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リラリオの魔王編
346.エリスの娘、その名はセレス王女
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レアがラルグ城の上空で辺りを見回すように待機していると、そこへ遂に龍達が続々と空を飛翔しながら集まってくる。
「来たわねぇ」
レアはいつものように余裕のある態度ではなく、最初からすでに青を纏いながら腕を組んでいた。
見つめる先にいる龍達の多くは戦力値が1億程度ではあったが、レアはそんな龍達を無視して何かを探すように視線を動かし始める。
「あいつか」
どうやら目的の存在は多くいる龍達のはるか後方でこちらを伺っているようだった。
ヴェルマー大陸に張っていた結界は、レアを以てしてもかなり上位の結界であり、戦力値1億を持つ龍族であっても簡単には解除出来ない程の代物なのである。
その結界を易々と破壊して見せたと言う事は、目の前にいるこの多くの龍達よりも強い存在がいると言うことの証明なのであった。
レアが後方にいる龍族を見つめていると、その龍はゆっくりと前に出てくる。その様子に周りにいた龍達から順番に左右へと道を開けていき、やがて一体の龍は人型になりながらレアの前まで出てくるのだった。
「お前が魔族の王だな?」
大きな龍の姿から人型になった事でレアは少しばかり驚いたが、龍の言葉にレアはゆっくりと口を開いた。
「いきなり私の大陸にずかずか乗り込んできて、一体何のつもりかしらぁ?」
同じ魔族であれば今のレアの威圧的なオーラとその言葉に、怯む程であったがその龍は平然としていた。
「お前達魔族は数々の事件を起こして、我らが龍族の始祖様であらせられるキーリ様に世界の敵と認定された。そして我ら龍族が世界の安寧の為に、お前達魔族を滅ぼさせてもらう事となった」
キッパリと魔族を滅ぼすと告げる龍にレアは薄く嗤う。
「へぇ? それは魔人族と精霊族を滅ぼしたのが、原因だからかしらぁ? でもねぇそれは私達から手を出したワケじゃなく、どれも向こうからちょっかいをかけられたから仕方なく身を守るためにやった事なのだけど? むしろ私たちは被害を受けた側なのだけどねぇ。あなたたち龍族様方は、魔族が敵に侵略行為を行われてもやり返す事はせずににこにこ笑いながら、されるがまま、なすがままにされろと仰りたいのかしらぁ?」
言葉の端々に嫌味を滲ませるような口調でレアは言葉を返した。
「そんなことを決めるのは私ではない。始祖龍キーリ様がお決めになられたから我々はそれに従いここにきているだけだ。理由がどうであろうとそんな事は知ったことではない」
「なっ……!?」
流石のレアもここまでキッパリと言い切られるとは思わなかった為に、素っ頓狂な声をあげてしまった。
目の前に居る龍族達はその始祖龍と呼ばれる主の命令によって、任務を遂行するためだけにここにきている。そうであるならば、レアがいくら言葉巧みに正論を述べたところで効果はない。
レアは少しでも龍族達の侵攻を遅らせようとばかりに、彼らを一時的に退かせる意味を兼ねて、大陸に話を持って帰らせようと模索しての挑発行為であったが、結局はアテが外れてしまった。どうやら余程龍族を束ねているという存在は大物であるらしい。
「お前達魔族は……いや、お前はやりすぎたのだ、魔族の王」
そう言うと目の前の龍は力を開放し始めた。
「お前の行いの所為で同胞の魔族達はこの時を以て滅びることになるのだ。あの世で自分の所業を悔い改めよ魔族の王」
その言葉を最後に人型であった龍族は本来の大きな龍の姿へと変貌していき、そしてそれが戦闘の合図となった。
……
……
……
「お母さま……だと? お前、エリス女王の子供なのか?」
ラクスは木陰からこちらを見つめる視線の主に語り掛ける。震える体を必死で堪えながら、ラクスの言葉に頷きを見せる少女。
「そうか……」
ラクスは切なげにそう口にすると、少女は恐る恐るといった様子でラクスに近づいて行き、やがて母親の亡骸の前まで来ると『エリス』の身体にしがみつくように抱きしめる。
「お母さま……、お……かあさまぁ……」
そして彼女は母親であるエリスが死んでいるという事を少しずつ実感していき、その少女は泣きながら母の目を覚まさせようと名を呼ぶ。
しかし物言わぬ亡骸となったエリスが目を覚ます事は無く、少女の噎び泣く声だけが辺りに響いた。
…………
ラクスは目の前で母親を抱きながら泣いている少女に自分の時の事を思い出してしまい、やるせない気持ちが身を包む。
いつまでそうしていただろうか……。
やがて少女はゆっくりと顔を上げた。涙で濡れた顔をラクスに向けながら静かに口を開いた。
