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ヴェルマーの闘技場編
238.修羅の道
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闘技場での試合を終えた後、ユファはラルフを連れてレイズ城に戻ってきた。
「お疲れ様でした」
レイズ城に入ってもまだ浮かない表情の師にラルフは試合を労う言葉を投げかけると、ユファはその言葉に嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。
「ええ、ありがとう」
彼はエルザと戦った時の事を思い出していた。
あの時は試合後にユファが会いに来てくれていたが、今は逆の立場である。
「……貴方に伝えておきたい事があるわ」
しかしあの時の師とは違い、何かを決断している表情を浮かべていた。ラルフは内心で言われる内容に予想がついていた。
(彼を追いかけるのを諦めさせようとするのでしょうね)
「……何でしょうか?」
ユファは少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら、弟子であるラルフに告げる。
「あの子を倒すのなら今のままだと到底敵わない。明日から更に修行を厳しくするわよ!」
その言葉にラルフは驚き目を丸くする。
「……貴方はすでに『青』の領域まで来ている。確実に強くなっているという事を自覚しなさいね」
ユファがそこまで言った後、弟子が驚いている事にようやく気付いた。
「……どうしたのかしら?」
「私はてっきり貴方に彼を目標にするのを辞めろと言われるのかと覚悟していました」
ラルフがそう言うとユファもまた驚いた……、というよりは呆れたような表情を浮かべた。
「……私が貴方の師匠になると決めた時に言った言葉を忘れたかしら? 貴方をあの子に勝たせてあげるまで、私は貴方を手放すつもりはないわよ? 一度決めた以上私から諦めろと言うつもりはないわ。貴方が諦めたなら止めはしないけどね」
そこまで言うとユファはラルフに笑いかける。
(貴方は……、本当に凄い人ですね)
ユファの浮かべる笑みを見て、心底そう思うラルフであった。
「私から諦めるつもりはありませんよ、死ぬまで追い続けて見せます」
ラルフの宣言を聞いたユファは頷きを見せる。
「だったらまずは、あの子が『金色』のオーラを使いこなす前に『青のオーラ』の練度を完璧に仕上げるわよ? それと素の戦力値ももっと上げないといけないわね。これから忙しくなるわ」
そういってラルフの師匠は、ラルフにつけさせる修行を色々と考え始める。
ラルフはそんなユファを頼もしく思いながら、この師に報いる為にもこれまで以上に強くなろうと決心するのだった。
……
……
……
闘技場を観戦していた観客達の大半が居なくなった観客席。そこに未だに座り続ける男がいた。その男は先程まで行われていた、Bランクの試合を思い返しながら考え事を続けている。
「あの『災厄の大魔法使い』と呼ばれたユファを相手に、ここまで戦える人間がいるとは驚きだ」
黒のハットに黒の長いコートに身を包んだ、全身黒づくめの男が驚いた表情でそう呟いた。
――その男の名は『レインドリヒ』。
ユファと同じ世界『レパート』の出身にして、ユファと殺し合いをした経歴を持つ『大魔王』である。
彼がこの『リラリオ』に来た理由は、現在同盟の関係にある『魔王』レアに告げられたからである。
――近い未来にレアはこの世界で大掛かりな戦争を仕掛ける予定である。
その下見というのも目的の一つだったが、闘技場の噂を聞きつけてふらりと立ち寄ってみたのだが、まさかそこで彼と死闘を繰り広げた『大魔王』ユファが、闘技場で選手として出ているとは思わなかった。
レインドリヒが見た感じでは、最後の放とうとしていた一撃以外、まだまだユファは本気では無かったが、それでも人間に対する戦い方では無かった。
「少しこの世界で遊んでみるか、まだまだ計画の時まで日はある」
笑いを浮かべた後に『レインドリヒ』は、ゆっくりと観客席から姿を消すのだった。
……
……
……
