上 下
225 / 1,915
始祖龍キーリ編

219.二色のオーラ

しおりを挟む
「き、貴様が先程の膨大な『魔力』の持ち主か!」

「や、やめろ!」

 部屋に入って来たゲバドンが、今にもソフィに襲い掛かろうとするのを必死で止めるレヴトンだった。

「こ、この方は魔王様だ……、決して手を出すな!」

「!!」

 先程部屋に入ってきたゲバドンとその配下達は、突然のレヴトンの言葉に驚愕をしながらソフィを見る。

「話を進めてもよいかな?」

 ソフィがそう言うと、慌てて首を縦に振るレヴトンであった。

 ……
 ……
 ……

 キーリの『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を防いだ後、ユファはの身体から『淡く紅い』オーラと『淡く青い』オーラの二色が、絡み合いながら纏わっていく。

「綺麗……」

 シスは二色のオーラを纏うユファを見て、自然に口から言葉が漏れた。

 『淡く紅い』オーラは、力ある魔族が纏う事の出来る攻撃形態であり『淡く青い』オーラは、力ある魔王が纏う事の出来る攻撃形態である。

 『真なる魔王』や『大魔王』と呼ばれる領域に到達した者達は『淡く紅い』オーラを使いながら戦う事はほとんどなくなる。

 完全上位互換と呼ばれる『淡く青い』オーラは、それまでの技法のオーラとは比べ物にならない程の強さだからである。

 しかし歴史上には、この二つのオーラを纏いながら戦う魔族が少なからず確かに存在した。

 ――魔族の歴史に名を連ねた者、それこそが真の魔族の姿『魔王』。

 『淡く紅い』オーラで力の増幅をされた状態で更に『淡く青い』オーラで倍増させる。普段の身体とは比べ物にならない『力』の体現である。

 しかしこの二つの力を同時に扱うのは非常に難しく、選ばれし天才だけが扱えるものである。

 膨大な魔力と知識を持つ者が疑似的に使うことが出来るが、身体に掛かる負荷が激しく数分と持たずに意識を失ってしまうであろう。

 そしてユファはかなり無理をしてこの『二色のオーラ』を纏っている。

 更にいえば膨大な魔力の代わりに、を注ぎながらである。

(私ではまだこのオーラを完全には扱えない。きっとこの勝負の結果がどうであれ私は死ぬでしょうね)

 そこまで考えたユファは、それでも笑いを浮かべた。

(後悔はない。親愛なるソフィ様とシスのいる世界で死を遂げられるなら本望だ)

 ――どうかソフィ様、私に皆を守れる力を!

 アレルバレルにて『大魔王』ソフィの配下として、契約を交わした九大魔王と呼ばれる『大魔王』。

 『使』である『ユファ』は最後の力を振り絞る。

 【種族:魔族 名前:ユファ(大魔王化) 戦力値:7億6000万】。

 ユファの目が金色になり、身体から二色のオーラを纏いながらキーリを睨みつける。

「ほう? これが貴様の本気というワケか? 大魔王『ユファ』とやら」

 始祖龍キーリは目の前の『大魔王』が、自らの戦力値を上回ったのを自覚する。

 しかしそれでもキーリは、少しも臆する事なく不敵に笑いながらユファを見据える。

「では、この俺様が貴様の力を確かめてやろう」

 そういうとキーリは先程と同じく『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』を放った。

 ――そして、ユファの口から凜とした声が発せられる。

 『大魔王』ユファの詠唱――。

「『天空の意思、迸る大いなる雷光。さあ雷神よ、その力を愚者に知らしめよ』」。

 ――神域魔法、『天空の雷フードル・シエル』。

 それはまさに雷神の一撃――。

 『大魔王』ユファが詠唱にのせて魔力の代わりに生命力を注ぎ込んだ天空の雷フードル・シエルは、キーリの放った『龍ノ息吹ドラゴン・アニマ』がユファ達に届く前に龍形態のキーリに直撃する。

「うぐ……! ぐおおお……っ!!」

 流石のキーリも『大魔王』の決死の神域魔法の直撃に苦しみの声を漏らす。しかし神域魔法を放ったユファが先に地に膝をつき目が閉ざされようとしていた。

 何故ならユファの全魔力やそして多くの生命力を注ぎ込んだ為に、立っていられなくなったのである。

「ヴェルッ!」

 慌ててシスが駆け寄りユファを抱き寄せる。

「だ、大、丈夫……! ま、まだ私は死なない……っわよ!」

 シスはほっと胸を撫でおろす。そして上空を見上げるユファを見てシスも空を見上げた。

 そこでは天空の雷をその身に受けて、苦しみ続ける始祖の白龍キーリの姿があった。

「う……っ! うおおおお!!」

 一時的とはいえ、混合のオーラを纏い『契約の紋章』の効果を発揮した状態、更に詠唱有の神域魔法が直撃したのだ。

 流石のキーリであっても耐えられないと、その場にいる誰もが感じた筈だった。

 ――しかし。

 龍形態から人間の子供の姿に戻ったキーリは『淡く紅い』オーラと『淡く青い』オーラの二色のオーラを纏いながら、ユファの天空の雷を弾き返した。

「う、嘘でしょう!?」

 シスに抱かれた状態でキーリの姿を見ていたユファが驚愕の声をあげた。そして弾かれた雷は大地に大穴を開けていった。

「予想以上だ。この俺にこの形態まで引っ張り出させるとは、やるな『大魔王』ユファ!」

 その姿は先程までユファが疑似的に真似た混合オーラ、そのままの色をした二色のオーラだった。

「……終わり……ね」

 キーリの纏う二色のオーラの意味を悟り、ユファは絶望に打ちひしがれた。

 『災厄の大魔法使い』の二つ名を持つ『大魔王』ユファでさえ、到達していないオーラを始祖龍『キーリ』は纏っているのだった――。

 それはすなわち始祖龍キーリは魔族でいえば、ソフィやヌーと同じ領域に立つ『真なる大魔王』階級クラスだということである。

 そしてこの姿こそが『魔王』レアの戦闘でさえ出さなかった奥の手。そして彼女の真の姿と言える。

 【種族:龍族 名前:キーリ(始祖龍化) 戦力値:10億1400万】。

 対するユファは現時点で出せる全てを出し切ってしまい、ガクンと彼女の戦力値は下がっている。

 ――万事休すといった状況であった。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...