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リラリオの魔王編
318.エリス女王に相談する魔王レア
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レアはその日の自己研鑽を終えた後にある者を自室へと呼ぶのであった。
その人物とはレイズ魔国の女王であり、今や魔族の王となったレアの側近を務める『エリス』女王であった。
当初こそレアにいい感情を抱いていなかったエリスだが、何度もレアの話し相手をしている内に、レアの人となりのようなモノが分かるようになり、こうしてレアに自室に呼ばれることが嫌ではなくなっていた。
そして今日もレアに呼び出されて『ラルグ』魔国に来てみれば、何やら不機嫌そうに口を尖らせるレアの姿があった。
「何やらご機嫌斜めですわね?」
そう言ってレアの部屋へ入ってきたエリスは、苦笑いを浮かべながら言葉にするのであった。
「よく来たわねぇエリスちゃん。少し私の相談に乗って欲しくてねぇ?」
そう言って椅子に座ろうとするエリスに首を振って、自分が座っているベッドの横をぽんぽんと叩く。
どうやら不機嫌なお姫様は『エリス』に隣に座って話を聞いて欲しそうだった。それを見たエリスは、はいはいとばかりに履物を脱いでベッドの上に上がりレアの隣に座る。
「それで、今日はどうなされたのかしら?」
「それがねぇ? うちのラクスちゃんの様子がおかしいのよぉ」
まるでそのレアの様子は、我が子の反抗期に悩む親のようであった――。
……
……
……
その頃ラクスはいつものようにレアのいる城の訓練場へは行かず、城の中庭でひとり瞑想をしていた。
ここ三か月もの間、みっちりとレアに鍛え上げられたラクスは、かなりの力を有するようになっていた。
すでに『スクアード』を使って戦えば『幹部級』の下位であった『リオン』や『リーベ』程度であれば、あっさりと倒せる程の強さを有していた。
しかしそんなラクスにレアは、まだまだだと窘めた。
そして指摘してきたのは、精神の修行であった。
その時は何を馬鹿な事をとラクスは一蹴して見せたが、今回の件を経て考えを変えていた。
(確かに周りの言葉や行動一つでこんなにも精神をかき乱される自分は、精神力を鍛える必要がある)
ラクスはそう考えて普段誰も来ない場所を選び、一人瞑想を始めたのだった。そして冷静になりながらレアの事を考える。
あいつは同胞を殺した憎い魔族であり、敵ではある。
しかし元々ヴェルマー大陸に戦争を仕掛けたのは、魔人の王であるシュケイン様である。レアは攻めてきた魔人達から脅威を払う為に戦ったに過ぎない。
それにこれは三か月間『ヴェルマー』大陸で生活をして、レアと接してきた俺だから感じられたことだが、レアという魔族は少しばかり他の魔族とは違う。
魔族の視点で他の種族を判断せず、自分の裁量でしっかりと相手を見ている。確かに他の魔族には持っていない大きな器の持ち主であり、それこそが王の資質なのであろう。
だが、いくら王が素晴らしくとも配下の魔族どもは腐っている。
俺が魔人だというのが気に入らないのか知らないが、表立っては何もしてこない癖に裏でこそこそと陰湿な事をする。
だが、奴らの狙いはなんとなく分かってきた。
俺を怒らせて魔族相手に手を出した時に、やはり魔人は粗暴な種族だと糾弾してこの国から追い出すか、大方レアの奴に処刑させようと企んでいるのだろう。
今の俺であれば単なる魔族達に囲まれたところでやられる気はしないが、あのレアだけは駄目だ、全く勝てる気がしない。
このまま耐えて嫌がらせをされなくなるまで、待つしかないのだろうか。奴らの狙いが俺を追い出す事なのであれば我慢さえすれば、アテが外れて諦めてくれるかもしれない。
瞑想をしていたラクスはそう結論を出して、やがて立ち上がるのだった。
「明日レアに謝りにいこう」
今日の自分の態度を反省して、素直に謝罪しようと決めたラクスであった。
しかし自室の扉を開けようとして、鍵が開けられている事に気づいて嫌な予感がよぎった。
ゆっくりと扉を開けて中を見てみると案の定、部屋の中は荒らされていた。
ベッドのシーツはびりびりに破かれて家具は壊されて、至る所に暴言が書かれた落書きが残されていた。
「ここまでするか……」
流石に嫌がらせの範疇を越えた行いを受けたラクスは、我慢の限界を越えてしまった。
――何故、魔族風情にこんな仕打ちを受けねばなるまい。
ラクスは無意識に『スクアード』を纏わせたかと思えば、怒りの形相を見せながら部屋を飛び出していった。
先日食堂でこちらを見て笑っていた数体の魔族。どうせあいつらの誰かがやったのだ、もう我慢する必要はない今すぐにぶち殺してやる。
ラクスに悪口を言っていた魔族達は、年齢も若く人間の年で言えばまだ13歳から14歳になろうかという年齢であった。
ラルグ魔国に居を構えている国の重鎮達の子供であった。
彼らは魔族の王であるレアにカリスマ性を感じており、見た目も若い彼女に多大な好意を持っていた。そんなレアに毎日のようにラクスは修行をつけてもらい構ってもらっている事が気に入らなかった。
そして多感な時期の彼らは気に入らない魔人ラクスに嫌がらせを始めていた。
だが、彼らは陰口を叩いたり暴言の書いた紙を貼るくらいの嫌がらせはしていたが、部屋の中を荒らしたりまではするつもりはなかった。
しかし突然に頭がぼーっとしたかと思うと、体が勝手に動き事に及んでしまった。
(流石にこれはまずいんじゃないか……?)
そう理解はしているのだが手を止めることは出来なかった。そして彼らは段々とこれでいいと思えるようになり、もっと過激な事をしたいとまで思ってしまう。
誰もいなくなった食堂の一角で、三体の魔族は興奮気味に話し合っていた。
――次は何をやるか。
――あいつは口だけで手は出せないんだから、もっとイジメてやろうぜ。
――どうせ魔人は嫌われてるんだ、何をやっても許されるだろ。
食堂に入ったラクスはその声を聴いてしまった。直接この耳で聞いた以上は犯人はこいつらで間違いない。
そして遂に鬼の形相を浮かべたラクスは『スクアード』に身を包み、魔族達に襲い掛かっていくのだった。
その人物とはレイズ魔国の女王であり、今や魔族の王となったレアの側近を務める『エリス』女王であった。
当初こそレアにいい感情を抱いていなかったエリスだが、何度もレアの話し相手をしている内に、レアの人となりのようなモノが分かるようになり、こうしてレアに自室に呼ばれることが嫌ではなくなっていた。
そして今日もレアに呼び出されて『ラルグ』魔国に来てみれば、何やら不機嫌そうに口を尖らせるレアの姿があった。
「何やらご機嫌斜めですわね?」
そう言ってレアの部屋へ入ってきたエリスは、苦笑いを浮かべながら言葉にするのであった。
「よく来たわねぇエリスちゃん。少し私の相談に乗って欲しくてねぇ?」
そう言って椅子に座ろうとするエリスに首を振って、自分が座っているベッドの横をぽんぽんと叩く。
どうやら不機嫌なお姫様は『エリス』に隣に座って話を聞いて欲しそうだった。それを見たエリスは、はいはいとばかりに履物を脱いでベッドの上に上がりレアの隣に座る。
「それで、今日はどうなされたのかしら?」
「それがねぇ? うちのラクスちゃんの様子がおかしいのよぉ」
まるでそのレアの様子は、我が子の反抗期に悩む親のようであった――。
……
……
……
その頃ラクスはいつものようにレアのいる城の訓練場へは行かず、城の中庭でひとり瞑想をしていた。
ここ三か月もの間、みっちりとレアに鍛え上げられたラクスは、かなりの力を有するようになっていた。
すでに『スクアード』を使って戦えば『幹部級』の下位であった『リオン』や『リーベ』程度であれば、あっさりと倒せる程の強さを有していた。
しかしそんなラクスにレアは、まだまだだと窘めた。
そして指摘してきたのは、精神の修行であった。
その時は何を馬鹿な事をとラクスは一蹴して見せたが、今回の件を経て考えを変えていた。
