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ギルド対抗戦編
24.最強魔王、初陣
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「ぐぅ、はっ……!」
――ニーアが先にリング上で倒れた。
最後の相打ちに加えてニーアも『魔力』を使いすぎて魔力枯渇を引き起こして限界であったようだ。
審判がムラマサに勝利コールをかけようとしたのだが、その瞬間にムラマサも意識を失ってそのまま倒れて両者ノックダウンとなるのであった。
「むっ!?」
審判がムラマサとニーア両方の意識を確認するが、どちらも意識が戻りそうにない為に、両者引き分けの判断を下した。
これでグランは0勝1分となり、勝ち抜き戦ルールなので大将ソフィを残すのみとなるのであった。
この状況に観戦室を含めて観客席も大いに盛り上がる結果となった。
「負けたけど、今の魔法使いはすげぇよ!」
「ああ! あの冒険者の名前はニーアって言ったか? あの魔法使いは今後に期待だな!」
冒険者ランクCのニーアが多種多様に『魔法』を展開して、格上の冒険者と戦いの末に引き分けた事で感動を呼び、拍手が雨のように降り注いで健闘を称えたのだった。
……
……
……
「うむ、素晴らしい試合でしたな」
ヘルサス伯爵がそう言うとマーベル侯爵も頷き、ニーアに拍手を送るのだった。
「ふぅ……。ニーア君、お疲れ様だ!」
ディラックは今の勝負の結果に満足はしたが、今回も決勝へは進めなかったかと半ば諦めの色を顔に浮かばせていた。
如何に期待を抱くソフィが実力者だとしても、この後に二連戦をしなければならない上に、前回準優勝へと導いた勲章ランクAの『スイレン』が控えているのである。
彼から諦めの声が発せられるのも無理はなかった。
担架を持ってきた救護班が『ニーア』と『ムラマサ』の両者を慎重に担架に乗せて医務室へと運んでいった。
その様子を見届けたソフィは、ゆっくりと歩を進めてリングに上がる。
――そして遂に、対抗戦の盤上にソフィが姿を現すのだった。
『ミラーリ』という魔法使いもソフィに次いでリングに上がってくる。
「あの子供が大将かぁ……。どうやら今のニーアって選手が『グラン』のギルドの本命だったんだろうな」
「ああ、数揃えであの子を大将に持ってきたのだとしたら今回はもう『グラン』は駄目だろうな」
観客席に居る者達は『ニーア』の試合がとてもよかっただけに、とても残念そうに話し始めるのだった。
ディラックやリーネもソフィが強い事を知ってはいるが、次の対戦相手である『ミラーリ』と、冒険者ランクAのスイレンとの二連戦は流石に厳しいと感じていた。
この場に居る全ての者が『リルバーグ』の勝利を疑わなかった。
――この時までは。
「それでは、試合開始!」
審判が合図を開始するが両者は動こうとしない。
勲章ランクBの魔法使い『ミラーリ』選手は、格下のランクE、それもまだ十歳くらいの少年が相手という事で、どう手加減をして怪我を最小限に抑えるかを考えていた為である。
そしてソフィの方は『リマルカ』と同じ魔法使いが相手という事で、期待に胸を膨らませて『ミラーリ』選手に『漏出』を放ったようだが、どうやらこの対戦相手はソフィの期待には応えられなかったようで、静かに溜息を吐いていた。
そしてその後もソフィは手を出さず、一応は相手の攻撃をまともに受けて見ようと考えたようなのだが、一向に『ミラーリ』選手が攻撃をしてこない為に、ソフィは仕方なく口を開いた。
「お主どうしたというのだ? 何を様子を見ているのか分からぬが、早く攻撃をしてもらえないだろうか? お主が納得するまで我に『魔法』を打ち続けてくれて構わぬぞ。こちらからは手を出さぬと約束しよう。そして出来れば『魔力枯渇』でも引き起こして、そのまま退場してもらえると尚助かるのだが……」
「は、はぁ……!?」
遥か格下のランクE、それも十歳くらいの少年に馬鹿にするような言葉を吐かれた事で『ミラーリ』は手加減してやろうという考えが、泡沫と消えるのであった。
「て、てめぇ……! 二度と舐めた口を利けないように痛い目をみせてやるよ!」
――上位魔法、『炎渦爆』。
無詠唱で放たれる上級炎魔法が発動されて、ソフィの周りを瞬く間に炎の渦が迸りソフィを囲むように渦が出来上がっていき、ばちばちと大量の火の粉がソフィに向かって飛んでいく。
その『魔法』はとても十歳の子供が耐えられる物ではないと、その場にいる全員が確信する。
――だが、次の瞬間。
その場にいる者たちの予想は裏切られた。
炎の渦に巻き込まれてから数秒後――。
炎の中心に居る筈のソフィの笑い声が聞こえてきたからであった。
「クックック!」
「な、なんだこの『魔力』は!? ぐっ……!」
『ミラーリ』は炎の『魔法』を受けたソフィが逃げ惑う姿を予測していたが、急に笑い声が聞こえてきた事でソフィに『魔力感知』を行った。
だが、その瞬間に異様な魔力の圧を感じて吐き気を伴いながらゆっくりと後退る。
「残念だが、我にこの程度の魔法は通じぬ」
そう言うと炎の渦に巻き込まれていたソフィが、パチっと指を鳴らすと同時にソフィを包んでいたミラーリの『魔法』が一瞬にして消え去った。
「さあ、どんどんと我に攻撃をするがよいぞ。何度も言うがお主が満足いくまで反撃などせずに受け続けてやろうではないか!」
先程『ミラーリ』が放った『魔法』は、どうやら彼の中での最上位の『魔法』だったようで、これ以上の魔法はない様子であった。
そして何よりその『魔法』がソフィには全くの無傷であった事が、彼に精神的に甚大な衝撃を与えてしまった。
更にはソフィの膨大な魔力の一端を僅かながら感じてしまった『ミラーリ』は、最早攻撃をしようとする意思が消失してしまい、更には敗北を宣言する言葉すら思いつかないようであった。
「ふむ、戦意を喪失してしまったのか? そうであるならばさっさと敗北宣言をしてもらえると助かるのだが……?」
「……」
茫然自失といった様子で固まったままソフィを見る勲章ランクBの『ミラーリ』だが、ソフィの言葉にも反応せずにずっと立っているだけであった。
「仕方あるまい」
――超越魔法、『終焉の炎』。
瞬間、会場は迸る閃光に包まれた。
ソフィの無詠唱で放たれた純至高な『魔力』によって生み出された炎は、先程の『ミラーリ』の『魔法』とは比較にならない程の熱量であり、ソフィの『終焉の炎』は、そのまま『ミラーリ』を包んで一気に燃やし尽くそうとする。
「あっ……! ヒィ!! し、死ぬ!!」
「クックック、安心するがよい。使う魔力を最小限に押し留めている。殺しては失格になるのでな」
轟轟と燃え上がる炎は『ミラーリ』を飲み込み数秒燃えていたが、燃やし尽くす寸前になって炎はあっさりと消えた。
『終焉の炎』をある程度本気で放てば、こんな規模の会場ならば全てを飲み込んで数秒に満たぬ間に完全に消し炭になるが、この形態の全力の一割にも満たぬ魔力だった為に、救護班が直ぐに手当てをすれば命に別状もなく済むであろう。
「クックック。この程度であれば『回復魔法』の必要もあるまい? まぁ火傷くらいは負うだろうが、これも勝負の中での出来事だ。さっさと敗北を認めなかったお主の落ち度だと思って受け入れるがよい」
こうしてリング上には笑みを浮かべたソフィが、勝者として残るのであった。
――ニーアが先にリング上で倒れた。
最後の相打ちに加えてニーアも『魔力』を使いすぎて魔力枯渇を引き起こして限界であったようだ。
審判がムラマサに勝利コールをかけようとしたのだが、その瞬間にムラマサも意識を失ってそのまま倒れて両者ノックダウンとなるのであった。
「むっ!?」
審判がムラマサとニーア両方の意識を確認するが、どちらも意識が戻りそうにない為に、両者引き分けの判断を下した。
これでグランは0勝1分となり、勝ち抜き戦ルールなので大将ソフィを残すのみとなるのであった。
この状況に観戦室を含めて観客席も大いに盛り上がる結果となった。
「負けたけど、今の魔法使いはすげぇよ!」
「ああ! あの冒険者の名前はニーアって言ったか? あの魔法使いは今後に期待だな!」
冒険者ランクCのニーアが多種多様に『魔法』を展開して、格上の冒険者と戦いの末に引き分けた事で感動を呼び、拍手が雨のように降り注いで健闘を称えたのだった。
……
……
……
「うむ、素晴らしい試合でしたな」
ヘルサス伯爵がそう言うとマーベル侯爵も頷き、ニーアに拍手を送るのだった。
「ふぅ……。ニーア君、お疲れ様だ!」
ディラックは今の勝負の結果に満足はしたが、今回も決勝へは進めなかったかと半ば諦めの色を顔に浮かばせていた。
如何に期待を抱くソフィが実力者だとしても、この後に二連戦をしなければならない上に、前回準優勝へと導いた勲章ランクAの『スイレン』が控えているのである。
彼から諦めの声が発せられるのも無理はなかった。
担架を持ってきた救護班が『ニーア』と『ムラマサ』の両者を慎重に担架に乗せて医務室へと運んでいった。
その様子を見届けたソフィは、ゆっくりと歩を進めてリングに上がる。
――そして遂に、対抗戦の盤上にソフィが姿を現すのだった。
『ミラーリ』という魔法使いもソフィに次いでリングに上がってくる。
「あの子供が大将かぁ……。どうやら今のニーアって選手が『グラン』のギルドの本命だったんだろうな」
「ああ、数揃えであの子を大将に持ってきたのだとしたら今回はもう『グラン』は駄目だろうな」
観客席に居る者達は『ニーア』の試合がとてもよかっただけに、とても残念そうに話し始めるのだった。
ディラックやリーネもソフィが強い事を知ってはいるが、次の対戦相手である『ミラーリ』と、冒険者ランクAのスイレンとの二連戦は流石に厳しいと感じていた。
