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真なる魔王編
52.ソフィVSリディア3
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「リディアよ、我にここまで傷を負わせられる強さを持つお前には、さぞかし世界が狭く感じる事だろう。だが、お主にはまだここを頂点として努力を怠って欲しくはないのだ」
リディアは真剣にソフィの言葉を聞き続ける。
彼はまだこの勝負は終わっていないと『ソフィ』の言葉からも感じられるのだった。
「そして勘違いして欲しくもない。今から使う我の『魔法』を見た後も挫折しないでくれ。今から発動する『魔法』は、掛値なしに我が認める『本物の魔法』なのだから」
この世界に来て初めて、敵を討ち滅ぼすために存在する『ソフィ』の『魔法の詠唱』が始まるのであった。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」
ソフィの詠唱が終わると同時に、ソフィの目は紅色から金色へと変わる。
大魔王ソフィの持つ膨大な『魔力』と引き換えに『詠唱』を始めると、神々しい光りを放つ存在が出現を始める――。
……
……
……
ソフィ達の居る『ミールガルド』大陸から遠く離れた大陸の中、一体のソフィと同じ『魔族』が、部屋の窓から空を見上げた。
「恐ろしい程の『魔力』を『ミールガルド』大陸から感じる。これはもしかすると、もしかするわねぇ……?」
甘ったるい香水の匂いで包まれているその小さな部屋の一室で、ソフィと同じ年齢程の幼い女の子の姿をした『魔族』は、明らかに『魔王領域』を超えている『魔力』に着目すると、ようやく探し物を見つけたような表情を浮かべるのだった。
……
……
……
――そして次に現れたのは『真なる魔王』の形態となったソフィだった。
アレルバレルの世界の地で、幾万の『魔族』の軍勢を従えるに至った『最強の大魔王』である。
背中から羽をはやしており目も金色、口からは鋭利な牙が見える。
――だが、この世界に来た影響か、変身を果たした今も子供の姿であった。
見た感じは先程の興奮状態に至った事で、一時的な魔王化した戦闘形態と変わりがないように見えるのだが、一定の強さを持つものならば、今のソフィの姿は全くの別の存在に映る事だろう。
対峙する現役最強の剣士『リディア』でさえも、目の前の真なる魔王のソフィの圧をその身に受けて、震えが止まらなくなっていた。
「……は、ははは! な、なんだそれは? それがお前の本当の姿なのか?」
リディアはこの大陸で最強の冒険者として、ギルド指定のA級の魔物も何度か討伐した経験を持っている。
だが、所詮『指定A級の魔物』は、目の前の存在を相手にする事に比べれば、単なる最下級の魔物と変わらなく感じるのであった――。
「この領域以上になれば膨大な魔力を有するが故に、少し力のコントロールが難しいのでな『世界』に被害が出ぬように普段は形態を変えて、こやつに魔力を預けて我は最小限に力を留めているのだ」
彼の傍に控えるように立つ『真っ白な存在』を一瞥しながらソフィはそう告げる。
普段のソフィの全魔力と引き換えに全次元に存在する存在。
力を管理する『魔神』に預けている『力』をこうして引き出したという訳である。
――だが、それでも引き出したのは彼の本来の『力』全てではない。
先程も述べたが、この場で全ての彼の力を『魔神』から引き出して、単なる初級魔法一つでも放とうものならば、その瞬間にこの世界の崩壊を招いてしまう恐れがあるためである。
如何に大魔王ソフィの『魔力コントロール』が優れていても、戦闘で本気となった事がない彼が本来の『魔力』を用いて戦えば、望まぬ結果になる可能性の方がはるかに高く、おいそれとはそんな危険な真似をするわけにはいかないのであった。
「さぁ、話をしていても我がどう変わったかは分かるまい? 存分に試すがよいぞリディアよ」
そう言うとソフィは腕を組み、リディアの攻撃を全て受ける覚悟で立つ。
その言葉を最後まで言い終わる前に、すでにリディアは斬りかかっていた。
――その手には、眩く光輝く柄のない二刀が握られている。
……
……
……
ラルフはソフィの禍々しい姿に目を見張る。
自分をあっさりと倒して見せた時のあの時のソフィの形態ですら『国』を単身で相手どる事も可能な強さだった。
だが、詠唱をした後からのソフィは、もう自分程度では測りきれない存在へと昇華した。
殺し屋としての目で『微笑』は、ソフィを探り始める。
頭部にあるあらゆる弱点とされる箇所、胴体、脚に至るまでソフィの全てを視るが、やがてその視線を切るようにラルフは目を瞑る。
(弱点が見当たりませんね。それにたとえあったとしても近づく前にこちらが殺られるでしょう。最早あの御方と私とでは、強さの桁が言葉通りに違いすぎている)
微笑みというより苦笑いに見える笑みを見せながら、静かにラルフは首を振る。
……
……
……
先程のようにリディアの体が朧気になり、ソフィの側面から斬りかかる。
