上 下
330 / 1,915
リラリオの魔王編

321.フルーフの命令の意味と長い命題

しおりを挟む
 レアはラルグ城の中の数ある応接室の中の一つに、ラクスを連れて入るのだった。

 レアがラクスを連れて食堂を出る時、ラクスが執拗に三体の魔族を睨んでいたのをみたレアは、いずれあの魔族達にも話を聞かなければならないなと思うのだった。

「それで何故今回貴方がこんなトラブルを起こしたのか、その理由を聞かせてもらおうかしらぁ?」

 レアは応接室にある大きなテーブルを挟んだ向かいの椅子に、ラクスが座ったのを見計らってからそう声を掛ける。

「その前にこの前のことを謝罪させてくれっ!」

 開口一番のラクスの予想外の謝罪の言葉にレアは驚いた。

「それは、前の修行の時のことかしら?」

「ああ、そうだ……。嫌な事があって最近は荒れていたんだよ」

「それが今回の貴方が暴れた事にも繋がっているのねぇ?」

 レアの的確な言葉にラクスは頷く他無かった。

 そして続きを促すように示されたラクスは、嫌がらせを受けていた事を説明する。

 このまま続くようであれば、本当に自分は魔族達を殺してしまうかもしれないという事も付け加えて、余す事無くレアに伝えるのであった。

「なるほどねぇ……」

 レアはラクスの言葉をしっかりと聞いてくれた。

 先程までのレアの態度を見ていればもしかしたら、馬鹿にされるかもしれないとラクスは思っていただけに、今のレアの態度はかなり嬉しかった。

「ラクスちゃんに嫌がらせをしていた者達は、さっき食堂で怯えていたあの三体の魔族かしら?」

 ラクスはレアに素直に頷いて見せた。

「少しその魔族達にも話を聞いてみるから、貴方は普段通り修行を続けなさいねぇ」

 そう言ってレアは、椅子に深く座る。

「……」

 どうやらレアはそれ以上話すつもりはないらしく、目でラクスを退室するように促す。

「すまなかったな……」

 そう言ってレアに頭を下げて、部屋を出ていくラクスであった。

 誰もいなくなった応接室にレアだけが取り残される。

「……誰も手を差し伸べてくれない苦しみは、この私が誰よりも分かっている筈なのにねぇ?」

 過去のレアはを憎み、全てを壊したいとまで願っていた。
 そんな彼女がのは、拾ってくれたフルーフの存在があったからだ。

 誰からも必要とされない苦しみを知っている筈なのに、エリスが居なければレアはラクスを見捨ててしまうところであった。

 元々魔人を滅ぼしたのはレアであり、強引に拾い持って帰ってきた『ラクス』を見捨ててしまうところだったのだ。

というのは難しいですね、フルーフ様」

 という二文字には色々と考える余地があるのだと、考えさせられるレアであった。

 力がある者が強引に世界のリーダーになることは出来る。

 しかしそれは一時的な事であり世界を支配するという事は、世界全てをその支配者が上手く運営していかなくてはならない。

 十年や百年という短い期間であれば、魔族として力ある者ならば、世界を支配することは容易であろう。

 しかしフルーフが言っていた『世界を支配してきなさい』という言葉には、その先を見据えた意味があったのではないかと、それは決して簡単な事ではないのかもしれないと悩むレアであった。

 苦しくもこの悩みは『アレルバレル』というを、ソフィであっても今も考えさせられる命題であった。

 その壮絶で果てしなく長い命題にようやく辿り着いたレアは、まだその入り口に立ったばかりに過ぎず、世界を束ねるという行為に着手してしまった今、レアは長く苦しい『支配』への道を見据えていかなければならなく、今回の事でようやくその道が見えてきたのだった。

「まぁ今は目の前の事を少しずつ片付けていかないとねぇ」

 そう言うとレアは『ラクス』に嫌がらせをしていたという、を部屋に呼ぶのであった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...