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世界間戦争編
284.さよならの前に
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「……」
ユファが治癒の魔法をかけ続けるが、一向にレアの目に光が宿らない。先程まで言葉を口にしていたレアは、もう何も喋らずにユファの顔だけをじっと見ていた。
「何で傷が塞がらないのよ! 私の魔力が足りないの!? ならもっと生命力を……!」
(ごめんねぇ。もう無理をしないでいいわよ先輩。私はどうせ助からないわぁ)
そう声に出して言いたいが、レアはもう喋る事が出来ない為に心の中でそう呟いた。
そしてレアの目がゆっくり、ゆっくりと閉じられていく。
「駄目よ! レア、諦めないでよ!!」
治癒魔法をかけ続けるユファの顔は、涙でぐしゃぐしゃでレアにかける声は涙声だった。
「どいつもこいつも私を置いて逝くなぁ! お願いよぉ……!」
レパートの世界の同胞達。レインドリヒもフルーフも居なくなり、そして今レアも居なくなろうとしている。徐々に寂しさがユファを襲ってくるのだった。
「あ……りが……と、ねぇ……」
何とか絞り出すようにその言葉を残して『魔王』レアはその生涯を閉じるのだった。
――レアの残した言葉を聞いたユファはもう涙を止められない。
「駄目よ! 逝っては駄目よ、レアぁっ、レア! 目を開けろ! 開けなさいよぉ!!」
ユファの治癒魔法に更に魔力が勢いが増していく。
それはユファが自らの生命力を全て費やそうと、一気に力を込めたからである。
急速に生命力を失っていくユファの様子を見たラルフは、これまで以上に焦りの声を漏らす。
「ゆ、ユファさん! それ以上はだめです、貴方が死んでしまう!」
ラルフはジーヌとの戦闘中だが、声をかけずにはいられなかった。ここで放っておけば師であるユファは『レア』の目を開けさせる為に自らの命を絶ってしまう。
そこにラルフはジーヌから右拳を鳩尾に受ける。
「ぐはっ……!」
戦闘中にジーヌから視線を外してしまった為に、ジーヌから手痛い一撃を食らうラルフだった。
……
……
……
その頃ブラストと戦闘を続けていたヌーは、溜息を吐いて口を開く。
「ちっ! アイツらの力を借りるのは癪だがこれ以上は仕方あるまい」
そう言うとヌーは残り少ない『魔力』をある者の召喚に使う。
「?」
もちろん戦闘中である為に、ブラストは唐突なヌーの行動に眉を寄せる。そんなブラストの前に一人の魔族が突然現れた。
――その魔族はとても細身で背が高く、縁の青い伊達眼鏡をかけていた。
「やれやれ。我らの主に大口を叩いておいて、結局はこの様ですか?」
突如現れた魔族は『大魔王』ヌーに対してとても辛辣な言葉を放つ。
「喧しい、さっさと手を貸せ」
いきなり現れた細見で長身の魔族にヌーがそう言うと、その魔族は溜息を吐いた。
「勘違いなさらないでくださいよ? 我ら組織の力に頼る以上、貴方は『大賢者』様に大きな借りを作るということを努々お忘れなく」
「分かった分かった。いいからさっさと俺を飛ばせよリベイル」
突如現れたリベイルという魔族は、どうやら『概念跳躍』の魔法を使えるようだった。
このままでは逃げられてしまうと感じたブラストは様子見を辞めて、一気に本気になるのであった。
リベイルの魔法詠唱より早くブラストは『金色のオーラ』を纏い始めて、ヌーもろとも破壊の魔法を使おうと右手を翳す。
――その時であった。
「――」
遠く離れた場所から、一直線にこちらに向けて光が放たれた。
「まずい……!」
リベイルの前に立ったヌーは『次元防壁』を展開する。
しかし『力の魔神』の前では防御系の最高峰と呼ばれる神域領域の『時魔法』といえども何の意味も為さない。
リベイルは魔力が残り少ないヌーの肩を掴み更に空高く上昇する。
「別世界へ跳びますよ? 相手がアレでは次は確実に殺されます」
「ああ……、さっさといけ」
次の瞬間、リベイルの『概念跳躍』が発動して『リラリオ』の世界から二人は忽然と姿を消すのだった。
残されたブラストは、苛立ちから破壊の衝動に襲われる。
「あぁっ! クソッタレ! 邪魔してんじゃねぇよボケがぁっ!!」
ブラストは衝動的に『破壊』の魔法を放とうと右手を魔神に向けかけるが、そこで必死に歯を食いしばって何とか自制を行うのであった。
ここで『力の魔神』を相手にすれば、どう足掻いてもやられるのは自分だと理解している為である。衝動を何とか抑えたブラストは、近づいてくる魔神を睨む。
「――?」(貴方は確かソフィの……?)
