166 / 200
第三章 魔族と人間と
第165話
しおりを挟む
そして集まった全ての人間に一回目の食事がいき渡った後、彼らの今後についてゼバスと話し合うことになった。
「君達はこれからこの国のピースって街で生活してもらうよ。」
「住居まで提供していただけるのか!?」
「うん、まぁ君達が来ることは予想してたし……受け入れるならこっちもそれなりに準備は整えておかないとね。」
そう、この数ヶ月間で彼等のような難民に備えるため、土地を切り開き新たな街を作ったのだ。
街の名前はピース。ありきたりな平和という意味を込めてそう名付けた。
「ちなみにだけど……その街には魔族も住んでるからね?先に住んでる彼等は、君達人間に友好的だから安心していいよ。」
街として機能させるには人間の彼等を住まわせる前に、あらかじめ何人か魔族が必要だった。
突然別の街に移り住んで、その街を機能させていくなんてことは今の彼等には無理だろうからな。
「それじゃ、あっちに着いたらノアと……ピースの街長の指示に従ってね。」
アベルが空間を大きく切り裂くと、ノアの先導のもと人間達がその中へと入っていく。
そして最後にゼバスが入ろうとしたとき、アベルが声をかけた。
「あ!!そうそう、ゼバス……だっけ?君にはいろいろと聞きたいことがあるから、また後でね?」
「承りました。」
ゼバスはこちらに深く一礼すると空間の切れ目のなかに入っていった。
「ふぅ~……疲れたぁぁぁぁ~っ!!」
全てをやり遂げたアベルはそう叫びながら大きく背伸びをした。
「お疲れさん、ノノも疲れたろ?」
「えへへ……ちょっと疲れちゃいました。」
二人の苦労を労う。
「にしても嬉しかったなぁ~……。」
さっきまで人間達が座っていた椅子に腰かけてアベルはポツリと言った。
「ボクらが作った物をあんなに美味しい美味しい……って食べてくれるんだね。」
どうやら。アベルは自分達が作った物をあんな風に必死になって美味しい……美味しいと食べてくれたことに嬉しさを感じているようだ。
「あぁいう風に美味しいって食べてくれるのが、料理人冥利に尽きるってことだ。」
よくテレビ番組とかであるような「~~が~~で……」とかそういう感想はいらない。
ただ、「美味しい。」と一言言われるだけで十分なのだ。
「ねぇミノル……。」
「ん?どうした?」
何かを言いたげに私の事をじっと見つめてきたアベルは、次の瞬間ケロリとした表情を浮かべながら言った。
「ボクお腹すいちゃったぁ☆」
なにか大事な事を言われるかと思いきや、そっちか。とずっこけそうになったが、それをグッとこらえ私は苦笑いを浮かべながら言った。
「なら帰って飯にするか。二人は疲れてるだろうから今日は私が作ろう。」
「あはっ♪やった!!」
ノアにはお弁当を作ろうか。多分今頃あっちはあっちで相当忙しいと思うからな。
人々への住居の割り当てや仕事の割り当て等々、あっちではやることが山積みだろう。
「さ、それじゃボクらも行こっ!!早く早く~!!」
「わかったから引っ張るなって!!」
アベルに服を掴まれてズルズルとなすすべなく引き摺られ、空間の切れ目へと連行される。
久しぶりの引き摺られるという感覚に最早懐かしさまで感じてしまったのだった。
◇
そして日が沈み……ピースでの作業も一段落ついたとノアから連絡があったので、ゼバスを招いて今の人間の国で何が起きているのかを聞いてみることになった。
「先に改めて深く……礼を告げさせていただきたい。本当に感謝している。」
皆が集まるやいなや、ゼバスは立ち上がり私達に向かって深く御辞儀をしてお礼の言葉を述べてきた。
「いいのいいの。まぁそこに座ってよ。皆座らないと話が進まないからさ。」
アベルに促され、ゼバスが席に着くと早速アベルが彼に質問を始めた。
「それじゃあ早速……幾つか質問をさせてもらうけど、先に答えられない事とかがあったら言って?」
「隠し事はありませぬ。何なりと……。」
「わかった。それじゃあ……ゼバス、君が率いてたあの人間達は何処から連れてきたの?」
「王都から離れたところにある村や街から連れて参りました。」
「その村や街にはまだ人は残ってる?」
「はい。長距離の移動が出来ない者や魔族を恐れて着いてこなかった者が残っております。」
ふむ、なるほど。じゃあ次にやることは大方決まったな。
私が納得して頷いていると、アベルが次の質問をしていいのか?と視線をこちらに向けてくる。私はコクリとそれに頷いた。
「わかった。じゃあ次ね、王都では今何が起こってるの?」
「王都では……食料を奪い合い貴族達と平民達とが対立しております。シルヴェスター国王代理の行方もわからなくなり、まさに無法地帯と化しております。」
「シルヴェスターの行方がわからない?」
「はい。ノア殿のホムンクルスを大量に産み出したあとから行方がわからなくなっております。」
それはちょっと気がかりだな……。だが、王都が無法地帯となっているのなら……好機は今しかないか。
私はゼバスから引き出した情報を元に次の行動を頭のなかで決めるのだった。