(確かに周りの言葉や行動一つでこんなにも精神をかき乱される自分は、精神力を鍛える必要がある)
ラクスはそう考えて普段誰も来ない場所を選び、一人瞑想を始めたのだった。そして冷静になりながらレアの事を考える。
あいつは同胞を殺した憎い魔族であり、敵ではある。
しかし元々ヴェルマー大陸に戦争を仕掛けたのは、魔人の王であるシュケイン様である。レアは攻めてきた魔人達から脅威を払う為に戦ったに過ぎない。
それにこれは三か月間『ヴェルマー』大陸で生活をして、レアと接してきた俺だから感じられたことだが、レアという魔族は少しばかり他の魔族とは違う。
魔族の視点で他の種族を判断せず、自分の裁量でしっかりと相手を見ている。確かに他の魔族には持っていない大きな器の持ち主であり、それこそが王の資質なのであろう。
だが、いくら王が素晴らしくとも配下の魔族どもは腐っている。
俺が魔人だというのが気に入らないのか知らないが、表立っては何もしてこない癖に裏でこそこそと陰湿な事をする。
だが、奴らの狙いはなんとなく分かってきた。
俺を怒らせて魔族相手に手を出した時に、やはり魔人は粗暴な種族だと糾弾してこの国から追い出すか、大方レアの奴に処刑させようと企んでいるのだろう。
今の俺であれば単なる魔族達に囲まれたところでやられる気はしないが、あのレアだけは駄目だ、全く勝てる気がしない。
このまま耐えて嫌がらせをされなくなるまで、待つしかないのだろうか。奴らの狙いが俺を追い出す事なのであれば我慢さえすれば、アテが外れて諦めてくれるかもしれない。
瞑想をしていたラクスはそう結論を出して、やがて立ち上がるのだった。
「明日レアに謝りにいこう」
今日の自分の態度を反省して、素直に謝罪しようと決めたラクスであった。
しかし自室の扉を開けようとして、鍵が開けられている事に気づいて嫌な予感がよぎった。
ゆっくりと扉を開けて中を見てみると案の定、部屋の中は荒らされていた。
ベッドのシーツはびりびりに破かれて家具は壊されて、至る所に暴言が書かれた落書きが残されていた。
「ここまでするか……」
流石に嫌がらせの範疇を越えた行いを受けたラクスは、我慢の限界を越えてしまった。
――何故、魔族風情にこんな仕打ちを受けねばなるまい。
ラクスは無意識に『スクアード』を纏わせたかと思えば、怒りの形相を見せながら部屋を飛び出していった。
先日食堂でこちらを見て笑っていた数体の魔族。どうせあいつらの誰かがやったのだ、もう我慢する必要はない今すぐにぶち殺してやる。
ラクスに悪口を言っていた魔族達は、年齢も若く人間の年で言えばまだ13歳から14歳になろうかという年齢であった。
ラルグ魔国に居を構えている国の重鎮達の子供であった。
彼らは魔族の王であるレアにカリスマ性を感じており、見た目も若い彼女に多大な好意を持っていた。そんなレアに毎日のようにラクスは修行をつけてもらい構ってもらっている事が気に入らなかった。
そして多感な時期の彼らは気に入らない魔人ラクスに嫌がらせを始めていた。
だが、彼らは陰口を叩いたり暴言の書いた紙を貼るくらいの嫌がらせはしていたが、部屋の中を荒らしたりまではするつもりはなかった。
しかし突然に頭がぼーっとしたかと思うと、体が勝手に動き事に及んでしまった。
(流石にこれはまずいんじゃないか……?)
そう理解はしているのだが手を止めることは出来なかった。そして彼らは段々とこれでいいと思えるようになり、もっと過激な事をしたいとまで思ってしまう。
誰もいなくなった食堂の一角で、三体の魔族は興奮気味に話し合っていた。
――次は何をやるか。
――あいつは口だけで手は出せないんだから、もっとイジメてやろうぜ。
――どうせ魔人は嫌われてるんだ、何をやっても許されるだろ。
食堂に入ったラクスはその声を聴いてしまった。直接この耳で聞いた以上は犯人はこいつらで間違いない。
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