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ヴェルマー大陸編
94.ラルグ魔国・トウジン魔国VSレイズ魔国2
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「シス、こっちよ!」
『ヴェルトマー・フィクス』は、シス女王の手をとって隠し通路を走る。
「待ってよヴェル! ラネアやピナ達がまだ城に残って戦っているのに、私達が先に逃げるなんて女王として耐えられない!」
たとえここで『レイズ』魔国が滅ぶにしても、最後まで女王として戦いたいというのがシスの気持ちであった。
「ダメよ! 貴方さえ生きてくれさえすれば、まだまだレイズはやり直せる! 貴方にはそれだけの価値があるのよ!」
「わ、私達だけが生き残ってどうしろっていうの!? レイズ魔国が滅ぶのを指をくわえて見ていた挙句、逃げ出した情けない女王様ですって国民に言えとでも!?」
想像をしてシスの目に涙が溜まっていく。
そこで前を走っていた『ヴェルトマー』がようやく足を止めてこちらを振り返ったと思うと、シスの両肩に手を置いて大声で叫んだ。
「貴方が生きてさえいれば『レイズ』は何度でもやり直せるの! 貴方は気づいていないでしょうけど、貴方の『魔力』は私達とは桁が違う! 貴方だけでも他の大国相手に戦える筈なのよ! 私が、私が生きている間に貴方に必ず会得させて見せるから……。それまで、それまで生きてお願い! 私が貴方の為に最高の魔法を授けてみせるから!」
ヴェルトマーの言葉に嘘はない。
シスの『魔力』であれば過去に消失した『神域』の魔法にも手が届く。
だが決して嘘はないが偽りはあった。
それは『ヴェルトマー』がもう『梗桎梏病』のせいで多くの『魔力』が操れなくなっており、新魔法の類も一切使えなくなってしまっているのだった。
こんな状態では消失した『神域魔法』を教授させるなど夢のまた夢である。
だがそれでも『ヴェルトマー』は『シス』を死なせたくはなかった。
自分の言葉でシスが少しでも生き延びてくれるというのであれば、いくらでも嘘つきになってやるという決死の覚悟を持っているのであった。
「分かった……。でも絶対に貴方も生き残りなさいよ! 私だけ残して死んだら、絶対許さない!」
(それでいい……。私が使える最後の『魔法』で、貴方だけは必ず生かせて見せる……!)
「当然よ、私が死ぬはずがないでしょう? さぁ、もうすぐ出口よ走りなさい!」
「ええっ!」
ヴェルが自分だけを置いて死なないと約束をしてくれた事で、シスは大きな安心感に包まれながら力強く頷いて『ガネーサ』へと続く道を必死にひた走る。
――そしてようやく『ガネーサ』へと繋がる隠し通路の出口が見えた。
しかしその隠し通路を抜けた先には、二人の表情を希望から絶望へと変える光景が広がっていた。
レイズ魔国の『ガネーサ』の街は、すでに千を越える『ラルグ』の魔国軍に制圧されていたのだった。
「そ、そんな……! 私にはもう『魔力感知』すら出来ないの?」
ヴェルトマーは愕然としながら、目の前に広がる光景に倒れそうになる。
そんなヴェルトマーを後ろから慌てて支えるシス女王だった。
そんな様子を眺めていた一体の魔族が突如として拍手を送る。
「ここまでの逃亡劇、お疲れ様でしたね」
「お前は……っ!」
シスは憎々しげに拍手をする一体の『魔族』を睨みつける。
にやにやと嫌な笑みを浮かべるこの男は、ラルグ統括軍事副司令官の『シュライダー・クーティア』。
――『ラルグ』魔国のNo.4であり『ラルグ』魔国軍の多くの者達に命令を下せる立ち位置にいる男であった。
【種族:魔族 名前:シュライダー『クーティア』 年齢:1477歳
魔力値:999 戦力値:1640万 所属国:ラルグ魔国】。
「もう貴方達の国は終わりです。大人しく我々『ラルグ』魔国に降伏しなさい」
「くっ……!」
シスはその言葉に悔しそうに唇を噛む。
