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第三章 魔族と人間と
第158話
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さて、ホムンクルスの核もなんとか復元できたことだし……いよいよ彼女達を目覚めさせるとするか。
だが、その前に……彼女達に流れているシルヴェスターの魔力を全て抜き取らないといけない。
私は彼女達の頭に手を置き、ポツリと呟いた。
「抽出……魔力。」
するとみるみるうちに彼女達からどす黒い魔力が抜き出されていき、私の手の内に収まっていく。
「なんとも不気味な色だな。」
そして全ての魔力が私の手に集まると、私はそれを握り潰して消し去った。こんな忌々しいものは必要ないからな。
「さて、これで私の魔力を流し込めば良いんだよな。」
今度は取り出すのではなく、私の魔力を流し込む。カミルいわく、魔力が産み出されるのは心臓かららしい。だから心臓を意識すると、血液が流れるように魔力の流れを感じる。
「これを流し込む……。」
私の手を通して、少しずつ彼女達に魔力を供給する。魔力を流し込んでいると私の体に異変が現れた。
「うっ……目眩がする。」
この症状は魔力切れと呼ばれる症状で、体内の魔力が少なくなると起こる症状らしい。
「もう少し……いけるか。」
無理はしないように限界を見極めて彼女達に魔力を流し込む。
「ふぅ……少し休憩だ。」
少し休憩を挟み、魔力を回復させ、また注ぐ。これを繰り返していると……。
「ん?魔力が流し込めなくなったな。」
ある時を境に私の魔力を受け付けなくなった。もう満タンだと言うことなのだろうか?
「なら……後はこいつをはめ込むだけか。」
私はインベントリからホムンクルスの核を取り出した。一応こっちからもシルヴェスターの魔力らしきものは抜き取ってある。
「……良し、いくぞ。」
意を決して、私は彼女達の胸にホムンクルスの核を埋め込んだ。
すると……
「「「…………!!」」」
一斉に彼女達が目を開き、むくりとベッドから起き上がる。そして私の方を見ると、口を開いた。
「魔力の一致を確認。主として認識します。どうぞ、ご命令を。」
彼女達は私を主と認めると、一斉に私の前に跪いた。
どうやら、成功したようだな。
さて、命令を……とも言われてもな。どうしたものかな。少し悩んだ末、最初の命令を私は下した。
「まず第一に誰も傷つけないこと。ただ、敵対してきた者に関しては反撃を許可する。でもむやみやたらに殺さないこと。」
「「「了解しました。」」」
これで自発的に誰かを傷付けることはないだろう。一先ずはこれで大丈夫……。
「後はカミルの判断に委ねるか。」
そして私は彼女達を連れてカミルの部屋へと向かう。中にいたカミルに状況を説明すると……
「ふむ、なるほどのぉ。つまり、こやつらをどうするか……ということじゃな?」
「そういうことだ。生憎料理の手伝いはノノ一人で間に合ってるし……私が命令することなんて特にないし。」
「ならば、この城の管理でも任せようかの。今の今まで妾が趣味でやっていた掃除とかも任せてもよいのかもしれん。」
「それはありだな。」
私は彼女達にこの城のメイドとして働くように命令を出した。すると、彼女達はすぐさま掃除に洗濯等々、料理以外の様々な家事をこなし始めた。
「にしても良く考えてみれば、あやつらも悲しい存在じゃな。」
命令通りに事をこなす彼女達を見てカミルはポツリとこぼした。
「ん?どういうことだ?」
「ミノルは何も思わぬか?あやつらは自我を持っておらぬ。故に感情と言うものが何もない。つまりは誰かに使い潰されるために生まれてきた存在じゃ。」
確かに……な。まずホムンクルスが生まれた原因が戦争のための戦力増強のためだからな。始めから使い潰されることを前提として生まれてきていると言っても過言ではない。
「どうにかしてあやつらに自我……いや、感情というものを持たせてやれたら良いのじゃがの~。」
「う~ん、それはまた後で何かで調べてみないとわかんないな。」
まずホムンクルスに関する文献が少なすぎるのだ。私が調べた中では彼女達に自我を持たせる方法は書いてなかった。
「でも……暮らしていくうちに彼女達について何か分かってくるんじゃないか?」
「ふむ、そういうものかのぉ~。」
「例えばカミルとかが積極的に話しかけたりすれば、何か変化が現れるんじゃないか?」
あくまでも憶測の域に過ぎない話だけどな。
「まぁ努力してみるのじゃ。」
そんなことをカミルと話していると、城の中庭の方から声が聞こえてきた。
「うわ!!みてみてノアが三人もいる!!」
「う~……見た目が本当に同じだから否定できないけど、あの子達は私とはまた別物だよアベル!!」
おっと……アベルとノアが来たか。ということはもう食事の時間だったか。
どうやら彼女達を復活させている間にだいぶ時間が経ってしまっていたらしい。
「さてさて、今日も張り切って腕を振るうとするか。」
「今日は肉じゃぞ!!ノノが買い出しで買ってきていたのじゃ!!」
今日は肉……か。さて、何を作ろうかな。
肉が食卓に並ぶと言うことだけでテンションが上がるカミルとともに私は厨房へと足を運ぶのだった。
だが、その前に……彼女達に流れているシルヴェスターの魔力を全て抜き取らないといけない。
私は彼女達の頭に手を置き、ポツリと呟いた。
「抽出……魔力。」
するとみるみるうちに彼女達からどす黒い魔力が抜き出されていき、私の手の内に収まっていく。
「なんとも不気味な色だな。」
そして全ての魔力が私の手に集まると、私はそれを握り潰して消し去った。こんな忌々しいものは必要ないからな。
「さて、これで私の魔力を流し込めば良いんだよな。」
今度は取り出すのではなく、私の魔力を流し込む。カミルいわく、魔力が産み出されるのは心臓かららしい。だから心臓を意識すると、血液が流れるように魔力の流れを感じる。
「これを流し込む……。」
私の手を通して、少しずつ彼女達に魔力を供給する。魔力を流し込んでいると私の体に異変が現れた。
「うっ……目眩がする。」
この症状は魔力切れと呼ばれる症状で、体内の魔力が少なくなると起こる症状らしい。
「もう少し……いけるか。」
無理はしないように限界を見極めて彼女達に魔力を流し込む。
「ふぅ……少し休憩だ。」
少し休憩を挟み、魔力を回復させ、また注ぐ。これを繰り返していると……。
「ん?魔力が流し込めなくなったな。」
ある時を境に私の魔力を受け付けなくなった。もう満タンだと言うことなのだろうか?
