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九大魔王編

251.別世界の大魔王イザベラVS九大魔王イリーガル2

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 魔王城の前まで辿り着いたイリーガルは、遅れてやってきたバルク達と合流すると顎に手をやりどうするかを考え始めていた。

「ここまで来てもやはりソフィの親分の魔力は感じられんな」

 イリーガルの視線を受けたバルクは頷く。

「どうやら何かしらの魔法かマの影響で、この場から飛ばされたかもしれませんね」

一先ひとまず中に入ってみるか、何か分かるかもしれん」

 そう言うとイリーガルは、背に抱える大刀を引き抜き『オーラ』を大刀に纏い始める。

 魔王城へ一歩踏み入れた瞬間、イリーガルの配下であるバルクは、慌ててイリーガルへ口を開いた。

「イリーガル様……。何者かは分かりませんが、玉座の方から、恐ろしい程の戦力値を感じます」

 大魔王ソフィではない別の威圧を放つ者が、魔王城に居る事をバルクは『漏出サーチ』で感じ取った。

「ああ……、そのようだが。しかし俺が知らない魔力だな。魔王城に出入りする者で俺が知らないわけがないのだが」

 そう言いながら警戒を強めるイリーガル。

 一歩、また一歩とイリーガル達は魔王城の奥へと進んでいく。

 ソフィの配下として何度も歩いた魔王城の廊下だったが、居座る者が違えばここまでイメージが変わるものかと思わされる程であった。

 そして誰とも遭遇せぬままに、魔王城の玉座に辿り着いたイリーガル達。その眼前には見た事もない魔族が、笑みを浮かべて玉座に座っていた。

 九大魔王の中でも相当の古参であるイリーガルから見ても、玉座に座る男は腕の立つ男だと判断出来る程の威圧を放っていた。

「お前が、ソフィとかいう大魔王の配下の者か?」

 開口一番に玉座に座っていた男が、イリーガルに問いかけてきた。

「待て……。貴様の問いに答える前に、

 そう言ってイリーガルの目が『金色』に変わる。

「その玉座は、さっさとそこから離れろ」

 魔瞳『金色の目ゴールド・アイ』をイザベラに放ちながら、不機嫌さを露わにするイリーガル。

「クックック、大した忠誠だな? たかが主の椅子に座っていただけで攻撃を仕掛けるか」

 イザベラの目も『金色』に変わり、イリーガルの『金色の目ゴールド・アイ』を相殺する。

 バチバチという音を立てながら、やがて完全に相殺されて『金色の目ゴールド・アイ』の効力は消えた。

(こいつ何者なのだ? イリーガル様の『金色の目ゴールド・アイ』を相殺するとは……)

 イリーガルの側近であるバルクが、少しばかり驚いた様子でイザベラを見る。

「ふーむ、この大陸ごと既に俺のモノなのだから、俺がこの玉座に座るのは当然の事なのだが、気に入らないか? この世界の大魔王の手先のモノよ」

 そのイザベラの言葉にイリーガルは、苛立ちを表面に出し始める。

「そんな冗談はここでは言わないほうがいいぞ? 特に俺達の前ではな!」

 そう言い放つとイリーガルは大刀を握りしめて、一直線に玉座に座るイザベラに向けて突進する。

 ここでようやくイザベラはソフィの玉座から立ち上がり『淡く青い』オーラを纏いながら、大きな剣を具現化する。

 大男という言葉が似合うイリーガルが自分の体格に合った大刀を持ち、高速で向かっていく姿は普通のモノであれば萎縮してしまうとこだが、イザベラは真っ向からそのイリーガルの突進を受け止めにいく。

