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同胞との別離編

287.戦争の後で2

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 レアとの戦争を終えて各国の報告も済ませた後は恙無つつがなく会議を終えた。

 ブラストは久方ぶりとなるソフィとの再会に、これ以上ない程の嬉しげな声をあげながら、ソフィに声を掛けるのだった。

「ソフィ様! 姿、ご無事なようで心の底から安心しました」

「うむ。心配をかけてすまなかったな、ブラスト。それで『アレルバレル』の世界の方は、我が居なくなった後どうなっておる?」

 ソフィがこのリラリオの世界に来てそれなりに時間が経とうとしている。

 ソフィの魔王城に乗り込んできた勇者の存在や、他の九大魔王。そして魔界や人間界の民達はどうなっているのか。その事が気になっていたソフィであった。

「……それが、少しばかり大変な事になっておりまして」

 流石に何事もありませんでした。という言葉を期待するのは、酷というものだろう。

 世界を二分している『魔界』の統治者が突如消えていなくなれば、世界全体が混乱するのは当然である。

「ひとまず落ち着いて話を聞きたいところだな。シスに部屋を借りてそこで話そうか」

「御意! 何でもお聞きください!」

 ソフィの決定に何も口を出さずに、ブラストは頭を下げて返事をする。

 ……
 ……
 ……

 ソフィ達がブラストと話をしていた頃。会議を終えたユファは、レイズ城の墓所に足を運んでいた。

 先代魔法軍長官ラネアや、先代魔法軍副長官ピナ達の墓が並んでいる場所と、少し離れた場所にユファは『レインドリヒ』の墓を建て始める。

 本来、大魔王の領域まで登りつめた魔族が死ぬことはなく、レインドリヒ程の若さであればまだまだ寿命で死ぬような事はなかった。

 ユファはまだまだ喧嘩相手として今後もあのと、やり合っていくだろうと思っていたが、あっさりとその別れは訪れてしまった。

 レパートの世界にいた頃、当時はアレルバレルの世界のソフィのような、恐ろしい程までにその存在感を示していた大魔王フルーフ。

 そのフルーフを倒して自分が一番になる事を決意していたユファとレインドリヒは、互いに言葉を交わして笑いあった仲でもあり、ライバルという言葉が相応しい相手だった。

「あんたとは色々あったけど、まさかこんなに早く死ぬなんて思わなかったわ」

 簡素な墓の前に花を手向けながらユファは言葉を吐く。

「思えばあんたとは衝突ばっかりで、いつも戦ってきた気がするわね?」

 レインドリヒとユファが初めて戦った時は、互いにまだまだ上位魔族の頃だった。

 フルーフを頂点とする魔王軍の末席に加わったユファは、多くいる魔族の中で直ぐにレインドリヒが目についた。

(こいつはこの場にいる魔族の誰よりも強い。すぐに上に行くだろう)

 ユファはレインドリヒを一目見てそう感じた。

 そしてそれは間違いでは無く、ユファより少しだけ早い時期にフルーフの『魔王軍』に加入したレインドリヒはすぐに頭角を現して上にのぼりつめていった。

 ユファは出世といった事には無頓着で興味はなく『魔』を探求する事が出来る環境であれば、別段どんな役職でもよかった。

 しかしユファの魔法の才能はそんな本人の思惑とは裏腹に、すぐに魔王軍の中で評判になり、気が付けば同時期にフルーフの魔王軍に加入した中で、ユファが一番の出世頭となっていた。

 戦争時になればユファが部隊を率いて、攻め滅ぼしに行かなくてはならなくなり『魔』の探求をする時間が減る事に煩わしさを覚えていったが、それに見合った環境が与えられて貴重な魔王軍にある呪文書や、魔法書などのマジックアイテムを手に入れる事も出来た為に、ユファはそれを受け入れていた。

 戦争になれば『ユファ』は冒頭に述べたそんなやる気のなさと裏腹に、次々と恐るべき魔法を巧みに操り連戦連勝。

 フルーフの魔王軍には、がいると噂になり始めた。

 そしてユファがいつもように、与えられていた自分の研究室で『魔』の探求をしていた頃に、突然部屋にレインドリヒがやってきた。

「やあ、君がか。少しばかり俺と魔法で戦ってみてくれないか?」

 これがレインドリヒとの初会話であり、最初の戦いだった。

 ――結果はユファの惨敗。

 魔王軍に入ってから一度も負けを経験せず、自他共に認める程の強さだったはずだが、レインドリヒが行う使をされて負けた。

 知っている魔法の数や、魔力量に魔の知識。全てにおいてユファの方が上だった。

 しかし強者との戦闘では知識がものをいうのではなく、経験がものをいうのだという事を彼女は嫌と言う程に思い知らされた。

 単発系で言えば火力の高い超越魔法『万物の爆発ビッグバン』や、上位魔族が扱える『天候系』の最上位魔法と呼ばれる『』が得意だった。

 ただでさえ破壊力のある魔法の類に、ユファの魔力から放たれるそれはまさに一撃必殺だった。

 しかし魔力もそこまで高くはないレインドリヒに、上手くあしらわれてしまった。

 負けた事は理解できたが、何故負けたかを理解できなかったユファは、この時からレインドリヒに執着するようになる。

 レインドリヒもユファと戦うのは楽しかったらしく、いつでも再戦は受け付けるといって笑顔を見せながら帰っていった。

 二回目のレインドリヒとの戦いは互いにとなった頃だった。

 一度目の敗戦から更に魔力を高めたユファは、自信満々にレインドリヒに再戦を申し込んだ。

 流石に一回目の時のように簡単には負けず、レインドリヒをあと一歩というところまで追い込む事は出来た。しかしそれでも勝利をしたのはだった。

 この時の戦闘でユファはレインドリヒの戦いを認めて、盗めるところは盗もうと考えるようになる。力が全てではなく結局は、魔法の使い方次第だと言う事を彼から学んだユファは、更に強くなっていった。

 ――そして遂に彼と三回目の戦闘。

 魔王と呼ばれる領域にまで昇華したユファは、先に魔王の領域に踏み込んでいたレインドリヒに挑んだ。

 ユファは『紅のオーラ』の練度がMAXの1.2に到達。

 『地』系統の最高位『天候系』の『魔』の領域を更に極めて魔王の証である『終焉の雷エンドライトニング』すらも身に着けていた。

 互いに勝負は拮抗してこれまで以上に戦闘は激しくなった。これまで以上にレインドリヒの戦い方は巧く、どちらが勝ってもおかしくはなかった。

 しかし三度目にしてようやくユファは、レインドリヒとの戦闘で念願の勝利を得る事が出来た。

 それ以降も何度か戦い続けて、勝ったり負けたりを繰り返したが、総合的に見て勝ち越していたのはそれでも『レインドリヒ』だっただろう。

 戦いとなれば敵同士だが試合が終われば、互いにいいところや悪いところを言い合えるような、彼とはそんな仲だった。

 そして間違いなくユファを強くしていったのは――。

 ―― 『の存在のおかげであっただろう。
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