何を言っているか分からないが、魔神に『契約の紋章』を見せると魔神は笑みを浮かべた。ソフィの配下の『九大魔王』達は全員が『契約の紋章』を持っている。
この契約の紋章を持っていれば、その世界にソフィがいれば魔力や戦力値が上昇するアイテムであるが、それ以上の恩恵と言ってもいい事に『力の魔神』に味方だと知らせる事が出来る。
「――」(それじゃあ、失礼するわね)
この世界からヌーが消えた事で、ソフィに迫る脅威は消えたと魔神は認識したのだろう。
『力の魔神』にとってソフィに敵意を向ける存在が居なくなれば、その後の事はどうでもいい様子で、ブラストの目の前で『力の魔神』は静かに消えていった。
一人残されたブラストはやり場のない怒りを滲ませながら、ユファの元へと戻っていくのだった。
……
……
……
そしてブラストがユファの元へと辿り着いた時、レアはその場で倒れており、ユファを守るように人間の男も地面に片膝をついていた。
「ラルフ! しっかりしなさい、もう少し私が強ければ……っ!!」
どうやらユファ側の魔族達もジーヌの配下達に苦戦しており、かなり危ないところのようだった。
そこへ上空からブラストがユファに声を掛ける。
「おい、ユファ! どいつが敵だ?」
ブラストの声にユファは空を見上げる。
「ブラスト……! 敵はアイツらよ!」
ユファはレアを殺った憎き魔族とその一味の者達を指さす。
「仲間がいるならさっさとどかせよ? 悪いが今の俺は気分が悪い。最初に言っておくが全て壊すぞ」
ユファはその言葉に慌てて『念話』で『ベア』や『ロード』達に敵から離れるように告げた後、倒れているレアとラルフの身体を掴んでユファもまたその場から離れるのだった。
「屑共が……。全員粉々に吹き飛んでしまえ!」
――神域魔法『普遍破壊』。
空を覆い尽くす程の『発動羅列』が浮かび上がったかと思うと、夥しい数の魔法陣が出現していく。
そこに『破壊』の大魔王『ブラスト』が魔力回路から一気に全ての魔力を放出すると、その膨大な魔力は魔法陣に吸い込まれていった。
――次の瞬間。
光がブラストから放出されたかと思うと、その場にいたヌーに操られたレアの配下達の魔族が全員逃げる間も無く呑み込まれていき、やがて恐ろしい魔法の爆音と共に肉体が骨ごとグチャグチャと音を立てて潰れていく生々しい音が聞こえて破壊されるのだった。
ラルフやベア、それにロードの者達は目を丸くしてその光景を見届ける。
「レア……! わ、私がもっと強ければ……!」
ユファだけがそちらを見ずに足元に倒れている、レアとレインドリヒを悲し気に見つめるのだった。
ユファが治癒の魔法をかけ続けるが、一向にレアの目に光が宿らない。先程まで言葉を口にしていたレアは、もう何も喋らずにユファの顔だけをじっと見ていた。
「何で傷が塞がらないのよ! 私の魔力が足りないの!? ならもっと生命力を……!」
(ごめんねぇ。もう無理をしないでいいわよ先輩。私はどうせ助からないわぁ)
そう声に出して言いたいが、レアはもう喋る事が出来ない為に心の中でそう呟いた。
そしてレアの目がゆっくり、ゆっくりと閉じられていく。
「駄目よ! レア、諦めないでよ!!」
治癒魔法をかけ続けるユファの顔は、涙でぐしゃぐしゃでレアにかける声は涙声だった。
「どいつもこいつも私を置いて逝くなぁ! お願いよぉ……!」
レパートの世界の同胞達。レインドリヒもフルーフも居なくなり、そして今レアも居なくなろうとしている。徐々に寂しさがユファを襲ってくるのだった。
「あ……りが……と、ねぇ……」
何とか絞り出すようにその言葉を残して『魔王』レアはその生涯を閉じるのだった。
――レアの残した言葉を聞いたユファはもう涙を止められない。
「駄目よ! 逝っては駄目よ、レアぁっ、レア! 目を開けろ! 開けなさいよぉ!!」
ユファの治癒魔法に更に魔力が勢いが増していく。
それはユファが自らの生命力を全て費やそうと、一気に力を込めたからである。
急速に生命力を失っていくユファの様子を見たラルフは、これまで以上に焦りの声を漏らす。
「ゆ、ユファさん! それ以上はだめです、貴方が死んでしまう!」
ラルフはジーヌとの戦闘中だが、声をかけずにはいられなかった。ここで放っておけば師であるユファは『レア』の目を開けさせる為に自らの命を絶ってしまう。
そこにラルフはジーヌから右拳を鳩尾に受ける。
「ぐはっ……!」
戦闘中にジーヌから視線を外してしまった為に、ジーヌから手痛い一撃を食らうラルフだった。
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その頃ブラストと戦闘を続けていたヌーは、溜息を吐いて口を開く。
「ちっ! アイツらの力を借りるのは癪だがこれ以上は仕方あるまい」
そう言うとヌーは残り少ない『魔力』をある者の召喚に使う。
「?」
もちろん戦闘中である為に、ブラストは唐突なヌーの行動に眉を寄せる。そんなブラストの前に一人の魔族が突然現れた。
――その魔族はとても細身で背が高く、縁の青い伊達眼鏡をかけていた。
「やれやれ。我らの主に大口を叩いておいて、結局はこの様ですか?」
突如現れた魔族は『大魔王』ヌーに対してとても辛辣な言葉を放つ。
「喧しい、さっさと手を貸せ」
いきなり現れた細見で長身の魔族にヌーがそう言うと、その魔族は溜息を吐いた。
「勘違いなさらないでくださいよ? 我ら組織の力に頼る以上、貴方は『大賢者』様に大きな借りを作るということを努々お忘れなく」
「分かった分かった。いいからさっさと俺を飛ばせよリベイル」
突如現れたリベイルという魔族は、どうやら『概念跳躍』の魔法を使えるようだった。
このままでは逃げられてしまうと感じたブラストは様子見を辞めて、一気に本気になるのであった。
リベイルの魔法詠唱より早くブラストは『金色のオーラ』を纏い始めて、ヌーもろとも破壊の魔法を使おうと右手を翳す。
――その時であった。
「――」
遠く離れた場所から、一直線にこちらに向けて光が放たれた。
「まずい……!」
リベイルの前に立ったヌーは『次元防壁』を展開する。
しかし『力の魔神』の前では防御系の最高峰と呼ばれる神域領域の『時魔法』といえども何の意味も為さない。
リベイルは魔力が残り少ないヌーの肩を掴み更に空高く上昇する。
「別世界へ跳びますよ? 相手がアレでは次は確実に殺されます」
「ああ……、さっさといけ」
次の瞬間、リベイルの『概念跳躍』が発動して『リラリオ』の世界から二人は忽然と姿を消すのだった。
残されたブラストは、苛立ちから破壊の衝動に襲われる。
「あぁっ! クソッタレ! 邪魔してんじゃねぇよボケがぁっ!!」
ブラストは衝動的に『破壊』の魔法を放とうと右手を魔神に向けかけるが、そこで必死に歯を食いしばって何とか自制を行うのであった。
ここで『力の魔神』を相手にすれば、どう足掻いてもやられるのは自分だと理解している為である。衝動を何とか抑えたブラストは、近づいてくる魔神を睨む。
「――?」(貴方は確かソフィの……?)
何を言っているか分からないが、魔神に『契約の紋章』を見せると魔神は笑みを浮かべた。ソフィの配下の『九大魔王』達は全員が『契約の紋章』を持っている。
この契約の紋章を持っていれば、その世界にソフィがいれば魔力や戦力値が上昇するアイテムであるが、それ以上の恩恵と言ってもいい事に『力の魔神』に味方だと知らせる事が出来る。
「――」(それじゃあ、失礼するわね)
この世界からヌーが消えた事で、ソフィに迫る脅威は消えたと魔神は認識したのだろう。
『力の魔神』にとってソフィに敵意を向ける存在が居なくなれば、その後の事はどうでもいい様子で、ブラストの目の前で『力の魔神』は静かに消えていった。
一人残されたブラストはやり場のない怒りを滲ませながら、ユファの元へと戻っていくのだった。
……
……
……
そしてブラストがユファの元へと辿り着いた時、レアはその場で倒れており、ユファを守るように人間の男も地面に片膝をついていた。
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そこへ上空からブラストがユファに声を掛ける。
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空を覆い尽くす程の『発動羅列』が浮かび上がったかと思うと、夥しい数の魔法陣が出現していく。
そこに『破壊』の大魔王『ブラスト』が魔力回路から一気に全ての魔力を放出すると、その膨大な魔力は魔法陣に吸い込まれていった。
――次の瞬間。
光がブラストから放出されたかと思うと、その場にいたヌーに操られたレアの配下達の魔族が全員逃げる間も無く呑み込まれていき、やがて恐ろしい魔法の爆音と共に肉体が骨ごとグチャグチャと音を立てて潰れていく生々しい音が聞こえて破壊されるのだった。
ラルフやベア、それにロードの者達は目を丸くしてその光景を見届ける。
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