一瞬でリディアの持つ二刀が光輝きながらその力を発揮される。
右手で袈裟切りを行い、即座に返すように左手の逆手に握られた刀が横一線に斬る。
「『空蝉十字斬り』」
――見事な高速な十字斬りである。
ソフィの身体が再び十字に切り裂かれた。
そして畳みかけるようにリディアは、返しの刀をソフィに叩きつけて、高速で動きながら肩口、脇腹を裂く。
そして一度後方へ下がると同時、脚に力を込めて一直線にソフィの心臓をめがけて速度を乗せた突きでソフィを殺しにかかる。
「うむ、やはりお主は才能に恵まれておる……!」
目にも止まらない程のリディアの速度を乗せた手を掴みソフィは笑う。
ソフィの身体は斬られた箇所が何事もなかったの如く、すでにその全てが再生されて元に戻っていた。
「リディアよ……。ここまでの差を見せられても、まだ諦めずに我を斬る気はあるか?」
真意を問うソフィの目は、少しばかり不安そうではあったが、臆する事無くリディアの返答を待つ。
「くっ……! と、当然だ! 貴様は俺が斬り伏せるといっただろうが!!」
ソフィは口元を緩ませる。
「クックック! そうか……」
彼はリディアの返答をとても嬉しく思い、笑みを浮かべるのであった。
「ではリディアよ……! この大魔王ソフィが『魔法』をくれてやる!」
そう言うとソフィは、上空高く羽を羽搏かせて上昇していく。
そして雲を突き抜けて、遥か上空地点に到達した後、楽しくて仕方がないといった様子で歌うように詠唱を始めた。
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。大気の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ、我が名はソフィ』」
次々と魔法陣が浮かび上がっていき、更に幾重にも魔法陣は重なっていく。
――その数はすでに千を越える。
「さぁ、リディアよ! 我の期待に存分に応えてみせよ!」
――神域魔法、『天空の雷』。
真なる魔王となったソフィの魔法が魔神を介して、リディアの周りにのみ限定的に放たれる。
――そう、そしてこれは正しく『魔の神』の領域であった。
ギルド対抗戦の大会中にソフィ自身が呟いていた言葉。
詠唱有の雷光の一撃である。
「うおおおぉぉっっ!!」
リディアは両手に持つ柄のない二刀の光輝く刀で『大魔王』であるソフィの放つ雷に挑む。
逃げずに真っ向からソフィの『魔法』にぶつかっていく、リディアの勇姿をソフィは両の目に焼き付ける。
まさに一切の瞬きを許さず、最後の時までリディアの勇姿を見届けるのであった。
……
……
……
リディアは真剣にソフィの言葉を聞き続ける。
彼はまだこの勝負は終わっていないと『ソフィ』の言葉からも感じられるのだった。
「そして勘違いして欲しくもない。今から使う我の『魔法』を見た後も挫折しないでくれ。今から発動する『魔法』は、掛値なしに我が認める『本物の魔法』なのだから」
この世界に来て初めて、敵を討ち滅ぼすために存在する『ソフィ』の『魔法の詠唱』が始まるのであった。
「『無限の空間、無限の時間、無限の理に住みし魔神よ。悠久の時を経て、契約者たる大魔王の声に応じよ、我が名はソフィ』」
ソフィの詠唱が終わると同時に、ソフィの目は紅色から金色へと変わる。
大魔王ソフィの持つ膨大な『魔力』と引き換えに『詠唱』を始めると、神々しい光りを放つ存在が出現を始める――。
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ソフィ達の居る『ミールガルド』大陸から遠く離れた大陸の中、一体のソフィと同じ『魔族』が、部屋の窓から空を見上げた。
「恐ろしい程の『魔力』を『ミールガルド』大陸から感じる。これはもしかすると、もしかするわねぇ……?」
甘ったるい香水の匂いで包まれているその小さな部屋の一室で、ソフィと同じ年齢程の幼い女の子の姿をした『魔族』は、明らかに『魔王領域』を超えている『魔力』に着目すると、ようやく探し物を見つけたような表情を浮かべるのだった。
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――そして次に現れたのは『真なる魔王』の形態となったソフィだった。
アレルバレルの世界の地で、幾万の『魔族』の軍勢を従えるに至った『最強の大魔王』である。
背中から羽をはやしており目も金色、口からは鋭利な牙が見える。
――だが、この世界に来た影響か、変身を果たした今も子供の姿であった。
見た感じは先程の興奮状態に至った事で、一時的な魔王化した戦闘形態と変わりがないように見えるのだが、一定の強さを持つものならば、今のソフィの姿は全くの別の存在に映る事だろう。
対峙する現役最強の剣士『リディア』でさえも、目の前の真なる魔王のソフィの圧をその身に受けて、震えが止まらなくなっていた。
「……は、ははは! な、なんだそれは? それがお前の本当の姿なのか?」
リディアはこの大陸で最強の冒険者として、ギルド指定のA級の魔物も何度か討伐した経験を持っている。
だが、所詮『指定A級の魔物』は、目の前の存在を相手にする事に比べれば、単なる最下級の魔物と変わらなく感じるのであった――。
「この領域以上になれば膨大な魔力を有するが故に、少し力のコントロールが難しいのでな『世界』に被害が出ぬように普段は形態を変えて、こやつに魔力を預けて我は最小限に力を留めているのだ」
彼の傍に控えるように立つ『真っ白な存在』を一瞥しながらソフィはそう告げる。
普段のソフィの全魔力と引き換えに全次元に存在する存在。
力を管理する『魔神』に預けている『力』をこうして引き出したという訳である。
――だが、それでも引き出したのは彼の本来の『力』全てではない。
先程も述べたが、この場で全ての彼の力を『魔神』から引き出して、単なる初級魔法一つでも放とうものならば、その瞬間にこの世界の崩壊を招いてしまう恐れがあるためである。
如何に大魔王ソフィの『魔力コントロール』が優れていても、戦闘で本気となった事がない彼が本来の『魔力』を用いて戦えば、望まぬ結果になる可能性の方がはるかに高く、おいそれとはそんな危険な真似をするわけにはいかないのであった。
「さぁ、話をしていても我がどう変わったかは分かるまい? 存分に試すがよいぞリディアよ」
そう言うとソフィは腕を組み、リディアの攻撃を全て受ける覚悟で立つ。
その言葉を最後まで言い終わる前に、すでにリディアは斬りかかっていた。
――その手には、眩く光輝く柄のない二刀が握られている。
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ラルフはソフィの禍々しい姿に目を見張る。
自分をあっさりと倒して見せた時のあの時のソフィの形態ですら『国』を単身で相手どる事も可能な強さだった。
だが、詠唱をした後からのソフィは、もう自分程度では測りきれない存在へと昇華した。
殺し屋としての目で『微笑』は、ソフィを探り始める。
頭部にあるあらゆる弱点とされる箇所、胴体、脚に至るまでソフィの全てを視るが、やがてその視線を切るようにラルフは目を瞑る。
(弱点が見当たりませんね。それにたとえあったとしても近づく前にこちらが殺られるでしょう。最早あの御方と私とでは、強さの桁が言葉通りに違いすぎている)
微笑みというより苦笑いに見える笑みを見せながら、静かにラルフは首を振る。
……
……
……
先程のようにリディアの体が朧気になり、ソフィの側面から斬りかかる。
一瞬でリディアの持つ二刀が光輝きながらその力を発揮される。
右手で袈裟切りを行い、即座に返すように左手の逆手に握られた刀が横一線に斬る。
「『空蝉十字斬り』」
――見事な高速な十字斬りである。
ソフィの身体が再び十字に切り裂かれた。
そして畳みかけるようにリディアは、返しの刀をソフィに叩きつけて、高速で動きながら肩口、脇腹を裂く。
そして一度後方へ下がると同時、脚に力を込めて一直線にソフィの心臓をめがけて速度を乗せた突きでソフィを殺しにかかる。
「うむ、やはりお主は才能に恵まれておる……!」
目にも止まらない程のリディアの速度を乗せた手を掴みソフィは笑う。
ソフィの身体は斬られた箇所が何事もなかったの如く、すでにその全てが再生されて元に戻っていた。
「リディアよ……。ここまでの差を見せられても、まだ諦めずに我を斬る気はあるか?」
真意を問うソフィの目は、少しばかり不安そうではあったが、臆する事無くリディアの返答を待つ。
「くっ……! と、当然だ! 貴様は俺が斬り伏せるといっただろうが!!」
ソフィは口元を緩ませる。
「クックック! そうか……」
彼はリディアの返答をとても嬉しく思い、笑みを浮かべるのであった。
「ではリディアよ……! この大魔王ソフィが『魔法』をくれてやる!」
そう言うとソフィは、上空高く羽を羽搏かせて上昇していく。
そして雲を突き抜けて、遥か上空地点に到達した後、楽しくて仕方がないといった様子で歌うように詠唱を始めた。
「『数多の神々を従える魔神よ、汝の全てを今ここに欲す。大気の力を我は望む、契約者たる大魔王の言葉に応じよ、我が名はソフィ』」
次々と魔法陣が浮かび上がっていき、更に幾重にも魔法陣は重なっていく。
――その数はすでに千を越える。
「さぁ、リディアよ! 我の期待に存分に応えてみせよ!」
――神域魔法、『天空の雷』。
真なる魔王となったソフィの魔法が魔神を介して、リディアの周りにのみ限定的に放たれる。
――そう、そしてこれは正しく『魔の神』の領域であった。
ギルド対抗戦の大会中にソフィ自身が呟いていた言葉。
詠唱有の雷光の一撃である。
「うおおおぉぉっっ!!」
リディアは両手に持つ柄のない二刀の光輝く刀で『大魔王』であるソフィの放つ雷に挑む。
逃げずに真っ向からソフィの『魔法』にぶつかっていく、リディアの勇姿をソフィは両の目に焼き付ける。
まさに一切の瞬きを許さず、最後の時までリディアの勇姿を見届けるのであった。
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