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魔族の王陥落編
160.冷酷な魔王化を果たしたソフィ
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(一体あの子供は何をしたのだ? ゴルガーは何処へ連れていかれたのだ?)
再び目の前に姿を現したソフィだが、シーマ王は一瞬にして自分の間合いに入られたというのに、全く反応が出来なかった事に関して『ソフィ』に畏怖を覚えた。
魔族の最上位にまで達した者に勘違いはあり得ない。同格の強さを持つ者との戦いであれば、少しの違和感で命が失われる事をよく知っているからだ。
(こ、この子供がまさか俺と同格だというのか!?)
魔族の年齢は見た目通りではないとは言っても、流石にここまで幼い子供が、最上位魔族だとは到底思えない。
――しかしその考えこそがシュライダーを死に至らしめたのかもしれない。
大胆にも慎重にもなれる魔族だからこそ『シーマ』は、ラルグ魔国王にまで上り詰める事が出来たのだ。そしてそのシーマが感じている何かが、この目の前の子供に、警鐘を鳴らしていた。
「貴様がシュライダーを殺めたのか?」
ソフィはシーマの言葉に首を横に振って、明確に違うという意思表示を示した。
「いや、それは我ではないな。復讐を考えている者の邪魔をする程、我は落ちぶれてはおらぬ」
シュライダーを恨み復讐をしようと企んでいるのであれば、それは『レイズ』の魔女の事だろう。
――なるほど。
それならば直接手を下したのは、シス女王という事に間違いない。
シーマはそこまで考えてこの子供はやはり、関係がなかったかと思い始めたのだが――。
「さて、話はここまでにしようか? 我もレルバノンの護衛という仕事もあるし、個人的にお主達が気に入らんのでな」
そう言ってソフィは、静かな怒りを見せながら詠唱を始めるのだった。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」
――真なる魔王化であった。
アレルバレルの世界ならばいざ知らず、この世界において彼のこの魔力を測れる者が居たとして、冷静に居られる者は果たして、どれくらい存在するだろうか――。
【種族:魔族 名前:ソフィ(真なる魔王化)状態:戦力値コントロールMAX
魔力値:5500万 戦力値:3億7700万 地位:アレルバレルの王】。
シーマは『漏出』の魔法でソフィの正確な戦力値が測れてはいないが、すでに自分の戦力値を越えている事は理解出来た。
「ば、馬鹿な……!?」
ヴェルマー大陸を支配した事で『魔王』と自称するシーマとは違い、ソフィは数千年もの間『大魔王』として君臨し続けてきた本物である。
――その差は歴然。
魔族を束ねる自称『魔王』と、その『シーマ』よりも遥かに強い本物の『魔王』を多く配下に持つ『大魔王』とでは比較にすらならない。
「お主らが自分達の大陸内で国盗りをする分には何も文句はないが、何もしていないこの大陸の者達に危害を加えた貴様らを許すわけにはいかぬな」
(ご、ゴルガーの奴が懸念に思っていたのは、こいつで間違いない!)
「し、知らなかったのだ、お前のような者がいるとは知らなかったのだ! すぐに配下達に帰還命令を出すから、こ、ここは見逃してくれないか?」
(いいか? こいつが隙を見せたらお前達は、一斉にこいつに襲いかかれ!)
シーマは口ではソフィと交渉を行うような口ぶりだが『念話』を使ってソフィの周りを取り囲んでいる『ラルグ』の魔族達全員に命令をするのであった。
「王国にあれだけの被害を出しておいて、自分の身に危険が迫れば我先にと逃げると言うのか?」
しかしソフィは『シーマ』の言葉に耳を貸さずに右手を天に翳す。
そしてソフィの『魔法』で空に大きなエネルギーの塊が出現を始めるのだった。
「わ、悪かった! 二度とこの大陸に来ないと誓う! さっきお前はレルバノンの護衛だと言っていたな? よし、分かった……! あいつの事を二度と狙わないっ! そ、それでどうか見逃してくれぬか?」
シーマの演技は迫真に迫り、彼を知らない者が見ると本当に申し訳なさそうに謝罪をしているように見える程であった。
――空に出来ていた大きなエネルギーの塊が、その魔力が収まっていく事で徐々に小さくなっていった。
(馬鹿めが……! かかったな!! いまだ! お前達やれぃっ!)
