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真なる魔王編
53.それから
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ソフィは勝負がついたと判断して元の姿に戻り、意識を失っているリディアの身体を大事そうに抱える。
「やれやれ、ここまでくると神の所業ですね?」
ラルフは二人の戦いを見届けた後、元の姿に戻った主の元に近づいていき、そして両手をあげて呆れながらそう口にするのだった。
――しかし彼が呆れてそう言うのも無理はない。
先程のソフィが放った雷の魔法の一撃で『ミールガルド』大陸の一部が、この『リラリオ』の世界の地図上から消えてしまったのであった。
「クックック! 努力をしている人間というのは、本当に素晴らしいものだ」
ソフィは大事そうに両腕に抱える『リディア』の顔を見ながら嬉しそうにそう告げる。
「お主もリディアもいずれは我を越えてくれるのではないかと、期待しておるぞ?」
「そ、それはまた、長生きをしなければいけませんね」
呆れ顔を浮かべながらラルフが笑うと、つられてソフィも小さく笑うのだった。
ギルド対抗戦で敗退が決まった時にソフィは、多くの失望をしたがこうして結果的に彼は隣に並び立つ殺し屋ラルフや、一度は失望をしたスイレン。
そして『リディア』との戦いを通じて、彼はまた希望を見出した。
決して根拠があるわけではないが、ソフィは疑ってはいない。
今はまだ小さな小さな希望ではあるが、この希望こそ彼が望んだ期待であるとどこか確信に近い期待を持てるソフィであった。
…………
そして意識のないリディアをソフィ達はサシスの冒険者ギルド元まで運び、冒険者ギルド長のクラッソに届けるのであった。
リディアがソフィに抱きかかえられているのを見て、ギルド長の『クラッソ』は顔を引きつらせて驚いていたが、ソフィたちはそんなクラッソを無視してリディアを預けたのだった。
そして合流を果たしたソフィと『微笑』は、ディラック達と一緒に馬車便で『グラン』の町に向かう。
馬車便の御者は何と驚く事に、対抗戦が始まる前に『サシス』の町に向かう時に乗った馬車便の御者であった。
信じられない確率といえるが、その御者は『ソフィ』とまた会えて喜んでいた。
その同じ馬車便に乗って帰るソフィ達だったが、行きと帰りで違う所と言えば『ラルフ』という配下が増えた事と――。
――『リーネに笑顔が増えた事だろうか』
……
……
……
そして少しだけ時が流れ――。
ソフィ達が馬車便で『サシス』の町から去って行った後、一人の男がこれまで久しく忘れていた感情を思い出して言葉を吐き出していた。
「必ず俺はお前の領域まで駆け上がって見せる。それまで待っていろよ、ソフィ!」
『サシス』の町の医務室で目を覚ましたリディアは、これまで抱いた事のない『目標』を見つけた事で、ソフィに対する再戦に闘志を燃やしていた。
その様子を見ていた『クラッソ』は、大怪我を負っている筈のリディアの言葉に呆れるのだった。
指標を手にした彼は自分より遥かに強い存在が居るのだという確信を得た今、研鑽を怠るような馬鹿な真似をせず、その目標となるソフィを倒すために毎日研鑽に励む事となるだろう――。
それは彼にとってギルド対抗戦の優勝や、連覇などよりも余程に価値のある生き方であるといえるだろう。
……
……
……
そして大陸の一部を沈めて『最強の剣士』を倒したとして、十歳の冒険者ソフィの存在は、この日を境に誰が最初に呼んだか『破壊神』の二つ名と共に『ミールガルド』大陸中に広まるのだった。
そんな事を知りもしないソフィは『ディラック』の指名依頼を無事に果たしたとして、勲章Dランクに昇格した。
――最強の魔王であったソフィは、冒険者ギルドに所属している。
そんな彼が今一番欲しいものといえば、やはり――。
――『レグランの実である事は間違いがないであろう』
第一章完。
「やれやれ、ここまでくると神の所業ですね?」
ラルフは二人の戦いを見届けた後、元の姿に戻った主の元に近づいていき、そして両手をあげて呆れながらそう口にするのだった。
――しかし彼が呆れてそう言うのも無理はない。
先程のソフィが放った雷の魔法の一撃で『ミールガルド』大陸の一部が、この『リラリオ』の世界の地図上から消えてしまったのであった。
「クックック! 努力をしている人間というのは、本当に素晴らしいものだ」
ソフィは大事そうに両腕に抱える『リディア』の顔を見ながら嬉しそうにそう告げる。
「お主もリディアもいずれは我を越えてくれるのではないかと、期待しておるぞ?」
「そ、それはまた、長生きをしなければいけませんね」
呆れ顔を浮かべながらラルフが笑うと、つられてソフィも小さく笑うのだった。
ギルド対抗戦で敗退が決まった時にソフィは、多くの失望をしたがこうして結果的に彼は隣に並び立つ殺し屋ラルフや、一度は失望をしたスイレン。
そして『リディア』との戦いを通じて、彼はまた希望を見出した。
決して根拠があるわけではないが、ソフィは疑ってはいない。
今はまだ小さな小さな希望ではあるが、この希望こそ彼が望んだ期待であるとどこか確信に近い期待を持てるソフィであった。
…………
そして意識のないリディアをソフィ達はサシスの冒険者ギルド元まで運び、冒険者ギルド長のクラッソに届けるのであった。
リディアがソフィに抱きかかえられているのを見て、ギルド長の『クラッソ』は顔を引きつらせて驚いていたが、ソフィたちはそんなクラッソを無視してリディアを預けたのだった。
そして合流を果たしたソフィと『微笑』は、ディラック達と一緒に馬車便で『グラン』の町に向かう。
馬車便の御者は何と驚く事に、対抗戦が始まる前に『サシス』の町に向かう時に乗った馬車便の御者であった。
信じられない確率といえるが、その御者は『ソフィ』とまた会えて喜んでいた。
その同じ馬車便に乗って帰るソフィ達だったが、行きと帰りで違う所と言えば『ラルフ』という配下が増えた事と――。
――『リーネに笑顔が増えた事だろうか』
……
……
……
そして少しだけ時が流れ――。
ソフィ達が馬車便で『サシス』の町から去って行った後、一人の男がこれまで久しく忘れていた感情を思い出して言葉を吐き出していた。
「必ず俺はお前の領域まで駆け上がって見せる。それまで待っていろよ、ソフィ!」
『サシス』の町の医務室で目を覚ましたリディアは、これまで抱いた事のない『目標』を見つけた事で、ソフィに対する再戦に闘志を燃やしていた。
その様子を見ていた『クラッソ』は、大怪我を負っている筈のリディアの言葉に呆れるのだった。
指標を手にした彼は自分より遥かに強い存在が居るのだという確信を得た今、研鑽を怠るような馬鹿な真似をせず、その目標となるソフィを倒すために毎日研鑽に励む事となるだろう――。
それは彼にとってギルド対抗戦の優勝や、連覇などよりも余程に価値のある生き方であるといえるだろう。
……
……
……
そして大陸の一部を沈めて『最強の剣士』を倒したとして、十歳の冒険者ソフィの存在は、この日を境に誰が最初に呼んだか『破壊神』の二つ名と共に『ミールガルド』大陸中に広まるのだった。
そんな事を知りもしないソフィは『ディラック』の指名依頼を無事に果たしたとして、勲章Dランクに昇格した。
――最強の魔王であったソフィは、冒険者ギルドに所属している。
そんな彼が今一番欲しいものといえば、やはり――。
――『レグランの実である事は間違いがないであろう』
第一章完。
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