「みんなは……おかあさまは……、レア様のせいで龍族様に殺されたんでしょ?」
――ラクスはその言葉に驚きを見せた。
「!! ち、違……!」
慌てて否定しようとするが、実際にレアは魔人族と精霊族を滅ぼしたせいで、この世界の調停者と呼ぶべき龍族に魔族が危険視されて襲撃されたのである。
「何が違うの? レアさ……あの女が余計なことをしなければ、お母さまは死ななかったんじゃないの……?」
「……」
真っすぐにラクスの顔を直視する少女にラクスは、ふいに視線を逸らしてしまう。
「ゆるせない……」
少女がそう呟くと同時にまだ残っていたのか、空から龍がラクス達を見つけて空から急降下してくるのだった。
「危ねぇ……!!」
ラクスは空から急降下しながら攻撃をしてきた龍から少女を庇う為に前に出て、龍からの攻撃を受ける。
「ぐっ……」
ラクスは少女を救う事は出来たが、咄嗟であったために『スクワード』も纏えず、大ダメージを代わりに受けてしまうのだった。
「だ、大丈夫!?」
慌てて少女は庇ってくれた魔人ラクスを心配そうに見つめてそう口を開く。
「あ……ああ、大丈夫だ!」
ラクスは立ち上がったかと思うと、少女を守るように前に立つ。
「お前は俺の後ろにいろ。ここから離れようとすると、あいつらはお前を狙うかもしれねぇ!!」
ゴクリと唾を飲み込みながら『セレス』という少女は頷く。
戦う意思を見せる魔人ラクスを見てその龍は、にやにやと笑い始めた。
そしてそんなラクスに龍が炎を吐こうとする。
「おせぇ!!」
しかしラクスは一瞬でスクアードを纏ったかと思うと、こちらに向けて炎を吐こうとしていた龍の前に転移したかと思わせる程の速度で肉薄して、目にも止まらぬ速さで拳を繰り出す。
そしてその拳は龍の顎を突き上げる。
「グアッ……!!」
そして魔人ラクスの目が赤くなったかと思うと、一度拳に力を入れて後ろに体の重心を引き、息を吐きながら一気に全体重を拳に乗せて前方に体を押し出し全力で拳を振りぬく。
恐ろしい程の威力を持った拳は、そのまま固い皮膚を持つ龍の体を突き破り、そのまま龍は白目を剥きながら倒れるのであった。
戦力値が1億を超えるこの世界の頂点に位置する龍族を相手取っても、レアに鍛え抜かれた『幹部級』の最上位の領域にまで届いた魔人『ラクス』の敵ではないようであった。
「す……っ、すごい……!!」
ラクスの後ろで怯えながらこちらを見ていた少女は、羨望の表情を浮かべながらラクスに称賛の声をあげるのであった。
「来たわねぇ」
レアはいつものように余裕のある態度ではなく、最初からすでに青を纏いながら腕を組んでいた。
見つめる先にいる龍達の多くは戦力値が1億程度ではあったが、レアはそんな龍達を無視して何かを探すように視線を動かし始める。
「あいつか」
どうやら目的の存在は多くいる龍達のはるか後方でこちらを伺っているようだった。
ヴェルマー大陸に張っていた結界は、レアを以てしてもかなり上位の結界であり、戦力値1億を持つ龍族であっても簡単には解除出来ない程の代物なのである。
その結界を易々と破壊して見せたと言う事は、目の前にいるこの多くの龍達よりも強い存在がいると言うことの証明なのであった。
レアが後方にいる龍族を見つめていると、その龍はゆっくりと前に出てくる。その様子に周りにいた龍達から順番に左右へと道を開けていき、やがて一体の龍は人型になりながらレアの前まで出てくるのだった。
「お前が魔族の王だな?」
大きな龍の姿から人型になった事でレアは少しばかり驚いたが、龍の言葉にレアはゆっくりと口を開いた。
「いきなり私の大陸にずかずか乗り込んできて、一体何のつもりかしらぁ?」
同じ魔族であれば今のレアの威圧的なオーラとその言葉に、怯む程であったがその龍は平然としていた。
「お前達魔族は数々の事件を起こして、我らが龍族の始祖様であらせられるキーリ様に世界の敵と認定された。そして我ら龍族が世界の安寧の為に、お前達魔族を滅ぼさせてもらう事となった」
キッパリと魔族を滅ぼすと告げる龍にレアは薄く嗤う。
「へぇ? それは魔人族と精霊族を滅ぼしたのが、原因だからかしらぁ? でもねぇそれは私達から手を出したワケじゃなく、どれも向こうからちょっかいをかけられたから仕方なく身を守るためにやった事なのだけど? むしろ私たちは被害を受けた側なのだけどねぇ。あなたたち龍族様方は、魔族が敵に侵略行為を行われてもやり返す事はせずににこにこ笑いながら、されるがまま、なすがままにされろと仰りたいのかしらぁ?」
言葉の端々に嫌味を滲ませるような口調でレアは言葉を返した。
「そんなことを決めるのは私ではない。始祖龍キーリ様がお決めになられたから我々はそれに従いここにきているだけだ。理由がどうであろうとそんな事は知ったことではない」