ソフィを囲んでいた魔族達が一斉に、シーマの命令に従ってソフィに襲い掛かった。
戦力値500万を越える魔族達の速度はとても速く、中位以下の魔族達であればその目で追えない速度である。
「ふはははは! たとえ魔王であろうと、不意をつかれた挙句にこれだけの数の上位魔族に襲われては、ひとたまりもあるまい!」
シーマはざまぁみろとばかりに魔族達の攻撃を受けている『ソフィ』を見て、大笑いを始める。
しかし次の瞬間――。
襲い掛かっていた魔族達が一斉に爆音と共に吹き飛んだ。
「ハッハッハッハ……ハッ?」
びちゃり……と、シーマの顔に彼の手下の魔族のちぎれた首と共に血が降り注いだ。
「!?」
ソフィは特に何か攻撃をしたわけではない。
『真なる魔王』状態であるソフィが自身の『魔瞳』を用いる時の『金色の目』に変貌をさせただけである。
ただそれだけの事でソフィを囲み攻撃をしていた魔族達の体が、勝手に爆発して吹き飛んだのである。
「――覚悟はよいか」
そして『金色の目』をした『大魔王』が、今度は明確に敵対者を葬る為に、魔瞳に意味を持たせる。
『大魔王』はその目を細めながら、射貫くようにシーマをその視界に落とし込み――。
「ま、待て! 待ってくれ!」
――死ね。
キィイインという甲高い音が鳴り響いた後に『シーマ』の手が、足が、首が……、胴から勝手に離れていく。
「な、なな、何が起きて……、いっる……、のだ?」
ソフィは右手の指でシーマを指を差す。そして真横にゆっくりと動かした。
――ただそれだけで『シーマ』の顔の目から下の部分が、ゆっくりと横にスライドするように移動していき、そして完全にちぎれた。
そして『金色の目』で、シーマを一睨みすると周りの風が凪いだ。
一瞬の静寂の後に引火した爆弾のような音と共に、シーマの残骸が爆発して完全にこの世から消えてなくなるのであった。
ソフィは冷酷な目で『シーマ』が居た場所を見ながら口を開く。
――我を舐めるなよ。
…………
こうして『ヴェルマー』大陸全土を制圧したラルグ魔国の王『シーマ』は、大魔王の怒りを買ってしまった事で、あっさりとこの世から消滅させられてしまうのであった。
再び目の前に姿を現したソフィだが、シーマ王は一瞬にして自分の間合いに入られたというのに、全く反応が出来なかった事に関して『ソフィ』に畏怖を覚えた。
魔族の最上位にまで達した者に勘違いはあり得ない。同格の強さを持つ者との戦いであれば、少しの違和感で命が失われる事をよく知っているからだ。
(こ、この子供がまさか俺と同格だというのか!?)
魔族の年齢は見た目通りではないとは言っても、流石にここまで幼い子供が、最上位魔族だとは到底思えない。
――しかしその考えこそがシュライダーを死に至らしめたのかもしれない。
大胆にも慎重にもなれる魔族だからこそ『シーマ』は、ラルグ魔国王にまで上り詰める事が出来たのだ。そしてそのシーマが感じている何かが、この目の前の子供に、警鐘を鳴らしていた。
「貴様がシュライダーを殺めたのか?」
ソフィはシーマの言葉に首を横に振って、明確に違うという意思表示を示した。
「いや、それは我ではないな。復讐を考えている者の邪魔をする程、我は落ちぶれてはおらぬ」
シュライダーを恨み復讐をしようと企んでいるのであれば、それは『レイズ』の魔女の事だろう。
――なるほど。
それならば直接手を下したのは、シス女王という事に間違いない。
シーマはそこまで考えてこの子供はやはり、関係がなかったかと思い始めたのだが――。
「さて、話はここまでにしようか? 我もレルバノンの護衛という仕事もあるし、個人的にお主達が気に入らんのでな」
そう言ってソフィは、静かな怒りを見せながら詠唱を始めるのだった。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」
――真なる魔王化であった。
アレルバレルの世界ならばいざ知らず、この世界において彼のこの魔力を測れる者が居たとして、冷静に居られる者は果たして、どれくらい存在するだろうか――。
【種族:魔族 名前:ソフィ(真なる魔王化)状態:戦力値コントロールMAX
魔力値:5500万 戦力値:3億7700万 地位:アレルバレルの王】。
シーマは『漏出』の魔法でソフィの正確な戦力値が測れてはいないが、すでに自分の戦力値を越えている事は理解出来た。
「ば、馬鹿な……!?」
ヴェルマー大陸を支配した事で『魔王』と自称するシーマとは違い、ソフィは数千年もの間『大魔王』として君臨し続けてきた本物である。
――その差は歴然。
魔族を束ねる自称『魔王』と、その『シーマ』よりも遥かに強い本物の『魔王』を多く配下に持つ『大魔王』とでは比較にすらならない。
「お主らが自分達の大陸内で国盗りをする分には何も文句はないが、何もしていないこの大陸の者達に危害を加えた貴様らを許すわけにはいかぬな」
(ご、ゴルガーの奴が懸念に思っていたのは、こいつで間違いない!)
