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ヴェルマー大陸VSミールガルド大陸編
120.魔族より強き者
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レルバノンは屋敷に戻った後、ソフィ達に『ケビン』王国が彼の案を破却して『ラルグ』魔国との戦争時に軍を出す事を止められなかったと話すと、ソフィ達は残念そうな表情を浮かべながらも仕方があるまいとばかりに『レルバノン』に頷くのであった。
「人間とは痛みを知らねば分からぬものよ。だからこそ苦渋を幾度となく味わう」
ソフィはレルバノンが『ケビン』王国での会議の中で、相当に苦労をした事を察したのだろう。
だからこそレルバノンの苦労に報いるような言葉を告げるのであった。
「当初の予定では今回の王国側には防衛にのみ尽力を注いでもらう事で、直接ラルグ魔国軍との戦争に参加させないつもりだったのですが、むしろ私がその事をケビン王やステイラ公爵達に伝えた事が裏目に出てしまったようです……」
レルバノンの後悔がありありと滲み出ている表情を見ながら、今度はシスが口を開いた。
「やはり人間という者は、いつの世も理解の外にいる生物なのだな。魔族と人間ではそもそもの戦力値が違いすぎるという事に理解が及んでいないのだろうか」
決してシスは人間を馬鹿にしている訳ではない。
そもそも人間には魔族にはない頭脳を活かした利器等、技術力の面においては秀でた分野がある事を知っている。
しかし単純に力と力のぶつかり合いという観点から言うと、今回とった行動は愚策としか言いようがなかった。
「まぁ魔族も似たような所はあるがな。人間共はそれ以上に、立場や面子に拘るという事だろう」
シチョウの言葉にシスは、そういうモノなのかと頷くのだった。
「しかしこれで王国の人間達を守りながら『ラルグ』魔国の者と戦わねばならぬのか」
「残念ながらそういう事になりますね……。ラルグ魔国とて『ヴェルマー』大陸で戦争が続いていた筈なので、こちらに対していきなり全軍を向けてくるような真似はしないのでしょうが、それでも数千規模の『魔族』がこちらに向かってくると思われます」
今の奴らの狙いは『レルバノン』や『シス』女王だが、ミールガルド大陸の支配も当然視野に入っている事だろう。
そうなればこちらに向ける魔族の数でこちらの兵力も確かめようとして、こちらの国に攻撃等を行う事も十分に考えられる。
そんな時にケビン王国から攻撃を仕掛けるとなれば、向こうに狙う場所を絞らせる事になってしまう。
「我の屋敷にお主とシスを囮として駐留してもらうというよりは、お主かシスに『ケビン』王国へ行ってもらって、敵を分散させたほうがよいか?」
ソフィが次の案を提示するが、この作戦も敵の人数に左右される。
ラルグ魔国側の『魔族』が数百といった規模程度であれば分散させた時点で、レルバノンやシスだけでもどうにでもできるが、敵の数が数千となると討ち漏らしが多数出るであろう。
魔族一体の戦力値が、第三軍で凡そ100万、第一軍が500万程と考えるとなると、たった数体の魔族だけでも『ケビン』王国の軍隊では全滅するのが必至である。
「冒険者ギルドの方々にも、協力してもらうというのはどうでしょう?」
ここでレルバノンから新たな提案が発せられる。
「ふむ。それは冒険者を雇うという事か?」
ソフィの言葉にレルバノンは首を振る。
「実は私が王国に行った時にある貴族の方に、一人の冒険者を紹介されましてね。ソフィ君もご存じだと思われますが『リディア』という剣士です」
リディアという名前が出ると、ソフィは嬉しそうな顔になる。
「むっ、お主奴に会ってきたのか。つまりリディアの力を借りるという事か?」
「その通りです。私も紹介された冒険者が単なる人間であれば断ろうと思っていたのですが、少し試させて頂いたところ、十分に戦力と数えられると判断しました」
レルバノンの言葉に驚いたのは、ソフィではなく『エルザ』の方であった。
エルザは自分の主が人間を全く信用しておらず、ましてや戦力と数える等とは滅多に言わないと知っている。
そんな主が戦力になると口に出して認めるような言葉を出したのだから、驚くなという方が難しかった。
「レルバノン様……。そのリディアという人間はそんなにお強いのですか?」
エルザが主に問いかけると『レルバノン』は笑みを浮かべて答えた。
「ええ、彼は強いですよ? 『上位魔族』が相手でも全く相手にしないでしょうね」
エルザはその言葉に驚きを隠しきれない。
――それは『貴方よりも上だ』と暗に言われているように聞こえたのであった。
「クックック、奴は我も認めておるよ。あの頃より強くなっておるのならば、それは十分な戦力になるだろう」
エルザは『最上位魔族』である自分の主と尊敬に値する『魔王』にそこまで言われる程の人間に直に会ってみたくなるのだった。
そしてその話を聞いていたラルフもまた、複雑な感情が生まれて拳を握りしめるのだった。
「それでは私が最初屋敷の方で囮になりつつ、ラルグ軍に攻撃を仕掛けて一定の人数まで減らした後、リディア君と合流して『ケビン』王国の方へ移動しましょう」
ひとまずラルグ魔国軍の本隊が出てくるまでは、これでなんとかなるとレルバノンは思うのだった。
「そうだな。そして囮となったお主を魔族達が追いかけようとするところを、我たちで沈めていけば相当の数を減らせる事に繋がるだろう」
ソフィの言葉にシスやシチョウも頷く。
「『トウジン』魔国の同胞たちの恨み、俺がまとめて晴らしてやる……」
シチョウもまた『ラルグ』魔国に対して、恨みをぶつけるべく戦争に参加するのであった。
「人間とは痛みを知らねば分からぬものよ。だからこそ苦渋を幾度となく味わう」
ソフィはレルバノンが『ケビン』王国での会議の中で、相当に苦労をした事を察したのだろう。
だからこそレルバノンの苦労に報いるような言葉を告げるのであった。
「当初の予定では今回の王国側には防衛にのみ尽力を注いでもらう事で、直接ラルグ魔国軍との戦争に参加させないつもりだったのですが、むしろ私がその事をケビン王やステイラ公爵達に伝えた事が裏目に出てしまったようです……」
レルバノンの後悔がありありと滲み出ている表情を見ながら、今度はシスが口を開いた。
「やはり人間という者は、いつの世も理解の外にいる生物なのだな。魔族と人間ではそもそもの戦力値が違いすぎるという事に理解が及んでいないのだろうか」
決してシスは人間を馬鹿にしている訳ではない。
そもそも人間には魔族にはない頭脳を活かした利器等、技術力の面においては秀でた分野がある事を知っている。
しかし単純に力と力のぶつかり合いという観点から言うと、今回とった行動は愚策としか言いようがなかった。
「まぁ魔族も似たような所はあるがな。人間共はそれ以上に、立場や面子に拘るという事だろう」
シチョウの言葉にシスは、そういうモノなのかと頷くのだった。
「しかしこれで王国の人間達を守りながら『ラルグ』魔国の者と戦わねばならぬのか」
「残念ながらそういう事になりますね……。ラルグ魔国とて『ヴェルマー』大陸で戦争が続いていた筈なので、こちらに対していきなり全軍を向けてくるような真似はしないのでしょうが、それでも数千規模の『魔族』がこちらに向かってくると思われます」
今の奴らの狙いは『レルバノン』や『シス』女王だが、ミールガルド大陸の支配も当然視野に入っている事だろう。
そうなればこちらに向ける魔族の数でこちらの兵力も確かめようとして、こちらの国に攻撃等を行う事も十分に考えられる。
そんな時にケビン王国から攻撃を仕掛けるとなれば、向こうに狙う場所を絞らせる事になってしまう。
「我の屋敷にお主とシスを囮として駐留してもらうというよりは、お主かシスに『ケビン』王国へ行ってもらって、敵を分散させたほうがよいか?」
ソフィが次の案を提示するが、この作戦も敵の人数に左右される。
ラルグ魔国側の『魔族』が数百といった規模程度であれば分散させた時点で、レルバノンやシスだけでもどうにでもできるが、敵の数が数千となると討ち漏らしが多数出るであろう。
魔族一体の戦力値が、第三軍で凡そ100万、第一軍が500万程と考えるとなると、たった数体の魔族だけでも『ケビン』王国の軍隊では全滅するのが必至である。
「冒険者ギルドの方々にも、協力してもらうというのはどうでしょう?」
ここでレルバノンから新たな提案が発せられる。
「ふむ。それは冒険者を雇うという事か?」
ソフィの言葉にレルバノンは首を振る。
「実は私が王国に行った時にある貴族の方に、一人の冒険者を紹介されましてね。ソフィ君もご存じだと思われますが『リディア』という剣士です」
リディアという名前が出ると、ソフィは嬉しそうな顔になる。
「むっ、お主奴に会ってきたのか。つまりリディアの力を借りるという事か?」
「その通りです。私も紹介された冒険者が単なる人間であれば断ろうと思っていたのですが、少し試させて頂いたところ、十分に戦力と数えられると判断しました」
レルバノンの言葉に驚いたのは、ソフィではなく『エルザ』の方であった。
エルザは自分の主が人間を全く信用しておらず、ましてや戦力と数える等とは滅多に言わないと知っている。
そんな主が戦力になると口に出して認めるような言葉を出したのだから、驚くなという方が難しかった。
「レルバノン様……。そのリディアという人間はそんなにお強いのですか?」
エルザが主に問いかけると『レルバノン』は笑みを浮かべて答えた。
「ええ、彼は強いですよ? 『上位魔族』が相手でも全く相手にしないでしょうね」
エルザはその言葉に驚きを隠しきれない。
――それは『貴方よりも上だ』と暗に言われているように聞こえたのであった。
「クックック、奴は我も認めておるよ。あの頃より強くなっておるのならば、それは十分な戦力になるだろう」
エルザは『最上位魔族』である自分の主と尊敬に値する『魔王』にそこまで言われる程の人間に直に会ってみたくなるのだった。
そしてその話を聞いていたラルフもまた、複雑な感情が生まれて拳を握りしめるのだった。
「それでは私が最初屋敷の方で囮になりつつ、ラルグ軍に攻撃を仕掛けて一定の人数まで減らした後、リディア君と合流して『ケビン』王国の方へ移動しましょう」
ひとまずラルグ魔国軍の本隊が出てくるまでは、これでなんとかなるとレルバノンは思うのだった。
「そうだな。そして囮となったお主を魔族達が追いかけようとするところを、我たちで沈めていけば相当の数を減らせる事に繋がるだろう」
ソフィの言葉にシスやシチョウも頷く。
「『トウジン』魔国の同胞たちの恨み、俺がまとめて晴らしてやる……」
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