ラルグからの開戦宣言から僅か数時間程で、あっさりと『レイズ』魔国は制圧されてしまうのだった。
まだ『レイズ』魔国のシス女王と、No.2のヴェルトマー、更にはピナやラネアといった国の重鎮達やその部隊も健在ではあるのだが、すでに『レイズ』魔国兵の多くはやられており、城も陥落寸前である。このまま『シス』女王が降伏宣言をしなければ、彼女達も皆殺しにされてしまう事だろう。
しかし『シス』がここで降伏宣言を行えば、まだ捕虜として生き残っている者達の身柄は救われる。
シス女王はかつてない程までに国の事を考え始める。
ここで無駄に抵抗して皆を巻き込むくらいならば、降伏を認めたほうがいいのではないかと――。
だがしかし『シス』に支えられていたヴェルトマーが、突如笑い始めたかと思うと、大勢のラルグ魔国軍の前で啖呵をきるのであった。
「私達の国が終わり? まだ『レイズ』魔国の最高戦力であるシス女王が戦ってさえいないのに、勝手に吠えるんじゃないわよ!」
「ふふ、ではこれだけの『ラルグ』魔国兵を相手に存分に戦えば宜しい。まぁ無駄でしょうがね」
流石にこれだけの数の『ラルグ』魔国軍が相手では『最上位魔族』にして、最高峰の『魔力』を有するシス女王であっても、たった一体だけで戦う事は出来ない。
せめて『ヴェルトマー』が全盛期の頃の強さのままであれば、まだ戦いようはあっただろう。
――しかし今のヴェルトマーでは、足手まといにはなる事はあっても戦力としては数えられない。
「さぁお前達……! 『レイズ』の女王を捕らえてしまいなさい!」
シュライダーの言葉にラルグ兵達は、シス女王達を捕らえようと一歩踏み出す。
「させないわよ!」
――超越魔法、『終焉の炎』。
「ぐっ……! ぐわあああっ!」
シス女王に向かっていた『ラルグ』魔国兵の数体が、ソフィと同じ『超越魔法』によって体が燃えされていく。
「何だあの魔法は? 見た事がない『魔法』だ……!」
それもその筈『終焉の炎』は、過去の歴代の魔王達の代名詞と呼べる程の『魔法』なのである。
最上位魔族程度で扱える者など、『ヴェルトマー』と『シス』女王くらいであろう。
シス女王の魔力だけならばすでに『最上位魔族』を上回る程であり、純粋に知識があれば『超越』『根源』そして失われた魔法『神域』の世界にさえ到達出来る程の器であった。
だがいくら才能や魔力があったとしても、それを間近で見る機会や過去の書物がなければ、知識として蓄える事も出来ずに使う事など出来ない。
ヴェルトマーという才覚溢れる最強と呼ばれた『最上位魔族』が魔法の師であったからこその今のシス女王がいるのである。
シスが現在使える古の超越魔法は『終焉の炎』のみだが、他の『超越魔法』であれば無詠唱で扱う事を可能とする。
次から次に襲い掛かる『ラルグ』の魔族達をたった一人で『ヴェルトマー』を守りながら倒していく姿は見事だといいたいところではあったが『ラルグ』魔国軍の一軍ではないとはいっても目の前に居る『シュライダー』の連れてきている私兵の『ラルグ』魔国兵は1000体を越えているのである。
シュライダーの私兵の部下達の一体一体が数百万の戦力値を持って、シス女王に襲い掛かっているのだから、流石の無尽蔵の魔力を持つと言われる『シス』女王であっても、何時までも倒し続けられる筈もなく、そのシス女王の表情にも疲れが色濃く出始めていた。
「クックック。流石は『レイズ』魔国の女王でしたねぇ。たった一人でこれだけの数を相手に、よく頑張りました」
シュライダーは拍手をしながらそう言うと、シスが弱り切ったのを見計らいながら前に出てくるのであった。
「こ、この卑怯者め!」
ヴェルトマーはそう言いながらも、何故自分が戦えないのかと自分の病を呪うように唇を噛む。
「卑怯者? 戦争に卑怯も何も無いでしょう。力が無いから敗北するだけの事ですよ」
シス女王は単身で数百体の『ラルグ』の魔族を屠ったが、倒した数より多くの魔族がまだ残っていた。更にそこに戦力値が1500万を越える『シュライダー・クーティア』が立ち塞がるのだった。
