299 / 1,966
リラリオの魔王編
290.怯える幼女
しおりを挟む
「ソフィ様。少しお時間宜しいでしょうか」
ユファの言葉を聞いたソフィが頷く前に、横に立っていたキーリが口を開く。
「お前、姿は違うがレアだろう? 何しにきた?」
レアの起こした戦争で自らの同胞であるミルフェンは怪我をしてしまい、大きな被害を被った事もあり、この場に平然と現れた事に苛立ち混じりにそう告げる。
「キーリ……、ごめんなさい」
レアは弁明をするでもなくまず謝罪をして頭を下げた。その姿にキーリはぎょっとして眉を寄せる。
普段の生意気な態度を取るでもなく、嘲笑うかのような笑みも見せずに心の底から謝罪をしているように見えたキーリであった。
「な、な、お前、本当にレアなのかよ?」
キーリは不気味なものを見るように口を開く。
「余程大事な話があるようだな? 我だけのほうが良いか?」
ソフィはそう言って視線をユファに送る。
「いえ、キーリにも聞いてもらったほうがよいでしょう」
ユファがそういうと頭をまだ下げ続けているレアの肩に優しく手を置く。
レアはゆっくりと頭を上げて何かを喋ろうとするが、ソフィを見てそこで再び固まる。
「あ……あの! あの……」
「?」
見た目が金髪の頃のレアではなく『代替身体』によって別の身体になっているのに加えて、この似ても似つかぬ態度のレアにキーリもソフィも訝しげにレアを見るのだった。
緊張しているのかなかなか声を出せないレアを見て、ユファがレアの手を握りながら助け船を出す。
「今回のこの子が起こした戦争なのですが、ヌーととある組織が仕組んだ罠だったようなのです。騙されていたとはいっても死人や怪我人が出ている以上、この子は自分がどうなってもいいからソフィ様に一度会って謝罪をしたいと私に申し出てきまして、それで今回お時間を頂いたのですが、どうやらソフィ様を見て何やらこの子は恐怖で声が出せないようです」
ユファが全てを説明すると、レアは顔を蒼白にしながらソフィを見る。
そこで隣にいたキーリが、茶化すように口を開いた。
「まじかよ! あの『魔王』レア様ともあろうものが、ビビって声も出せねぇのかよ!」
キーリの突然の言葉にレアは一気に不機嫌そうな表情になる。
「びびってようがなんだろうが、お前がやらかした事にはきっちり責任を持って謝罪はしろよ」
――否、キーリはレアを茶化したのでは無く、彼女が声を出せるようにわざと発破をかけたのであった。
「わ、わかってるわよぉ、だ、大魔王ソフィ……! こ、この度は勘違いとはいえ、も、申し訳ありませむでちた!!」
盛大な勢いで噛んでしまったレアは、顔を真っ赤にして俯く。
「……」
「……」
「……」
ソフィもキーリもユファでさえも、死ぬほど恥ずかしそうな表情で俯くレアを無言で眺める。
「……クックック」
「おいおい、なんだそりゃあ!」
ソフィとキーリは堪えきれぬとばかりに笑い声をあげる。
ユファだけが溜息を吐きながら、そっとレアの頭を撫でる。
「まぁお主の気持ちは理解したが、騙されてやった事とはいっても何もお咎めなしという訳にはいかぬが、覚悟はよいか?」
その言葉にレアは再び恐怖で震え出す。レアの脳内には過去の恐ろしいソフィの姿が映し出されていた。
「ひとまず落ち着いてから話をしたほうがよさそうだな。そんなガチガチに緊張した状態で、まともに話など出来ぬだろう? キーリよすまぬが部屋を用意してやってくれないか?」
その言葉にキーリは頷く。
「分かった。ソフィ様がそういうなら。おいレア! とりあえず俺について来いよ」
キーリの言葉にレアは静かに頷き、一度だけソフィに視線を送りながら頭を下げて、慌ててキーリの後をついていった。
部屋に残されたソフィにユファが口を開く。
「ソフィ様、どこまで知っておられますか?」
その言葉にソフィはヌーが喋っていた言葉の内容をユファに話し始めるのであった。
……
……
……
ユファの言葉を聞いたソフィが頷く前に、横に立っていたキーリが口を開く。
「お前、姿は違うがレアだろう? 何しにきた?」
レアの起こした戦争で自らの同胞であるミルフェンは怪我をしてしまい、大きな被害を被った事もあり、この場に平然と現れた事に苛立ち混じりにそう告げる。
「キーリ……、ごめんなさい」
レアは弁明をするでもなくまず謝罪をして頭を下げた。その姿にキーリはぎょっとして眉を寄せる。
普段の生意気な態度を取るでもなく、嘲笑うかのような笑みも見せずに心の底から謝罪をしているように見えたキーリであった。
「な、な、お前、本当にレアなのかよ?」
キーリは不気味なものを見るように口を開く。
「余程大事な話があるようだな? 我だけのほうが良いか?」
ソフィはそう言って視線をユファに送る。
「いえ、キーリにも聞いてもらったほうがよいでしょう」
ユファがそういうと頭をまだ下げ続けているレアの肩に優しく手を置く。
レアはゆっくりと頭を上げて何かを喋ろうとするが、ソフィを見てそこで再び固まる。
「あ……あの! あの……」
「?」
見た目が金髪の頃のレアではなく『代替身体』によって別の身体になっているのに加えて、この似ても似つかぬ態度のレアにキーリもソフィも訝しげにレアを見るのだった。
緊張しているのかなかなか声を出せないレアを見て、ユファがレアの手を握りながら助け船を出す。
「今回のこの子が起こした戦争なのですが、ヌーととある組織が仕組んだ罠だったようなのです。騙されていたとはいっても死人や怪我人が出ている以上、この子は自分がどうなってもいいからソフィ様に一度会って謝罪をしたいと私に申し出てきまして、それで今回お時間を頂いたのですが、どうやらソフィ様を見て何やらこの子は恐怖で声が出せないようです」
ユファが全てを説明すると、レアは顔を蒼白にしながらソフィを見る。
そこで隣にいたキーリが、茶化すように口を開いた。
「まじかよ! あの『魔王』レア様ともあろうものが、ビビって声も出せねぇのかよ!」
キーリの突然の言葉にレアは一気に不機嫌そうな表情になる。
「びびってようがなんだろうが、お前がやらかした事にはきっちり責任を持って謝罪はしろよ」
――否、キーリはレアを茶化したのでは無く、彼女が声を出せるようにわざと発破をかけたのであった。
「わ、わかってるわよぉ、だ、大魔王ソフィ……! こ、この度は勘違いとはいえ、も、申し訳ありませむでちた!!」
盛大な勢いで噛んでしまったレアは、顔を真っ赤にして俯く。
「……」
「……」
「……」
ソフィもキーリもユファでさえも、死ぬほど恥ずかしそうな表情で俯くレアを無言で眺める。
「……クックック」
「おいおい、なんだそりゃあ!」
ソフィとキーリは堪えきれぬとばかりに笑い声をあげる。
ユファだけが溜息を吐きながら、そっとレアの頭を撫でる。
「まぁお主の気持ちは理解したが、騙されてやった事とはいっても何もお咎めなしという訳にはいかぬが、覚悟はよいか?」
その言葉にレアは再び恐怖で震え出す。レアの脳内には過去の恐ろしいソフィの姿が映し出されていた。
「ひとまず落ち着いてから話をしたほうがよさそうだな。そんなガチガチに緊張した状態で、まともに話など出来ぬだろう? キーリよすまぬが部屋を用意してやってくれないか?」
その言葉にキーリは頷く。
「分かった。ソフィ様がそういうなら。おいレア! とりあえず俺について来いよ」
キーリの言葉にレアは静かに頷き、一度だけソフィに視線を送りながら頭を下げて、慌ててキーリの後をついていった。
部屋に残されたソフィにユファが口を開く。
「ソフィ様、どこまで知っておられますか?」
その言葉にソフィはヌーが喋っていた言葉の内容をユファに話し始めるのであった。
……
……
……
0
お気に入りに追加
437
あなたにおすすめの小説
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる