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レルバノン編

73.ソフィVS三体のグレーターデーモン

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「やれやれ。君が大人しく我々の仲間になってくれさえすれば、全てが丸く収まったのですがね」

 レルバノンが再度指を鳴らすと遂に『上級悪魔グレーター・デーモン』達が、ソフィを喰いちぎろうと襲い掛かっていく。

「ゴオオオ!!!」

 ソフィは現れた古参の『上級悪魔グレーター・デーモン』達に覆いかぶさられていき、やがて三体の『上級悪魔グレーター・デーモン』が獲物の臓物を食い千切るような音が周囲に響き始めるのだった。

「おや、もう終わりですか? こちらが掴んでいた情報と先程の膨大な『魔力』が本物であれば、もう少しはやるものかと思って……、むっ――!?」

 そこでレルバノンは口を閉じた。

「クックック、お主の配下の『上級悪魔グレーター・デーモン』とやらは、我を無視して勝手に共食いを始めたようだぞ?」

 ソフィの目は上級悪魔グレーター・デーモン』達三体を同時にその目で支配したのだとレルバノンは理解をする。

 しかしソフィの戦力値は多く見積もっても70万前後だと、部下からの報告で知っていたレルバノンは、訝しい目をしながらソフィを見る。

 『紅い目スカーレット・アイ』は、余程の戦力差がなければ操る事が出来ない。

 『上級悪魔グレーター・デーモン』の一体一体の戦力値は100万を越える筈なので『紅い目スカーレット・アイ』は本来の効力を発動しない筈なのである。

 ――だが、それはソフィの戦力値が、非戦闘時の時のように

 【種族:魔族 名前:ソフィ 魔力値:999 戦力値:370万】。

 現在のソフィの戦力値は戦力値コントロールを行われた事によって、レルバノンの思っていた数値を遥かに上回っていた。

 『上級悪魔グレーター・デーモン』は三体とも戦力値が125万なのだから、ソフィ程の戦力値と膨大な魔力を有しているならば『上級悪魔グレーター・デーモン』程度であれば『紅い目スカーレット・アイ』で支配するには十分すぎるといえた。

 ソフィの魔瞳まどう紅い目スカーレット・アイ』によって、互いに争わされている『上級悪魔グレーター・デーモン』三体はその数を徐々に減らしていき、やがて最後の一体となったところで、ソフィの超越魔法である『終焉の炎エンドオブフレイム』で焼き尽くされてこの世から消えた。

 全ての『上級悪魔グレーター・デーモン』達を倒した後、ソフィは恭しく一礼をしながらレルバノンに声をかける。

「ご満足頂けたかな?」

 椅子からゆっくりと立ち上がるレルバノン。

(先程の戦力値をコントロールはやはり見間違いではなかったか。それもこれ程の数値を一瞬で変化させられる程の練度。彼は『上位魔族』でも相当に上の存在か。成程成程、どうやら私は根本からこの少年の力を見誤っていたようだ)

 レルバノンが目の前の机の上にあるブザーを鳴らすと、直ぐに先程のローブでよく顔が見えない小柄な魔族『エルザ』が部屋に入ってきた。

「御呼びですか? レルバノン様」

 横目でソフィに一瞥しながらも、レルバノンへの挨拶を欠かさない『エルザ』だった。

 ……
 ……
 ……

 ソフィが屋敷で『上級悪魔グレーター・デーモン』と戦っていたその頃『キラービー』をはじめとした魔物が再び『ステンシア』の町に押し寄せてきていた。

「くっ……! 今日もまたこれだけの数の魔物が……」

 マークと警備隊がすでに街のバリケードの内側から、苦々しい顔をしながら魔物達を睨んでいた。

 キラービーの毒針の怖さを知っている冒険者が、連日町の中で騒いでいる所為で討伐退治をしようとする冒険者達は減り続けていた。

 今や完全に魔物と冒険者の人数の形勢も変わり『ステンシア』の町側に居る人間達の方が圧倒的に不利な情勢になっていた。

 魔物達が蔓延っている後方で『ルノガン』がまたデータを集めにやってきていた。

 しかしデータを取る程にはもう冒険者も居らず、ノルマもそろそろ達成かと『ルノガン』が屋敷に戻ろうとすると、正面から青い服装の若者が微笑びしょうを浮かべてこちらを見ていた。

「?」

 その青服の男はルノガンを試すような目で見ていたが、やがてこちらに近づいてきた。

「貴方がここに居る魔物達に薬を投与しているお方ですか?」

「お前は誰だ?」

 次の瞬間、ざしゅっという音が『ルノガン』の耳に届いた。

「え?」

 唐突にルノガンの右肩の先がなくなったかと思えば血が溢れ出していく。

 ルノガンは何が起きたのか理解が追い付かずに、無意識に口から言葉が漏れ出すのだった。

「失礼。少々気が立っていましてね。先に私の質問に答えてくれませんか?」

 ルノガンは痛みより目の前の人間に意識がいき、過去に失った筈の『恐怖心』が再び彼の心に芽生え始める。

「貴方がここに居る魔物達に、薬を投与しているお方ですか?」

 再び同じセリフが男の口から発せられる。今度はしっかりと答えなければ命を奪うと、男の目が告げていた。

「そ、そうだ……!」

 ルノガンの言葉を聞いたラルフの細い目が、更に細くなり『ルノガン』を見据える。

「そうですか、。これでようやくあの方の役に立てます」

 ラルフはそう言って笑顔を浮かべると、心底嬉しいとばかりに喜びを露わにする。

「お、お前は何者だ!?」

「これからに答えても、仕方がない事でしょう?」

 微笑を浮かべながら一歩、また一歩とルノガンに近づく。

「ひ、ひぃっ! ま、待て! 俺を殺せばここの魔物達はもう元に戻らんぞ!」

「? それが何か?」

 ラルフは心底男の言っている意味が分からないという顔を浮かべながら問う。

「こ、これだけの魔物が狂暴化しているのだ! こ、こんな規模の町など、たった数日で壊滅させる事になるぞ!」

「ふふ、だから何だと言うのです? ?」

 ハッタリでも何でもなく、この男には心底町がどうなっても構わないという態度が見て取れた。

より、私の主が貴方のくだらない実験のせいで浮かない顔をお見せになられたのです。こんな町がどうなる事よりも、

 冷酷な殺し屋の目をしながらラルフは、主を浮かない顔にさせたに向けて、手を振り上げる。

「それでは、さようなら」

 バキィッという音と共に、振り下ろした『微笑』の右手は防がれた。

「! 貴方は?」

 突如、ゴスロリ服を着た女がルノガンとラルフの間に割って入って来たかと思えば、殺し屋としての彼が本気で放ったラルフの攻撃から、ルノガンを守るのに成功するのであった。
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