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ギルド対抗戦編

23.グランの対抗戦、開始

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 午後になりAからDブロックの一試合目の全試合が終了した。

 上位二ギルドが決勝へ進める事が出来るルールなので、一試合目で負けたギルドもまだまだ決勝へ行ける好機チャンスはあるが、楽観視は出来なくなったわけである。

 そして午後からはEからHブロックの一試合目が行われる。

 ソフィ達の『グラン』はEブロックの第一試合である為に、一番最初に行われるのだった。

 ――Eブロック第一試合。

 『グラン』 対 『リルバーグ』。

 両ギルドの代表選手がリングに上がり、まもなく試合が開始される。

 『グラン』のギルドの戦う順番は先鋒が『ディーダ』で次いで『ニーア』が出る。

 そして大将が『』という順番である。

 対する『リルバーグ』の選手は、先鋒が『ムラマサ』次いで『ミラリ』そして大将が、勲章ランクAの『スイレン』である。

 ソフィの存在に気づいた観客席にいる者達が、口々に『グラン』の冒険者ギルドの代表選手に子供がいると話し始めた。

「おい、あの子供も冒険者なのか?」

「グランって常に予選で負けてるだよな?」

「おいおい、こりゃあ笑えるぜ! 万年予選落ちだとはいってもよ、まさかあんなガキに頼る程に冒険者が居ないのかよ、全く情けないギルドだよな」

 その声を皮切りに徐々に観客席から『グラン』のギルドを馬鹿にするような、嘲る笑い声をあげる輩も現れ始める。

(くそ、ムカツクわね! 試合が始まったらソフィの実力が分かるわよ!)

 同じ観客席にいるリーネはそんな輩達を睨みつけながら、祈る様にソフィを応援する。

「それではこれよりEブロック第一試合を始めます。互いに一礼をして先鋒以外は、リングを降りて下さい」

 審判に従って両ギルドの選手は、小さく礼をして先鋒以外はリングを降りて行った。

「それでは第一試合、始め!」

 先鋒のディーダの相手はムラマサといい、ディーダと同じく剣士であった。

 勲章ランクはディーダよりも格上のである。

 開幕に先手必勝とばかりにディーダが切り込んでいくが、ムラマサ選手はあっさりとその剣をいなしてみせる。

 続けてディーダが剣を繰り出すもムラマサは、剣ではじきながら自分からは攻撃をせずに、まるで観察するようにディーダの剣裁きを注視していた。

 縦、横、斜めとあらゆる方向からディーダは仕掛けて隙を探すが、ムラマサはその攻撃を全て剣で受け止めている。

 そして何度目かの仕合の末、遂にムラマサは見切ったとばかりに、徐々にではあるが反撃行動に出始める。

 ディーダが上段から振り下ろす剣に合わせてムラマサは、下からディーダの剣を巻き上げた。

 キィンッ!という音と共にディーダの剣は場外へ飛んでいき、ムラマサはそのまま一歩前に踏み込んでディーダの首元付近で剣を止めた。

 ――ムラマサが観察を終えて反撃行動に出て僅か数秒の事であった。

「ま、参った」

 ディーダは戦っていて実力差を理解したのか、あっさりと負けを宣言したのだった。

「勝者、ムラマサ!」

 ムラマサはディーダに一礼して戻っていった。

 ディーダもそれを見て一礼した後、リングから降りてニーアとソフィに謝罪を行ってみせる。

「す、すまない、全く相手にならなかった……」

 戦力値はDクラスにしてはかなり上位に入るディーダだが、流石に勲章ランクBのムラマサと比較しては分が悪すぎたようだ。

「気にしないでくれ、このまま終わらせたりしない!」

 ニーアがディーダの肩を叩き、仇を取ってくると勇んでリングに上がっていった。

 ……
 ……
 ……

「これはスイレンが出る幕もなさそうですね」

 『リルバーグ』のギルド長『シャル』は、少しばかり残念そうな声をあげて、ヘルサス伯爵に声を掛ける。

「少しでもスイレンが活躍するところを見たかったが、まぁ仕方あるまい」

 ディラックは後ろの席でシャルとヘルサスの会話を聞いていたが、何も言い返せず悔しそうに黙り込むしかなかった。

(ニーア君、ソフィ君……、頼むぞ!)

