221 / 1,906
始祖龍キーリ編
215.激突、三体の龍族
しおりを挟む
バチバチと火の粉がはねるような音と共にキーリは『緑色のオーラ』を体現させたかと思うと、身体の周囲に纏い始める。
(ま、まずい! こ、こいつは他の龍よりも遥かに強い……っ!)
ユファは先に使用していた『魔力感知』で、緑のオーラを纏った幼女が尋常ではない事を悟り、副作用が激しい『漏出』を使わなかった。
しかしそれでも他の龍達とは、まるで比べ物にならない戦力値だろうと判断するのだった。
【種族:龍族 名前:キーリ(人型+緑オーラ)戦力値:4億7800万】。
「お前達! 地上で雁首揃えて見上げている暇そうな奴らの相手をしてこい」
そういって下のソフィ達の配下や『レイズ』の者達を指差す。その言葉にユファは慌てるのだった。
「ま、待ちなさい! お前たちの相手は私よ!」
そう言って駆け出そうとしている龍達の行動を止める為にユファは動き出す。
しかし次の瞬間、キーリはズブリと自分の左手首に右手の指を差し込み始める。
「!?」
――『龍呼』。
キーリの手首からぽたりぽたりと血が垂れ落ちていく。
「お前はその場で動くなよ?」
そう言われたユファは縫い付けられたかのように、自身の体が動かなくなるのであった。
(ば、馬鹿な……! この私の『金色の目』よりも……!?)
ユファは『金色の目』で相殺しようとキーリを見るが、彼女の『魔瞳』は発動されなかった。
「まぁお前も『魔族』の中では強い方なんだろうが、それでもアイツが懸念を抱くような相手には見えねぇなあ?」
そう言うとキーリは、レキオン達に視線を送る。
二体の龍はコクリと頷き、シティアスの周囲に居るベア達に向かって飛んでいく。
(ま、まずい……! このままじゃ……!)
――超越魔法、『終焉の炎』。
「!」
キーリは突如自身に向けられて放たれた炎を躱してみせる。
「ヴェルッ! 大丈夫!?」
その『魔法』を放ったのは『淡く青い』オーラを纏ったシスであった。
「え、ええ……! 助かったわよ、シス!」
自由に動けるようになったユファは、シスに感謝の言葉を述べる。
「おいおい、また『魔王』様のご登場か? この世界はいつの間にこんなに強い『魔族』の存在が多くなったんだか」
キーリは次から次に出てくる戦力値の高い『魔族』に辟易とする。
レアとの戦争前であればここまで戦力値の高い魔族は居なかった。
始祖龍であるキーリが『リラリオ』を掌握していた時代であれば、人間や魔族よりもむしろ、精霊や魔人の勢力の方が問題であった。
かつてのこの世界では『魔族』から『魔王』という昇華した存在等は生まれず、魔族といえば戦力値2000万程度の『最上位魔族上位』辺りで頭打ちであった。
――そんな情勢を切り崩した存在が『魔族』レアである。
『魔人王』や『精霊王』達の存在が消されて、彼女ら『龍族』をも封印してみせて、この世界を『魔族』と『人間』だけにしたレアの存在が大きい。
――だからこそキーリは考える。
(今は黙ってレアに従うがいつかはアイツを出し抜き、魔族達を支配して龍族が再度天下を取ってやる)
――と。
その為には自分達の存在が有益になるとレアに思わせる必要がある。
「いいだろう。てめぇら二人まとめて潰してやる」
キーリはそう告げると『緑のオーラ』を再度纏い始めた。
「シス、私は貴方とベア達の両方のサポートに入るから、その間だけ全力でアイツを止めて頂戴!」
「分かったわ!」
