上 下
249 / 1,915
渦巻く陰謀編

242.動く九大魔王達

しおりを挟む
 イリーガルにダイス王国の様子を見てくるように頼まれていた使い魔『ヴァージア』は、まず王国内にいるイリーガル様の旧知の間柄である『ディアトロス』様に会いに行く事にした。

 ヴァージアは『夢魔』という魔物で本来の彼女の役割は、狙った男の夢に自身を登場させて、満足させてから生気を吸い取り殺して『魔力』を奪うという恐ろしい魔物であった。

 だがヴァージアは本来の力とは別に戦闘面においても秀でており、元々は単なる魔物だというのに『最上位魔族』であっても、ヴァージアには勝てぬ程の戦力値を持っている。

 【種族:夢魔 名前:ヴァージア(イリーガルの名付けネームド
 年齢:??? 魔力値:50万 戦力値:3100万 
 所属:大魔王ソフィの配下・九大魔王イリーガルの使い魔】。

 ヴァージアは闇夜の空を高速で飛んでいき、ひとまずダイス王国へ到着した。ダイス王国へ正面から行けば攻撃をされる恐れがあるため、空から城の中へ侵入する事にしたようであった。

 ダイス城の裏門がある上空。その最上階の窓から入ろうとするが、ヴァージアが城に入ろうと窓に手をかけた時、電流が走ったような衝撃と共に激しい痛みがヴァージアの身体を駆け巡った。

「!!」

 慌てて窓から手を離して距離を取る。どうやら前まで張られていなかった『結界』が、ダイス王国城に施されているようだ。

 ヴァージアはこの結界を何とか強引に破壊しようと『淡く紅い』オーラを纏い始める。

(※『紅いオーラ』とは最上位の魔族や、才ある上位魔族程の存在がようやく纏う事の出来る自身の力の上昇が可能な技法である)。

 自らの戦力値を上昇させて再度窓に手をかけるが、先程と同じく結界に阻まれてヴァージアは、気絶しそうな程の痛みを負いながら、ふらふらと羽を羽搏かせながら城から距離をとった。

 流石にどうしようもないので、ヴァージアは窓から城の中をのぞいて周る。すると普段であれば人間しかいない筈のダイス城に、が、歩いているのをヴァージアは発見する。

 ――何故場内に魔物が居るの? とばかりに、同じ魔物である夢魔のヴァージアは思ったが――。

 次の瞬間、外から中の様子を窺っていたヴァージアはその全身目の魔物に見つかってしまう。

「!!」

 慌ててヴァージアはその場から離れようとするが、上空で動けなくなってしまった。そしてそのまま意識が混濁していき、地へ落とされたのだった。

 ……
 ……
 ……

 ヴァージアがダイス王国へ向かってから早二日。

 まだ戻ってはこない使い魔にイリーガルは、既に何者かに『ヴァージア』がやられたのだと判断するのだった。

 ここからダイス王国へはヴァージアの速度を考えると、往復で七時間もあれば十分に戻ってこられる筈である。

 そして何かあったとしても『念話テレパシー』で情報を送るように伝えてあるにも拘らず、全く音信がないとなれば何者かに命を奪われたか、もしくは捕まって意識を失わされたとみて間違いないだろう。

 現在イリーガルは『魔界』でも中立の者達が集まる大陸の端に拠点を構えている。

「お前達、準備をしろ。これよりソフィの親分の元へ、へ向かうぞ」

 ダイス王国の事も気がかりではあるが、流石に勇者の噂を耳にしてから二日も経っている。実際に何かあったと判断したイリーガルは、主であるソフィの城へ向かう事にするのであった。

「他の魔王達への牽制の意味も込めて今から俺の場所を全魔族に伝える。お前達も気を失わぬよう気をつけろ。間違っても今から俺には『漏出サーチ』を使うなよ? 

 イリーガルの言葉にバルクは恭しく頭を垂れた。

 『念話テレパシー』が通じないというのであれば、九大魔王イリーガルはその存在を示して今から向かう場所を強引に、同胞である達に伝える事にしたのだった。

 イリーガルが空に向かって飛び上がるとバルクは中立を守るこの大陸の者達に、被害を及ばぬように大規模な『結界』を張る。

 そして『は遥か上空で力を示した。

 大魔王であるイリーガルが『魔力』を一気に開放すると、空に浮かぶ雲は全て吹き飛んだ。

 そしてバチバチと音を立てながら『淡く青い』オーラを最高練度まで高める。

 『漏出サーチ』や『魔力感知』の出来る猛者達は、如何なる場所に居ても『イリーガル』の力を感じ取れる程にその存在感を示したのである。

 【種族:魔族 名前:イリーガル(真なる大魔王化) 年齢:9330歳 
 状態:青のオーラ 魔力値:1190万 戦力値:34億2800万】

でも十分に俺だと気づけるだろう。さて行くか」

 眩く光る目をしたイリーガルは、アレルバレルの『魔界』中に自らの力を示した後に、ソフィの城へ向かうのだった。

 ……
 ……
 ……

「イリーガルが動いたか……! 配下達をダイス王国へ向かわせろ。今の内にディアトロス殿を回収してくるのだ。邪魔をする者達は皆殺しにして構わん!」

 ソフィの魔王城がある大陸の遥か北『破壊』の異名を持つ『九大魔王』の一体『ブラスト』は配下にそう命じた。

 ブラストの側近である『ルード』は『念話テレパシー』で主であるブラストの言葉に頷いた。

(御意!)

 九大魔王の中で最も危険な思想を持っているといわれる『破壊』の大魔王は、主であるソフィとその配下達以外は皆殺しにしたいという衝動に常に襲われている。

 この世界は大魔王ソフィ様の物であると考えるブラストは、優しいソフィ様の温情に甘えているにも拘らず、あろうことかそんなソフィ様に対して勇者とかいうフザケタ存在を作り出して、あまつさえそのソフィ様を討伐させようとしていたダイス王国の人間達に対して、ブラストは我慢ならなかった。

 今まではソフィ様の命令があった為に手を出さなかったが、現在その主がこの世界に居ないという事に気づいた『ブラスト』は、今の内にを消し去ろうと考えるのであった。

 後でソフィ様が戻ってきた時にお叱りがあるかもしれないと考えた『ブラスト』だが、

 多少のお叱りよりも得られる高揚感を想像して忘我ぼうがの念を抱いた彼は、ゾクゾクと身体を震わせるのだった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

処理中です...