最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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リラリオの魔王編

290.怯える幼女

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「ソフィ様。少しお時間宜しいでしょうか」

 ユファの言葉を聞いたソフィが頷く前に、横に立っていたキーリが口を開く。

「お前、姿は違うがレアだろう? 何しにきた?」

 レアの起こした戦争で自らの同胞であるミルフェンは怪我をしてしまい、大きな被害を被った事もあり、この場に平然と現れた事に苛立ち混じりにそう告げる。

「キーリ……、ごめんなさい」

 レアは弁明をするでもなくまず謝罪をして頭を下げた。その姿にキーリはぎょっとして眉を寄せる。

 普段の生意気な態度を取るでもなく、嘲笑うかのような笑みも見せずに心の底から謝罪をしているように見えたキーリであった。

「な、な、お前、本当にレアなのかよ?」

 キーリは不気味なものを見るように口を開く。

「余程大事な話があるようだな? 我だけのほうが良いか?」

 ソフィはそう言って視線をユファに送る。

「いえ、キーリにも聞いてもらったほうがよいでしょう」

 ユファがそういうと頭をまだ下げ続けているレアの肩に優しく手を置く。
 レアはゆっくりと頭を上げて何かを喋ろうとするが、ソフィを見てそこで再び固まる。

「あ……あの! あの……」

「?」

 見た目が金髪の頃のレアではなく『代替身体だいたいしんたい』によって別の身体になっているのに加えて、この似ても似つかぬ態度のレアにキーリもソフィも訝しげにレアを見るのだった。

 緊張しているのかなかなか声を出せないレアを見て、ユファがレアの手を握りながら助け船を出す。

「今回のこの子が起こした戦争なのですが、ヌーととある組織が仕組んだ罠だったようなのです。騙されていたとはいっても死人や怪我人が出ている以上、この子は自分がどうなってもいいからソフィ様に一度会って謝罪をしたいと私に申し出てきまして、それで今回お時間を頂いたのですが、どうやらソフィ様を見て何やらこの子は

 ユファが全てを説明すると、レアは顔を蒼白にしながらソフィを見る。

 そこで隣にいたキーリが、茶化すように口を開いた。

「まじかよ! あの『魔王』レア様ともあろうものが、ビビって声も出せねぇのかよ!」

 キーリの突然の言葉にレアは一気に不機嫌そうな表情になる。

「びびってようがなんだろうが、お前がやらかした事にはきっちり責任を持って謝罪はしろよ」

 ――否、キーリはレアを茶化したのでは無く、彼女が声を出せるようにわざと発破をかけたのであった。

「わ、わかってるわよぉ、だ、大魔王ソフィ……! こ、この度は勘違いとはいえ、も、申し訳ありませむでちた!!」

 盛大な勢いで噛んでしまったレアは、顔を真っ赤にして俯く。

「……」

「……」

「……」

 ソフィもキーリもユファでさえも、死ぬほど恥ずかしそうな表情で俯くレアを無言で眺める。

「……クックック」

「おいおい、なんだそりゃあ!」

 ソフィとキーリは堪えきれぬとばかりに笑い声をあげる。
 ユファだけが溜息を吐きながら、そっとレアの頭を撫でる。

「まぁお主の気持ちは理解したが、騙されてやった事とはいっても何もお咎めなしという訳にはいかぬが、?」

 その言葉にレアは再び恐怖で震え出す。レアの脳内には過去の恐ろしいソフィの姿が映し出されていた。

「ひとまず落ち着いてから話をしたほうがよさそうだな。そんなガチガチに緊張した状態で、まともに話など出来ぬだろう? キーリよすまぬが部屋を用意してやってくれないか?」

 その言葉にキーリは頷く。

「分かった。ソフィ様がそういうなら。おいレア! とりあえず俺について来いよ」

 キーリの言葉にレアは静かに頷き、一度だけソフィに視線を送りながら頭を下げて、慌ててキーリの後をついていった。

 部屋に残されたソフィにユファが口を開く。

「ソフィ様、どこまで知っておられますか?」

 その言葉にソフィはヌーが喋っていた言葉の内容をユファに話し始めるのであった。

 ……
 ……
 ……
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