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戦争の準備編

247.大陸の首脳会議

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 ラルグ魔国の王であるソフィは『ヴェルマー』の主要国の王達をラルグ魔国へ招集する。

 魔王レアがソフィに対して宣戦布告をしてきた事で、この大陸を襲撃をしてくる可能性がある為に、この大陸の同盟の者達に今後のレアからの襲撃に関して注意喚起をする為である。

 レイズ魔国、トウジン魔国、そして三大魔国以外の諸外国の主だった者達も集まっていた。

 そしてレイズ魔国の冒険者ギルド長であり、現ラルグ魔国のNo.2であるレルバノンもまた、この会議に出席している。

 あとはヴェルマー大陸の者ではないが、ソフィの配下となりレイズ魔国と同盟を組んでいる『ターティス』大陸の龍族の王である始祖龍『キーリ』の姿もあった。

 ソフィから話された『魔王』レアの宣戦布告の内容は、各国の王達も渋い顔を見せる。

 生まれてから千年、二千年に満たない魔族達であれば『魔王』という存在にピンと来ないだろうが、それこそ三千年以上の年齢の『リラリオ』出身であれば、誰もが『魔王』レアの過去の支配を知っている為に決して楽観視できる問題ではなかった。

「世界が違う為にあまり多くの数で攻めてはこないと思うが、奴らの魔力を感知したらすぐに防衛にあたれるように『トウジン』魔国にはキーリ。お主が守りについてやってくれ」

 ソフィの言葉にコクリと頷く。

「レイズ魔国には『ユファ』と『シス』お主達の他にも冒険者ギルド長のレルバノンが居るが、レアが現れたら絶対に戦わずに我に『念話テレパシー』で伝えよ」

 レイズ魔国のシスとユファ、そして冒険者ギルド長のレルバノンもまた頷く。

「ソフィ様に聞きたい事があるんだが、トウジン魔国の方には龍族の俺の同胞達の多くを迎え入れていいのか?」

 椅子の上で体育座りするという変わった座り方をしているキーリは、ターティス大陸の同胞の龍族を魔族の国に駐屯させてもいいのかとソフィに尋ねるのだった。

「シチョウよ、構わぬか?」

「ああ。俺としても『リラリオの調停者』と呼ばれていた龍族様達が、近くにいてくれた方が心強いしな」

 シチョウの言葉を聞いたソフィは、そのまま視線をキーリに移し頷く。

 本来であれば龍族は他の種族を見下す傾向にある為、魔族と争いになるかもしれないと懸念を抱くところだが、龍族達から喧嘩を吹っ掛ける事は、今後はないと見ていいだろう。

 龍族の王であるキーリがソフィの配下となっているという事も当然あるが、それ以上に『レキオン』や『ミルフェン』というキーリの側近に至るまでが、ソフィに対して忠実なのである。

 特に『転覆カタストロフィ』の効果をまともに受けた『ミルフェン』は、呼吸困難に陥り死にかけた事もあって、今でもソフィの姿を見ただけで全身に震えが走る程であった。

 意識を失っていたディラルクは、ミルフェンのソフィに対しての脅え方に引いていた程である。

 ヴェルマーの魔族側にとってもソフィやシス、ユファにシチョウ、どの首脳も信頼されており、いさかいを起こすなと命令すれば、誰も文句は言わないだろう。

 四千体という大規模な龍族が、ヴェルマーに駐屯しても何も問題はないと考えていいだろう。

 話を戻すが現在の三大魔国の国力としてソフィが居る時点で、ラルグが国力のトップを誇っている。

 次いで『真なる魔王』階級クラスのシス女王に『大魔王』階級クラスのユファがいるレイズ魔国が、ヴェルマー大陸の国力で言えば二番目の国と言える。

 そして三番手の『トウジン』魔国であるが、闘技場に参加する為に集まった魔族の冒険者の多くが、現在トウジンに在籍しており、今回キーリたち龍族が防衛につく為に『魔王』レアが攻めてこない限りはまず問題はないとみていいだろう。

 他のヴェルマーの諸外国も現在は、冒険者ギルドを通して三大魔国とも交流がある為、ソフィの配下達が警備についても嫌な顔をする者達が居ない。

 ヴェルマー大陸は着々と『国同士』や『魔族同士』が手を取り合う時代が訪れている様子であった。

 そしてそれはソフィがラルグの王となる前の時代では、とてもではないが考えられない事であった。

「よいか? 『魔王』レアが現れた場合はすぐに我かキーリに伝えるのだ。それ以外にも太刀打ちが出来ないと感じたら、無理をせずに直ぐに『念話テレパシー』で連絡するのだぞ? 肩肘張って無理をして死ぬ事がと知れ」

 かつてソフィの配下にも告げた言葉を受けて、この場に居る首脳一同は首を縦に振るのだった。

 こうして恙無つつがなく会議は終了して、三大魔国以外の諸外国の主だった王達は自国へ帰っていった。

 残った者達は『魔王』レアと実際に戦争になった時に、どういう対応をするかで話し合う。

 この中で唯一『世界間移動』と評される魔法『概念跳躍アルム・ノーティア』を使えるユファが口を開いた。

「別の世界から転移できる存在はレアだけだと思うけど、もしかするとあのバカ、いや……『レインドリヒ』っていう大魔王もレアと手を組んでいる可能性があるの」

 ソフィはユファから『レインドリヒ』という言葉が出た事に驚く。

「ユファよ、お主レインドリヒを知っておるのか?」

 そこレインドリヒに自分の主が食いつくと思っていなかったユファは、話そうとしていた内容を一度話すを止めてソフィに頷く。

「はい。レインドリヒは元々私の世界に居た魔王なんです。基本的には私と同じくらいの強さですが『概念跳躍アルム・ノーティア』の魔法も使えるので、もしかすると今回の戦争で奴が出てくるかもしれません」

「という事はその『レア』と『レインドリヒ』って奴の二人だけで攻めてくるって事か?」

 ユファの話を聞いていたシチョウがここで口を開いた。

「……いえ。レインドリヒは『魔術師』と呼ばれるこの世界では『魔法使い』のような『魔王』なのだけど、奴の得意な術の一つに『悪魔召喚』というものがあるから、自分の手下の悪魔を出してくると思うわ」

 シチョウに向けてユファがそう説明する。

 同じ魔族であるシチョウももう少し上の領域の『魔王』階級に到達する事になれば、この『悪魔召喚』を用いて独自に魔物と契約をする事も出来るだろうが、当然まだ『最上位魔族』でしかないシチョウは使用が出来ず、またそんな知識も持ち合わせてはいないのだった。

「この世界では悪魔と言えば『下級悪魔レッサーデーモン』や『上級悪魔アークデーモン』が居るが、そういう奴らと同じ程度であれば、数十体出てきても問題はなさそうだがな」

 ミールガルド大陸に居る人間であれば『下級悪魔レッサーデーモン』でさえ脅威となりえるが『上位』に位置する魔族であれば『下級悪魔レッサーデーモン』や『上級悪魔アークデーモン』等は、何体居ても相手にならないと考えるのだった。

(※かつてソフィが『レルバノン』の屋敷で戦った『悪魔』は、戦力値が200万もあれば十分に三体とも討伐が出来る程の存在だった)

「そうね……。使役する者が魔族くらいの力量であれば、私達にとっては何の脅威にもならないでしょうね。でも『大魔王』の領域に居る『レインドリヒ』の『悪魔召喚』は決してバカには出来ない」

 無数に存在するありとあらゆるに存在する悪魔達。

 基本的に『魔王』と呼ばれる領域に達した魔族であれば、ほとんどの悪魔は逆らえない。

 しかし何百年、そして何千年と生きた悪魔の中には『悪魔自身』が、魔王達と遜色のない強さを持っている場合がある。

 そのような存在達を召喚されてしまえば、ヴェルマー大陸に居る魔族達であっても面倒な事になる。

 一体や二体であればそれでも問題はないだろうが、数千年生きる『悪魔』達が数百、いやそれ以上の数千と出てくるのであれば、それは十分に脅威といえる事だろう。

「レインドリヒという魔王はただの魔法使いではなく『魔術師』。こちらが思いもよらないような行動をとる可能性がある」

 『災厄の大魔法使い』としてありとあらゆる『魔』を追求し続けた大魔王『ユファ』が互角の強さだと説明する以上、舐めて掛かっていい相手ではなさそうだった。

「ふーむ。世界を移動する魔法といい『悪魔』を召喚する技法といい、色々と世界が変われば面白い発想が出てくるものだな」

 ソフィはそう言いながら過去にギルド対抗戦に出てきた『レン』という『召喚術士』の存在を思い出していた。

 そんな事を呟くソフィではあるが、ソフィにも『召喚術』と呼べる魔法を無意識に使っている。

 しかしそれは魔物や悪魔といった生物ではなく、神格を有する『』という神々を従える存在ではあるのだったが――。
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