「し、知らなかったのだ、お前のような者がいるとは知らなかったのだ! すぐに配下達に帰還命令を出すから、こ、ここは見逃してくれないか?」
(いいか? こいつが隙を見せたらお前達は、一斉にこいつに襲いかかれ!)
シーマは口ではソフィと交渉を行うような口ぶりだが『念話』を使ってソフィの周りを取り囲んでいる『ラルグ』の魔族達全員に命令をするのであった。
「王国にあれだけの被害を出しておいて、自分の身に危険が迫れば我先にと逃げると言うのか?」
しかしソフィは『シーマ』の言葉に耳を貸さずに右手を天に翳す。
そしてソフィの『魔法』で空に大きなエネルギーの塊が出現を始めるのだった。
「わ、悪かった! 二度とこの大陸に来ないと誓う! さっきお前はレルバノンの護衛だと言っていたな? よし、分かった……! あいつの事を二度と狙わないっ! そ、それでどうか見逃してくれぬか?」
シーマの演技は迫真に迫り、彼を知らない者が見ると本当に申し訳なさそうに謝罪をしているように見える程であった。
――空に出来ていた大きなエネルギーの塊が、その魔力が収まっていく事で徐々に小さくなっていった。
(馬鹿めが……! かかったな!! いまだ! お前達やれぃっ!)
ソフィを囲んでいた魔族達が一斉に、シーマの命令に従ってソフィに襲い掛かった。
戦力値500万を越える魔族達の速度はとても速く、中位以下の魔族達であればその目で追えない速度である。
「ふはははは! たとえ魔王であろうと、不意をつかれた挙句にこれだけの数の上位魔族に襲われては、ひとたまりもあるまい!」
シーマはざまぁみろとばかりに魔族達の攻撃を受けている『ソフィ』を見て、大笑いを始める。
しかし次の瞬間――。
襲い掛かっていた魔族達が一斉に爆音と共に吹き飛んだ。
「ハッハッハッハ……ハッ?」
びちゃり……と、シーマの顔に彼の手下の魔族のちぎれた首と共に血が降り注いだ。
「!?」
ソフィは特に何か攻撃をしたわけではない。
『真なる魔王』状態であるソフィが自身の『魔瞳』を用いる時の『金色の目』に変貌をさせただけである。
ただそれだけの事でソフィを囲み攻撃をしていた魔族達の体が、勝手に爆発して吹き飛んだのである。
「――覚悟はよいか」
そして『金色の目』をした『大魔王』が、今度は明確に敵対者を葬る為に、魔瞳に意味を持たせる。
『大魔王』はその目を細めながら、射貫くようにシーマをその視界に落とし込み――。
「ま、待て! 待ってくれ!」
――死ね。
キィイインという甲高い音が鳴り響いた後に『シーマ』の手が、足が、首が……、胴から勝手に離れていく。
「な、なな、何が起きて……、いっる……、のだ?」
ソフィは右手の指でシーマを指を差す。そして真横にゆっくりと動かした。
――ただそれだけで『シーマ』の顔の目から下の部分が、ゆっくりと横にスライドするように移動していき、そして完全にちぎれた。
そして『金色の目』で、シーマを一睨みすると周りの風が凪いだ。
一瞬の静寂の後に引火した爆弾のような音と共に、シーマの残骸が爆発して完全にこの世から消えてなくなるのであった。
ソフィは冷酷な目で『シーマ』が居た場所を見ながら口を開く。
――我を舐めるなよ。
…………
こうして『ヴェルマー』大陸全土を制圧したラルグ魔国の王『シーマ』は、大魔王の怒りを買ってしまった事で、あっさりとこの世から消滅させられてしまうのであった。
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