最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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大魔王の軍勢編

144.因縁

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 レルバノンの屋敷にいるソフィたちの元にも、ベアたちの咆哮が聞こえてきた。

「うむ、どうやら上手くいったようだな」

 満足気にソフィが頷きながら口を開くと、直ぐにレルバノンが返事をする。

「いやはや……、見事という他ありませんよ。あれだけの数の差があったというのに」

 まだラルグの主力部隊が残ってはいるがそれでも少なく見積もっても、ソフィの配下たちの数倍以上の差があった。

 それをソフィ自身が手を出さずともこうまであっさりと、配下の魔物達と仲間だけで乗り越えてみせたのだ。

 ――元ラルグ魔国のNo.2として『レルバノン』は脱帽という他なかった。

「さて、今度は我々の出番だな……」

 まだソフィは『真なる魔王化』さえしていないというのに、その言葉を放つだけで周りにいるシチョウやレルバノンにさえ、見えない圧がかかったように感じられるのであった。

「ソフィ君。ゴルガーだけは私にやらせて下さい」

 突如、レルバノンがそんな事を口にするのだった。

 そしてレルバノンの顔は真剣そのもので、という決意が固まっている様子が見て取れた。

 その表情を見たソフィは納得するように口を開いた。

「そうか、お主にもが居たのだったな」

 シスに『』という因縁の相手が居たように『レルバノン』にも『』という因縁の相手がいる。

 ――彼がこの『ミールガルド』大陸に逃亡せざるを得なくなった、そのきっかけとなった出来事を作った因縁の相手である。

「はい。部下を巻き込んだだけではなく、こうして今回の出来事にもなったであろう彼だけは許すわけには行きません」

 勝手に動いたのは『ミールガルド』大陸の『ケビン』王国だが、そもそもヴェルマーが攻めてきたのは『レルバノン』が原因でもあるのだ。

 多くの犠牲者を出させてしまった事には相違ない。

 そのケジメをレルバノンは取ろうと決心を固めていた。

「分かった」

 ソフィが短くそう告げるとレルバノンは、ソフィに感謝をするように視線を合わせた後に頷くのだった。

「さて……。どうやら奴らはここを次の狙いに決めたらしいぞ?」

 ソフィは『魔力感知』で多くの魔族がこちらに移動し始めた事を感じたのだった。

 『ラルグ』魔国軍その主力部隊の全勢力である。

 残っている幹部も『ビデス』や『フィクス』と大物中の大物であり、ラルグの魔国王である『ヴェルマー』大陸の『シーマ』も居る。

 流石に第一軍の精鋭部隊だけがあり、ラルグ混合部隊の先遣隊やシュライダーの持っていた私兵である『空域戦闘部隊』をも遥かに凌ぐ速度でこちらに向かってきていた。

「遂にきたか……!」

 シチョウもまたトウジン魔国という故郷や、その国の王に同胞達をラルグ魔国軍に奪われている。

 このまま何もせず手をこまねくわけには行かなかった。

 一体でも多く同胞に手をかけた敵共を屠るつもりである。

「なかなかの速度だがまだ少し猶予がある。

 シスの周りに護衛をつけて、我々は少し屋敷から離れた場所へと移動しよう」

 ソフィの言葉にレルバノンとシチョウは頷いたのだった。

 ソフィは配下の魔物たちに守るように命令を出した後、何かあれば直ぐに『念話テレパシー』をするようにと告げた。

 ソフィの配下にして『ロード』の一体である『ハウンド』達は、コクリと主の命令に頷き、とばかりに一鳴きするのだった。

 その様子を見届けた後、レルバノンの案内で森から少し離れた広い平地へと、場所を移動するのだった。

 ……
 ……
 ……

 レルバノンの屋敷の一室『魔王』レアの尋問によって、気を失っているシスはベッドで夢を見ていた。

 その夢はまだ『ヴェルトマー』が『レイズ』魔国に来て日が浅い頃、初めてシスがヴェルトマーと出会った頃の夢だった。
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