 そう言ってディラックは、手を合わせて祈るのだった。

「それでは、試合始め!」

 第二戦目が始まり、法使いのニーアは開幕で魔法を放つ。

 『炎よ、何人たりともよせつけぬ盾を作り、我を守り給え!』 

 ――中位魔法、『炎の盾ファイアー・シールド』。

 ニーアは相手に近寄られる前に炎の壁を作り、安全を確保した上万全の態勢を作って攻撃を仕掛けるつもりであった。

「むッ……!」

 ムラマサは踏み込もうとしていた足を止めて火を警戒し始めた。

 どうやらニーアの『魔力』はムラマサに警戒をさせる程だったようだ。

 ムラマサはそう容易くニーアの『魔法』を突破できないとみるや、すぐさま行動を変える。

 シールド系魔法は相手の攻撃を防ぐ事が出来るが、防ぐ度にシールドは削られていきやがては消失する。

 その他にもシールドを展開したまま何もせずとも術者の魔力は減っていくので、無理に危険を冒さずとも相手の魔力切れを狙って一旦離れるというのも、魔法使いと戦う上での定石である。

 ムラマサも簡単には崩せないとみて、ニーアから離れる事で相手の魔力切れを狙うようだった。

 しかしそれを読んでいたであろうニーアは、さらに盾を張った状態から詠唱を開始する。

 『紅蓮の炎よ、我を阻む敵を燃やす槍となって穿て』

 ――中位魔法、『炎槍ファイアー・ランス』。

 ニーアの頭上に炎の槍が出現し、ムラマサに向かって一直線に飛んでいく。

「ちぃ……っ!」

 剣で弾こうとするが勢いのついた炎の槍は鋭く、ムラマサは強制的に回避行動をとらされるのであった。

 バランスを崩したところに火の玉が次々と出現して、ムラマサの逃げ道を塞いでいく。

 『敵を焼く赤、火の球弾、敵を焼き尽くせ!』

 ――中位魔法、『火弾ファイアー・ブレット』。

 威力が高い炎槍で回避させた所を狙って数の多い火弾で、少しずつダメージを与えていき自らは炎の盾によって、相手に攻撃をさせずに完全に試合をコントロールし始めるニーアであった。

「はははは、やるではないか。魔法使いはそうではなくてはな!」

 ソフィはそれこそが魔法を使う者の戦い方だと、ニーアを褒め称える。

 試合が優勢なのは間違いはない、間違いはないのだが魔力は無限ではない。

 そうでなくても炎の盾は常に張り続けられているので、その間も魔力はどんどん減っていく。

 ニーアとしては一刻も早く勝負を決めなくては行けない状況なので、モタモタはしていられなかった。

 そしてその焦りが、試合を徐々に不利に導いていくのであった。

「はあはあ……、もう少し!」

 ――中位魔法、『火弾ファイアー・ブレット』。

 ムラマサもまだ耐えてはいるが、練度の高い火の攻撃を延々と受け続けておりダメージを負っている。

 両者ともに我慢比べの戦いとなるが、ムラマサはまだ相手を観察する余裕があるのに対して、盾を張り続けて何もせずとも『魔力』が減っていくニーアの方が分が悪かった。

 盾を展開しながらの魔法攻撃をする程の魔力がなくなる恐れを感じて、攻撃のために炎の盾を解除したニーアだが、

 試合が開始した直後であれば、この判断をしなかったであろうニーアだが、もう少しで倒せるという自信と焦りが綯交ぜになってしまい、ムラマサに好機を与えてしまったのだった。

 ムラマサも連戦をしており残りの体力が少ない為に、フェイントなど一切なく真正面から切り込んでいく。

「はああっ!!」

 ニーアは無数の火弾を、ムラマサは横なぎの一撃を放つ。

 ……
 ……
 ……

 ――そしてそこで遂に、この試合の決着が着くのであった。
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