屋敷に辿り着いた。
「さぁ、中へどうぞ」
魔人がそう言うとベイド達はゆっくりと中へ足を踏み入れていく。
広い廊下の先、大きな扉を魔人達が開けると、その部屋に通されるベイド達であった。
「これは凄い……!」
中は広く煌びやかな調度品等がそこらかしこに置かれてたその部屋は、元々ラルグ魔国の王であったベイドが感嘆の声を漏らす程に豪勢な物であった。
「滞在中はこの屋敷を自由にお使い下さい。それと何か必要なものがあれば可能な限り用意させますので、お気軽にお呼び下さいね」
ここまで案内してくれた魔人は笑顔でそう言ってくれた。
「すまないな……。この礼は必ず」
ベイドがそういって頭を下げると、魔人は気にしないでくださいと首を横に振っていた。
「それでは何かあれば……、こいつにお申し付け下さい、オイ」
「はい」
案内してくれた魔人に声をかけられて、この屋敷にいた魔人がこちらに寄ってきた。
「皆様がここにいる間、私がお世話をさせていただきます。名を『リューガ』と申します。以後宜しくお願いします」
そう言ってリューガは丁寧な口調と共に頭を下げてきた。
「私はベイドだ。当面の間、ここに世話になるがよろしく頼む」
こうして互いに挨拶を済ませて、ベイド達は魔人の屋敷に逗留することになるのだった。
…………
魔族達を屋敷まで案内した魔人は、リューガに後を任せて部屋を出る。
「ふぅ」
溜息をついて魔人は屋敷を出ると、そこにさっき通りがかった若い魔人が声をかけてきた。
「イーガ様。本当にこの大陸に魔族の滞在を許されるのですか?」
イーガと呼ばれた魔人は不機嫌そうに部下の声に顔を上げた。
「仕方がないだろう? 奴らはシュケイン様でさえ適わなかった魔族の王の側近達だ。言う事を聞くしかあるまい?」
イーガがそう言うと、若い魔人は下を向いて俯く。
「我らは魔族に負けたのだ。お前たちも悔しいのは分かるが現実を受け入れろ」
イーガ自身不満気な顔をしながら、若い魔人にそう言ってそこから離れていった。
「私達はイーガ様のように物分かりが良くないですよ……」
去っていく現在の魔人達を取り仕切るボス。イーガの後ろ姿を見ながら、その若い魔人は拳を握りしめるのだった。
……
……
……
「ハァッ、ハァッ……」
魔力を一気に放出し終えたレアは、ヴェルマーの上空で息を吐きながら顔を歪ませる。
「エリスちゃん、待ってなさいねぇ。必ず仇は取るわよぉ」
レアはその日を境に決意を新たにし、修羅の如く研鑽に身を置くのだった。
こうしてレアはレパートの地を離れて、初めて大事な人を失うという気持ちを知るのだった。
今まで自分とフルーフ以外に興味を持ったこと事がないレアにとって、他人の為に敵を滅ぼそうというその感情を理解できなかった。
あくまで今までのレアは、フルーフから与えられた言葉が全てでありそのために動いていた。しかし、今のレアはそんなフルーフの命令以外に目的を持つに至ったのである。
――エリスという魔族の存在の死は、レアに少なからず影響を与えた。
それは龍族達にとってはとても不運な出来事だったといえる。
リラリオという世界で最強の種族。龍族はこのヴェルマー襲撃の一件で『魔王』レアの成長を促し、最強の種族の座から下る原因となったのだから――。
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