最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

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大魔王の軍勢編

143.不完全な殲滅作戦の決行

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 ラルグ魔国の先遣隊を含めたラルグ混合部隊は、当初の目的と違う結果となり戦死をする事となり全滅した。

 その中にはラルグ魔国の幹部であった『ニーティトールス』や『ナゲイツディルグ』も含まれる。

 まだまだ主力部隊や『ゴルガー』に『ネスツ』といった大幹部も残っているが、この段階で『ミールガルド』大陸に生きる者達をほとんど攻め滅ぼしておかなければならなかった。

 そして最後の『殲滅行動作戦』により、全軍での掃討作戦に出る筈だったのだ。

 しかしこのままではこの大陸に居る力ある『何者かソフィ』の軍勢により逆にやられてしまいかねない。

 ネスツの権限ではこの重要な局面を決定づけるには少しばかり荷が重い。

 『シーマ』魔国王か『ゴルガーフィクス』に判断を任せるしかないとネスツは考える。

 直ぐにシーマ達に『念話テレパシー』を使って、現状からどう行動すべきかを訊ねた。

 シーマ王とゴルガー、そしてネスツの三体の魔族が『念話テレパシー』で会話をする。

(どうやら部下の者達は、王国側やその近隣の街々にいる者達に潰されたようです)

 ネスツの報告でゴルガーが『念話テレパシー』で対応する。

(シーマ王……。こうなった以上はそのような存在がいる元へ兵を送るよりも、元々の目的であった『レルバノン』と『シス』の討伐を優先するのはどうでしょうか)

 ――ゴルガーの進言は正論であった。

 主力部隊ではないとはいっても『悪鬼羅刹あっきらせつ』の蔓延はびこるヴェルマー大陸を統一した国の最強の魔族達をあっさりと溶かし尽くした者の存在が居る所へ、わざわざ向かう必要性が感じられない。

 そこにいる者がであろうが、であろうが、ここで意地を張って無理をする時では無い。彼らの最優先事項は『ラルグ』魔国から逃げ出した元No.2のレルバノンと『レイズ』魔国の女王『シス』なのだから。

(うむ、そうだな……それで構わぬ。レルバノンはどうやら王国から離れている場所に居るようだ。そこに殲滅行動作戦の実行のために準備していた者達を投入させよ)

(御意!)

 ゴルガーとネスツの両幹部がシーマ魔国王に対して、同時に言葉を返すのだった。

 ……
 ……
 ……

 王国に居た魔族達を全滅させた後にソフィの配下達は、軍列を組むかのように並び立つ。

 そして一斉に配下達は主人であるソフィの耳に届くようにと、それぞれが咆哮をあげるのだった。

 それはソフィにとばかりに告げる合図であったのだが、それを聞いた王国に居る全ての者達を脅えさせた。

 そしてその咆哮は『グラン』の町や『サシス』の町、更には『ステンシア』の町へと散らばっていた同胞たちの耳に届くと同時に、共鳴するかの如く彼らも咆哮をあげる。

 ミールガルド大陸のケビン王国領、その多くの街からソフィの配下の咆哮があがる。

 そしてその咆哮を聞きながら『ウェルザード』の商人達は自分たちの仕事を全うする。

 多くの犠牲者が出ていた王国に、あらゆる支店の街から回復薬等を届けに、商人達は一斉に行動を開始する。

 そしてそのウェルザードの商人の護衛につくのが、ソフィやレルバノンたちが雇った勲章ランクB以上の冒険者達であった。

 グランの町の冒険者達はソフィを慕い、そしてソフィに惚れこんでいる者達が多い。

 そんなソフィの配下にアウルベアが居る事を知る彼らは、色々な所から聞こえてくる魔物達の咆哮の中に『ベア』の咆哮だと理解出来ている。

 ――つまりこの魔物達の咆哮はソフィの配下の軍勢なのだと更に理解する。

 そのような者たちはソフィを同じく慕う魔物達のやり遂げた咆哮を聴く事で、どこか誇らしく心強いという気持ちを持つに至るのであった。

 たとえそれが本来は冒険者と相容れない筈の魔物達であろうとも、ソフィという信頼できる者を通す事でだと感じられた様子であった。
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