この場に居る全ての者が『リルバーグ』の勝利を疑わなかった。
――この時までは。
「それでは、試合開始!」
審判が合図を開始するが両者は動こうとしない。
勲章ランクBの魔法使い『ミラーリ』選手は、格下のランクE、それもまだ十歳くらいの少年が相手という事で、どう手加減をして怪我を最小限に抑えるかを考えていた為である。
そしてソフィの方は『リマルカ』と同じ魔法使いが相手という事で、期待に胸を膨らませて『ミラーリ』選手に『漏出』を放ったようだが、どうやらこの対戦相手はソフィの期待には応えられなかったようで、静かに溜息を吐いていた。
そしてその後もソフィは手を出さず、一応は相手の攻撃をまともに受けて見ようと考えたようなのだが、一向に『ミラーリ』選手が攻撃をしてこない為に、ソフィは仕方なく口を開いた。
「お主どうしたというのだ? 何を様子を見ているのか分からぬが、早く攻撃をしてもらえないだろうか? お主が納得するまで我に『魔法』を打ち続けてくれて構わぬぞ。こちらからは手を出さぬと約束しよう。そして出来れば『魔力枯渇』でも引き起こして、そのまま退場してもらえると尚助かるのだが……」
「は、はぁ……!?」
遥か格下のランクE、それも十歳くらいの少年に馬鹿にするような言葉を吐かれた事で『ミラーリ』は手加減してやろうという考えが、泡沫と消えるのであった。
「て、てめぇ……! 二度と舐めた口を利けないように痛い目をみせてやるよ!」
――上位魔法、『炎渦爆』。
無詠唱で放たれる上級炎魔法が発動されて、ソフィの周りを瞬く間に炎の渦が迸りソフィを囲むように渦が出来上がっていき、ばちばちと大量の火の粉がソフィに向かって飛んでいく。
その『魔法』はとても十歳の子供が耐えられる物ではないと、その場にいる全員が確信する。
――だが、次の瞬間。
その場にいる者たちの予想は裏切られた。
炎の渦に巻き込まれてから数秒後――。
炎の中心に居る筈のソフィの笑い声が聞こえてきたからであった。
「クックック!」
「な、なんだこの『魔力』は!? ぐっ……!」
『ミラーリ』は炎の『魔法』を受けたソフィが逃げ惑う姿を予測していたが、急に笑い声が聞こえてきた事でソフィに『魔力感知』を行った。
だが、その瞬間に異様な魔力の圧を感じて吐き気を伴いながらゆっくりと後退る。
「残念だが、我にこの程度の魔法は通じぬ」
そう言うと炎の渦に巻き込まれていたソフィが、パチっと指を鳴らすと同時にソフィを包んでいたミラーリの『魔法』が一瞬にして消え去った。
「さあ、どんどんと我に攻撃をするがよいぞ。何度も言うがお主が満足いくまで反撃などせずに受け続けてやろうではないか!」
先程『ミラーリ』が放った『魔法』は、どうやら彼の中での最上位の『魔法』だったようで、これ以上の魔法はない様子であった。
そして何よりその『魔法』がソフィには全くの無傷であった事が、彼に精神的に甚大な衝撃を与えてしまった。
更にはソフィの膨大な魔力の一端を僅かながら感じてしまった『ミラーリ』は、最早攻撃をしようとする意思が消失してしまい、更には敗北を宣言する言葉すら思いつかないようであった。
「ふむ、戦意を喪失してしまったのか? そうであるならばさっさと敗北宣言をしてもらえると助かるのだが……?」
「……」
茫然自失といった様子で固まったままソフィを見る勲章ランクBの『ミラーリ』だが、ソフィの言葉にも反応せずにずっと立っているだけであった。
「仕方あるまい」
――超越魔法、『終焉の炎』。
瞬間、会場は迸る閃光に包まれた。
ソフィの無詠唱で放たれた純至高な『魔力』によって生み出された炎は、先程の『ミラーリ』の『魔法』とは比較にならない程の熱量であり、ソフィの『終焉の炎』は、そのまま『ミラーリ』を包んで一気に燃やし尽くそうとする。
「あっ……! ヒィ!! し、死ぬ!!」
「クックック、安心するがよい。使う魔力を最小限に押し留めている。殺しては失格になるのでな」
轟轟と燃え上がる炎は『ミラーリ』を飲み込み数秒燃えていたが、燃やし尽くす寸前になって炎はあっさりと消えた。
『終焉の炎』をある程度本気で放てば、こんな規模の会場ならば全てを飲み込んで数秒に満たぬ間に完全に消し炭になるが、この形態の全力の一割にも満たぬ魔力だった為に、救護班が直ぐに手当てをすれば命に別状もなく済むであろう。
「クックック。この程度であれば『回復魔法』の必要もあるまい? まぁ火傷くらいは負うだろうが、これも勝負の中での出来事だ。さっさと敗北を認めなかったお主の落ち度だと思って受け入れるがよい」
こうしてリング上には笑みを浮かべたソフィが、勝者として残るのであった。
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