(流石にここまでか……。みんな、不甲斐ないレイズ女王でごめんなさい)
シスは最後に命を懸けて『終焉の炎』を放ち、自身も放ち果てる覚悟であった。
『ヴェルトマー・フィクス』は、シス女王の手をとって隠し通路を走る。
「待ってよヴェル! ラネアやピナ達がまだ城に残って戦っているのに、私達が先に逃げるなんて女王として耐えられない!」
たとえここで『レイズ』魔国が滅ぶにしても、最後まで女王として戦いたいというのがシスの気持ちであった。
「ダメよ! 貴方さえ生きてくれさえすれば、まだまだレイズはやり直せる! 貴方にはそれだけの価値があるのよ!」
「わ、私達だけが生き残ってどうしろっていうの!? レイズ魔国が滅ぶのを指をくわえて見ていた挙句、逃げ出した情けない女王様ですって国民に言えとでも!?」
想像をしてシスの目に涙が溜まっていく。
そこで前を走っていた『ヴェルトマー』がようやく足を止めてこちらを振り返ったと思うと、シスの両肩に手を置いて大声で叫んだ。
「貴方が生きてさえいれば『レイズ』は何度でもやり直せるの! 貴方は気づいていないでしょうけど、貴方の『魔力』は私達とは桁が違う! 貴方だけでも他の大国相手に戦える筈なのよ! 私が、私が生きている間に貴方に必ず会得させて見せるから……。それまで、それまで生きてお願い! 私が貴方の為に最高の魔法を授けてみせるから!」
ヴェルトマーの言葉に嘘はない。
シスの『魔力』であれば過去に消失した『神域』の魔法にも手が届く。
だが決して嘘はないが偽りはあった。
それは『ヴェルトマー』がもう『梗桎梏病』のせいで多くの『魔力』が操れなくなっており、新魔法の類も一切使えなくなってしまっているのだった。
こんな状態では消失した『神域魔法』を教授させるなど夢のまた夢である。
だがそれでも『ヴェルトマー』は『シス』を死なせたくはなかった。
自分の言葉でシスが少しでも生き延びてくれるというのであれば、いくらでも嘘つきになってやるという決死の覚悟を持っているのであった。
「分かった……。でも絶対に貴方も生き残りなさいよ! 私だけ残して死んだら、絶対許さない!」
(それでいい……。私が使える最後の『魔法』で、貴方だけは必ず生かせて見せる……!)
「当然よ、私が死ぬはずがないでしょう? さぁ、もうすぐ出口よ走りなさい!」
「ええっ!」
ヴェルが自分だけを置いて死なないと約束をしてくれた事で、シスは大きな安心感に包まれながら力強く頷いて『ガネーサ』へと続く道を必死にひた走る。
――そしてようやく『ガネーサ』へと繋がる隠し通路の出口が見えた。
しかしその隠し通路を抜けた先には、二人の表情を希望から絶望へと変える光景が広がっていた。
レイズ魔国の『ガネーサ』の街は、すでに千を越える『ラルグ』の魔国軍に制圧されていたのだった。
「そ、そんな……! 私にはもう『魔力感知』すら出来ないの?」
ヴェルトマーは愕然としながら、目の前に広がる光景に倒れそうになる。
そんなヴェルトマーを後ろから慌てて支えるシス女王だった。
そんな様子を眺めていた一体の魔族が突如として拍手を送る。
「ここまでの逃亡劇、お疲れ様でしたね」
「お前は……っ!」
シスは憎々しげに拍手をする一体の『魔族』を睨みつける。
にやにやと嫌な笑みを浮かべるこの男は、ラルグ統括軍事副司令官の『シュライダー・クーティア』。
――『ラルグ』魔国のNo.4であり『ラルグ』魔国軍の多くの者達に命令を下せる立ち位置にいる男であった。
【種族:魔族 名前:シュライダー『クーティア』 年齢:1477歳
魔力値:999 戦力値:1640万 所属国:ラルグ魔国】。
「もう貴方達の国は終わりです。大人しく我々『ラルグ』魔国に降伏しなさい」
「くっ……!」
シスはその言葉に悔しそうに唇を噛む。
ラルグからの開戦宣言から僅か数時間程で、あっさりと『レイズ』魔国は制圧されてしまうのだった。