トウジン魔国の闘技場は本日の試合のおかげもあり、更に人気を不動の物として参加者を続々と増やしていき、それに比例して冒険者ギルドもこれまで以上に賑わいを見せていくのだった。
「お疲れ様でした」
レイズ城に入ってもまだ浮かない表情の師にラルフは試合を労う言葉を投げかけると、ユファはその言葉に嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。
「ええ、ありがとう」
彼はエルザと戦った時の事を思い出していた。
あの時は試合後にユファが会いに来てくれていたが、今は逆の立場である。
「……貴方に伝えておきたい事があるわ」
しかしあの時の師とは違い、何かを決断している表情を浮かべていた。ラルフは内心で言われる内容に予想がついていた。
(彼を追いかけるのを諦めさせようとするのでしょうね)
「……何でしょうか?」
ユファは少しだけ悲しそうな表情を浮かべながら、弟子であるラルフに告げる。
「あの子を倒すのなら今のままだと到底敵わない。明日から更に修行を厳しくするわよ!」
その言葉にラルフは驚き目を丸くする。
「……貴方はすでに『青』の領域まで来ている。確実に強くなっているという事を自覚しなさいね」
ユファがそこまで言った後、弟子が驚いている事にようやく気付いた。
「……どうしたのかしら?」
「私はてっきり貴方に彼を目標にするのを辞めろと言われるのかと覚悟していました」
ラルフがそう言うとユファもまた驚いた……、というよりは呆れたような表情を浮かべた。
「……私が貴方の師匠になると決めた時に言った言葉を忘れたかしら? 貴方をあの子に勝たせてあげるまで、私は貴方を手放すつもりはないわよ? 一度決めた以上私から諦めろと言うつもりはないわ。貴方が諦めたなら止めはしないけどね」
そこまで言うとユファはラルフに笑いかける。
(貴方は……、本当に凄い人ですね)
ユファの浮かべる笑みを見て、心底そう思うラルフであった。
「私から諦めるつもりはありませんよ、死ぬまで追い続けて見せます」
ラルフの宣言を聞いたユファは頷きを見せる。
「だったらまずは、あの子が『金色』のオーラを使いこなす前に『青のオーラ』の練度を完璧に仕上げるわよ? それと素の戦力値ももっと上げないといけないわね。これから忙しくなるわ」
そういってラルフの師匠は、ラルフにつけさせる修行を色々と考え始める。
ラルフはそんなユファを頼もしく思いながら、この師に報いる為にもこれまで以上に強くなろうと決心するのだった。
……
……
……
闘技場を観戦していた観客達の大半が居なくなった観客席。そこに未だに座り続ける男がいた。その男は先程まで行われていた、Bランクの試合を思い返しながら考え事を続けている。
「あの『災厄の大魔法使い』と呼ばれたユファを相手に、ここまで戦える人間がいるとは驚きだ」
黒のハットに黒の長いコートに身を包んだ、全身黒づくめの男が驚いた表情でそう呟いた。
――その男の名は『レインドリヒ』。
ユファと同じ世界『レパート』の出身にして、ユファと殺し合いをした経歴を持つ『大魔王』である。
彼がこの『リラリオ』に来た理由は、現在同盟の関係にある『魔王』レアに告げられたからである。
――近い未来にレアはこの世界で大掛かりな戦争を仕掛ける予定である。
その下見というのも目的の一つだったが、闘技場の噂を聞きつけてふらりと立ち寄ってみたのだが、まさかそこで彼と死闘を繰り広げた『大魔王』ユファが、闘技場で選手として出ているとは思わなかった。
レインドリヒが見た感じでは、最後の放とうとしていた一撃以外、まだまだユファは本気では無かったが、それでも人間に対する戦い方では無かった。
「少しこの世界で遊んでみるか、まだまだ計画の時まで日はある」
笑いを浮かべた後に『レインドリヒ』は、ゆっくりと観客席から姿を消すのだった。
……
……
……
トウジン魔国の闘技場は本日の試合のおかげもあり、更に人気を不動の物として参加者を続々と増やしていき、それに比例して冒険者ギルドもこれまで以上に賑わいを見せていくのだった。
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