「なら……後はこいつをはめ込むだけか。」
私はインベントリからホムンクルスの核を取り出した。一応こっちからもシルヴェスターの魔力らしきものは抜き取ってある。
「……良し、いくぞ。」
意を決して、私は彼女達の胸にホムンクルスの核を埋め込んだ。
すると……
「「「…………!!」」」
一斉に彼女達が目を開き、むくりとベッドから起き上がる。そして私の方を見ると、口を開いた。
「魔力の一致を確認。主として認識します。どうぞ、ご命令を。」
彼女達は私を主と認めると、一斉に私の前に跪いた。
どうやら、成功したようだな。
さて、命令を……とも言われてもな。どうしたものかな。少し悩んだ末、最初の命令を私は下した。
「まず第一に誰も傷つけないこと。ただ、敵対してきた者に関しては反撃を許可する。でもむやみやたらに殺さないこと。」
「「「了解しました。」」」
これで自発的に誰かを傷付けることはないだろう。一先ずはこれで大丈夫……。
「後はカミルの判断に委ねるか。」
そして私は彼女達を連れてカミルの部屋へと向かう。中にいたカミルに状況を説明すると……
「ふむ、なるほどのぉ。つまり、こやつらをどうするか……ということじゃな?」
「そういうことだ。生憎料理の手伝いはノノ一人で間に合ってるし……私が命令することなんて特にないし。」
「ならば、この城の管理でも任せようかの。今の今まで妾が趣味でやっていた掃除とかも任せてもよいのかもしれん。」
「それはありだな。」
私は彼女達にこの城のメイドとして働くように命令を出した。すると、彼女達はすぐさま掃除に洗濯等々、料理以外の様々な家事をこなし始めた。
「にしても良く考えてみれば、あやつらも悲しい存在じゃな。」
命令通りに事をこなす彼女達を見てカミルはポツリとこぼした。
「ん?どういうことだ?」
「ミノルは何も思わぬか?あやつらは自我を持っておらぬ。故に感情と言うものが何もない。つまりは誰かに使い潰されるために生まれてきた存在じゃ。」
確かに……な。まずホムンクルスが生まれた原因が戦争のための戦力増強のためだからな。始めから使い潰されることを前提として生まれてきていると言っても過言ではない。
「どうにかしてあやつらに自我……いや、感情というものを持たせてやれたら良いのじゃがの~。」
「う~ん、それはまた後で何かで調べてみないとわかんないな。」
まずホムンクルスに関する文献が少なすぎるのだ。私が調べた中では彼女達に自我を持たせる方法は書いてなかった。
「でも……暮らしていくうちに彼女達について何か分かってくるんじゃないか?」
「ふむ、そういうものかのぉ~。」
「例えばカミルとかが積極的に話しかけたりすれば、何か変化が現れるんじゃないか?」
あくまでも憶測の域に過ぎない話だけどな。
「まぁ努力してみるのじゃ。」
そんなことをカミルと話していると、城の中庭の方から声が聞こえてきた。
「うわ!!みてみてノアが三人もいる!!」
「う~……見た目が本当に同じだから否定できないけど、あの子達は私とはまた別物だよアベル!!」
おっと……アベルとノアが来たか。ということはもう食事の時間だったか。
どうやら彼女達を復活させている間にだいぶ時間が経ってしまっていたらしい。
「さてさて、今日も張り切って腕を振るうとするか。」
「今日は肉じゃぞ!!ノノが買い出しで買ってきていたのじゃ!!」
今日は肉……か。さて、何を作ろうかな。
肉が食卓に並ぶと言うことだけでテンションが上がるカミルとともに私は厨房へと足を運ぶのだった。
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