75 / 200
第一章 龍の料理人
第74話
しおりを挟む
朝から一騒動あったものの、何とかエルフの国へと行くための準備を整え、あとは出発するのみとなった。……のだが、そこでまたひと悶着起こることになった。
「私もエルフの国……行きたい。」
「なんと!?」
マームの言葉にカミルはひどく驚いた様子を見せた。それもそのはずで、エルフの邦衛の入国許可証は私とカミルとヴェルの三人分しかないからだ。
「だめ?」
少し悲しそうな表情を浮かべながらマームは首をかしげる。そしてカミルは苦悶の表情を浮かべた。
「むむむむむ……そっちの獣人の娘っ子は戦力外じゃから良いとしてじゃな。マーム、お主はな~……。」
「ちょっと、あれよね……戦力になりすぎるわよね。」
「絶対何もしないっ!!だから一緒に連れってって?お願い!」
悩む二人にマームは必死に頼み込む。それにしてもいったいなぜこんなに急についてきたくなったのだろうか?ふと疑問に思った私はマームに問いかけてみることにした。
「ちなみに何でマームはそんなに着いてきたいんだ?」
「一人はさみしい。だから一緒に行きたい。」
「なるほどな。」
おそらく私たちが魔王の城に行ったとき一人でここに取り残されたから、その時にさみしさというものを味わってしまったんだろう。
「……まぁ、マーム自身何もしないって言ってるんだし。その言葉が本当に守れるんだったら連れて行ってもいいと私は思うけどな。」
私がマームの肩を持つような発言をすると、カミルは更に顔をしかめ悩み始める。そしてそんなカミルをマームは無言でじっ……と見つめていた。
思い悩んだ末カミルは、ある決断を下す。
「はぁ、わかった。わかったのじゃ。お主も一緒に連れて行ってやる。」
「ほんと?」
「ただし!!絶対に妾の言うことには従ってもらう。そして勝手な行動も厳禁じゃ!!」
まぁ、それが一番無難な条件だな。カミル側が譲歩している以上マームはこの条件を飲まないといけないが……。
「それだけでいいの?わかった。約束する。」
あっさりとマームは、カミルが提示した条件を飲み込んだ。
「うえっ!?か、カミル本当にいいの!?」
「仕方あるまい?仮にもし妾が断ったとしても……無理矢理着いてくるのじゃろ?」
カミルの言葉にマームは無言でうなずいた。
「それよりもこうして条件を飲ませて、あらかじめ行動を制限させて着いてこさせた方が最も妾達にとっても安全じゃ。」
「う~ん、そう……なのかしら?」
いまひとつ納得できないような感じでヴェルは首をかしげた。
「……ま、なんとかなるじゃろ。妾達を呼び出したのはあっちじゃし、何人か従者が着いてくる事ぐらい了承してくれるはずじゃ。」
「そうかも……ね。」
「うむ、さて……ではそろそろ行くのじゃ。腹が背中とくっつく前に帰って来れれば良いがのぉ~。」
一連の話に区切りが着いたところでいよいよ私達はエルフの国へと向かったのだった。
◇
「お、見えてきたな。あそこがエルフの森だろ?」
「その通り。ミノルもこの世界の地理を少しずつ覚えてきたようじゃな。」
「一回行ってるし、それに特徴的な……世界樹?だったっけ?それもあそこに生えてるからな。」
エルフの森の中心には、相変わらずとんでもないぐらい大きい世界樹がそびえ立っている。カミルの話ではあの頃根本にエルフの国があるらしいが……。
そしてカミルは私を抱えたまま、エルフの森の目の前に降り立った。カミルに続き、ヴェルとマームも降り立つ。
「入国許可証があるのに、直接エルフの国に行かないんだな?」
「うむ、あのままエルフの森の上を通ったら下から弓を射られるやもしれん。」
おぅ……それは勘弁願いたいな。
「入国許可証を持ってるってのに……ずいぶんな事をするんだな。」
「エルフは警戒心が強く好戦的な奴らばっかりじゃ。特にこの森を守っておる近衛の奴らはな。」
「そうなのか。……ん?」
カミルとそんなことを話していると、森の方から弓を背中に背負った女性が此方へと向かって歩いてきた。その女性は一見外見的にはかなり人間に近いが、耳が異様に長く尖っている。どうやら彼女がエルフ……という種族のようだ。
こちらに近づいてきたそのエルフの女性は、ある程度の距離まで近付くと私達に声をかけてきた。
「妖精王からお話は伺ってます。カミル殿にヴェル殿、そして従者の方々……。皆様がいらっしゃったら世界樹まで案内するよう仰せつかっておりました。一応入国許可証を見せていただいてもよろしいですか?」
「うむ、これじゃ。」
カミルは私とヴェルの分の入国許可証も含めて、彼女に提示した。彼女はそれらに目を通して大きく頷くと、再び私達に向き直った。
「確認しました。それでは参りましょう。私に着いてきてください。」
エルフの女性は私達を導くように先導して歩き始めた。
「さ、あやつに着いていくぞ。」
「わかった。」
エルフの女性の後を私達はひたすらに着いていく。そしてしばらく森の中を進み、世界樹の根本が近くなってくると……私達の前にエルフ達が暮らす街並みが現れた。
「着きましたよ。改めて、ようこそ……私達エルフの国へ。」
「私もエルフの国……行きたい。」
「なんと!?」
マームの言葉にカミルはひどく驚いた様子を見せた。それもそのはずで、エルフの邦衛の入国許可証は私とカミルとヴェルの三人分しかないからだ。
「だめ?」
少し悲しそうな表情を浮かべながらマームは首をかしげる。そしてカミルは苦悶の表情を浮かべた。
「むむむむむ……そっちの獣人の娘っ子は戦力外じゃから良いとしてじゃな。マーム、お主はな~……。」
「ちょっと、あれよね……戦力になりすぎるわよね。」
「絶対何もしないっ!!だから一緒に連れってって?お願い!」
悩む二人にマームは必死に頼み込む。それにしてもいったいなぜこんなに急についてきたくなったのだろうか?ふと疑問に思った私はマームに問いかけてみることにした。
「ちなみに何でマームはそんなに着いてきたいんだ?」
「一人はさみしい。だから一緒に行きたい。」
「なるほどな。」
おそらく私たちが魔王の城に行ったとき一人でここに取り残されたから、その時にさみしさというものを味わってしまったんだろう。
「……まぁ、マーム自身何もしないって言ってるんだし。その言葉が本当に守れるんだったら連れて行ってもいいと私は思うけどな。」
私がマームの肩を持つような発言をすると、カミルは更に顔をしかめ悩み始める。そしてそんなカミルをマームは無言でじっ……と見つめていた。
思い悩んだ末カミルは、ある決断を下す。
「はぁ、わかった。わかったのじゃ。お主も一緒に連れて行ってやる。」
「ほんと?」
「ただし!!絶対に妾の言うことには従ってもらう。そして勝手な行動も厳禁じゃ!!」
まぁ、それが一番無難な条件だな。カミル側が譲歩している以上マームはこの条件を飲まないといけないが……。
「それだけでいいの?わかった。約束する。」
あっさりとマームは、カミルが提示した条件を飲み込んだ。
「うえっ!?か、カミル本当にいいの!?」
「仕方あるまい?仮にもし妾が断ったとしても……無理矢理着いてくるのじゃろ?」
カミルの言葉にマームは無言でうなずいた。
「それよりもこうして条件を飲ませて、あらかじめ行動を制限させて着いてこさせた方が最も妾達にとっても安全じゃ。」
「う~ん、そう……なのかしら?」
いまひとつ納得できないような感じでヴェルは首をかしげた。
「……ま、なんとかなるじゃろ。妾達を呼び出したのはあっちじゃし、何人か従者が着いてくる事ぐらい了承してくれるはずじゃ。」
「そうかも……ね。」
「うむ、さて……ではそろそろ行くのじゃ。腹が背中とくっつく前に帰って来れれば良いがのぉ~。」
一連の話に区切りが着いたところでいよいよ私達はエルフの国へと向かったのだった。
◇
「お、見えてきたな。あそこがエルフの森だろ?」
「その通り。ミノルもこの世界の地理を少しずつ覚えてきたようじゃな。」
「一回行ってるし、それに特徴的な……世界樹?だったっけ?それもあそこに生えてるからな。」
エルフの森の中心には、相変わらずとんでもないぐらい大きい世界樹がそびえ立っている。カミルの話ではあの頃根本にエルフの国があるらしいが……。
そしてカミルは私を抱えたまま、エルフの森の目の前に降り立った。カミルに続き、ヴェルとマームも降り立つ。
「入国許可証があるのに、直接エルフの国に行かないんだな?」
「うむ、あのままエルフの森の上を通ったら下から弓を射られるやもしれん。」
おぅ……それは勘弁願いたいな。
「入国許可証を持ってるってのに……ずいぶんな事をするんだな。」
「エルフは警戒心が強く好戦的な奴らばっかりじゃ。特にこの森を守っておる近衛の奴らはな。」
「そうなのか。……ん?」
カミルとそんなことを話していると、森の方から弓を背中に背負った女性が此方へと向かって歩いてきた。その女性は一見外見的にはかなり人間に近いが、耳が異様に長く尖っている。どうやら彼女がエルフ……という種族のようだ。
こちらに近づいてきたそのエルフの女性は、ある程度の距離まで近付くと私達に声をかけてきた。
「妖精王からお話は伺ってます。カミル殿にヴェル殿、そして従者の方々……。皆様がいらっしゃったら世界樹まで案内するよう仰せつかっておりました。一応入国許可証を見せていただいてもよろしいですか?」
「うむ、これじゃ。」
カミルは私とヴェルの分の入国許可証も含めて、彼女に提示した。彼女はそれらに目を通して大きく頷くと、再び私達に向き直った。
「確認しました。それでは参りましょう。私に着いてきてください。」
エルフの女性は私達を導くように先導して歩き始めた。
「さ、あやつに着いていくぞ。」
「わかった。」
エルフの女性の後を私達はひたすらに着いていく。そしてしばらく森の中を進み、世界樹の根本が近くなってくると……私達の前にエルフ達が暮らす街並みが現れた。
「着きましたよ。改めて、ようこそ……私達エルフの国へ。」
0
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる