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第三章 幕間
92.レアからの忠告
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「少しだけ、私の話を聞いてもらえるかしらぁ?」
動く事も喋る事も出来ないソフィだが、すでにこの状況を楽しみ始めていた。
『金色の目』の体現条件は『魔王』の資質に目覚めている事。
つまり彼の前にいるこの幼女は、彼がこの世界に来て何度も何度も探していた『同類』なのであった。
(ああ、構わぬ! 望むのであれば話し合いだけではなく、この場で殺し合っ……)
そこまでソフィが考えると、幼女は首を横に振った。
「それはいーや! 貴方が本気になったら、私なんかじゃ勝てないもんねぇ?」
(クックック、謙遜するなよ魔王『レア』)
ソフィが突然『念話』で、幼女の名前を呼んだ事でレアは、少しだけ不愉快そうな顔を浮かべた。
「どうして私の名を……。ああ『漏出』か。もう勝手に覗くなんてえっちね?」
(クックック、お主も我の名前を知っておったではないか)
「まぁいいわぁ、貴方になら名前を呼ばれてもそこまで嫌じゃなかったし」
ラルフがいつまでも立ち止まったままで、ついてこないソフィに気づき後ろを振り返る。
「あらぁ、あんまり時間がないみたいねぇ。もう用件だけ話すから、しっかり聞きなさい?」
そう言うとレアと呼ばれた幼女は『金色の目』をやめた。
その瞬間にソフィは、自由に動けるようになるのであった。
「もうすぐこの大陸に『ヴェルマー』大陸の『魔族』が多く入り込んでくるわよ魔王ソフィ。一応貴方の為に、警告だけはしておこうと思ってねぇ?」
ラルフはとうとうソフィの目の前の幼女に異変を感じて『殺気』を幼女に向け始める。
「むぅ、大事な話をしている最中に……! それに人間風情に殺気を向けられるのは、非常に気に喰わないわねぇ?」
――ドクンッ。
幼女の目が再度『金色の目』に変わる。
だが、幼女の『金色の目』がラルフに届く前に、キィイインという甲高い音と共に、レアと同じ金色に輝く『魔瞳』になっているソフィに『相殺』される。
「クックック『魔王』レアよ、あやつは我の配下なのだ。手を出すのはやめてもらおうか?」
もしソフィが相殺しなければ、ラルフは即座にこの世から去っていた事だろう。
『紅い目』とは比べ物にならない魔瞳『金色の目』は、対象者が『上位魔族』であろうと簡単に息の根を止める事が出来る程である。
「そうなのねぇ? 気を付けるわぁ。私は魔族程度に嫌われるのは、なんとも思わないけどぉ、化け物に嫌われるのは泣きたくなるほど嫌だからねぇ」
そう言いながらくすくすと笑うレアだったが、最後にソフィに可愛らしいウィンクをするのであった。
「じゃ、警告はしたからねぇ? 魔国の王なんかに殺されたら、次元を越えてでも貴方を殺しちゃうから気を付けてね」
本心では魔王レアも同じ魔王領域を到達しているソフィが『最上位魔族』程度にやられるとは思ってはいないのだが、最後まで冗談めいた事を告げるのであった。
「じゃあねぇ、ばいばぁい!」
可愛く首を傾げながら手をふったと思うと、最初からその場に居なかったかのように『魔王』レアは消えていた。
「ソフィ様! 今のはまさか、魔族ですか?」
既に自分を遥かに上回る力を感じ取ったのだろう。
ラルフは悔しそうな顔をしながらそう言った。
「うむ。確かに『魔族』で間違いはないのだが、あれは単なる魔族ではなく『魔王』だな」
「!?」
ラルフは息を呑んでソフィの顔を見る。
――この世界では、魔王の存在はお伽話にしか出てこない。
かつてこの世界の全ての大陸を束ねたとされる『魔族』が居た。
圧倒的な強さを誇ったその『魔族』は『ヴェルマー大陸に存在する全ての国を支配した後、別大陸からヴェルマー大陸へと攻め込んできた『魔人族』や『精霊族』、更には世界の調停を行うといわれる『龍族』をも打ち滅ぼして後継者を残した後、この世界から去ったとされる。
その魔族は自分の事を『魔王』と呼んでおり、また他の者達にも呼ぶように強要していたという。
この『魔王』こそが『リラリオ』原初の魔王であったといわれている。