 玉座から飛び降りて笑いながら、イザベラも具現化した大剣でぶつかりにいく。

 ガキンという大剣と大刀がぶつかり合い、キリキリキリという音を立てながら互いの刃先が滑り合いながら相手の首を刎ねに向かう。

 しかし互いの力は拮抗して全体重をかけあっているにも拘らず、激しい鍔迫り合いになったまま両者は全く動かない。

「ほ……う? ここまで俺と互角とは驚かされる!」

 イザベラは笑みを浮かべながら、身体を強引に後ろに逸らす。イリーガルの身体が一瞬泳ぎ、その隙を狙ってイザベラは相手の胴を切り払う。

 確実にイザベラの一撃が刺さるかと思われた次の瞬間、イリーガルは笑みを浮かべる。

 イザベラは不可解に思いながらも、そのまま剣を持つ手に力を込める。しかし唐突に身体がズシリと重くなり、イザベラの速度が落ちた。

 ――否、イザベラの身体が重くなったわけではなく、イリーガルの周囲一帯の重力が変わったのである。

 イリーガルは相手の力量を判断し終えたようで、そして遂に自身の状態を変化させる、を始めたようであった。

 速度の落ちたイザベラの大剣はイリーガルに身体を捻って避けられて、浅く腹の薄皮を斬るだけに留まりイリーガルの大刀は、そのまま地面に向かって振り下ろされる。

 大刀が地面に当たった瞬間、凄まじい音と共に、地面に亀裂が入り地盤が崩れる。

「な、何ぃっ!?」

 流石のイザベラも驚愕の声をあげるが、イリーガルの攻撃はそれで終わらなかった。

 『淡く青い』オーラと『淡く紅い』オーラがイリーガルを包むように纏われていき、空を飛んで逃れようとするイザベラに向けて、下から両手で大刀をすくい上げる。

 恐ろしい風圧でイザベラは吹き飛ばされて、空を飛ぼうとする身体がうまくついてこない。

 そこに更に先程と同じくイリーガルが飛ばされているイザベラに向かって突進していき、刀の刃で斬るのではなく、切っ先を縦にして振り切る。

 そして強引に大刀で

 ガァンっという恐ろしい音が周囲に響き、直撃したイザベラは魔王城の広大な空間を高速で吹き飛ばされてそのまま壁に激突し、尚もイザベラの顔面で壁を削りながらも速度が止まらずに、そのままイザベラの顔はドリルの役割を果たしながら、外まで突き破られていった。

「……! ……ッ!」

 イザベラは身体をビクンビクンと震わせて痙攣を起こした後、死後硬直を繰り返していたようだがやがてそのまま動かなくなった。

 しかしそれで戦闘が終わったわけではなく、魔王城の中から恐ろしい速度で『イリーガル』は外に向かって突進してくる。

 そして意識を失っているのか、それとも死んでいるのか分からないイザベラに、トドメを刺すつもりで上空へ飛びあがり、そのまま大刀をイザベラの頭部に目掛けて振り下ろす。

 全体重を乗せた後に更にイリーガルの目が『金色』に眩く光り、イザベラの頭部を貫き地面をぐちゃぐちゃに叩き潰した。

 イザベラの頭部だけに留まらず、イザベラの居た部分の地面が抉り取られて底が見えなくなった。

 そこでようやくイリーガルは、笑みを浮かべながら呟く。

で、ソフィの親分の玉座に座ってんじゃねぇよ!」

 イザベラはそこそこに大した魔族であったが、まだまだイリーガルを本気にさせる程ではなかったようだ。

 その証拠にあれだけの戦闘を行っていて尚も息切れなどはしておらず、戦力値のコントロール等も一切行わずに通常状態のまま、状態の変化とオーラを纏うのみで戦った為に、体力も魔力もほとんど減らす事は無かった。

 【種族:魔族 名前:イリーガル 年齢:9330歳 魔力値:700万
 状態:通常 戦力値:6億8650万 所属 大魔王ソフィの直属の配下】。

(※イザベラとの戦闘開始前)

 【種族:魔族 名前:イリーガル(大魔王化) 年齢:9330歳 
 状態:状態変化(大魔王化) 戦力値:10億2975万 魔力値1050万
 所属:大魔王ソフィの直属の配下・九大魔王】。

(※イザベラとの戦闘中、中盤)

 【種族:魔族 名前:イリーガル(大魔王化) 年齢:9330歳 
 状態:二色の併用(青の練度5 紅の練度1.2)・状態変化(大魔王化)
 戦力値:61億7850万 魔力値:6300万 所属:大魔王ソフィの直属の配下】。

(※イザベラとの戦闘、終盤)

(※色別のオーラの数値の計算等は、四章終わりの補足と説明回にて記載しています)

 こうしてダールの世界の支配者であったイザベラは、勝手にソフィの魔王城に侵入した罪で『九大魔王』の一体にして『処刑』の大魔王『イリーガル』の手によって処刑されるのであった。

 ……
 ……
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