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リラリオの魔王編
312.魔人族をたった一人で蹂躙する魔王
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魔人の王『シュケイン』は目の前にいる魔族が、未だに信じられなかった。
魔族という種族は強くとも戦力値が3000万を越える事は出来ないだろうと、2000万辺りが頭打ちだと決めつけていた。だからこそ当初は『下級兵』達と保険のつもりで『幹部級』二体をつけて戦争を始めたのだ。
しかし『中級兵』までで全てカタがつく筈だった此度の戦争は、すでに立て直しは不可能と思われる程の犠牲を生んでしまっている。
『龍族』と事を構える為に魔族を従えるつもりが、取り返しのつかない事態を招いてしまった。
――シュケインは選択肢を間違えてしまったのだ。
しかし今更そんな事を言っても仕方がない。
こうなった以上は全ての責任を背負い目の前の魔族を滅ぼす事が先決だと、シュケインは決断を下して『スクアード』を纏い始めるのだった。
その様子を見た『幹部級』の魔人が驚きながら口を開く。
「しゅ、シュケイン様……! も、もしやあの魔族と戦うおつもりですか?」
「ま、まだ我々が残っております! 王自らが戦わずとも勝利して見せます!」
シュケインは首を振って震えている魔人達の横を通り過ぎていく。
――そして振り返らずに告げた。
「今回の戦争はワシが決めたことだ。その責任はワシが果たす」
そう告げながら泳ぐように大空を飛んでレアの前までくるのだった。
「ふーん。王というだけあって、貴方は他の魔人ちゃんよりは強そうねぇ?」
『幹部級』の魔人の誰よりも強くその力に恐れさえ抱かれた魔人の王を前に、魔族の王は値踏みをして見せる。
「調子に乗るなよ『魔族風情』が!! ワシ達はこの世界最強の『龍族』と事を構えようとしていた種族だ。その魔人の王に対してその態度、決して許されるモノではないぞ!!」
バチバチと音をたてながら『スクアード』のオーラを纏う『シュケイン』の圧力は凄まじく、レアが尋常ならざる者でなければこの圧力だけで屈していただろう。
「『魔族風情』ですって? 世界最強の種族は『魔族』よぉ? 貴方達『魔人』風情が、魔族に向かって無礼な口を利くんじゃないわよぉ」
「ふっ……。どうやら若くして大きな力を持ってしまったことで、更にその上の力のある者の存在を認められないようじゃな? 魔人の真髄をしかと教えてやるぞ若造!」
そう言うとシュケインは、更に力を増幅し始めた。
魔人の王と呼ぶに相応しく『青のオーラ』を纏うレアと同等、いやそれ以上の戦力値に膨れ上がる。
他の魔人達は自らの種族の王の圧倒的な力に、勝利を確信した表情を浮かべるのだった。
【種族:魔人 名前:シュケイン 年齢:15244歳
状態:スクアード 戦力値:3億3000万 所属:ディアミール大陸】。
「力ある物の存在? そんなモノはもっと小さい時から見てきたわよぉ? 貴方達魔人ちゃん達が馬鹿にしている魔族という種族は、際限なく強くなる資質を秘めているということを教えてあげるわぁ」
「ほう……。では、教えてもらおうかのぉ?」
そう言うとシュケインはレアの前に転移して、首を掴もうと手を伸ばしてくる。魔人は腕力や握力といった、単純な力では龍族を上回る。
転移という魔族が得意とする技を用いながら物理で攻める。まさにヒエラルキーの上位に位置する種族が、存分に持ちうる武器を利用しての攻撃でレアに襲い掛かるのであった。
そして虚を突いたシュケインの攻撃は、功を奏してレアの首を掴む事に成功した。
「クククッ! どうやら油断したようだな若造! 我が同胞の報いを受けてもらうぞ!」
満面の笑みを浮かべながらシュケインは、レアの首をへし折ろうと力を込めるのだった。
…………
だが『シュケイン』がいくら力を込めようと、レアの首は一向にへし折れなかった。
確かに先程までの他の魔人と戦っていた時のレアであれば、このシュケインの魔人の握力に屈して首は折れていたかもしれない。
しかし今のレアを纏っているオーラは、二種類の鮮やかな色になりレアを覆っていた。
――『二色の併用』。
「ぐ……! な、何故……。何故折れぬのというのだ!?」
『リラリオ』の世界で最強の腕力を持つ魔人。その頂点に座する『シュケイン』が『スクアード』という身体強化技法を用いて尚、レアという魔族の小さき身体。そのか細い首を折ることが出来なかった。
「……これが魔人の力?」
魔人に首を掴まれているレアは口角を吊り上げて嗤う。
――非力なのねぇ?