そう言うと二人は『淡く青い』オーラを纏いながら、戦闘態勢に入るのであった。
……
……
……
レキオンとディラルクが、恐ろしい速度で『シティアス』に集まっているベア達に向かっていく。
「お前たち、来るぞ!」
ベアが声を掛けるとソフィの配下達は、一体たりとも逃げずに『龍族』を迎え撃とうとする。
――そこに蒼い光がベアたちを包み込む。そして次にベア達を赤い光が包む。
――上空にいるユファからの『広範囲魔法』であった。
蒼い光は『聖なる護守』という味方の防御力を数段上げる魔法である。
そして赤い光は『滾る戦の要』という味方の攻撃力を数段上げる魔法であった。
ユファはシスのサポートをしつつも『シティアス』全域に、上位魔族以下の敵の攻撃を防ぐ結界を張り、更にはレキオンたち龍族が迫るベア達に、補助魔法で全体の底上げをはかってみせるのであった。
「グオオオオッ!」
ベアが咆哮をあげて迫りくるレキオンたちに圧をかける。
戦力値に差があるとはいっても、ベアは『真なる魔王』階級の魔物である。
恫力を持つ声は『レキオン』と『ディラルク』の聴覚に直接影響を与えた。
「……ちぃっ、全くうるさい獣だな!」
レキオンは苦虫を噛み潰したような、そんな表情を浮かべて速度を緩める。
そこに『ロード』の一体である『キラー』が神経毒の効力を持つ針を放つ。
レキオンはベアに注意力を割きすぎてしまい、そのキラーの放つ数本の針が刺さってしまうのであった。
更にユファの攻撃力をあげる魔法も作用して、先程までよりも効力が微増していた。
「先程返された痛みを忘れたか? また同じ目にあわせてやろう」
そう言ってレキオンが龍呼を放とうとするが、その瞬間を狙って今度は『ユファ』から上空から極大魔法が放たれた。
――神域魔法、『天空の雷』。
爆音が空に響き渡ったか思うと、同時に光の速さで『大魔王』の放つ雷が『レキオン』の身に降りかかる。
「ぐぁああっ!!」
しかし狙ったレキオンにその雷は当たらなかった。傍に居た『ディラルク』がレキオンを守ろうと龍の速度を活かして前に出た為であった。
しかしそれを見たユファが、転移魔法で『ディラルク』の真後ろに出現する。
「!?」
雷の一撃によって大きなダメージを負ったディラルクだが、何とかまだ動けるようでユファの居る方へ振り返り様に炎を吐くが、既にその場にユファは居なかった。
『災厄の大魔法使い』は自由にさせると手が付けられない。
最強の種族である『龍族』のディラルクがユファの姿を探すが、どこにも見当たらない。
そして次の瞬間にはクラリと眩暈を起こし、ディラルクは途方もない嘔吐感を覚えるのだった。
「うぐ……っ! ぐぇぇ……、い、一体何が!?」
ベアがそこに再度咆哮をあげるとディラルクは聴覚を刺激されて、眩暈と嘔吐感に包まれながら地面に落とされる。
そこに『ロード』の一体である『クラウザー』がその存在を示す――。
ディラルクが落ちた場所から更に深い穴が、ディラルクの大きな龍の身体を地面に落としていく。
どこまでも落ちていくような浮揚感を感じつつ聴覚をやられて、更に眩暈を伴っているディラルクは、自分が今どうなっているのかがもう分からなかった。
――そして次の瞬間、熱いという感覚の後に鋭い痛みが走った。
ソフィの配下達である『ハウンド・ドッグ』や『グランド・サーベルタイガー』の大群が押し寄せて、龍の長い体の隅から隅まで余すことなく喰いちぎろうと噛みついていた。
「うぐ……! ぐっぉえ……」
(こ、これは……、これは悪夢だ……!)
身体がいう事をきかず、激しい嘔吐感と更に激しい痛みに晒されながらディラルクは、自身に近づく死を感じとるのだった。
……
……
……
「次はお前が相手か?」
遡る事数分前、キーリに対峙するのはユファを助けて間に入ったシスである。
「ええ。よくも私の大事なヴェルを傷つけてくれたわね? 子供だからって、容赦はしないわよ」
そういうとシスは『金色の目』をキーリに放つ。
――しかしシスの魔瞳『金色の目』目視でキーリは躱してみせるのだった。
「はっ、そんなものが俺に当たるワケがないだろう?」
キーリはシスの背後に回り、右手でシスの背中目掛けて内臓を握り潰そうとする。
「くっ!」
シスは器用に体を捻りながらキーリの手から逃れる。
「はは! よく今のを避けたな? 大したものだぜ?」
殺し合いの最中だというのにキーリは、余裕たっぷりにシスに言い放つ。
「油断してると足元を掬われるわよ!」
――超越魔法、『終焉の雷』。
魔王の閃光がキーリに向かって放たれた。
一筋の閃光はキーリの身体を焼き尽くさんとするが、何とキーリはその雷を、緑色のオーラに包まれた右手で払いのけた。
「なっ!?」
魔法で相殺した訳でもなく、ただ単に蚊を払いのけるかのようにシスの『超越魔法』を手で払うのだった。
「はんっ! 馬鹿が! 俺にそんな程度の低い魔法が通じる訳がないだろうが」
小馬鹿にするように笑うと、キーリはシスに肉薄していく。
「くっ! 馬鹿にしないで!」
シスが無詠唱で『万物の爆発』をキーリに放とうとするが、それよりも速くキーリは姿を消す。
「ど、どこ!?」
慌ててシスが辺りを見回すが、キーリの姿が見えない。
「こっちだよ、出来損ない」
キーリがそう言い放つと左手の手の平を上に向けて、右手は添える様に左手首を掴む。
「!?」
――その瞬間にシスは自分の身体が動かなくなる。
鉛のように重心に重しがかかるというよりは、建物の一部になったような奇妙な不思議な感覚であった。
「動けないだろう? 残念だが、お前はもう終わりだ」
そして添えていた右手を離したキーリは、二本の指でシスを指差してその後に一気に下へ振り下ろした。
「あ……!」
猛スピードで空から地面に叩き落とされていく。シスにだけ重力が何百倍もかかったような、負荷を感じさせる速度だった。
しかし地面に叩きつけられる瞬間、凜とした声がシスの耳に届いた。
すると迫っていた地面がなくなり、代わりにユファの手の中に抱かれていた。
「何とか間に合ったわね。シス、良く持ちこたえてくれたわよ?」
そう言ってユファは、シスに笑いかけるのだった。
(ま、まずい! こ、こいつは他の龍よりも遥かに強い……っ!)
ユファは先に使用していた『魔力感知』で、緑のオーラを纏った幼女が尋常ではない事を悟り、副作用が激しい『漏出』を使わなかった。
しかしそれでも他の龍達とは、まるで比べ物にならない戦力値だろうと判断するのだった。
【種族:龍族 名前:キーリ(人型+緑オーラ)戦力値:4億7800万】。
「お前達! 地上で雁首揃えて見上げている暇そうな奴らの相手をしてこい」
そういって下のソフィ達の配下や『レイズ』の者達を指差す。その言葉にユファは慌てるのだった。
「ま、待ちなさい! お前たちの相手は私よ!」
そう言って駆け出そうとしている龍達の行動を止める為にユファは動き出す。
しかし次の瞬間、キーリはズブリと自分の左手首に右手の指を差し込み始める。
「!?」
――『龍呼』。
キーリの手首からぽたりぽたりと血が垂れ落ちていく。
「お前はその場で動くなよ?」
そう言われたユファは縫い付けられたかのように、自身の体が動かなくなるのであった。
(ば、馬鹿な……! この私の『金色の目』よりも……!?)
ユファは『金色の目』で相殺しようとキーリを見るが、彼女の『魔瞳』は発動されなかった。
「まぁお前も『魔族』の中では強い方なんだろうが、それでもアイツが懸念を抱くような相手には見えねぇなあ?」
そう言うとキーリは、レキオン達に視線を送る。
二体の龍はコクリと頷き、シティアスの周囲に居るベア達に向かって飛んでいく。
(ま、まずい……! このままじゃ……!)