――そしてその魔王の名は『レア』と名乗っていたそうである。
……
……
……
動く事も喋る事も出来ないソフィだが、すでにこの状況を楽しみ始めていた。
『金色の目』の体現条件は『魔王』の資質に目覚めている事。
つまり彼の前にいるこの幼女は、彼がこの世界に来て何度も何度も探していた『同類』なのであった。
(ああ、構わぬ! 望むのであれば話し合いだけではなく、この場で殺し合っ……)
そこまでソフィが考えると、幼女は首を横に振った。
「それはいーや! 貴方が本気になったら、私なんかじゃ勝てないもんねぇ?」
(クックック、謙遜するなよ魔王『レア』)
ソフィが突然『念話』で、幼女の名前を呼んだ事でレアは、少しだけ不愉快そうな顔を浮かべた。
「どうして私の名を……。ああ『漏出』か。もう勝手に覗くなんてえっちね?」
(クックック、お主も我の名前を知っておったではないか)
「まぁいいわぁ、貴方になら名前を呼ばれてもそこまで嫌じゃなかったし」
ラルフがいつまでも立ち止まったままで、ついてこないソフィに気づき後ろを振り返る。
「あらぁ、あんまり時間がないみたいねぇ。もう用件だけ話すから、しっかり聞きなさい?」
そう言うとレアと呼ばれた幼女は『金色の目』をやめた。
その瞬間にソフィは、自由に動けるようになるのであった。
「もうすぐこの大陸に『ヴェルマー』大陸の『魔族』が多く入り込んでくるわよ魔王ソフィ。一応貴方の為に、警告だけはしておこうと思ってねぇ?」
ラルフはとうとうソフィの目の前の幼女に異変を感じて『殺気』を幼女に向け始める。
「むぅ、大事な話をしている最中に……! それに人間風情に殺気を向けられるのは、非常に気に喰わないわねぇ?」
――ドクンッ。
幼女の目が再度『金色の目』に変わる。
だが、幼女の『金色の目』がラルフに届く前に、キィイインという甲高い音と共に、レアと同じ金色に輝く『魔瞳』になっているソフィに『相殺』される。
「クックック『魔王』レアよ、あやつは我の配下なのだ。手を出すのはやめてもらおうか?」
もしソフィが相殺しなければ、ラルフは即座にこの世から去っていた事だろう。
『紅い目』とは比べ物にならない魔瞳『金色の目』は、対象者が『上位魔族』であろうと簡単に息の根を止める事が出来る程である。
「そうなのねぇ? 気を付けるわぁ。私は魔族程度に嫌われるのは、なんとも思わないけどぉ、化け物に嫌われるのは泣きたくなるほど嫌だからねぇ」
そう言いながらくすくすと笑うレアだったが、最後にソフィに可愛らしいウィンクをするのであった。
「じゃ、警告はしたからねぇ? 魔国の王なんかに殺されたら、次元を越えてでも貴方を殺しちゃうから気を付けてね」
本心では魔王レアも同じ魔王領域を到達しているソフィが『最上位魔族』程度にやられるとは思ってはいないのだが、最後まで冗談めいた事を告げるのであった。
「じゃあねぇ、ばいばぁい!」
可愛く首を傾げながら手をふったと思うと、最初からその場に居なかったかのように『魔王』レアは消えていた。
「ソフィ様! 今のはまさか、魔族ですか?」
既に自分を遥かに上回る力を感じ取ったのだろう。
ラルフは悔しそうな顔をしながらそう言った。
「うむ。確かに『魔族』で間違いはないのだが、あれは単なる魔族ではなく『魔王』だな」
「!?」
ラルフは息を呑んでソフィの顔を見る。
――この世界では、魔王の存在はお伽話にしか出てこない。
かつてこの世界の全ての大陸を束ねたとされる『魔族』が居た。
圧倒的な強さを誇ったその『魔族』は『ヴェルマー大陸に存在する全ての国を支配した後、別大陸からヴェルマー大陸へと攻め込んできた『魔人族』や『精霊族』、更には世界の調停を行うといわれる『龍族』をも打ち滅ぼして後継者を残した後、この世界から去ったとされる。
その魔族は自分の事を『魔王』と呼んでおり、また他の者達にも呼ぶように強要していたという。
この『魔王』こそが『リラリオ』原初の魔王であったといわれている。
――そしてその魔王の名は『レア』と名乗っていたそうである。
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