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ルノガン編
87.異例の報酬額
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ステンシアの町にあるギルドに到着したソフィ達は、早速窓口でギルド長の『リルキンス』を呼び出す。
窓口にいた女性の職員は初顔だったようで、突然ギルド長に会いたいというソフィを見て、何を言っているのかしらという顔をしていたが、彼女の上司の職員が慌てて説明を始めて、直ぐにギルド長が顔を見せたので新人の受付は終始驚いていた。
そしてリルキンスの部屋に通されたソフィ達は、高価そうなソファーに座っていた。
「部下が失礼したね。それでソフィ君、本日は一体どうしたというのかな?」
ギルド長のリルキンスは、そう言いながらもソワソワとしながらソフィの言葉を待つ。
「うむ。この前受けた指名依頼なのだが、このミナトが危険な薬草とやらを売っていた者だ」
ソフィがそう言うと、リルキンスは険しい顔になってミナトを見る。
ミナトは流石に緊張した様子で立ち上がった。
「すみませんでした! 僕が町に混乱を起こしていた張本人です」
包み隠さずに謝罪を続けるミナト。
そしてリルキンスが何かを言う前にソフィが口を開く。
「連れてきておいて、我が弁護するのもおかしいと思われるかもしれないが、ミナトの薬は単純に悪用する者がいたからであって、元々この薬を売っていた事自体は悪い事ではないと我は思っている」
ギルド長リルキンスは、最後までソフィの話を聞く姿勢だった。
「それにミナトはもうこの薬を売らないといっておるし、他に魔物を狂暴化させている犯人も目星はついておる」
そこまで言うと、リルキンスは食い入るように口を開いた。
「何……!? 魔物を狂暴化させている犯人が分かったのか!」
「うむ。まだ我も詳しい話を聞いてはおらぬが、もう町を襲わせぬ算段はついておる状態だ」
ギルド長のリルキンスは驚きの表情浮かべた後、ソフィの話を聞いてほっとした顔に変えていく。
ステンシアの警備隊や、町のギルドの冒険者達も連日の魔物の襲撃で憔悴しきっており、今はまだ何とかなってはいるが、このままでは遅かれ早かれ町はパニック騒ぎになって大事になるところであった。
「しかしギルド長! 危険な薬だと承知の上で売っていた事の責任を僕はとるつもりです」
そう言ってミナトは再び頭を下げる。リルキンスは2人の話を聞いて一つの結論を出した。
「話は分かった、顔をあげたまえミナト君。ギルドとしてはこの事件が終息を見せるのであれば、それが一番だと思っている」
一呼吸おいてリルキンスは、ミナトを見る。
「しかしそうだな……。このままお咎め無しだというわけにもいかないだろうからな。ミナト君には犯人が捕まるまでの間、ギルドお抱えの商人としてうちで働いてもらおうと提案させてもらおう。それでどうかな、ミナト君?」
リルキンスにそう告げられたミナトは、きょとんとした顔を浮かべる。
「ほう、それは良いではないか」
ソフィもそれがいいと頷いた。
「具体的にはまだ決めてはいないが、ギルドに貢献してもらおうと思うのだがよいかな?」
ミナトはギルドに貢献して欲しい、という言葉を聞いた事で直ぐに頷いた。
「分かりましたギルド長! 精一杯償わせていただきます!」
こうしてミナトは、冒険者ギルドで働く事になった。
「犯人については、またこちらから連絡をするので待って欲しい」
ソフィがそう言うと、リルキンスは快く頷いた。
「頼んだぞソフィ君!」
「うむ、任せておくのだ」
そう言ってソフィが据わっていたソファーから立ち上がると同時、リルキンスはふと思い出した様子で口を開いた。
「そうだった。ソフィ君、君に名指しで依頼がギルドに届けられたのだ」
「うむ? ああ、それはもしや護衛の依頼ではないか?」
驚いた様子でリルキンスは頷いた。
「既に知っていたのか? その通り護衛の依頼なのだが、しかしこの指名依頼は少々……。というか相当に特殊な指名依頼なのだ」
少しだけリルキンスが渋るように前置きを始める。
「うむ?」
「まず驚かないで聞いて欲しいのだが、この依頼の成功報酬なのだが『光金貨100枚』という話だ」
大国間の交渉に用いられる程の代物である『光金貨』。
金貨50枚が『白金貨』1枚相当であり、その『白金貨』10枚相当に匹敵するのが『光金貨』である。そしてその『光金貨』が100枚である。
一般的な店などで流通される通貨の中で、一番価値があるとされる『金貨』で言えば50000枚という事であった。
「「こ、光金貨が100枚!?」」
ソフィを除いたその場に居る者全員が、目を丸くしてリルキンスの言葉に耳を疑う。
これは冒険者ギルドの指名依頼として考えても異例であり、ギルドの最高ランク『勲章ランクA』の冒険者を雇うにしても破格すぎる程である。
それを勲章ランクDのソフィ個人を直接名指しで依頼してきており、依頼者は万が一ソフィという冒険者が断るのならば、この話はなかったことにしてもらいたいとまで言ってきたらしい。
依頼人のレルバノンは既にソフィを自分を越える『最上位魔族』として認識しているからこそ、この報酬額なのだが、それを知らないリルキンスは鼻息荒くして説明を続けていた。
同じく最上位魔族であるレルバノンからみれば、人間の冒険者達には何も期待はしていない。
たとえ『勲章ランクA』の冒険者だとしてもその冒険者よりも、依頼者となるレルバノン自身の方が強いだろうと明確に理解をしているからである。
ヴェルマー大陸のラルグ魔国に所属する魔族の戦力値は、一般兵であっても軽く数百万を越える。
それこそ大陸最強の剣士と名高い『リディア』が引き受けるといっても、レルバノンは依頼をしなかったであろう。
そのミールガルド大陸最強の剣士である『リディア』であれば、ラルグ魔国に属する魔族相手でも、一体や二体程度であれば対抗できるかもしれないが、少なく見積もってもレルバノンの追手は、数百体から数千体規模になる可能性もあるのだ。
個々の力量が数百万の戦力値を誇るラルグ軍から守るのは『リディア』であっても一人では到底不可能であろう。
つまりこの依頼は『ミールガルド』大陸の中で、ソフィだけが受ける事のできる指名依頼なのであった。
窓口にいた女性の職員は初顔だったようで、突然ギルド長に会いたいというソフィを見て、何を言っているのかしらという顔をしていたが、彼女の上司の職員が慌てて説明を始めて、直ぐにギルド長が顔を見せたので新人の受付は終始驚いていた。
そしてリルキンスの部屋に通されたソフィ達は、高価そうなソファーに座っていた。
「部下が失礼したね。それでソフィ君、本日は一体どうしたというのかな?」
ギルド長のリルキンスは、そう言いながらもソワソワとしながらソフィの言葉を待つ。
「うむ。この前受けた指名依頼なのだが、このミナトが危険な薬草とやらを売っていた者だ」
ソフィがそう言うと、リルキンスは険しい顔になってミナトを見る。
ミナトは流石に緊張した様子で立ち上がった。
「すみませんでした! 僕が町に混乱を起こしていた張本人です」
包み隠さずに謝罪を続けるミナト。
そしてリルキンスが何かを言う前にソフィが口を開く。
「連れてきておいて、我が弁護するのもおかしいと思われるかもしれないが、ミナトの薬は単純に悪用する者がいたからであって、元々この薬を売っていた事自体は悪い事ではないと我は思っている」
ギルド長リルキンスは、最後までソフィの話を聞く姿勢だった。
「それにミナトはもうこの薬を売らないといっておるし、他に魔物を狂暴化させている犯人も目星はついておる」
そこまで言うと、リルキンスは食い入るように口を開いた。
「何……!? 魔物を狂暴化させている犯人が分かったのか!」
「うむ。まだ我も詳しい話を聞いてはおらぬが、もう町を襲わせぬ算段はついておる状態だ」
ギルド長のリルキンスは驚きの表情浮かべた後、ソフィの話を聞いてほっとした顔に変えていく。
ステンシアの警備隊や、町のギルドの冒険者達も連日の魔物の襲撃で憔悴しきっており、今はまだ何とかなってはいるが、このままでは遅かれ早かれ町はパニック騒ぎになって大事になるところであった。
「しかしギルド長! 危険な薬だと承知の上で売っていた事の責任を僕はとるつもりです」
そう言ってミナトは再び頭を下げる。リルキンスは2人の話を聞いて一つの結論を出した。
「話は分かった、顔をあげたまえミナト君。ギルドとしてはこの事件が終息を見せるのであれば、それが一番だと思っている」
一呼吸おいてリルキンスは、ミナトを見る。
「しかしそうだな……。このままお咎め無しだというわけにもいかないだろうからな。ミナト君には犯人が捕まるまでの間、ギルドお抱えの商人としてうちで働いてもらおうと提案させてもらおう。それでどうかな、ミナト君?」
リルキンスにそう告げられたミナトは、きょとんとした顔を浮かべる。
「ほう、それは良いではないか」
ソフィもそれがいいと頷いた。
「具体的にはまだ決めてはいないが、ギルドに貢献してもらおうと思うのだがよいかな?」
ミナトはギルドに貢献して欲しい、という言葉を聞いた事で直ぐに頷いた。
「分かりましたギルド長! 精一杯償わせていただきます!」
こうしてミナトは、冒険者ギルドで働く事になった。
「犯人については、またこちらから連絡をするので待って欲しい」
ソフィがそう言うと、リルキンスは快く頷いた。
「頼んだぞソフィ君!」
「うむ、任せておくのだ」
そう言ってソフィが据わっていたソファーから立ち上がると同時、リルキンスはふと思い出した様子で口を開いた。
「そうだった。ソフィ君、君に名指しで依頼がギルドに届けられたのだ」
「うむ? ああ、それはもしや護衛の依頼ではないか?」
驚いた様子でリルキンスは頷いた。
「既に知っていたのか? その通り護衛の依頼なのだが、しかしこの指名依頼は少々……。というか相当に特殊な指名依頼なのだ」
少しだけリルキンスが渋るように前置きを始める。
「うむ?」
「まず驚かないで聞いて欲しいのだが、この依頼の成功報酬なのだが『光金貨100枚』という話だ」
大国間の交渉に用いられる程の代物である『光金貨』。
金貨50枚が『白金貨』1枚相当であり、その『白金貨』10枚相当に匹敵するのが『光金貨』である。そしてその『光金貨』が100枚である。
一般的な店などで流通される通貨の中で、一番価値があるとされる『金貨』で言えば50000枚という事であった。
「「こ、光金貨が100枚!?」」
ソフィを除いたその場に居る者全員が、目を丸くしてリルキンスの言葉に耳を疑う。
これは冒険者ギルドの指名依頼として考えても異例であり、ギルドの最高ランク『勲章ランクA』の冒険者を雇うにしても破格すぎる程である。
それを勲章ランクDのソフィ個人を直接名指しで依頼してきており、依頼者は万が一ソフィという冒険者が断るのならば、この話はなかったことにしてもらいたいとまで言ってきたらしい。
依頼人のレルバノンは既にソフィを自分を越える『最上位魔族』として認識しているからこそ、この報酬額なのだが、それを知らないリルキンスは鼻息荒くして説明を続けていた。
同じく最上位魔族であるレルバノンからみれば、人間の冒険者達には何も期待はしていない。
たとえ『勲章ランクA』の冒険者だとしてもその冒険者よりも、依頼者となるレルバノン自身の方が強いだろうと明確に理解をしているからである。
ヴェルマー大陸のラルグ魔国に所属する魔族の戦力値は、一般兵であっても軽く数百万を越える。
それこそ大陸最強の剣士と名高い『リディア』が引き受けるといっても、レルバノンは依頼をしなかったであろう。
そのミールガルド大陸最強の剣士である『リディア』であれば、ラルグ魔国に属する魔族相手でも、一体や二体程度であれば対抗できるかもしれないが、少なく見積もってもレルバノンの追手は、数百体から数千体規模になる可能性もあるのだ。
個々の力量が数百万の戦力値を誇るラルグ軍から守るのは『リディア』であっても一人では到底不可能であろう。
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