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大魔王の軍勢編
135.切望する大魔王
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「しかしソフィ様、我々は魔族の方々には戦力値が遠く及びません」
ベアがそう言うと、ソフィは思い出したように口を開いた。
「うむ……。そこでお主達に名前を付けようと思っておったのだ」
――『名付け』と呼ばれるものである。
力ある魔族や『魔王』が魔物に名前を付ける事で、名づけられた者の力は増幅して同じ種族の仲間とは比べ物にならない程の戦力値を持つ事が出来る。
これこそがソフィの考えていた事であった。
しかし名付けは、一つ間違えれば環境のバランスが狂ってしまう。
ソフィが『アレルバレル』の世界に居た頃の真なる魔王以上の形態で『名付け』を行ってしまえば、この世界の秩序が崩壊する可能性が出て来る。
その為にソフィは、バランスが崩れない程の名付けのラインを考慮して、魔力値のコントロールを行いながら、名付けを行おうと考えていた。
だがそれでも魔物達にとっては、強き者に名前をつけられるという事は名誉な事であり、それがソフィだというのだから互いの顔を見て喜んだ。
「それにしてもベアよ。お主は既にそこらの『魔族』に負ける事などありえぬのだぞ?」
どういう事だろうとベアが思っていると、唐突にソフィが詠唱を始める。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」。
そうしてソフィが真なる魔王化の姿を見せる。
「お主は気づいておらぬかもしれぬが、我がこの戦闘形態になれば、名付けの効果と契約の紋章を持っておるお主は、普段とは比べ物にならぬ力を持つ事になる」
そう言われてもピンとこないベアだったが、殴ってみよとばかりにソフィが右の掌を前に出す。
ベアは頷いてその右手をめがけて拳を振り切る。
その瞬間『ソフィ』の右手がちぎれて吹き飛んでいくのであった。ラルフやその場に居た魔物達。
更には手を出したベアまでもが目を丸くするのだった。
どうだとばかりにソフィが笑みを浮かべると、千切れた腕が即座に再生されていく。
『真なる魔王』状態のソフィの体に傷をつける事など、本来は『魔王』階級であっても難しい。
そのソフィの右手を吹き飛ばすだけの力を今のベアは持っているという事であった。
【種族:アウルベア 名前:ベア(ソフィの名付け)戦力値:6600万
所持物:契約の紋章 所属:大魔王ソフィの直属の配下】。
元々ギルドC指定級程度の魔物だったベアだが、ソフィの名付けと、契約の紋章を持っている事で、ソフィが力を示せば大魔王ソフィの配下であるアウルベアもまた強くなっていく。
そしてベア自身が強くなれば、更に今よりも何倍も戦力値は、跳ね上がっていくのである。
もちろんこれは『名付け』だけではなく『ベア』が持っている『契約の紋章』のおかげでもある。
契約の紋章を持っているのは、この世界ではベアだけの筈であり『アレルバレル』の世界においても『九大魔王』と呼ばれている、あらゆる時代で名を馳せた『大魔王』の者達だけである。
ちなみにこの大陸の冒険者の中での枠組みの話ではあるが、戦力値30万を越える悪しき魔物をギルド指定A級の討伐対象と定められている。
つまり今のベアがもし冒険者達を相手に暴れて騒ぎを起こしたとしたら、他のギルド指定A級の討伐対象の何倍もの難しさになる事だろう。
戦力値30万どころか、戦力値が6000万を越える存在なのだから。
『名付け』は力を有する『魔王』に近しい者にしか出来ないが、それでも相当に環境が崩れる程の能力といえる。
だからこそ『名付け』は、よく考えて行わないといけないのである。
「こ、このような事が……!」
ベアは自分の両手を見ながら、信じられないといった声を出す。
「クックック、お主がその気ならいつでも鍛えてやるぞ?」
この言葉を過去に何度彼は言っただろうか。
魔王と配下の契約を結んだ魔物や魔族は、いくら強くなろうと契約者である魔王に攻撃を加える事はできず、生殺与奪の権利も魔王にあるので、直属の配下となるにはそれ相応の覚悟が求められる。
『アレルバレル』の地では、ほとんど全ての魔族や魔物を配下にしていた。
この『リラリオ』の世界のように平和ではなく『アレルバレル』の世界では毎日が戦争のような世界であった。
一時的にでも平和な世界にするためにソフィは立ち上がり『大魔王』となって強引に争いを止めた。
それが何を意味しているか――。
――『アレルバレル』の世界ではもう、ソフィを殺せる者は居ないのだ。
魔王の寿命は長く『ソフィ』は死ぬ事も良しとせず、自らに匹敵する強さを持つ者も現れず、永劫と呼べる時間をたった一人で統治してきたのだ。
もちろん彼には頼ってくる配下達はいるが、ソフィが、真の意味で頼れる者はいなかった。
だからこそソフィはこの世界に転移させられた事で、僅かではあるが期待をしている。
――自分を『殺してくれる者』が現れてくれる事を。
力を抑えてやられることは彼は良しとはしない。
たとえ殺される事を期待していたとしても、それは彼の心が許しはしない。
間違ってはいけないのが、彼は死にたいのではなく、殺されたいのだ。