――超越魔法、『終焉の炎』。
「!」
キーリは突如自身に向けられて放たれた炎を躱してみせる。
「ヴェルッ! 大丈夫!?」
その『魔法』を放ったのは『淡く青い』オーラを纏ったシスであった。
「え、ええ……! 助かったわよ、シス!」
自由に動けるようになったユファは、シスに感謝の言葉を述べる。
「おいおい、また『魔王』様のご登場か? この世界はいつの間にこんなに強い『魔族』の存在が多くなったんだか」
キーリは次から次に出てくる戦力値の高い『魔族』に辟易とする。
レアとの戦争前であればここまで戦力値の高い魔族は居なかった。
始祖龍であるキーリが『リラリオ』を掌握していた時代であれば、人間や魔族よりもむしろ、精霊や魔人の勢力の方が問題であった。
かつてのこの世界では『魔族』から『魔王』という昇華した存在等は生まれず、魔族といえば戦力値2000万程度の『最上位魔族上位』辺りで頭打ちであった。
――そんな情勢を切り崩した存在が『魔族』レアである。
『魔人王』や『精霊王』達の存在が消されて、彼女ら『龍族』をも封印してみせて、この世界を『魔族』と『人間』だけにしたレアの存在が大きい。
――だからこそキーリは考える。
(今は黙ってレアに従うがいつかはアイツを出し抜き、魔族達を支配して龍族が再度天下を取ってやる)
――と。
その為には自分達の存在が有益になるとレアに思わせる必要がある。
「いいだろう。てめぇら二人まとめて潰してやる」
キーリはそう告げると『緑のオーラ』を再度纏い始めた。
「シス、私は貴方とベア達の両方のサポートに入るから、その間だけ全力でアイツを止めて頂戴!」
「分かったわ!」
そう言うと二人は『淡く青い』オーラを纏いながら、戦闘態勢に入るのであった。
……
……
……
レキオンとディラルクが、恐ろしい速度で『シティアス』に集まっているベア達に向かっていく。
「お前たち、来るぞ!」
ベアが声を掛けるとソフィの配下達は、一体たりとも逃げずに『龍族』を迎え撃とうとする。
――そこに蒼い光がベアたちを包み込む。そして次にベア達を赤い光が包む。
――上空にいるユファからの『広範囲魔法』であった。
蒼い光は『聖なる護守』という味方の防御力を数段上げる魔法である。
そして赤い光は『滾る戦の要』という味方の攻撃力を数段上げる魔法であった。
ユファはシスのサポートをしつつも『シティアス』全域に、上位魔族以下の敵の攻撃を防ぐ結界を張り、更にはレキオンたち龍族が迫るベア達に、補助魔法で全体の底上げをはかってみせるのであった。
「グオオオオッ!」
ベアが咆哮をあげて迫りくるレキオンたちに圧をかける。
戦力値に差があるとはいっても、ベアは『真なる魔王』階級の魔物である。
恫力を持つ声は『レキオン』と『ディラルク』の聴覚に直接影響を与えた。
「……ちぃっ、全くうるさい獣だな!」
レキオンは苦虫を噛み潰したような、そんな表情を浮かべて速度を緩める。
そこに『ロード』の一体である『キラー』が神経毒の効力を持つ針を放つ。
レキオンはベアに注意力を割きすぎてしまい、そのキラーの放つ数本の針が刺さってしまうのであった。
更にユファの攻撃力をあげる魔法も作用して、先程までよりも効力が微増していた。
「先程返された痛みを忘れたか? また同じ目にあわせてやろう」
そう言ってレキオンが龍呼を放とうとするが、その瞬間を狙って今度は『ユファ』から上空から極大魔法が放たれた。
――神域魔法、『天空の雷』。
爆音が空に響き渡ったか思うと、同時に光の速さで『大魔王』の放つ雷が『レキオン』の身に降りかかる。
「ぐぁああっ!!」
しかし狙ったレキオンにその雷は当たらなかった。傍に居た『ディラルク』がレキオンを守ろうと龍の速度を活かして前に出た為であった。
しかしそれを見たユファが、転移魔法で『ディラルク』の真後ろに出現する。
「!?」
雷の一撃によって大きなダメージを負ったディラルクだが、何とかまだ動けるようでユファの居る方へ振り返り様に炎を吐くが、既にその場にユファは居なかった。
『災厄の大魔法使い』は自由にさせると手が付けられない。
最強の種族である『龍族』のディラルクがユファの姿を探すが、どこにも見当たらない。
そして次の瞬間にはクラリと眩暈を起こし、ディラルクは途方もない嘔吐感を覚えるのだった。
「うぐ……っ! ぐぇぇ……、い、一体何が!?」
ベアがそこに再度咆哮をあげるとディラルクは聴覚を刺激されて、眩暈と嘔吐感に包まれながら地面に落とされる。
そこに『ロード』の一体である『クラウザー』がその存在を示す――。
ディラルクが落ちた場所から更に深い穴が、ディラルクの大きな龍の身体を地面に落としていく。
どこまでも落ちていくような浮揚感を感じつつ聴覚をやられて、更に眩暈を伴っているディラルクは、自分が今どうなっているのかがもう分からなかった。
――そして次の瞬間、熱いという感覚の後に鋭い痛みが走った。
ソフィの配下達である『ハウンド・ドッグ』や『グランド・サーベルタイガー』の大群が押し寄せて、龍の長い体の隅から隅まで余すことなく喰いちぎろうと噛みついていた。
「うぐ……! ぐっぉえ……」
(こ、これは……、これは悪夢だ……!)
身体がいう事をきかず、激しい嘔吐感と更に激しい痛みに晒されながらディラルクは、自身に近づく死を感じとるのだった。
……
……
……
「次はお前が相手か?」
遡る事数分前、キーリに対峙するのはユファを助けて間に入ったシスである。
「ええ。よくも私の大事なヴェルを傷つけてくれたわね? 子供だからって、容赦はしないわよ」
そういうとシスは『金色の目』をキーリに放つ。
――しかしシスの魔瞳『金色の目』目視でキーリは躱してみせるのだった。
「はっ、そんなものが俺に当たるワケがないだろう?」
キーリはシスの背後に回り、右手でシスの背中目掛けて内臓を握り潰そうとする。
「くっ!」
シスは器用に体を捻りながらキーリの手から逃れる。
「はは! よく今のを避けたな? 大したものだぜ?」
殺し合いの最中だというのにキーリは、余裕たっぷりにシスに言い放つ。
「油断してると足元を掬われるわよ!」
――超越魔法、『終焉の雷』。
魔王の閃光がキーリに向かって放たれた。
一筋の閃光はキーリの身体を焼き尽くさんとするが、何とキーリはその雷を、緑色のオーラに包まれた右手で払いのけた。
「なっ!?」
魔法で相殺した訳でもなく、ただ単に蚊を払いのけるかのようにシスの『超越魔法』を手で払うのだった。
「はんっ! 馬鹿が! 俺にそんな程度の低い魔法が通じる訳がないだろうが」
小馬鹿にするように笑うと、キーリはシスに肉薄していく。
「くっ! 馬鹿にしないで!」
シスが無詠唱で『万物の爆発』をキーリに放とうとするが、それよりも速くキーリは姿を消す。
「ど、どこ!?」
慌ててシスが辺りを見回すが、キーリの姿が見えない。
「こっちだよ、出来損ない」
キーリがそう言い放つと左手の手の平を上に向けて、右手は添える様に左手首を掴む。
「!?」
――その瞬間にシスは自分の身体が動かなくなる。
鉛のように重心に重しがかかるというよりは、建物の一部になったような奇妙な不思議な感覚であった。
「動けないだろう? 残念だが、お前はもう終わりだ」
そして添えていた右手を離したキーリは、二本の指でシスを指差してその後に一気に下へ振り下ろした。
「あ……!」
猛スピードで空から地面に叩き落とされていく。シスにだけ重力が何百倍もかかったような、負荷を感じさせる速度だった。
しかし地面に叩きつけられる瞬間、凜とした声がシスの耳に届いた。
すると迫っていた地面がなくなり、代わりにユファの手の中に抱かれていた。
「何とか間に合ったわね。シス、良く持ちこたえてくれたわよ?」
そう言ってユファは、シスに笑いかけるのだった。
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる