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プロローグ
01.最強魔王の異世界転移
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――魔王城の最深部。
このアレルバレルの地に最強の魔王が君臨していた。
数千年もの間、幾度となく生まれ現れる勇者たちは、その魔王によって返り討ちにされており、人間たちは魔王ソフィの討伐を諦め始めていた。
しかし当代の勇者マリスとその仲間達が立ち上がり、今だかつてない快進撃を続けて魔王城の魔物や魔族を屠り、遂に魔王城の最深部に居る魔王の元へ辿り着くのであった。
「覚悟しろ、魔王ソフィ! 貴様の圧政も今日で終わりだ!」
「ほう……? 我の行う統治を圧政と呼ぶか? 不甲斐ないお主ら人間の代わりに我が仕方なく行ってやっておるというのに、一方的に我の行いに文句をつけるとは本当に困った者共だな。もう少し世の中の事を勉強し直してから、再び出直してこいと言いたいところだが、お主らなりに抱えておる思いを尊重してこの魔王城の最深部にまで来た事に敬意を表して、この大魔王ソフィが相手になってやろう。
……
……
……
どれほどの時間が経っただろうか。
勇者達は魔王ソフィに片手で相手をされているにも拘らず、全く大魔王ソフィの相手になっていなかった。
「まぁそれでも過去の勇者達に比べればよくやったほうか」
勇者マリス達の心を折らぬように、言葉を選びながら大魔王ソフィは告げる。
すでに目の前の勇者たちに対して戦う前にあった意欲は消沈してしまい、ソフィは片手で相手をしている上でそのまた更に手加減をし始めたのだった――。
勇者との戦いが始まってから『大魔王』ソフィは魔法の一つも使ってはいない。
この大魔王ソフィは全ての戦闘水準が高く、魔族の中でも最強と称されている。
――その中でも彼の得意分野が『魔法』なのであった。
本気になれば大陸どころか世界その物を消滅させる事も可能だと言われており、勇者達もその噂を幼少期から聞かされて育ったために、大魔王ソフィの『魔法』に戦々恐々としながら戦っていた。
しかしどうやら勇者マリスとそのパーティの仲間達に対して、大魔王ソフィはその魔法を使うまでもないと判断しているようで、たった一度も使用をされてはいないという屈辱的な現実の前に、マリスは唇から血が出る程に噛みしめて情けなさに涙が出そうになっていた。
「クッ……! ど、どうしてこんな化け物がいるんだよ……!」
――光の勇者、歴代最強、精霊に愛された勇者など、いまだかつてない程に期待を寄せられていたマリスだが、そんな彼であっても目の前に居る大魔王ソフィには全く歯が立たなかった。
「もう終わりでよいな? 我の元まで辿り着いた功績を讃えてお主らを殺さずにおいてやるから、怪我を負わぬ内に立ち去るがよいぞ」
しかし魔王ソフィが勇者たちに完全に興味を失い、背中を向けて椅子に座ろうとした時だった。
勇者パーティの一人で賢者である『リルトマーカ』という人間が、懐から不思議な玉を懐から取り出して魔王に向けて翳し始めるのだった。
「り、リルト! その根源の玉は絶対に使っちゃ行けない! 何が起こるか分からないんだぞ! 下手をすれば僕たちが危ない」
「ま、マリス……! もうそんな事を言ってる場合じゃないよ。ここで僕たちが魔王に敗北したままで城に戻れば、僕達を希望にしていた民達は絶望のどん底に落とされてしまい、もう二度と立ち上がれなくなってしまうかもしれない! 僕たちは民達の希望なんだ、退く事は許されない。もう僕達はこの玉にかけるしかないんだ」
「そ、そうだよマリス。俺達に失敗は許されない、お、俺もここはリルトを支持するぜ」
「そ、そうね……。 このままで終われない、リルトやっちゃえ!」
根源の玉は使用者のパーティ全員の魔力を全て吸い取り、玉が砕け散る代わりに一度だけ不思議な奇跡を起こすといわれる宝玉である。
その効果は未知数で使用者全員が死んだり、時間が遡ったりするといった一説もあるのだが、現実に使用したものは誰もおらず、現在勇者パーティの賢者リルトマーカが勝手に師と崇めているかつての勇者のパーティに居たといわれる大賢者ミラに、大魔王ソフィとの戦いで使えと渡されたマジックアイテム『根源の玉』を使う意思を固めたのであった。
――根源の玉は聞いていた伝承の通りに発動が確認された。
そして勇者パーティ全員の魔力を糧に、その効果を発動させた後に砕け散るのであった。
根源の玉は確かに亀裂が入った後に割れて砕けたが、数秒間程は何も起きなかった。
マリスやリルト達はやはり何も起きないのかと諦観するような目を浮かべ始めたが、まさにその時であった。
――まばゆい多くの色鮮やかな光が、大魔王ソフィを対象に辺りを包み込み始めるのだった。
「くっ……! な、何だ、何が起きているんだ!」
勇者たちは目を開けていられず、目を覆い隠しながら光がおさまるのを待った。
やがて光がおさまり目を開けると、先程まで椅子に座ろうとしていた魔王の姿が見当たらない。
「「ま、魔王が、消えた!?」」
……
……
……
「むっ……! なんだここは?」
魔王が目を覚ました所は緑に覆われた森の中であったが、こんな森には大魔王ソフィは見覚えがない。
「我がまだこの『アレルバレル』の世界を把握しきれていない場所があったのだろうか? しかしそれにしてもなぜ我はここで目が覚めたのだろうか」
勇者パーティの一人が使った不思議な玉が光った瞬間に意識は混濁し、気が付けばここにいたのである。
「ふむ……。まぁよいか。ひとまず魔王城まで行けば何か分かるだろう」
そう独り言つ魔王は、魔力回路に魔力を通して呪文を唱える準備を始める。
――『高等移動呪文』。
しかし、何も起こらなかった。
「……何? 呪文が発動しないだと?」
あの玉に魔力を吸い取られたのかと思い、ソフィは魔力をあまり消費しない自身の魔力を測る為の計測魔法を選んで、魔力を調べ確かめてみる事にするのであった。
「『開示』」
『魔力値985/999』。
「む? しっかりと使えるではないか」
目が覚めると自分が見た事がない場所で自分の城に戻ろうにも、魔法が発動しない為にだんだんと自分は夢の中にいるのではないかと思い始めるのだった。
仕方なくひとまずソフィは、森の中を歩き始める事にした。
木には美味しそうな実が実っており花々も美しく、見た事もない程の見事な風景が広がっていた。
「うむ……。やはり我はこんな場所は知らぬな。このような美しい場所があるのをこの我が知らぬというのはやはりおかしい」
『アレルバレル』の世界の魔族達の居る大陸は『魔界』と言われており、東西南北に多く大陸がある為に相当に広い事は分かっているが、それでもソフィは数千年に渡ってこの世界で統治を続けてきた為に、この世界でソフィが知らない場所はない筈である。
では『魔界』ではなく人間達の住む大陸『人間界』に先程の勇者達の手によって飛ばされたのだろうか? しかし人間界であっても魔界と変わらず地理は調べ尽くしている。
勇者達はソフィの政治を圧政と呼んでいたが、ソフィは人間達の為に住みやすい環境作りを行ってきていた。
魔物達が極力人間を襲わないように命令を出してまわり、指示を出す為に彼自身が出向いて人間界のあらゆる場所を見てきたのである。
この世界を熟知している彼にとって、この世界に今更未開の地などがあるわけがないと思いながらもソフィは、物珍しそうに森の中を歩き続けるのであった。
……
――どれくらい歩いたのだろうか。
小腹がすき始めて実っている果実に手を伸ばそうとしたその時であった。
草むらからガサガサと大きな音を立てながら、馬鹿でかい熊がソフィの前に姿を現したのだった。
このアレルバレルの地に最強の魔王が君臨していた。
数千年もの間、幾度となく生まれ現れる勇者たちは、その魔王によって返り討ちにされており、人間たちは魔王ソフィの討伐を諦め始めていた。
しかし当代の勇者マリスとその仲間達が立ち上がり、今だかつてない快進撃を続けて魔王城の魔物や魔族を屠り、遂に魔王城の最深部に居る魔王の元へ辿り着くのであった。
「覚悟しろ、魔王ソフィ! 貴様の圧政も今日で終わりだ!」
「ほう……? 我の行う統治を圧政と呼ぶか? 不甲斐ないお主ら人間の代わりに我が仕方なく行ってやっておるというのに、一方的に我の行いに文句をつけるとは本当に困った者共だな。もう少し世の中の事を勉強し直してから、再び出直してこいと言いたいところだが、お主らなりに抱えておる思いを尊重してこの魔王城の最深部にまで来た事に敬意を表して、この大魔王ソフィが相手になってやろう。
……
……
……
どれほどの時間が経っただろうか。
勇者達は魔王ソフィに片手で相手をされているにも拘らず、全く大魔王ソフィの相手になっていなかった。
「まぁそれでも過去の勇者達に比べればよくやったほうか」
勇者マリス達の心を折らぬように、言葉を選びながら大魔王ソフィは告げる。
すでに目の前の勇者たちに対して戦う前にあった意欲は消沈してしまい、ソフィは片手で相手をしている上でそのまた更に手加減をし始めたのだった――。
勇者との戦いが始まってから『大魔王』ソフィは魔法の一つも使ってはいない。
この大魔王ソフィは全ての戦闘水準が高く、魔族の中でも最強と称されている。
――その中でも彼の得意分野が『魔法』なのであった。
本気になれば大陸どころか世界その物を消滅させる事も可能だと言われており、勇者達もその噂を幼少期から聞かされて育ったために、大魔王ソフィの『魔法』に戦々恐々としながら戦っていた。
しかしどうやら勇者マリスとそのパーティの仲間達に対して、大魔王ソフィはその魔法を使うまでもないと判断しているようで、たった一度も使用をされてはいないという屈辱的な現実の前に、マリスは唇から血が出る程に噛みしめて情けなさに涙が出そうになっていた。
「クッ……! ど、どうしてこんな化け物がいるんだよ……!」
――光の勇者、歴代最強、精霊に愛された勇者など、いまだかつてない程に期待を寄せられていたマリスだが、そんな彼であっても目の前に居る大魔王ソフィには全く歯が立たなかった。
「もう終わりでよいな? 我の元まで辿り着いた功績を讃えてお主らを殺さずにおいてやるから、怪我を負わぬ内に立ち去るがよいぞ」
しかし魔王ソフィが勇者たちに完全に興味を失い、背中を向けて椅子に座ろうとした時だった。
勇者パーティの一人で賢者である『リルトマーカ』という人間が、懐から不思議な玉を懐から取り出して魔王に向けて翳し始めるのだった。
「り、リルト! その根源の玉は絶対に使っちゃ行けない! 何が起こるか分からないんだぞ! 下手をすれば僕たちが危ない」
「ま、マリス……! もうそんな事を言ってる場合じゃないよ。ここで僕たちが魔王に敗北したままで城に戻れば、僕達を希望にしていた民達は絶望のどん底に落とされてしまい、もう二度と立ち上がれなくなってしまうかもしれない! 僕たちは民達の希望なんだ、退く事は許されない。もう僕達はこの玉にかけるしかないんだ」
「そ、そうだよマリス。俺達に失敗は許されない、お、俺もここはリルトを支持するぜ」
「そ、そうね……。 このままで終われない、リルトやっちゃえ!」
根源の玉は使用者のパーティ全員の魔力を全て吸い取り、玉が砕け散る代わりに一度だけ不思議な奇跡を起こすといわれる宝玉である。
その効果は未知数で使用者全員が死んだり、時間が遡ったりするといった一説もあるのだが、現実に使用したものは誰もおらず、現在勇者パーティの賢者リルトマーカが勝手に師と崇めているかつての勇者のパーティに居たといわれる大賢者ミラに、大魔王ソフィとの戦いで使えと渡されたマジックアイテム『根源の玉』を使う意思を固めたのであった。
――根源の玉は聞いていた伝承の通りに発動が確認された。
そして勇者パーティ全員の魔力を糧に、その効果を発動させた後に砕け散るのであった。
根源の玉は確かに亀裂が入った後に割れて砕けたが、数秒間程は何も起きなかった。
マリスやリルト達はやはり何も起きないのかと諦観するような目を浮かべ始めたが、まさにその時であった。
――まばゆい多くの色鮮やかな光が、大魔王ソフィを対象に辺りを包み込み始めるのだった。
「くっ……! な、何だ、何が起きているんだ!」
勇者たちは目を開けていられず、目を覆い隠しながら光がおさまるのを待った。
やがて光がおさまり目を開けると、先程まで椅子に座ろうとしていた魔王の姿が見当たらない。
「「ま、魔王が、消えた!?」」
……
……
……
「むっ……! なんだここは?」
魔王が目を覚ました所は緑に覆われた森の中であったが、こんな森には大魔王ソフィは見覚えがない。
「我がまだこの『アレルバレル』の世界を把握しきれていない場所があったのだろうか? しかしそれにしてもなぜ我はここで目が覚めたのだろうか」
勇者パーティの一人が使った不思議な玉が光った瞬間に意識は混濁し、気が付けばここにいたのである。
「ふむ……。まぁよいか。ひとまず魔王城まで行けば何か分かるだろう」
そう独り言つ魔王は、魔力回路に魔力を通して呪文を唱える準備を始める。
――『高等移動呪文』。
しかし、何も起こらなかった。
「……何? 呪文が発動しないだと?」
あの玉に魔力を吸い取られたのかと思い、ソフィは魔力をあまり消費しない自身の魔力を測る為の計測魔法を選んで、魔力を調べ確かめてみる事にするのであった。
「『開示』」
『魔力値985/999』。
「む? しっかりと使えるではないか」
目が覚めると自分が見た事がない場所で自分の城に戻ろうにも、魔法が発動しない為にだんだんと自分は夢の中にいるのではないかと思い始めるのだった。
仕方なくひとまずソフィは、森の中を歩き始める事にした。
木には美味しそうな実が実っており花々も美しく、見た事もない程の見事な風景が広がっていた。
「うむ……。やはり我はこんな場所は知らぬな。このような美しい場所があるのをこの我が知らぬというのはやはりおかしい」
『アレルバレル』の世界の魔族達の居る大陸は『魔界』と言われており、東西南北に多く大陸がある為に相当に広い事は分かっているが、それでもソフィは数千年に渡ってこの世界で統治を続けてきた為に、この世界でソフィが知らない場所はない筈である。
では『魔界』ではなく人間達の住む大陸『人間界』に先程の勇者達の手によって飛ばされたのだろうか? しかし人間界であっても魔界と変わらず地理は調べ尽くしている。
勇者達はソフィの政治を圧政と呼んでいたが、ソフィは人間達の為に住みやすい環境作りを行ってきていた。
魔物達が極力人間を襲わないように命令を出してまわり、指示を出す為に彼自身が出向いて人間界のあらゆる場所を見てきたのである。
この世界を熟知している彼にとって、この世界に今更未開の地などがあるわけがないと思いながらもソフィは、物珍しそうに森の中を歩き続けるのであった。
……
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小腹がすき始めて実っている果実に手を伸ばそうとしたその時であった。
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