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真なる魔王編

51.ソフィVSリディア2

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 そう告げたソフィの身体に次々と異常が起き始める。

 背中から羽が生えて口から大きな牙が出現し、斬られた腕や体は全てが一瞬で再生された。

(つ、遂にあのお姿になられたか……!)

 ラルフは先程までの人間の子供の形態であった時のソフィを相手に、リディアのように圧倒して見せていたが、今のあの悪魔のような姿になったソフィには、あっさりとそれまでの有利さを返されたのだった。

 それ程までに今のソフィは、見た目以上に力量差が変化するのである。

「貴様、人間ではなかったのか……?」

 リディアは先程からずっと驚いている様子であった。

「クックック、我が人間でなければ不服かな?」

(こいつを斬る事に俺は何を躊躇している? コイツを斬る事が取り返しのつかない事だと? 馬鹿馬鹿しい、俺は何を考えているんだ!)

 ――そんな筈はない。

 この時をどれ程待ったと思っているとばかりに、リディアと言う人間はソフィに対して笑みを浮かべるのだった。

「まさか! 貴様が何者でも構わん! そんな事よりも、もっと俺を楽しませろ!」

 そして再度『リディア』は、ソフィの命を奪う為の『抜刀』の構えに入る。

「クックック、よかろう。貴様の『居合』とやらで見事打ち負かしてみせるがよい」

 そう言うと先程と同じくソフィの右手はオーラを宿してリディアに殴りかかっていく。

 しかし先程までの形態と違っている今のソフィのその具現しているオーラの刃は全くの別物となっていた。

(こ、コイツの速度が先程とまるで違う!)

 リディアは胸中でそう呟くが、表情には一切出さずに『抜刀』の構えのままで息を吐く。

「居合……」

 ソフィのオーラを纏った手刀と『リディア』の刀が交差して衝突した。

 互いに力が拮抗しあって、剣士同士の鍔迫り合いに似た形になる。

「ちっ! 斬れぬか……!」

 先程はソフィの『極大魔法』すらも真っ二つに斬り伏せたリディアだったが、ソフィが具現化した『紅いオーラ』に包まれた手をすんなりと斬る事が出来なかった。

「クックック! では、次はこちらの番だな?」

 そう口にしたソフィは空いている左手に魔力を集約させる。

 するとソフィの『魔力回路』から排出された魔力が、魔法詠唱を生み出す『発動羅列』を具現化させて『アレルバレル』の世界にある『ことわり』が刻まれた魔法陣を生み出していく。

 ――次の瞬間、天候が急激に変わり空は雨雲に包まれていくのだった。

 やがて『ことわり』から生み出された魔法陣に、ソフィの『魔力』が吸い込まれていき、その魔法陣が光り輝いたかと思うと高速回転を始めた。

 ――そして一つの『』が発動された。

 ――超越魔法、『邪悪な雷撃フードルエビル』。

 無詠唱で放たれる光速の雷の一撃がリディア目掛けて放たれる。

 リディアの刀はソフィのオーラを纏った右手を防ぐ為に使っていて、空に立ちこめる雨雲から発せられるであろう予測出来る『雷光』の対処を行えない。

『ニビシア』の天才魔法使いといわれていた『ルビア』の魔法など、もはや何の比較にもならないソフィの放った『魔法』による天候からの雷の一撃は、彼の予想通りに天空から一直線にリディアに向かって降り注いでくるのであった。

「チィッ!」

 リディアは仕方なく持っている刀を離して体を翻す。

 突然目の前からリディアが居なくなった事でソフィは力の行き場を失い、前のめりに倒れそうになるが強引に小規模の『魔法』を地面に撃って身体を風圧で後ろへと強引に押し戻す。

 その場に誰も居なくなった場所に、先程のソフィの放った雷光が地面に降り注いで、そのまま一直線に大地を焦がしていく。

 バチバチという音と共に、あっさりと直撃した地は焦土と化してしまうのであった。

 そして呆然と『魔法』の起こした惨劇に意識を向けていた無防備のリディアに、ソフィがオーラを纏った右手で体を貫きに行く。

「これは仕方あるまい」

 ソフィの右手がリディアに突き刺さったかと思われたが、その手応えはなくリディアの体は雲散霧消うんさんむしょうしたかのように消えた。

「消えた?」

空蝉十字斬うつせみじゅうじぎり!」

 完全に姿が見えない状況でリディアの声だけがソフィの耳に届いた。

 次の瞬間、魔王化しているソフィの身体が十字に斬られる。

「ぐ……っ!?」

 その鮮やかな切り口は剣術けんじゅつに心得がある者が見れば、感嘆の声をあげる事だろう。

 ――そして姿を現したリディアの手には、光り輝ひかりかがやく柄のない二刀にとうが握られていた。

「見事だ……! これが貴様の剣技か……」

 流石のソフィも今のリディアの放ったは、予想を上回るダメージを負ったようだった。

(いやはや本当に驚かされますね……。こんな身近に

 ラルフの細い目がいつもよりは少しだけ大きく開かれて、リディアとソフィの戦いを冷静に見届け続けるのであった――。
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