「なっ……!?」
流石のレアもここまでキッパリと言い切られるとは思わなかった為に、素っ頓狂な声をあげてしまった。
目の前に居る龍族達はその始祖龍と呼ばれる主の命令によって、任務を遂行するためだけにここにきている。そうであるならば、レアがいくら言葉巧みに正論を述べたところで効果はない。
レアは少しでも龍族達の侵攻を遅らせようとばかりに、彼らを一時的に退かせる意味を兼ねて、大陸に話を持って帰らせようと模索しての挑発行為であったが、結局はアテが外れてしまった。どうやら余程龍族を束ねているという存在は大物であるらしい。
「お前達魔族は……いや、お前はやりすぎたのだ、魔族の王」
そう言うと目の前の龍は力を開放し始めた。
「お前の行いの所為で同胞の魔族達はこの時を以て滅びることになるのだ。あの世で自分の所業を悔い改めよ魔族の王」
その言葉を最後に人型であった龍族は本来の大きな龍の姿へと変貌していき、そしてそれが戦闘の合図となった。
……
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「お母さま……だと? お前、エリス女王の子供なのか?」
ラクスは木陰からこちらを見つめる視線の主に語り掛ける。震える体を必死で堪えながら、ラクスの言葉に頷きを見せる少女。
「そうか……」
ラクスは切なげにそう口にすると、少女は恐る恐るといった様子でラクスに近づいて行き、やがて母親の亡骸の前まで来ると『エリス』の身体にしがみつくように抱きしめる。
「お母さま……、お……かあさまぁ……」
そして彼女は母親であるエリスが死んでいるという事を少しずつ実感していき、その少女は泣きながら母の目を覚まさせようと名を呼ぶ。
しかし物言わぬ亡骸となったエリスが目を覚ます事は無く、少女の噎び泣く声だけが辺りに響いた。
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ラクスは目の前で母親を抱きながら泣いている少女に自分の時の事を思い出してしまい、やるせない気持ちが身を包む。
いつまでそうしていただろうか……。
やがて少女はゆっくりと顔を上げた。涙で濡れた顔をラクスに向けながら静かに口を開いた。
「みんなは……おかあさまは……、レア様のせいで龍族様に殺されたんでしょ?」
――ラクスはその言葉に驚きを見せた。
「!! ち、違……!」
慌てて否定しようとするが、実際にレアは魔人族と精霊族を滅ぼしたせいで、この世界の調停者と呼ぶべき龍族に魔族が危険視されて襲撃されたのである。
「何が違うの? レアさ……あの女が余計なことをしなければ、お母さまは死ななかったんじゃないの……?」
「……」
真っすぐにラクスの顔を直視する少女にラクスは、ふいに視線を逸らしてしまう。
「ゆるせない……」
少女がそう呟くと同時にまだ残っていたのか、空から龍がラクス達を見つけて空から急降下してくるのだった。
「危ねぇ……!!」
ラクスは空から急降下しながら攻撃をしてきた龍から少女を庇う為に前に出て、龍からの攻撃を受ける。
「ぐっ……」
ラクスは少女を救う事は出来たが、咄嗟であったために『スクワード』も纏えず、大ダメージを代わりに受けてしまうのだった。
「だ、大丈夫!?」
慌てて少女は庇ってくれた魔人ラクスを心配そうに見つめてそう口を開く。
「あ……ああ、大丈夫だ!」
ラクスは立ち上がったかと思うと、少女を守るように前に立つ。
「お前は俺の後ろにいろ。ここから離れようとすると、あいつらはお前を狙うかもしれねぇ!!」
ゴクリと唾を飲み込みながら『セレス』という少女は頷く。
戦う意思を見せる魔人ラクスを見てその龍は、にやにやと笑い始めた。
そしてそんなラクスに龍が炎を吐こうとする。
「おせぇ!!」
しかしラクスは一瞬でスクアードを纏ったかと思うと、こちらに向けて炎を吐こうとしていた龍の前に転移したかと思わせる程の速度で肉薄して、目にも止まらぬ速さで拳を繰り出す。
そしてその拳は龍の顎を突き上げる。
「グアッ……!!」
そして魔人ラクスの目が赤くなったかと思うと、一度拳に力を入れて後ろに体の重心を引き、息を吐きながら一気に全体重を拳に乗せて前方に体を押し出し全力で拳を振りぬく。
恐ろしい程の威力を持った拳は、そのまま固い皮膚を持つ龍の体を突き破り、そのまま龍は白目を剥きながら倒れるのであった。
戦力値が1億を超えるこの世界の頂点に位置する龍族を相手取っても、レアに鍛え抜かれた『幹部級』の最上位の領域にまで届いた魔人『ラクス』の敵ではないようであった。
「す……っ、すごい……!!」
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