まだ『レイズ』魔国のシス女王と、No.2のヴェルトマー、更にはピナやラネアといった国の重鎮達やその部隊も健在ではあるのだが、すでに『レイズ』魔国兵の多くはやられており、城も陥落寸前である。このまま『シス』女王が降伏宣言をしなければ、彼女達も皆殺しにされてしまう事だろう。
しかし『シス』がここで降伏宣言を行えば、まだ捕虜として生き残っている者達の身柄は救われる。
シス女王はかつてない程までに国の事を考え始める。
ここで無駄に抵抗して皆を巻き込むくらいならば、降伏を認めたほうがいいのではないかと――。
だがしかし『シス』に支えられていたヴェルトマーが、突如笑い始めたかと思うと、大勢のラルグ魔国軍の前で啖呵をきるのであった。
「私達の国が終わり? まだ『レイズ』魔国の最高戦力であるシス女王が戦ってさえいないのに、勝手に吠えるんじゃないわよ!」
「ふふ、ではこれだけの『ラルグ』魔国兵を相手に存分に戦えば宜しい。まぁ無駄でしょうがね」
流石にこれだけの数の『ラルグ』魔国軍が相手では『最上位魔族』にして、最高峰の『魔力』を有するシス女王であっても、たった一体だけで戦う事は出来ない。
せめて『ヴェルトマー』が全盛期の頃の強さのままであれば、まだ戦いようはあっただろう。
――しかし今のヴェルトマーでは、足手まといにはなる事はあっても戦力としては数えられない。
「さぁお前達……! 『レイズ』の女王を捕らえてしまいなさい!」
シュライダーの言葉にラルグ兵達は、シス女王達を捕らえようと一歩踏み出す。
「させないわよ!」
――超越魔法、『終焉の炎』。
「ぐっ……! ぐわあああっ!」
シス女王に向かっていた『ラルグ』魔国兵の数体が、ソフィと同じ『超越魔法』によって体が燃えされていく。
「何だあの魔法は? 見た事がない『魔法』だ……!」
それもその筈『終焉の炎』は、過去の歴代の魔王達の代名詞と呼べる程の『魔法』なのである。
最上位魔族程度で扱える者など、『ヴェルトマー』と『シス』女王くらいであろう。
シス女王の魔力だけならばすでに『最上位魔族』を上回る程であり、純粋に知識があれば『超越』『根源』そして失われた魔法『神域』の世界にさえ到達出来る程の器であった。
だがいくら才能や魔力があったとしても、それを間近で見る機会や過去の書物がなければ、知識として蓄える事も出来ずに使う事など出来ない。
ヴェルトマーという才覚溢れる最強と呼ばれた『最上位魔族』が魔法の師であったからこその今のシス女王がいるのである。
シスが現在使える古の超越魔法は『終焉の炎』のみだが、他の『超越魔法』であれば無詠唱で扱う事を可能とする。
次から次に襲い掛かる『ラルグ』の魔族達をたった一人で『ヴェルトマー』を守りながら倒していく姿は見事だといいたいところではあったが『ラルグ』魔国軍の一軍ではないとはいっても目の前に居る『シュライダー』の連れてきている私兵の『ラルグ』魔国兵は1000体を越えているのである。
シュライダーの私兵の部下達の一体一体が数百万の戦力値を持って、シス女王に襲い掛かっているのだから、流石の無尽蔵の魔力を持つと言われる『シス』女王であっても、何時までも倒し続けられる筈もなく、そのシス女王の表情にも疲れが色濃く出始めていた。
「クックック。流石は『レイズ』魔国の女王でしたねぇ。たった一人でこれだけの数を相手に、よく頑張りました」
シュライダーは拍手をしながらそう言うと、シスが弱り切ったのを見計らいながら前に出てくるのであった。
「こ、この卑怯者め!」
ヴェルトマーはそう言いながらも、何故自分が戦えないのかと自分の病を呪うように唇を噛む。
「卑怯者? 戦争に卑怯も何も無いでしょう。力が無いから敗北するだけの事ですよ」
シス女王は単身で数百体の『ラルグ』の魔族を屠ったが、倒した数より多くの魔族がまだ残っていた。更にそこに戦力値が1500万を越える『シュライダー・クーティア』が立ち塞がるのだった。
(流石にここまでか……。みんな、不甲斐ないレイズ女王でごめんなさい)
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