生に飽きてはいても死にたくはない、退屈でなくなる要因が欲しいのだ。
――だからこそ彼は切望する。
『最強の大魔王ソフィ』を殺せる者が現れる程の至高の存在の誕生を――。
ベアがそう言うと、ソフィは思い出したように口を開いた。
「うむ……。そこでお主達に名前を付けようと思っておったのだ」
――『名付け』と呼ばれるものである。
力ある魔族や『魔王』が魔物に名前を付ける事で、名づけられた者の力は増幅して同じ種族の仲間とは比べ物にならない程の戦力値を持つ事が出来る。
これこそがソフィの考えていた事であった。
しかし名付けは、一つ間違えれば環境のバランスが狂ってしまう。
ソフィが『アレルバレル』の世界に居た頃の真なる魔王以上の形態で『名付け』を行ってしまえば、この世界の秩序が崩壊する可能性が出て来る。
その為にソフィは、バランスが崩れない程の名付けのラインを考慮して、魔力値のコントロールを行いながら、名付けを行おうと考えていた。
だがそれでも魔物達にとっては、強き者に名前をつけられるという事は名誉な事であり、それがソフィだというのだから互いの顔を見て喜んだ。
「それにしてもベアよ。お主は既にそこらの『魔族』に負ける事などありえぬのだぞ?」
どういう事だろうとベアが思っていると、唐突にソフィが詠唱を始める。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」。
そうしてソフィが真なる魔王化の姿を見せる。
「お主は気づいておらぬかもしれぬが、我がこの戦闘形態になれば、名付けの効果と契約の紋章を持っておるお主は、普段とは比べ物にならぬ力を持つ事になる」
そう言われてもピンとこないベアだったが、殴ってみよとばかりにソフィが右の掌を前に出す。
ベアは頷いてその右手をめがけて拳を振り切る。
その瞬間『ソフィ』の右手がちぎれて吹き飛んでいくのであった。ラルフやその場に居た魔物達。
更には手を出したベアまでもが目を丸くするのだった。
どうだとばかりにソフィが笑みを浮かべると、千切れた腕が即座に再生されていく。
『真なる魔王』状態のソフィの体に傷をつける事など、本来は『魔王』階級であっても難しい。
そのソフィの右手を吹き飛ばすだけの力を今のベアは持っているという事であった。
【種族:アウルベア 名前:ベア(ソフィの名付け)戦力値:6600万
所持物:契約の紋章 所属:大魔王ソフィの直属の配下】。
元々ギルドC指定級程度の魔物だったベアだが、ソフィの名付けと、契約の紋章を持っている事で、ソフィが力を示せば大魔王ソフィの配下であるアウルベアもまた強くなっていく。
そしてベア自身が強くなれば、更に今よりも何倍も戦力値は、跳ね上がっていくのである。
もちろんこれは『名付け』だけではなく『ベア』が持っている『契約の紋章』のおかげでもある。
契約の紋章を持っているのは、この世界ではベアだけの筈であり『アレルバレル』の世界においても『九大魔王』と呼ばれている、あらゆる時代で名を馳せた『大魔王』の者達だけである。
ちなみにこの大陸の冒険者の中での枠組みの話ではあるが、戦力値30万を越える悪しき魔物をギルド指定A級の討伐対象と定められている。
つまり今のベアがもし冒険者達を相手に暴れて騒ぎを起こしたとしたら、他のギルド指定A級の討伐対象の何倍もの難しさになる事だろう。
戦力値30万どころか、戦力値が6000万を越える存在なのだから。
『名付け』は力を有する『魔王』に近しい者にしか出来ないが、それでも相当に環境が崩れる程の能力といえる。
だからこそ『名付け』は、よく考えて行わないといけないのである。
「こ、このような事が……!」
ベアは自分の両手を見ながら、信じられないといった声を出す。
「クックック、お主がその気ならいつでも鍛えてやるぞ?」
この言葉を過去に何度彼は言っただろうか。
魔王と配下の契約を結んだ魔物や魔族は、いくら強くなろうと契約者である魔王に攻撃を加える事はできず、生殺与奪の権利も魔王にあるので、直属の配下となるにはそれ相応の覚悟が求められる。
『アレルバレル』の地では、ほとんど全ての魔族や魔物を配下にしていた。
この『リラリオ』の世界のように平和ではなく『アレルバレル』の世界では毎日が戦争のような世界であった。
一時的にでも平和な世界にするためにソフィは立ち上がり『大魔王』となって強引に争いを止めた。
それが何を意味しているか――。
――『アレルバレル』の世界ではもう、ソフィを殺せる者は居ないのだ。
魔王の寿命は長く『ソフィ』は死ぬ事も良しとせず、自らに匹敵する強さを持つ者も現れず、永劫と呼べる時間をたった一人で統治してきたのだ。
もちろん彼には頼ってくる配下達はいるが、ソフィが、真の意味で頼れる者はいなかった。
だからこそソフィはこの世界に転移させられた事で、僅かではあるが期待をしている。
――自分を『殺してくれる者』が現れてくれる事を。
力を抑えてやられることは彼は良しとはしない。
たとえ殺される事を期待していたとしても、それは彼の心が許しはしない。
間違ってはいけないのが、彼は死にたいのではなく、殺されたいのだ。
生に飽きてはいても死にたくはない、退屈でなくなる要因が欲しいのだ。
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