最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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リラリオの魔王編

328.予見する龍族の始祖キーリ

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 レアが『トーリエ』大陸の存在と精霊達の居場所を突き止めた頃、さらに遠く離れた龍族達の大陸『ターティス』では、今度は始祖龍のキーリがレアの行動を捉えていた。

「くっく……! 元気がいいな。このレアとかいう魔族の王」

 すでに魔人達が皆殺しにされたことや、最上位精霊『ジウ』があっさりと潰されるところも観ていたキーリは上機嫌にそう呟いた。

 横に控えていたディラルクは、その言葉に空に映し出されていた魔族の存在を思い浮かべた。

「確か此度の『魔族の王』は、小さな子供のような魔族でありましたか?」

「ああ。こいつを甘く見るなよ? 何が目的か分からないが、コイツは近々更に化けるだろう」

 キーリは他種族をあまり見下したり褒めたりはしない。そもそも評価に値するほどの存在が見当たらない為、他の種族に興味を示さないのである。

 そんな始祖龍キーリが魔族を素直に褒めているのを見て、側近のディラルクはレアという魔族に再び深い関心を示すのであった。

「近い将来こいつの束ねる魔族が俺たち以外の種族を支配下に置いて、俺達と全面戦争をするかもしれねぇな」

 ディラルクはキーリの言葉に目を丸くする。

 『龍族』は神々に近いとされる種族である。

 たとえこの『リラリオ』に現存する全種族達が手を組んで我ら龍族と事を構えたとして、それでも負ける事はあり得ないだろう。

 龍族と戦うという行為を行うとすれば、思い上がったあの魔人族達だけが可能性があったが今はもう滅びてしまった。

 今後は龍族を脅かす存在など現れることはないと、ディラルクは考えていたのである。そんなディラルクに告げたキーリの言葉は、まさに青天せいてん霹靂へきれきであった。

「確かに『魔人』を一体で滅ぼせる程の力を持つあの子供の魔族は、、我ら龍族にまで手を出して来ることはしないでしょう」

 その言葉を聞いたキーリは玉座に深く座り込んだ態勢のままで、眼光を鋭くさせながらディラルクを睨みつけた。

「我ら龍族は天上が認めになられた種族であり、その始祖である貴方様が我らにはついておられるのです」

 相手が強ければ強い程にキーリの力を見抜ける筈である。そしてキーリの力を感じた上で戦争を仕掛けてくる事があるならば、それは単に自殺願望があるか鹿くらいなものである。

 それにキーリが動かずとも龍族には数十万という数に上る同胞達がいる。龍族はその一体一体が高い戦闘能力を持っており、更にはキーリを守る側近『十体の守護龍』の存在もある。

 如何にレアという魔族がとんでもない力を持っていたとしても、闘いにすらならない筈である。

「ふんっ! まぁいいさ。あの野郎がここまで辿り着けるかどうか、楽しみにしておいてやろうじゃないか」

 ――『リラリオ』の世界の頂点。

 全ての種族からその存在を知られて神々からも一目置かれる龍族。その始祖であるキーリは『レア』という魔族が、どこまでの高みまで昇れるのかを見物することにするのであった。

 ……
 ……
 ……

「今すぐに攻めてもいいんだけどぉ。精霊を滅ぼしてエリスちゃん達の魔法が、使えなくなっても面白くないのよねぇ」

 別世界の『ことわり』から魔法を学んだレアにとっては、この世界にある『四元素』とやらがなくなろうとどうでもいいが、この世界の魔族達が『四元素』を操る精霊達が滅ぶことで、魔法そのものが使えなくなる可能性があるのだった。

 ようやく自己研鑽の重要性に気づいたヴェルマー大陸の魔族達。自分を高めようと毎日を励んでいるエリスや魔族達がいるのだから、レアはその努力を摘み取るつもりはない。

 しかしそれでもこの大陸に……、レアに喧嘩を売るような真似を働いた精霊達を彼女は、このまま許すつもりはなかった。

 ひとまずレアはラルグ城に戻って今後の精霊について考える事にするのであった。
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