そう言うとレアは自分の首を掴んでいる『シュケイン』の手を逆にレアが掴み返す。
「非力な貴方に本当の力とは何かを教えてあげるわねぇ?」
そしてゆっくりと少しずつ力を込めていくレア。
「なっ!? ぐ、ぐぐぅ……! ば、馬鹿な!?」
見た目の小さな身体からは見当もつかないような力が少しずつ加わっていき、余りの激痛にシュケインはレアの首から腕を離しながら、何とかして逃れようと足掻き始めるのだった。
しかしそこでレアは笑みを浮かべたまま、一気に手にオーラを集約させる。
次の瞬間――。
パキンッと若枝が二つに手折れるような音が周囲に轟いた。そしてその後にバキバキと音が鳴り響く。
「ぐぁっ……!!」
何とレアは魔人の腕を骨まで握り潰したのだった。
「なるほど。これくらいの力でも貴方に勝てるなら、もう魔人ちゃんは、どうにでもなるわねぇ」
シュケインの腕を粉砕したというのにレアにとってはまだ『二色の併用』に用いた『魔力』の七割程の力であった。
それはつまりレアが本気を出していない状態であっても『二色の併用』を用いれば、魔人の王よりも容易に力で勝るという証明を得たのであった――。
「さて、実験も終わって全世界へ魔族のアピールも十分に済ませたことだし、そろそろ貴方達にはご退場を願おうかしらねぇ?」
そういうとレアは右手に集約していたオーラを全身に纏い始めて、そのまま右手の掌を空に向けた。
「この魔法は少しだけイメージが悪いんだけどぉ、威力は申し分ないと私も認めてるからぁ、ここは『先輩』の魔法を使わせてもらうことにしましょうか」
――神域魔法、『天空の雷』。
それこそは『災厄の大魔法使い』の得意とする『地』系統の最高位にして『神域領域』の魔法であった。
唐突に天候が変わったかと思うと、空から雷が魔人の王『シュケイン』の頭上に降り注いだ。
「ぐ……っ! ぐわあああっっ!!」
レアの『二色の併用』で大きく増幅された魔力の神域魔法をその身に受けて、リラリオの世界で『龍族』に次ぐ強さと言われていた『魔人族』、その魔人族の者達を束ねていた『シュケイン』王は、断末魔をあげて絶命するのだった。
「う、うわあああっ!!」
そして魔人の王が死んだところを目の当たりにした『幹部級』の魔人達は、必死にレアから逃げようとその場から離れ始めるのだった。
「えっとぉ? こういう時なんて言うんだったかしらぁ? あ、そうそう!」
――『魔王』からは逃《のが》れられない――。
そう告げたレアは転移をしながら逃げ始めた魔人に迫り、一体ずつ確実に殺していく。
こうして『龍族』に次ぐ強さを持つと呼ばれた『魔人族』は『魔族』に戦争を挑んだが、魔族の王であるレアたった一体に全滅させられた。
その光景はレアの魔法を通して『リラリオ』の世界にある全大陸へと映し出されるのであった――。
魔族という種族は強くとも戦力値が3000万を越える事は出来ないだろうと、2000万辺りが頭打ちだと決めつけていた。だからこそ当初は『下級兵』達と保険のつもりで『幹部級』二体をつけて戦争を始めたのだ。
しかし『中級兵』までで全てカタがつく筈だった此度の戦争は、すでに立て直しは不可能と思われる程の犠牲を生んでしまっている。
『龍族』と事を構える為に魔族を従えるつもりが、取り返しのつかない事態を招いてしまった。
――シュケインは選択肢を間違えてしまったのだ。
しかし今更そんな事を言っても仕方がない。
こうなった以上は全ての責任を背負い目の前の魔族を滅ぼす事が先決だと、シュケインは決断を下して『スクアード』を纏い始めるのだった。
その様子を見た『幹部級』の魔人が驚きながら口を開く。
「しゅ、シュケイン様……! も、もしやあの魔族と戦うおつもりですか?」
「ま、まだ我々が残っております! 王自らが戦わずとも勝利して見せます!」
シュケインは首を振って震えている魔人達の横を通り過ぎていく。
――そして振り返らずに告げた。
「今回の戦争はワシが決めたことだ。その責任はワシが果たす」
そう告げながら泳ぐように大空を飛んでレアの前までくるのだった。
「ふーん。王というだけあって、貴方は他の魔人ちゃんよりは強そうねぇ?」
『幹部級』の魔人の誰よりも強くその力に恐れさえ抱かれた魔人の王を前に、魔族の王は値踏みをして見せる。
「調子に乗るなよ『魔族風情』が!! ワシ達はこの世界最強の『龍族』と事を構えようとしていた種族だ。その魔人の王に対してその態度、決して許されるモノではないぞ!!」
バチバチと音をたてながら『スクアード』のオーラを纏う『シュケイン』の圧力は凄まじく、レアが尋常ならざる者でなければこの圧力だけで屈していただろう。
「『魔族風情』ですって? 世界最強の種族は『魔族』よぉ? 貴方達『魔人』風情が、魔族に向かって無礼な口を利くんじゃないわよぉ」
「ふっ……。どうやら若くして大きな力を持ってしまったことで、更にその上の力のある者の存在を認められないようじゃな? 魔人の真髄をしかと教えてやるぞ若造!」
そう言うとシュケインは、更に力を増幅し始めた。
魔人の王と呼ぶに相応しく『青のオーラ』を纏うレアと同等、いやそれ以上の戦力値に膨れ上がる。
他の魔人達は自らの種族の王の圧倒的な力に、勝利を確信した表情を浮かべるのだった。
【種族:魔人 名前:シュケイン 年齢:15244歳
状態:スクアード 戦力値:3億3000万 所属:ディアミール大陸】。
「力ある物の存在? そんなモノはもっと小さい時から見てきたわよぉ? 貴方達魔人ちゃん達が馬鹿にしている魔族という種族は、際限なく強くなる資質を秘めているということを教えてあげるわぁ」
「ほう……。では、教えてもらおうかのぉ?」
そう言うとシュケインはレアの前に転移して、首を掴もうと手を伸ばしてくる。魔人は腕力や握力といった、単純な力では龍族を上回る。
転移という魔族が得意とする技を用いながら物理で攻める。まさにヒエラルキーの上位に位置する種族が、存分に持ちうる武器を利用しての攻撃でレアに襲い掛かるのであった。
そして虚を突いたシュケインの攻撃は、功を奏してレアの首を掴む事に成功した。
「クククッ! どうやら油断したようだな若造! 我が同胞の報いを受けてもらうぞ!」
満面の笑みを浮かべながらシュケインは、レアの首をへし折ろうと力を込めるのだった。
…………
だが『シュケイン』がいくら力を込めようと、レアの首は一向にへし折れなかった。
確かに先程までの他の魔人と戦っていた時のレアであれば、このシュケインの魔人の握力に屈して首は折れていたかもしれない。
しかし今のレアを纏っているオーラは、二種類の鮮やかな色になりレアを覆っていた。
――『二色の併用』。
「ぐ……! な、何故……。何故折れぬのというのだ!?」
『リラリオ』の世界で最強の腕力を持つ魔人。その頂点に座する『シュケイン』が『スクアード』という身体強化技法を用いて尚、レアという魔族の小さき身体。そのか細い首を折ることが出来なかった。
「……これが魔人の力?」
魔人に首を掴まれているレアは口角を吊り上げて嗤う。
――非力なのねぇ?
そう言うとレアは自分の首を掴んでいる『シュケイン』の手を逆にレアが掴み返す。
「非力な貴方に本当の力とは何かを教えてあげるわねぇ?」
そしてゆっくりと少しずつ力を込めていくレア。
「なっ!? ぐ、ぐぐぅ……! ば、馬鹿な!?」
見た目の小さな身体からは見当もつかないような力が少しずつ加わっていき、余りの激痛にシュケインはレアの首から腕を離しながら、何とかして逃れようと足掻き始めるのだった。
しかしそこでレアは笑みを浮かべたまま、一気に手にオーラを集約させる。
次の瞬間――。
パキンッと若枝が二つに手折れるような音が周囲に轟いた。そしてその後にバキバキと音が鳴り響く。
「ぐぁっ……!!」
何とレアは魔人の腕を骨まで握り潰したのだった。
「なるほど。これくらいの力でも貴方に勝てるなら、もう魔人ちゃんは、どうにでもなるわねぇ」
シュケインの腕を粉砕したというのにレアにとってはまだ『二色の併用』に用いた『魔力』の七割程の力であった。
それはつまりレアが本気を出していない状態であっても『二色の併用』を用いれば、魔人の王よりも容易に力で勝るという証明を得たのであった――。
「さて、実験も終わって全世界へ魔族のアピールも十分に済ませたことだし、そろそろ貴方達にはご退場を願おうかしらねぇ?」
そういうとレアは右手に集約していたオーラを全身に纏い始めて、そのまま右手の掌を空に向けた。
「この魔法は少しだけイメージが悪いんだけどぉ、威力は申し分ないと私も認めてるからぁ、ここは『先輩』の魔法を使わせてもらうことにしましょうか」
――神域魔法、『天空の雷』。
それこそは『災厄の大魔法使い』の得意とする『地』系統の最高位にして『神域領域』の魔法であった。
唐突に天候が変わったかと思うと、空から雷が魔人の王『シュケイン』の頭上に降り注いだ。
「ぐ……っ! ぐわあああっっ!!」
レアの『二色の併用』で大きく増幅された魔力の神域魔法をその身に受けて、リラリオの世界で『龍族』に次ぐ強さと言われていた『魔人族』、その魔人族の者達を束ねていた『シュケイン』王は、断末魔をあげて絶命するのだった。
「う、うわあああっ!!」
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「えっとぉ? こういう時なんて言うんだったかしらぁ? あ、そうそう!」
――『魔王』からは逃《のが》れられない――。
そう告げたレアは転移をしながら逃げ始めた魔人に迫り、一体ずつ確実に殺していく。
こうして『龍族』に次ぐ強さを持つと呼ばれた『魔人族』は『魔族』に戦争を挑んだが、魔族の王であるレアたった一体に全滅させられた。
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