「君達はこれからこの国のピースって街で生活してもらうよ。」
「住居まで提供していただけるのか!?」
「うん、まぁ君達が来ることは予想してたし……受け入れるならこっちもそれなりに準備は整えておかないとね。」
そう、この数ヶ月間で彼等のような難民に備えるため、土地を切り開き新たな街を作ったのだ。
街の名前はピース。ありきたりな平和という意味を込めてそう名付けた。
「ちなみにだけど……その街には魔族も住んでるからね?先に住んでる彼等は、君達人間に友好的だから安心していいよ。」
街として機能させるには人間の彼等を住まわせる前に、あらかじめ何人か魔族が必要だった。
突然別の街に移り住んで、その街を機能させていくなんてことは今の彼等には無理だろうからな。
「それじゃ、あっちに着いたらノアと……ピースの街長の指示に従ってね。」
アベルが空間を大きく切り裂くと、ノアの先導のもと人間達がその中へと入っていく。
そして最後にゼバスが入ろうとしたとき、アベルが声をかけた。
「あ!!そうそう、ゼバス……だっけ?君にはいろいろと聞きたいことがあるから、また後でね?」
「承りました。」
ゼバスはこちらに深く一礼すると空間の切れ目のなかに入っていった。
「ふぅ~……疲れたぁぁぁぁ~っ!!」
全てをやり遂げたアベルはそう叫びながら大きく背伸びをした。
「お疲れさん、ノノも疲れたろ?」
「えへへ……ちょっと疲れちゃいました。」
二人の苦労を労う。
「にしても嬉しかったなぁ~……。」
さっきまで人間達が座っていた椅子に腰かけてアベルはポツリと言った。
「ボクらが作った物をあんなに美味しい美味しい……って食べてくれるんだね。」
どうやら。アベルは自分達が作った物をあんな風に必死になって美味しい……美味しいと食べてくれたことに嬉しさを感じているようだ。
「あぁいう風に美味しいって食べてくれるのが、料理人冥利に尽きるってことだ。」
よくテレビ番組とかであるような「~~が~~で……」とかそういう感想はいらない。
ただ、「美味しい。」と一言言われるだけで十分なのだ。
「ねぇミノル……。」
「ん?どうした?」
何かを言いたげに私の事をじっと見つめてきたアベルは、次の瞬間ケロリとした表情を浮かべながら言った。
「ボクお腹すいちゃったぁ☆」
なにか大事な事を言われるかと思いきや、そっちか。とずっこけそうになったが、それをグッとこらえ私は苦笑いを浮かべながら言った。
「なら帰って飯にするか。二人は疲れてるだろうから今日は私が作ろう。」
「あはっ♪やった!!」
ノアにはお弁当を作ろうか。多分今頃あっちはあっちで相当忙しいと思うからな。
人々への住居の割り当てや仕事の割り当て等々、あっちではやることが山積みだろう。
「さ、それじゃボクらも行こっ!!早く早く~!!」
「わかったから引っ張るなって!!」
アベルに服を掴まれてズルズルとなすすべなく引き摺られ、空間の切れ目へと連行される。
久しぶりの引き摺られるという感覚に最早懐かしさまで感じてしまったのだった。
◇
そして日が沈み……ピースでの作業も一段落ついたとノアから連絡があったので、ゼバスを招いて今の人間の国で何が起きているのかを聞いてみることになった。
「先に改めて深く……礼を告げさせていただきたい。本当に感謝している。」
皆が集まるやいなや、ゼバスは立ち上がり私達に向かって深く御辞儀をしてお礼の言葉を述べてきた。
「いいのいいの。まぁそこに座ってよ。皆座らないと話が進まないからさ。」
アベルに促され、ゼバスが席に着くと早速アベルが彼に質問を始めた。
「それじゃあ早速……幾つか質問をさせてもらうけど、先に答えられない事とかがあったら言って?」
「隠し事はありませぬ。何なりと……。」
「わかった。それじゃあ……ゼバス、君が率いてたあの人間達は何処から連れてきたの?」
「王都から離れたところにある村や街から連れて参りました。」
「その村や街にはまだ人は残ってる?」
「はい。長距離の移動が出来ない者や魔族を恐れて着いてこなかった者が残っております。」
ふむ、なるほど。じゃあ次にやることは大方決まったな。
私が納得して頷いていると、アベルが次の質問をしていいのか?と視線をこちらに向けてくる。私はコクリとそれに頷いた。
「わかった。じゃあ次ね、王都では今何が起こってるの?」
「王都では……食料を奪い合い貴族達と平民達とが対立しております。シルヴェスター国王代理の行方もわからなくなり、まさに無法地帯と化しております。」
「シルヴェスターの行方がわからない?」
「はい。ノア殿のホムンクルスを大量に産み出したあとから行方がわからなくなっております。」
それはちょっと気がかりだな……。だが、王都が無法地帯となっているのなら……好機は今しかないか。
私はゼバスから引き出した情報を元に次の行動を頭のなかで決めるのだった。
0
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる