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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第240話 ミリアの誘惑
しおりを挟む「ふぁ……。」
「あははっ♪やっぱり普通の人間の子供にはちょ~っと効きすぎちゃうかな?」
部屋の中に漂う甘い香りの霧……その正体をミリアはルアに告げる。
「この甘~い香りの霧はね、ロザリィの体液から作ったお香なんだよ~?」
クイーンサキュバスのロザリィ。ミリアが不在の夜の国を統治するサキュバスだ。彼女はサキュバス達の頂点に立つクイーンということもあり、他の異性を魅了する力も技も並みのサキュバスとは桁違いだ。
そんな彼女の体液から作られたというこのお香を、普通の人間であるルアが嗅いで正気を保てるはずがなかった。
とろとろとあっという間に表情が蕩けていくルアの頬に手を添えてミリアは語りかける。
「ルア君は、天使達をみんな倒して~平和になった後の世界を考えたこと……あるかな?」
「な……いです。」
「あははっ♪まぁそうだよね~。実はルア君は平和になった世界でもやることがたくさんあるんだよ?」
「………??」
「わかんないって顔してるね~。まだ由良ちゃんとかにそういうこと教えてもらってない……か。」
思考も体も蕩けてしまっているルアに、ミリアは続けて言う。
「ルア君はこの世界唯一の♂、それはわかってるよね?」
「コクコク……。」
「この世界にいる皆はね、♂がいないと子供を残していけないんだ~。つ・ま・り~ルア君が平和になった世界でやらなきゃいけないことっていうのは~……。」
そうミリアが語っていたそのときだった。
突然壊れたフィルムを再生したときのように、ルアの目の前の世界が白い線と黒い線で遮られていく。
その光景にミリアは少し顔をしかめた。
「あらら、ちょっとこれは予想外かな。」
「あ……れ?」
最終的に先程までルアとミリアがいた空間が闇に包まれると、ルアの体はゆっくりと下へ下へと落ちていく。
そんな彼を上から見下ろしながらミリアは手を振った。
「またねルア君?」
そう告げると共にどこかへと姿を消したミリア。それと同時に現実世界のルアはハッ……と目を覚まし起き上がった。
すると、ゴツン!!と何かにおでこをぶつけることになる。
「ぬあっ!?」
「あぅっ!?」
おでこをおさえながらゆっくりとルアが顔を上げると、そこには同じくおでこをおさえているロレットの姿があった。
「ろ、ロレットさん?」
「む、むぅ……なかなかの威力だった。」
「あ、ご、ごめんなさい……大丈夫ですか?」
「問題ない。我も石頭だからな。」
スッとおでこから手を退けると、ロレットはルアに笑って見せた。
「すまんな、あんまりルアの寝顔が安らかだったものでつい近くで見てしまっていた。」
「そ、そうだったんですか。」
「どんな夢を見ていたのかは知らないが、なにやら愉快そうだったぞ?」
はっきりと覚えているミリアと過ごしたあの夢……。まさかそんな夢を見させられていたとはロレットに言うことはできず、ルアは上手くはぐらかす。
「それで、体調は良くなったか?」
「あ、少し寝たら良くなりました。」
「なら良し。せっかくこのような旅館にやって来たのだ、楽しまなければな。勿体ないというものだ。」
そう言って旅館の外を眺めるロレットに続いてルアも外を眺めると、いつの間にか夕陽がさしていた。
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